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ありのままに─第1話─ 

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「今日からこの町が、私達の町よ」

「海鳴市ね。海が近くにあっていいね、母さん」

「そうね、冬は冷えるかもしれないわね」

ふふふ、と笑う母さん。
父さんが死んでしまってあまり笑うことがなかった、母さんがこの町についてすぐに笑った。
まぁ冗談交じりだったけど。

それでも、俺としては嬉しかった。
前の町にいたころは、笑いかけては何かを思い出して笑うのを止めてしまうことが多かった。

きっと、この町では再スタートできると思う。

母さんはここで新たな一歩を踏み出そうとこの町にやってきた。
その気持ちは俺も同じで、何が言いたいかというと、なんだかんだで期待するところがある。


「でも、何でこの町に来たの? 」


そういえば、この町を選んだ理由を聞いてなかった気がした。
俺としてはどんな理由でもいいんだけど、それでも一応は聞いてみるべきかな、と。


「なんでかしらね、風の赴くままって感じかしら」


それでは就職先がないじゃないか母よ。
はなはだ迷惑な話だった。


「冗談よ、母さんの古い友達がいてね、そこでアルバイトしながら探すのよ」


どっちにしろ就職先はないじゃないか。
仕事のない人が風の赴くままとか言うなよ。

しかも、就職じゃなくてアルバイトですか。


「この時代でしょ、アルバイトだって見つけにくいのよ?
それを考えたら、知り合いのところで優遇されてのんびりとバイトしながら、就職先を探せるのは天国だと思うわ」

天国は行きすぎなような気がするけど、まぁ母さんがそれで幸せを感じて笑えるのならそれでもいいかな。
それで生きていけるという前提があるけど。


「それなら大丈夫よ。住む所は確保できてるわ」


なんか引っかかる言い方だけど……
住むところはって、衣食住のうち住しかないじゃないか……
しかも、衣食住の中で一番難易度? が高い


「その通りよ、よく分かったわね。食事などはその古い友達がなんとかしてくれるって」


母さんの友達はとんだ迷惑じゃないのかな? それは。
見ず知らずではないにしろ、お人よし過ぎないかと思う。


「そうなの、お人よしなのよ。あそこは一家揃ってね。まぁおかげで私達は助かるんだけど」


一家揃って……まぁいいか。
俺が考えてもどうにもならないよね。なるようになるさ。

今はこんなにも笑顔を見せてくれるようになった、母さんに従うだけだね。

その一家には多大なる迷惑をかけるけどさ。


「じゃあ、まずはその古い友達、高町さんの家の人に挨拶に行こうね。家に行くのはそれからか」

「分かったよ。どんな家なのか気になるけど、お世話になる人たちに挨拶のほうが大切だよね」

「ホント、小学校1年生のわりにしっかりしてるわね、私の子って」

「母さんが頼りないからだよ」

「私の教育が正しかったということね」

「ああ、もう分かったから行こうよ」

「そうね、こんなところで親馬鹿してても仕方ないわね」



あれ、親馬鹿だったのか……
どこに親馬鹿の要素があったのかわからないけど。

ん? ということは俺が褒められた……のか?
そう考えると嬉しいような。


「あら、顔を真っ赤にしちゃって、そんなに嬉しかったの?かわいいわね~
まぁ行くって言っても、もう目の前なんだけどね」

「はやっ!てか、いつのまに!」


この母親はよく不思議なことをしでかすんだよね、全く。
俺が話に夢中になってただけだと思うけどさ。


「じゃあ、行くわよ~~」


そして、なぜそんなに張り切っているんだ、母よ。


「ぽちっとな♪」


そしてノリノリだね!


「はい、どなた様ですか?」


インターフォンから、軽快な声がする。
声を聞く限りでは女性のようだ。


「私よ、早くあけて」


すっかり上機嫌の母さん。
父さんが死んで暗かったころの母よ、帰ってきてくれ、元気な方がいいけどさ。

それほどまでにここの人に会うのは楽しみなのかな?


「あいちゃん?待ってたわよ」


声だけで誰か分かるってすごいね。
ん?あいちゃん?


「相沢愛子であいちゃんね。ありきたりよね~なんか悔しい」


どこに悔しがってるのか、いまいち分からないね。
普通の名前だからなのか? 普通のあだ名だからなのか?


「久しぶりね、お葬式のとき以来かしら? 元気だったって、元気なわけないか。
旦那さんは残念だったわね」


葬式……ああ、全然記憶ないからわかんないや。
でも、そうか、葬式に来てくれたってことは諸事情知ってるわけね。
だから、助けてくれるのかな。


「葬式のときはありがとうね。でも大丈夫よ。この町で何もかもリセットしようと思って来たんだから」


うん、あながち間違ってないけど、今までの思い出とかもリセットするつもりなのかな?
それは父さんとの日々も忘れると言うことじゃ……

やめよう。
母さんの言葉をいちいち気にしてたら駄目だ。


「その言葉聞いて安心したわ、大丈夫そうね」


安心しちゃまずいと思います。
突っ込みどころ満載でしたよ?


「立ち話もなんだから、中に入って頂戴」

「うん、そうさせてもらうね」

「すみません、お邪魔します」

「いらっしゃい、しっかりした子ね」

「当たり前でしょ?私の子よ」


あ、そこやっぱり威張るんだ。
俺としては嬉しいんだけど、なんていうのかな……考慮して欲しい?

発言はもうちょい慎重にね。


「そうだったわね、それにあの人とあいちゃんの子だもんね。ええっと名前は─」

「相沢竜也です。簡単なりゅうに、なりと書いてたつやです」

「そうだったわね。初めまして竜也君、これからよろしくね」

「いえ、こちらこそ。母さんと自分が世話になります」


これからお世話になる人だからね、しっかり挨拶しないとね。
それに初対面だからイメージもよくしないとな。

まぁそんなことを考える時点で無粋な気がするけど。


「母さん達だけで話してないで、私達にも紹介してよ」


そう言うのは、メガネをかけたお姉さん。
自分たちがいい加減に蚊帳の外だったので加わりたかったようだ。


「そうね、じゃあ、今度はうちの家族から紹介するわね。
あいちゃんは知ってるだろうけど、竜也君は知らないだろうから、私から挨拶するわね。
私は高町桃子よ、よろしくね。それで、私の横に座ってるのが士郎さん。私の夫よ」


母さんと古い友達なんだっけ、母さんもたいがい若作りだと思うけど、この人もまたすごいな。
そして、その旦那さんもまた……常人じゃないオーラを漂わせているし。


「じゃあ、今度は私ね。私は美由紀、高町美由紀ね。お姉ちゃんでも何でも好きなように呼んでいいよ」


さっきのメガネをかけたお姉さんだ。
陽気で明るい感じだね。なんかしゃべりやすそうな人だなぁ。


「じゃあ、次は俺だな。高町恭也だ、一応長男だな。よろしく」


ちょっと無愛想な兄ちゃんって感じだ。
それでもどこか温厚そうなかな?


「な、なのはは高町なのはって言います。よ、よろしくお願いします」


ちょっとおどおどしてる子だな~


「なのはは竜也君と同い年よ。仲良くしてあげてね」


しかも、同い年ときたか。
見た感じだと一番絡みにくいんだけどね。


「ついでにいうなら、同じ学校になるわよ」

「「え?」」

「だから、竜也も明日からなのはちゃんと同じ、私立聖祥に通うのよ」

「え、だってお金ないのに私立って、普通無理じゃない!?」

「あそこの理事長と知り合いでね、竜也の成績見せたら余裕でOKしてくれたわ。
しかも、成績が良い限りは学費はただよ!頑張ってね」


頑張ってねじゃないよ!
色々と突っ込みどころ満載だよ!
どれだけ人脈あるんですか!?母よ!

どんな知り合いだよ、全く。

前からそうだったけど、本当に謎の多い母だ。


「にゃはは、よろしくね、竜也君。私のことはなのはでいいよ」


さっきとはまるで違う雰囲気のなのは。
ちょっと陽気と言うか、元気な女の子って感じだ。
これなら親しくできるかもって、そうじゃなくて!


「あら、もう仲良しになったの?竜也君なのはのことよろしくね」


ああ、桃子さんまでか。


「じゃあ、挨拶もほどほどにして今日は帰ろうか、私達の家に!!」


なんで、この人の目はこんなにもキラキラしてるんだろう。
本当にこの間まで人生の絶望と言う雰囲気を発していた人だろうか……

でも、この町にはそれだけのものがあるということなのかな。

でも……うん。
やっぱり、母さんはこうやって無鉄砲で生き生きしているほうが、俺は嬉しいな。



「ああ、そういえば」

「どうしたの?母さん」

「うん、士郎さん」

「どうかしましたか?」

「息子の件、お願いしますね」


うん?俺のこと?


「ああ、はい、分かりました。でも、いいんですね?」

「とことん苛めてください!なに大丈夫です、この子は私と父さんの子ですから」

「そう言われると説得力がありますね。きっと立派な剣士にしますよ」


え?立派な剣士?


「あら、知らなかったかしら?貴方のお父さんは御神流の使い手の一人だったのよ?」

「は?使い手?」

「そう、歴代でも1.2位を争うほどだったのよ」


い、意味が分からない。


「だからね、貴方も剣士になるのよ!竜也!かっこよかったお父さんのように」

「は!?」

「にゃはは、頑張ってね。竜也君」

「ということだそうだ。頑張ろうな竜也君」


ということはどういうことなのだ!?

「明日は朝5時にここに集合な」


そうか、本当に今までの生活とはおさらばなんだね。

父さん、俺だけは貴方の存在を忘れないよ。
そして夜空を見上げる俺。

まだ、夕方で夕日だし、そもそも見上げたら天井だけどね……
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灼眼のシャナ二次創作SS(タイトル未定 オリ主) 第一話 

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久々に手がけてみました、シャナのSSです。
自分がこの世界(オタク)に踏み入れたきっかけがシャナのラノベでしたので、特別な愛着があります。
なので、ここは初心に戻り書いて見ようと思ったらあれよあれよのうちに書けました。
(実はシャナのSS読もうと思ったらあまりの数の少なさに絶望して、なら書いてみる! と思ったりしました)

とりあえずはブログのみでの公開。
今後の判断で理想郷に投稿するかどうかを決めます


※注意※
これは灼眼のシャナの二次創作です。
オリ主もので、オリジナル展開が非常に多くなると思われます。
アニメの要素は抜きです。

これらの事に悪寒を感じる方は見ないことをオススメします。
また、誤字報告や指摘、感想などありましたらコメや拍手にてお知らせいただけるとありがたいです。

以下より本編




 人間の一生というのは長くもなく短くもなく、それでもやはり短い。短い、過去を遡れば人の一生50年。そんな昔では50年生きればむしろ長生きで老人である。

 現代を生きれば、50年は中年かちょっとしたおじさん程度で、老人というのにはいささか若すぎる。そんな現代では人生80年。もっともこれは、日本という長寿大国での人の一生であり、世界規模の平均を取ればうんと下回る。

 そう学校で学んだ。所詮学校で学んだ程度なので、詳しくは知らない。そして、その学校で習う内容すらも中学生程度なので、高校・大学と進学してしまえば忘れてしまう内容かもしれない。

 俺は覚えていた。

 生きるという事に執着、あるいは執念があるとしかいえない。だからと言って、人一倍健康に気遣ったり、栄養を考えたりするわけではない。

 せめて、普通に生きて普通に死ぬ程度の人生は堪能したい。普通でいいから、不幸の事故とか不幸の病気とかそういうのは是非とも避けたいものだ。

 まぁもちろんそれらは、不幸な出来事、不回避な出来事だからこそ『不幸』などと呼ばれるのだが。そんな世界という大きな規模では些細な。されど、自身の人生にとっては最悪な出来事出くわす。

 不慮の事故。

 単車でブイブイ言わながらも、しっかり制限速度を守って、信号を誠実に守り。より安全を期すために黄色の信号で止まる。

 事故に遭いたくないから、警察に捕まるのは面倒だから。そんな理由で律儀に国の定めた道路交通法を守っていたというのに。

 やつはそれを嘲笑うかのように、俺を吹き飛ばした。

 スローだった。これがテレビでよく見るスーパースローというのか、などという他人行儀な感想を抱く。これはおそらくあまりにも現実離れしているため、自分の出来事だと認識できなかったらだろう。

 貴重な経験だな。

 全く、暢気にそんな事を考えられる自分が恐ろしい。だがしかし、スーパースローを体感できるなんてやっぱりあまりない経験だな。

 視覚の情報に遅れて今度は聴覚の情報が脳へと電気信号が送られ、耳から聞こえてくる。

 
 ひゅーん、どしゃん。


 飛ばされた俺に聞こえたのはその音だけ。何かが飛ぶ音と何かが潰れる音。恐ろしく鮮明に聞こえる。

 こんな音聞きたくない。聞いても楽しいもんじゃない、むしろ不快だ。止めてくれ。

 しかし、音はいつまでも耳に残る。

 
 ひゅーん、どしゃん。

 
 さっきまで聞こえていた、鮮明な音は遠く聞こえ始める。それと同時に、ノイズのように何か聞こえる。だけど、分からない。悲鳴のようにも聞こえるし、ただの雑音のようにも聞こえる。

 意識が遠のく。自然と、ああこれで死ぬんだなんて事を考える。

 死。死ぬ。死亡。亡くなる。無くなる。

──無くなる?

 何が? 命が。

 何が? 俺の人生が。

 何が? 俺の全てが。

 何もかも無くなる。

 いい、それはいい。だけど……俺はこんなところで死にたくない。

 普通に生きて普通に死ぬまで、俺は人生を謳歌したい。まだまだやりたいことがある、やりのこしたことがある。

 だから、俺は……まだ死ぬわけには行かない。

 生きたいんだ!


「ぅ……うぅ……はっ!」


 眩い光が見える。おお、見える。

 白い天井が! 知らない天井が!

 痛い……身体が痛い。でも、動かない。だけど……


「俺は今、猛烈に生きている!」


 死ぬ淵から俺は生き返った。

 一回目の生き返りだった。





 一回目というからには二回目がある。

 病院から、俺の担当の先生から俺への一言、


「もう二度と自分の足で立つ事はできない」


 衝撃過ぎた。あまりにも驚きすぎて、その日一晩は口が閉じなかった。顎が外れるほどというのを経験した瞬間とも言える。貴重な体験だ。

 その体験は一晩寝て起きれば終わっていて、自分の足で立つ事ができないという現実を思い知る事になる。驚きは……無いわけがない。だが、同時になるほどとも思った。

 確かに、足は全く動かない。確かに、足からは痛みを感じない。確かに、足は……存在しなかった。

 正確にはある。在るが有るだけ。使用不可。行動不可の限界突破。全く持ってあるという感覚すらも無く、あると分かっても動かせるという認識は無い。


「あれだ……理解できなくても、納得するしかない現実ってやつか」


 ははは、と空笑い。もしくは空元気を振り絞って笑う。盛大に。大袈裟に。

 自分の笑い声と共に聞こえたのは啜り声。親の……母さんと父さんの涙を流し、声を出して泣いている声。

 俺は足をなくしたのを知って泣く事はできず、親は足をなくした息子を見て笑う事ができなかった。

 その日、病院中は笑い声と泣き声で満ちていた。

 目を覚まして三日目。

 笑いに笑った日の後は、すごく清々しい気分だった。なんだろう、毒が全て抜け切ったというべきか、それとも心の整理がついたというべきか。あるいは……全てに決着がついたというのかもしれない。

 俺の心はここにきてすごく落ち着いてた。まさに無我境地。悟りを開けた気がする。今なら神様の声が聞こえても可笑しくないし、明日には孟華教なんていう、俺の名前がついた新しい宗教が設立してもなんら不思議じゃない気がする。


「よし、新しい神様にでもいっそなってみるか」


 足の無い神様。神様というよりもまるで幽霊みたいだ。

 実際には足があるが、あってないようなもんなのである意味では幽霊みたいなものか。生への執着からこの世に残るという意味だと、まるで幽霊そのものみたいな存在だ。


「実際、亡霊だったりして」


 それはそれで面白いな。この病院の怪談話になって、未来にも語られるのなら……なるほど、それなら死んだ後の世界にも魅力があるかもしれない。

 でも、簡単に死ぬ気は無いけどね。

 太陽が空の上、遙か上の真上に達する頃になると、母さんが面会に来た。

 泣きながら謝ってきた。

 母さんが何故謝るのかわからない。代わってあげられるなら代わってあげたいと何度も言いながら、泣く。

 気持ちは……理解は出来ないが、分からなくもない。

 それなら、今この母親を元気に、昔のように茶目っ気たっぷりの母親に戻すには俺が一肌脱ぐしかないだろう。


「大丈夫だよ、母さん。俺は生きてるから。こんな状態でも生きてるからさ。人間生きてればなんでも出来るって、そう言って教えてくれたのは母さんでしょ? だからさ、泣き止んでよ」


 よりいっそう泣き始める母。俺の足だった物に、必死にしがみつきながら撫でながら泣く母さん。

 病室が個室でよかった。もし、これが個室じゃなかったら、母さんの本来の姿じゃない姿を見せる羽目になってたから。母さんには、是非とも元気な姿を皆に振りまいて欲しい。


「……うん! もう大丈夫。ごめんね、もか。慰めに来たはずなのに慰められちゃったね。ふふ、いつからもかこんなに男気溢れるようになっちゃったのかな? 今のもかはお父さんより少し格好いいよ」


 さっきまでの泣いている姿とは打って変わって、いつもの母さんの姿がそこにはあった。

 もう大丈夫とは、俺のセリフだよ。

 これで全ては元通りとは行かなくても、俺は大切な立ち上がるための足を失ってしまったけれども、元の暖かい場所に戻ってくれたのだから。

 やっぱり生きているって素晴らしい。

 改めて自覚した。

 足が無くても出来る事はたくさんある。

 そうだ、小説を書くのもいいかもしれない。このきっかけを利用してみるのもいいかもしれない。そう考えれば……うん、あながちこの経験も無駄じゃないようにも思える。

 じゃあ、明日からは……

 今後の人生計画を寝ながら考え、夢を見る。

 人生生きていればなんとでもなる。





 俺が都合よく、前向きにポジティブに人生を考えていたときに、俺に会いたいという人が面会にやってきた。

 若い青年。下手すれば俺と変わらないぐらいの人だった。

 俺の乗る車椅子を乗せて俺と彼は屋上で話す。お話。それは和解の為のお話なのか、謝罪の為のお話なのか……

 彼は俺を轢いてしまったトラック運転手だった。トラック運転手だった人だった。

 彼の謝罪を俺は受け入れ、いつのまにかお互いの人生を語り合っていった。

 こうやって人に自身の短い人生、語るほどにも値しない人生を語るとちょっとした感傷に浸れた。どんなに短くても、やはり自身の人生とはこれは中々に興味深いものだ。

 興味深いといっても、俺は彼ほど壮絶な人生ではなかった。

 普通に友達と笑い、家族と泣き、仲間と戯れた普通の人生。しかし、そんな人生こそが俺の好きで、生に執着する理由だ。

 彼の人生は……俺が語ることは出来ないような人生だった。俺のような普通とは程遠いような、そんな人生だった。

 だからと言って、俺は人の人生に同情したり、同情できるような高等な生き方はしていない。なので、黙って聞くしかなかった。


「僕は……僕は! どんな思いであの親元を離れたかは分かるまい? そしてようやく職に就けた! そう、これでやっと普通の人生が歩めると思った! なのに! なのに!」


 途中から空気が怪しくなったのには気付いた。だけど、彼のその言葉に、語りに口を挟むことはできず。結この嫌な空気を甘んじて受けるしかなかった。

 どうすればいい。なんか、なんかとてつもなく嫌な予感がする。

 逃げ出したい。誰か、他の人が傍に来て欲しい。このまま二人といると俺が──


「君が……君がいたから!」


 体が強引に彼に持ち上げられる。

 ああ、足が使えない事がこんな所に弊害がでるなんて、思いもしなかった。

 これじゃ、俺は……


「ごめん。でも、もう限界なんだ……」


 ひゅーん、どしゃん。


 ああ、またこの音だ。

 こうして、俺は二回死んだ。





 二度あることは三度ある、なんていう言葉は小学生でも知っているだろう。つまりはそいうことだ。

 死ぬ事が二度もあれば、生き返ることも二度あった。それだけの話。ただ、今回は生き返った先がこれがなんともまぁ……不思議だ。

 俺が生きていたのは確かに、平成の日本。戦争なんていうものは現代人には遠く感じ、目に見えるお金という価値に右往左往され、人生を左右されるそんな世の中だったはずだ。俺はそんな世の中に、それなりに愛着も沸いていたし、好きだった。

 その現代の言葉にはお金が全てじゃないという言葉があるように、いや言葉通りにその通りだ。

 友情? 愛情? 深愛? 慈愛? なんでもござれ、目に見えない形なんてものはいくらだってある。

 もちろん、その目に見えないものはこの古代のローマにだってあるが……。むしろ、目に見える物が難しい、なんだあの抽象的な文字は。いや、文字といえるのか? 否、少なくとも俺の中の概念では文字とは言えない代物だ。

 なんだ、この生活環境は。ネットなんてものは存在しないし、まして平和なんてものは無縁に近いじゃないか。

 健康なんてものが存在するのか? 埋葬というものは存在するが、俺は死後の事より生きている今を重視して欲しい。

 こんな生活で現代っ子育ちの俺が生きていけるのか?

 生きている。生きていけている。


「そうか、生きてるのか……」


 どんな形であれ、俺は生きているのか。

 なら文句は言うまい。いや、文句は言うがそれこそたらふく愚痴を呟くが、生きてみせようじゃないか。何、これも貴重な体験だと思えば、何のその。

 人間生きていればやれないこともないし、どうとでもなる。生きていれば何でも出来るのさ。

 そう決意したのは過去に逆行して、生まれ変わってから19年が経ったころだった。

 今回は心にけりをつけるのに多少時間がかかってしまった。

 こんなに時間がかかってしまったのは、この世界に順応するためじゃないくて、かつての自分と家族との別れとの心の整理に手間取ったから。

 やはりあの愛おしい家族と別れたのは普通の人として、かなり心に来るものがあった。

 しかし、そんな苦労は意味があったのかなかったのか。この慣れ始めた生活すらも終わりを告げることとなる。

 俺の住んでいる村から丸ごと、まるで存在が魂が吸われるかのように存在が消えてなくなろうとした。

 なんと言うべきか分からないが、言葉にするなら


「な、なんか……存在が、自分という存在が吸収され……て、い」


 二度あることは三度ある。それは当然死ぬ事にも当てはまったという事だ。

 しかし。だがしかし、それは……


──生きたい? まだ生きたい? どうしようもなく生きたい?


 同時に生き返る事にも当てはまった、はまってしまったという事だけの話だ。


──俺はまだ死にたくない! 







まだまだ序の口。
理想郷に出しても大丈夫と判断されるまでここで下地を作りたいです。
タイトルとかも決めないといけないですね……
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淡い初恋物語? 

二次創作

魔法少女リリカルなのは二次創作です。
ちょっとした思いつきから、書きました。
では、どうぞ。
※ハーメルンでも投稿中

──────────────────




今思えば、僕が小学校三年生の時。

そう、あの時からすでに僕は彼女に惚れていたのかもしれない。

まさに一目惚れだったんじゃないかと思う。

だってそれは、一目彼女を見ただけで、胸がドキッと跳ね上がり、ついつい見惚れてしまっていたのだから。

そして気付いたら、目で追っていた。

本当に今更、いや、今だからこそ気付く事が出来たんじゃないかと思ってる。

──走馬灯。

ちょっとした思い出みたいなものかもしれない。

今こうして彼女の事を考えるだけでも十分に胸が苦しく、頭の中は彼女でいっぱいになる。

それも、全てこの後の瞬間の為。

僕はこの後、今感じている以上の緊張感と不安感を抱くのかもしれないし、絶望と失望が僕を襲い、悲しき一生を過ごすことになるかもしれない。

でももしかしたら、逆に達成感と幸福感に抱かれて、さらにその先の幸せがたくさんの未来を見出すことが出来るかもしれない。

──分からない。

そうだ、全てがまだ分からない。

自分がちゃんと彼女に気持ちを言えるかも分からない。

だけど……だけども!

今日まで……今日までの三年間胸に秘めた思いを伝えなくてはもうチャンスは来ない。

これが最初で最後のチャンスなんだ……。

たぶん、僕の初恋。

初恋は叶わないとはいうけれど、そんな言葉関係ない。

僕は! 僕は!!


この初恋が枯れるまであと……

この初恋が実るまであと……





彼女が僕たちの通う小学校──私立聖祥大学付属小学校 に転入してきたのは、小学校三年生の冬のころだった。

急な転入なうえに、この学校にやってきた子は女の子。

それは飛び切りの美少女だった。

凛々しくも幼さの残る綺麗に整っている人形のような顔。腰にかかるほど長い髪をもち、太陽に光のように輝く金色のツインテール姿といい、あまりにも日本人離れしている女の子だった。

しかし、彼女のあまりの綺麗さ、可愛さに僕を含む男の子はみんな彼女が入ってきた瞬間に「おおおおお」と歓喜の声をあげるほどだった。

その様子に彼女は少しびっくりしたようだったけど、すぐに自分がみんなに喜んで迎え入れられてるのに気付き、頬を赤らめしながらちょっと嬉しそうにお辞儀した。

──か、かわいい。かわいすぎる。

僕の心の中では、その言葉ばかりが浮かび上がり、気付けば自己紹介のために壇に上がる彼女をずっと見ていた。

みんなの前で話すことに慣れていないのか、それとも人前で話すのが苦手なのかは分からないけど、最初は恥ずかしそうにして、ずっと下を向いていたが、決心したのか顔を僕たちのほうに上げ、


「あ……あの、フェイト・テスタロッサと言います。よろしくお願いします……」


頬を僅かに赤く染めながらも、弱弱しく、それでもはっきりと言った。

そのテスタロッサさんの、必死な自己紹介に僕は思わず手が動き、拍手した。

みんなもそれに合わせて拍手をし、盛大な拍手によって彼女はこのクラスに出迎えられることになった。

そんな中で僕は、手が痛くなるほど精一杯に力をこめて、色々な感情をこめて最後まで拍手をして出迎えた。

テスタロッサさんの人気はすごかった。

その理由としては、この時期の転入生と言うもの珍しさと興味というのもだったが、それ以上に彼女の容姿が原因だったのではないかと思う。

みんな魅了されたのだ。

その輝く金色の髪に、綺麗な目を持つその顔に、儚げなその雰囲気に。

同じ金髪でも、どこかのバーニングさんとは大違いだった。

正確にはバニングスさんだが、輝く金色の髪こそあれど、闘志に溢れる燃えるような目と、血気盛んな雰囲気しかない。

儚さ? 彼女にはそんなもの期待するだけ無駄と言うもの。

それが僕たち男子勢の総意とも言えるもの。

ただ、僕はそれでも見てるだけなら綺麗なのにとは思う。

綺麗な花には棘がある。

うん、彼女の為の言葉に違いない。

そんなバーニングさんとは打って変わって、同じ金色の髪を持つテスタロッサさんは大人しくてお姫様を想像させた。

一度自己紹介が終わり、休み時間になるとみんなが待っていたかのようにテスタロッサさんの下へと集まった。

僕も行きたかっけど……あまり押しかけると迷惑かなと思い、諦めた。

男女関係無しにみんなに囲まれて質問の嵐を受けるテスタロッサさん。

そんな姿にみかねたのか、輪から外れていたバニングスさんは席を立ちみんなをまとめ始めた。

良くも悪くもバニングスさんにはリーダーシップみたいなものがあり、よくみんなをまとめてる。

なんだかんだで慕われているのがよく分かる。


「あれ? 悠斗君は行かなくていいの?」

「え? あ、うん。行きたいけど、迷惑かなって」

「フェイトちゃんはそんなこと思わないと思うよ?」


僕に話しかけてきたのは、高町さんと月村さんだ。

月村さんはかわいいと言うよりは綺麗と言う言葉がよく当てはまり、高町さんはかわいいと言う言葉がよく当てはまる。

月村さんやバニングスさんはどちらかというとお嬢様気質と言う雰囲気があるけど、高町さんはむしろ普通の町っ子って感じだった。

高町さんに関しては、自分の親が運営している翠屋という喫茶店の看板娘であるから、この表現は実にピッタシだと思う。

実は僕も家族単位で、お世話になってる喫茶店だったりもする。

いつもこの二人と、バニングスさんで一緒にいて、クラスでも有名なほど仲良し三人組だ。


「そんな、二人こそ何か聞かなくていいの?」

「にゃはは、私はちょっとした知り合いだから大丈夫だよ」

「私もなのはちゃんと同じかな」

「知り合いだったんだ」


いったいどんな知り合いなんだろう?

気になることは増える一方で、自分もテスタロッサさんに色々と聞きたい衝動に駆られるがあくまで我慢する。

留学生といえども時間はまだあるだろうし、これからいつだって聞ける。

チラツとテスタロッサさんを見ながら、そう自分に言い聞かせる。

気付けば授業も終わり放課後になっていた。

たぶん気のせいだとは思うけれど、テスタロッサさんの事を考えていただけで、学校が終わってしまったような気がする。

ただ、なぜ今日の授業に身が入らなかったのか、自分でも不思議だった。

家に帰ってからも、自分の部屋のふかふかなベッドの上をごろごろと転がりながら、今日来た転入生のことを考える。

ああ、あれを聞きたいな。

これも聞いてみたいな。

でももし、すでに聞かれていた質問で二度目だったら嫌だよね。面倒だよね。

じゃあやっぱり、誰も聞いてなさそうなことがいいかな?

──なんでかな? どうしてこうも、考えることが楽しいんだろう。

学校から帰るときに味わった、授業に身が入らないのと同じような、不思議な感覚。

その不思議が不思議だった。

だけど、今この考えてる時間はこれもまた不思議と楽しかった。

楽しい日々の学校が、明日からまたいっそう楽しくなるような、そう信じて疑わなかった。

この日は結局ずっと質問の内容を考えて眠ることが出来ず、翌朝は寝坊して恥をかいて学校に行くことになった。

遅刻した事を友達にからかわれて、ちょっと散々な目にあったが、そんな僕を見て高町さんと一緒に笑うテスタロッサさんの笑顔を見られたらそれもいいかなと思った。




テスタロッサさんがケータイを買ったらしい。

買った理由は、高町さんたちに勧められたからそうだ。

僕はケータイを持っていない。

僕のお母さんは買ってあげてもいいと言うのだけれども、お父さんは子供にケータイはまだ早いと言うような人で、僕はまだ持っていない。

僕もそこまで欲しいわけじゃなかったから、お父さんに交渉とかはせずにすぐに諦めた。

何れは買ってくれるのはわかってからだ。

その日になるまで待てばいい、そう思っていたのだが、今この瞬間にその思いは裏返った。

──僕も……欲しいなぁ。そしたら、テスタロッサさんともっとお話が出来るかも。

僕はテスタロッサさんが来た二日以降、積極的とは言えないものの、それなりにお話をすることが出来た。

僕から話しかけると嫌な顔一つせずに、しゃべってくれる。

そして、僕に微笑を見せてくれた。

その微笑が、普段以上に綺麗で初めて見た瞬間は、開いた口がふさがらなかった。

そんな僕の姿を見て、テスタロッサさんが慌てたりした。

なんで慌てたのか分からないけど、そのあとバニングスさんに叩かれて、ようやく口をふさぐことが出来た。

その一連がちょっと面白くて、テスタロッサさんと一緒に笑った。

とても楽しい一時。

もしケータイがあればこんな楽しい一時がもっと増えるんじゃないか、僕はそう思った。

だから……お父さんに交渉した。


「駄目だ。お前にはまだ早い!」

「で、でも……」

「でもも、何もない。それで前に納得したじゃないか」

「う……うぅ」


お父さんは変なところで頑固だ。

前から思っていたことだけど、その思いは確信に変わった。


「まぁまぁ、お父さん。いいじゃないの」

「いや、納得したんだ。男として二言はあるまい」

「ふふ、そうよね。でも、その二言を言ってでも頼むと言うことはそれなりに理由があるのかもしれないわよ?」

「……ふむ」

「ほら、悠斗話してみなさい?」

「うん……」


僕は欲しい理由を全部語った。

改めて言った内容を思い返してみれば、テスタロッサさんのことしか言ってないような気がするけど、きっと気のせいだ。

話し終わると、さっきまで強固な姿勢で、絶対に譲らないといった雰囲気を出していたお父さんの様子が変わった。


「…… 恋、か」

「……?」

「春が来たのよね? 悠斗」

「? ?」


お父さんと母さんの言ってることはよく分からなかった。

でも、この後二人は小声で少し相談すると、再び僕を見つめなおし、


「よし、分かった。買ってやろう!」

「ほ、ほんとうに!?」

「ああ、かわいい息子の為だ。男に二言は無いとはいえ、この場合は仕方ないな」

「ふふ、そういうことよ。良かったわね、悠斗」

「うん!」


僕はあまりの喜びのあまり、大好きなお父さんと母さんに抱きついた。

それで何度も「ありがとう」「ありがとう」と言った。

二人は僕を見て「春だなぁ」とまた呟いていた。

今は春だよ? お父さん、お母さん。

最新機種のケータイを持って、学校へ登校した。

何とこのケータイ、写真はおろかテレビまで見えると言う。

その説明を受けたときは驚きは隠せなかった。

しかし、あとあと聞くと今はこれが普通らしいとのことだった。

今までケータイとは完全に無縁だったので、まるで時代に取り残されていたような感覚に陥った。

でも、そんな僕とは昨日でおさらばで今では最新の、まさに流行の最先端を走っているような爽快感がある。

僕は学校に着くと迷わずテスタロッサさんの下へ行こうとしたけど、ちょっと躊躇った。

──どうしてだろう……ケータイのアドレスを交換してもらうだけなのに、こんなにドキドキするのは。

どうしようもない胸の高鳴りを覚えた為に、踏みとどまってしまったのだ。

聞いて大丈夫だろうか。

もし、聞いて断られたら。

いや、優しいテスタロッサさんに限ってそんなことは……

どうしても、最悪の事を考えてしまう。

せっかく、せっかくケータイを手に入れたのに。

テスタロッサさんのアドレスを知ってもっと接する機会が欲しくて買ったのに!

あれ? 今、自分で少し不可思議な事を考えなかっただろうか?

テスタロッサさんと接する機会のために買った?

心の中、頭の中に疑問符が浮き上がる。

自分で自分がなにを言ってるか、考えてるか分からなくなってきた。

──……いいや。今はそんなことよりテスタロッサさんと!

心の中で未だに葛藤が続く。

そんな葛藤も長く続き、気付けば授業の時間となり、次に気付いたときには学校が終わっていた。

──そ、そんな馬鹿な。学校ってこんなに短かったっけ?

ありえない光景を目にしたような、そんな感情を抱いたものの、この放課後の時間がチャンスだとすぐに気がついた。

肝心のテスタロッサさんはどこに、そう思い回りを見渡せば、都合よく彼女一人だけになっていた。

いつもな高町さんたちに囲まれていてとても話しかけられるような雰囲気じゃないのだが、災い転じて福となすと言うのだろうか。

まさに千載一遇のチャンスだった。

ここを逃せば自分はもう一生彼女とアドレス交換ができない。

そう思い、一大決心してテスタロッサさんに近づく。


「あ、あのぅ……」

「? あ……ゆうと、どうしたの?」


いつもと変わらぬ優しい顔で、反応をしてくれた。

思わずその姿に、毎度のことながら見惚れてしまうのだが……いけない、そんな時間は無かった。


「あ、あのね! えっと……アドレスを」

「あどれす?」

「け、けけケータイの!」

「……あ、ゆうとケータイ買ったの?」

「え? ああ、うん。こ、これ!」


気が動転する。

今にもめまいが襲って倒れそうなほど、クラクラする。

だけど、ここで頑張らなくては手に入らない。


「あ、アドレスを交換してしてください!」

「…………」


一瞬の沈黙だった。

僕は思わず深く頭を下げて、お願いをしていた。

まるで告白するような、片目からみればそう見られてもおかしくなかったほどだった。


「うん、いいよ。交換、しよ?」

「え、あ……うん! 本当にいいの!?」

「友達……だから」

「そ、そっか。友達だもんね」


テスタロッサさんの了承の言葉。

その言葉に僕は、感激のあまり逆に聞きなおしてしまった。

そして、次にテスタロッサさんから帰ってきた答えは「友達だから」この言葉に、僕は……僕は!

予想だにしなかったテスタロッサさんの言葉に、さらに感激は高まる。

しかし、感激のあまり180度ひっくり返ってむしろ、冷静になってしまった。

でも、この言葉はどんな言葉よりも心に響き、たぶん一生忘れることは無いと思う。

僕はこの感激の高まりのウキウキ気分のまま、軽くステップまで踏みながら家へ帰った。

そして、お父さんとお母さんにその勢いのまま報告した。

その僕の様子を見たお父さんとお母さんは、お互いに目を合わせ「青春だな」「青春ね」と呟いた。

部屋に転がり込み、ベッドに勢いよく身体を投げる。ベッドのバネで一回高く飛び跳ねた。

心はまだ浮かれ気分。そして、そこに更なる追撃が来た。

テスタロッサさんからの初メール。

その日、あまりにもテンションが上がってハイになってしまったため、今の記憶にはそのメールの内容はあまり覚えていない。





「おまえ、テスタロッサと付き合ってるの!?」

「……はぁ?」


テスタロッサさんに初めて会ってから三年。僕はすでに六年生になり、来年からは中学生だ。

この学校は中学になると共学ではなくなり、男女別になる仕組み。

つまり、テスタロッサさんとこうやってクラスで一緒になるということはまずないということになる。

それは、非常にな残念なことなのだけれども、こればっかしはしょうがないことだった。


「いや『はぁ』って言われてもな。おまえ、テスタロッサのこと好きじゃないの?」

「好きとか……そんな」

「ま、真面目に考えるなよ。からかってるだけなのに」

「……ああん?」

「こわっ! 普段大人しいやつは怒ると怖いね! 何するか分からないよ」


僕をからかいに来ただけの、一年生以来の親友をにらみつけると、「ああ怖い怖い」と言いながら、自分のクラスへ帰っていった。

しかし、彼の言った言葉は胸に突き刺さった。

──『テスタロッサのこと好きじゃないの?』ね。僕だって、分からないよ。

三年と言う月日は、人生の中では短くも小学生である自分には長い月日。

そんな月日の間、僕はテスタロッサさんと接し続けた。

学校ではもちろん、メールもしたり、電話だってするほど仲がよくなった。

高町さんたちの次ぐらいには、仲が良いと胸を張れるくらいの仲だと思う。少なくとも僕は。

三年でテスタロッサさんの身体は、あの……その……えっちぃのはいけないとは思います。

ええ、僕の口からはいえないほどの……あれになっていた。

それでも、僕の中でのテスタロッサさんは変わらず綺麗でかわいかった。

そして、


「あ、ゆうと。おはよう」

「お、おはよう、テスタロッサさん」


昔にかわらず、僕の胸はテスタロッサさんと会うだけで、ドキドキと心臓が鳴り、話せば緊張して顔が熱く感じる。

彼女の事を考えれば、今も胸は張り裂けそうに痛くなる。それでも考えることは止められなかった。


「今日は早退とかしないの?」

「うーん。たぶん、大丈夫」


テスタロッサさんには秘密が多い。

それは僕が未だに、三年生のとき聞きたかった質問を聞けていないからかもしれないが、テスタロッサさんは……いや、テスタロッサさんと高町さんは時々学校を休んだり、早退する。

それが一番の謎なのだが、女の子は謎が多い方がいいと言うお母さんの言葉もあるので聞くことは無い。


「そっか……うん、そうか」


今日はずっと学校で一緒の教室で勉強できると思うと、いよいよテンションは上がる。

──でも、こんな時間が続くのは今年限り……なんだよな。

諦めているとは言えども、どうしようもないこととは分かっているものの、やはりどこか……悲しかった。

あるいは、残念。

それはどうしてなのか……

──もしかして、僕ってテスタロッサさんのことが!?

三年前では分からなかったこの感情の正体。

思い当たる節がある。

よくお父さんとお母さんが呟いていた言葉。

──もしかして……まさか……これが!?

そう考えると、頭は彼女のことでいっぱいになる、心臓はよりいっそう早く脈を打つ。

居ても立ってもいられなかった。

チラリとテスタロッサさんのほうを見る。

今は授業中だというのに、僕の視線に気付いてかテスタロッサさんもこちらを見て、にこりと笑う。

僕は思わず顔をそむけてしまう。

しかし、ようやく分かったこの気持ちに確信が持てた。

思わず、一人誰にも聞かれないようにぼやく、


「そうか、そうだったのか……はぁ、あいつの言っていたことは、あってたのか」


一年生以来の親友の言葉を思い返し、もう一度深いため息を吐く。





テスタロッサさんがここに来てくれるだろうか?

僕はちゃんとこの思いを言葉で伝えられるだろうか?

いいよ、と頷いてくれるだろうか?

拒絶されてしまうのでは無いだろうか?

様々な憶測が頭の中で飛び交うがそれに答えてくれる者は居ない。

あえて言うのであれば、その結果を教えてくれるのは彼女──テスタロッサさん意外には居ない。

僕にとってたぶん初恋の相手。

僕にとって初めての告白。

僕にとっての……

いまだ来ぬ彼女にどう言おうか考える。一応、台本は用意した。だけど、実際にそれがいえる保証は無い。

果たしてどんな答えが返ってくるだろうか。

反芻する思惑と憶測。

それを考えるたびに、倒れてしまいそうになる。

眩暈がする、吐き気がする、フラフラになる、今にも涙が出そうになる。

答えを知るのが怖い。

でも、知りたい。

矛盾する考えと心の思い。

そんな葛藤を人知れず、抱いていると、ようやく。

僕にとっては何ヶ月も待っていたんじゃないかと思うほどの時間を感じて、やっと彼女がやってきた。


「ごめんね、わざわざ呼び出して」

「ううん、大丈夫。ゆうと、大切な話って何?」

「あ、あのね」


台本のセリフがぶっ飛んだ。

頭の中が真っ白になる。

さっきまであんなにも、あんなにも考え、葛藤していたのに、全く何も思い浮かばない。

言うなれば、放心状態のようだった。

だけど、言わなくては、伝えなくてはという焦りだけが浮かぶ。


「じ、実は三年前から……」


ようやく出てきた言葉。

しかし、つづられる言葉は告白ではなくて、テスタロッサさんとの思い出話。

それも、僕の中の彼女のとの思い出。

その重いでは彼女にとっては思い出かも分からない、知る由も無い。

でも、僕は語る。

長々と、三年間を。

初めて見た時とのこと、ケータイの裏話、テスタロッサさんの運動神経に驚いたことなどなど。

尽きることは無かった。

テスタロッサさんはそんな僕の話を、微笑みながら聞き、時々相槌をうってくれる。

そして、ようやく語り終える。


「テスタロッサさんとの時間はとても楽しかったんだよ」

「うん、私もゆうとと一緒にいると楽しいよ」


その言葉は最大の名誉であり、僕が感極まるのには十分な言葉。

だけど、違う。

そんなことじゃない。

僕が今日ここにテスタロッサさんを呼んだのはこんなことじゃない。

一度目をつぶり、深く深呼吸。

そして、言う。

最後の、最後の力を振り絞って。

あのとき、初めて会ったときにテスタロッサさんに精一杯の拍手をした時のように思い切り力を言葉にこめて、


「僕は……テスタロッサさんのことが──」


















─────────────
あとがき

どうも、作者のタピです。
最近、恋話が自分の中で不足してると思い書きました。

オリジナルじゃなくて、どうしてリリなのか説明します。
じゃないと、オリジナルで書けって言われかねないので。

なぜリリなのか。
それは、この後の物語を推測するに当たってそのほうが面白いと思ったからです。
読んでのとおり、主人公は魔法は知りません、
なのに、魔法の世界の住人ともいうべき、彼女のことが好きになってしまった。
もし、この想いがフェイトに通り、付き合うことになったらどんな展開があるでしょうか? そうすると……後は分かりますよね?
では逆に、振られたら?

あとは想像にお任せます。
最後に、この作品をお読みいただきありがとうございます。
この作品がちょっとした暇つぶしになれば光栄です





<コメ返し>


鮫肝様>
指摘感想ありがとうございます。
設定云々に関しては参考にさせてもらいますね。
一応この作品は、三人称の練習用試作品と言う形なので三人称に関して指摘がないと言うことは、
問題なかったと受け取りますね。
それだけでも、成果、かな?

イッちゃん様>
感想ありがとうございます。
まぁ二次創作だから設定そのまんまだからありきたりにはなるよねw
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