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執筆のテンションをあげるには良作を読むのが一番 

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良作や名作を読み直し始めると読みきるまでSSを書けなくなってしまうのは仕様です。
タピです。

理想郷の捜索板のまとめはよくSSを探すのに利用しているのですが、
久々に懐かし~~のスレが上がってるのを見て、読み直し探索しなおしてたら、
出るわ出るわの良作ラッシュ。

「ぱないっすw」と言わざるを得なかったです。
なんで、こんなSSを読んでこなかったのか自分が不思議でしょうがない。

し、しょうがないですよね! 十年前なんて自分はまだ8歳。
読書に目覚めたのは11歳のときに読んだ、三国志が元なんだから!

と、言い訳しつつ楽しんでいます。

そんな自分も活字中毒で読者という立場で甘えきれずに自分でも書き始めた次第。
実は始めて小説を書いたのは中学生のときでしたが……黒歴史作品ですよ。

今の状態でも、なんともいえないのにとか思ってます。

まあそれほどまでに文字が好きな自分ですが、ネット小説を読み始めたのは高校生になってからなんですよね。
ほんの3・4年前って事です。基本的によちよち歩きのひよこですから仕方ないですね。

それでも、かなりの数は読みましたね。
いつかその読んだ作品の全てをメモにしておきたいです。

今からしようかとも思ったのですが、「あれ? そろそろ投稿しようかな」なんて気分なんで、もうちょい先延ばし。

それでも思わず一作品だけ紹介します。

作品名:メルギゾーク~The other side of...~
作者:emr様

リンクフリーとの事なので、URLのみはここにて公開させていただきます。
http://ulysses0.blog112.fc2.com/

概要
紹介するまでもなくご存知の方はかなり多いと思われる作品。
魔法少女と言っても過言では無いですが、この作品一番の魅力は作者様の文章の吸引力。
一度読めばどんどん引き込まれます。

以下の説明はサイトから直接コピペ
魔術師が権力を持つ国で、紫紺の瞳のユリシスは次第に大事件に巻き込まれていく。


これと同じような作品を自分はもっと読みたい。
お勧めがあれば是非とも教えて欲しいです。

SSとか色々 

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たくさんのご要望があった『ホームレスは好きですか!?』なのはEND
自分にとってもあまりに予想外、予想以上の期待の声があったので、ただいま必死に作成中です。
上手くまとめる事ができましたら、理想郷に投稿という形でお答えさせてもらおうかと思っております。

また、その後現在執筆中の作品が完結しましたら、ホームレスの改稿をしたいなと思ってます。
あと、ありのままにやそれ以外の作品を理想郷から撤退しようかなとか……。

なんか全て予定とか未定とかですみません。

なんにしてもリリカル実行中次第になっております。
まぁ実行中は思った以上にコメが伸びず、でもPVはそれなりなので多数の方が見ていただいているのは分かるのですが、中々執筆意欲が沸かなくなったりしたり……。

行き先が不安です。

というわけで、ありのままにの続編を! という声も多数聞こえているので、こちらで少しだけ公表をしようかと思います。
ですが、その続きを書くかは非常に微妙なので期待だけはしないようにしてください!(ここ重要)

では、どうぞ。




俺は自身の身に危機を感じていた。
だからどうしても不安の為、何度も今日の日付を確認してしまう。
しかし、何度見ても日付は変わらない。
そう、時代の先──未来に行くことはおろか過去に行くことなど絶対に不可能なことだからだ。
そんなことは知っている。
むしろ、そんなことが出来るのであればプレシアさんは死ぬことはなかったし、そもそも自分だってここまでの危機は感じない。


「たつにぃどうしたの? そんなにそわそわして」

「これから身に降りかかるかもしれない天災を考えて震えてたんだよ?」

「身に降りかかる天才?」

「なんか闇に舞い降りた天才みたいな、フレーズだね?」

「たつにぃの言ってることよく分からないかも……」


アリシアが不思議そうな顔をして俺の部屋を出た。

そもそもなぜこの部屋にいるのかが疑問だが、今はそんなことに構ってる暇じゃなかった。
そうして、もう一度カレンダーを見てしまう。


「何度見ても祝日のない、梅雨時の6月だ」


祝日がないということは、学校の休みで3連休がない事を表している。
そのことが少し面倒だなとは思うものの、これから降りかかることに比べれば大したことじゃない。
否、むしろ学校を理由にして逃れられないか?

無理だ……待ち伏せされるに決まってる。
どうせ変なオーラをまとって家の前でニコニコしながらやつは待ってるに違いない。

その光景を頭に思い浮かべると……。


「や、やばい……寒気と震えが止まんない」


これは何としても、あの日までに何とかしなくてはならない。
でも、めぼしいアイディアがない。お金がない。考えがない。面白みがない。
あ、最後のが一番重要だね。

ありきたりなものを用意したら、俺がつまらない。
せっかく相手は関西人なんだから、突っ込みやすいものを選んでやりたい。

そして、はやてには思う存分自分の血と才能を生かして欲しい。
これは俺が考える最大限の優しさだ。
決して面白がってるんじゃないんだからね!


「竜也~、もうご飯の時間よ~」


母さんの暢気な声が聞こえる。
それと同時にフェイトとアリシアの声も。
今日は平日だから、当然のごとく学校もある。
学校があると言うことはアリサやすずか、なのはも居て、奥の手段としてあいつらも居る。
だとすれば……うん、可能性は無限大!

今日の学校に全ての望みを賭けることにした。
俺の身は、彼女らに託されたのであった。





「え? 女の子へのプレゼント? って誰にあげるつもりなのよ?」

「ちょっとした知り合い」

「竜也に、他の女子に知り合いいたの?」

「いや、架空の人物……?」

「何で疑問系……はっ! まさか架空って二次──ごめん、私そういう人と一緒に付き合えないわ。今までの関係はなかったこ──」

「何を想像した!? 絶対間違ってると思うよ?」

「あのね! 竜也君お手製のケーキでも良いと思うよっ」

「竜也君のケーキ美味しいもんね」


結局まともに考えてくれたのはなのはだけだった。
いや、真面目って言う意味ではフェイトも必死に考えてくれていたが、案にはなっていないだけなのだが。
その後は、なぜか俺のケーキ談義になってしまい、あれよあれよのうちに話題が逸れていき、最終的には今度うちでケーキパーティをやることになってしまった。

望みをかけた俺がバカだった。
アリサなんて何を勘違いしたのか、俺と距離を置いてるし、なぜか5兄弟は盛り上がり始めていた。
「閣下のお手製……だと?」とか「今宵は宴ですね! 閣下!」とか面倒この上ない状態だ。
だから、とりあえず釘を刺す意味でも、


「ごめん、俺のケーキ3人用なんだ」


と言っておいた。
そしたら、しゅんとなり普段からは予想もつかないくらい静かになってしまった。

ちょっと言い過ぎたかな。
しょうがないから、あいつらの分も作ってやるか。
じゃあ、どんなケーキがいいかなぁ。
王道のショートケーキは前に作ったからチョコかな。でも、チョコって飽きやすいしだったら思い切ってチーズケーキを……でも、あれって意外と難しいしなぁ……。

そんな事を思いながらいつも通りの帰宅。
面子はいつもので、家に一旦帰り、今日も恭也さんの下で剣の鍛錬を受けた。
鍛錬は徐々に激しさは増すけど、自分自身が身体も成長し始めてるせいかけっこういい線まで動けるようになってきた。
それでも、まだまだやるべきことは多いので鍛錬は欠かせない。

今日は、なのはだけじゃなくフェイトとアリシアも見ていたことからなのか、いつもより集中して一層激しく鍛錬を行ったので終わった頃には日が沈んでいた。

アリシアは竹刀とかに興味心身で、ちょこちょこ弄くっていたがフェイトはこっちの動きを真剣に見ていた。
見取り稽古のつもりだったのだろうか。

鍛錬も終わり外も暗いので、慌てて帰ろうとしたら桃子さんが今日はなのはの家でご飯を食べるように進められた。母さんも家に帰らずにこちらに残っていたので、なのはの家でご飯を食べさせてもらうことにした。

平穏無事にご飯も食べ終わりいよいよ帰ろうかと言うときに、今度は今日は泊まって行ったらとの事。
正直、かなり疲れてへとへとの状態なのでありがたい申し込みだった。
だけれども、


「いいえ、大丈夫で──」

「そういえば、たつにぃ、天才の件はどうなった?」

「だから天才じゃなくててんさ──はっ!」


お、思い出した!
ケーキと稽古のせいですっかり忘れていたけど、そうだよ。
俺の命の危機があるんだったよ!
何で自分の命が危ないのに忘れてるんだよ、バカかよ俺は……って自分をけなしてる場合じゃない。
早急に対応を考えなければ。

疲れ果てて、すでに眠気が遅い始めている頭に活を入れ考え直す。
この場でできることは何か?
現状を確認する。
相談できそうな人はいるか……母さんは論外だし。桃子さん……は面倒ごとになるような気がする。
気がするけどたぶんあってる。
とすれば、美由──ないな。


「あ、今失礼なこと考え──」


ああ、雑音が混じる。集中集中。
今は、彼氏はおろかめぼしい男友達すらも居ないらしい、美由希さんに構ってる暇はないんだ。
俺が生きるか死ぬかの瀬戸際だって言うのに!


「ひど!」


となれば、消去法で士郎さんと恭也さん、なのは、フェイトとアリシア……。
そうだ、な。
こういう時こそ、彼女を頼るしかないな。
たぶんこういう面ではすずかと同じくらい役に立ってくれるはずだ。


「なのは、会議をする。なのはの部屋にてだ、以上」

「にゃ!? え? 一体なんの……た、竜也君強引に引っ張らないでよぉ」


なのはがとろそうなので、強引にて手を引っ張ってなのはの部屋に向かう。
階段はさすがに危ないから、フェイトに手伝ってもらい二人で運んだ。
というのは建前で意外となのはが重かったからなのだが、そう言ったら、


「な、なのはは重くないもん!」


と、言いながらじたばたし始めたので待てと一言いい、大人しくなったところをフェイトと運んだ。

運び終わり、なのはの部屋に着いたらなのはも猫モードが解けたのだが、


「なのはは重くないもんっ!」


依然と拗ねたままで、それ以外に口を開こうとしなかった。
頬を膨らませ、ぷんぷんといった感じで今、なのはは怒ってますと猛アピールしているようだった。
その姿は怖いと言うか、拗ねてる子猫そのものなので可愛いぐらいだった。
しかし、フェイトはその姿を見て、


「ねぇ竜也、なのは怒ってるけど? 大丈夫かなぁ」


なのはを心配する。

なのはの怒った姿を見て本当におろおろし始めるのは、フェイトぐらいだ。
アリサはこの姿を見るとまたか、と言う感じで、すずかはむしろ愛でるかのように笑顔に。
5兄弟は……カメラはマネージャーを通してからにしてもらいたい。
あ、なのはの場合は飼い主か。
というか、学校にカメラを持ってくるなよ……しかも、ケータイじゃなくて一眼フレってどこにそんな予算があるんだろう……毎度不思議に思う。
そのお金、少しは家に分けてもらいたいものだ。

そうそう、家といえば母さんが最近は自営業の勉強をしているようだった。
翠屋二号店だなんとかと言う話を聞いた覚えがある。
もし、作ることが出来たらそれで貧困からもおさらばかもしれないと密かに願っていたりもしている。

話がかなり逸れてしまった。
問題は拗ねたなのはをどうするかだった。
少し時間が経てばすぐに治るのだが、あいにくとこちらに猶予はないのだ。
となれば、何かを餌にして……、


「ほれほれ~」

「…………」

「ふら~フリフリしてるぞ~」

「……ーーっ!」

「我慢は身体によくないぞ~」

「う……うぅ」


からだがぴくぴくし始めている。そして、どういう原理なのかツインテールがピコピコしてる……尻尾?
そんなことより、もうちょいのようだった。
今更ながらなのはって本当に猫だよなと思う。

ここは、押して駄目なら引いてみな戦法を用いる。


「じゃあ、止めた」

「え? そ、どうして!」


ふっ食いついたな、これが罠だと知らずに。
あとは、このまま釣るだけの作業だ。

にしても……なのはもずいぶんと安くなったものだ。
マタタビの一つで釣れてしまうとは、もう自家栽培せざるを得ない。


「どうした、なのは。そんなにこれが愛おしいか?」

「そ、そんなこと……ないもん」

「なら、これはいらな──」

「にゃ!?」


これだから、甘いと言うのだなのはは。
そう、まるでコーヒーにガムシロを二杯入れた上で砂糖を3杯入れるぐらいに甘い!

……ちょっと美味しそうだな。
そこにミルクを入れてみるといいかもしれない。


「しょうがないなぁ、じゃああげるよ」

「ほ、ほんとっ!?」


あげるよと言って、ほんとっ! と聞き返してくるからには相当欲しいのだろうけど。
いや、そうじゃなければ餌の意味がないのだろうけど……やめよう。
深く考えるとどつぼにはまる気がする。


「だが、条件がある」

「条件?」

「俺の相談に乗ること」

「……え? それだけ?」

「あ、ああそれだけど」

「なんだぁ、それなら言ってくれれば……」


なのはがちょっと拍子抜けしたような表情になる。

どんな条件を突き出されると思ったのだろうか?
ちょっと気になったので、聞いてみることにするとなのははちょっと恥ずかしそうにしながら、


「い、いつもの感じの……」

「いつもの感じって?」

「ね……猫とか」

「ああ、そゆこと」


理解できた。
つまりなのはは自分が弄ばれる事を望んでいたようだった。
それは悪い事をした。せっかく俺との遊べる機会がなくなってしまったのだから。

そうだったんだよな、ごめんねなのは。
俺はいつでも遊んで欲しいなら遊んであげる……ぞ?
……あ、やっぱりいつもは無理かな。
俺にだって用事がある、剣の鍛錬とか魔法の練習とか5兄弟の相手とか。
なのはの相手は2の次3の次だ。


「いま、なんか後回しにされたような」

「気のせいじゃないよ、なのは」

「そうだよね、気のせい……気のせいじゃないの!?」


なのはがかなりビックリしたみたいだった。
そのせいで、隣で俺のひざを枕にしてたフェイトとアリシアがビクッと動いたけど、起きる様子はなかった。
って、あれ? なぜ二人は俺のひざで寝てるし。
でも……あまりに気持ちよさそうに寝ているのでどかす気にもなれなかった。


「こらっなのは。二人が起きるところだったぞ」

「え? あ、ごめんなさい。ってなんで二人は寝てるの!? しかも、竜也君の膝枕で……羨ましいかも……」

「何か言った?」

「ううん、なんでもない」


この状態は以外にも辛い。
立ち上がるときには相当の覚悟が必要だな。足の痺れ的な意味で。


「ええと、竜也君は相談しにここにきたんだよね?」

「おお、そうだった」


またすっかり忘れてた。
なんで、こんなに忘れやすいのだろうか?
これってある意味の防衛本能なのか? 彼女が怖いから現実逃避しているというような。

うん、説得力がありすぎる。
それで、忘れたままになって、気付いたら取り返しのつかないことになってるんだ。
そして、きっと彼女は言うんだろうな?


「おかえりなさいや、っで今度はどこに逝くん?」


って……真面目に考えよう。
目に光の映らないあの瞳は洒落にならない。
どこに焦点を当ててるのかも分からないんだもん。


「女の子へのプレゼントなんだけど」

「学校で聞いたことなのかな?」

「そうそう、それそれ」


誰も真面目に聞いてなかったと思ったけど、なのはは聞いてたのか。
いや、案時にちゃんと返してくれたのはなのはだけだったからね。


「う~ん、なのはだったらなんでもいいかも」

「なんでも?」

「うん! 友達からプレゼントがもらえるだけでも嬉しいから」


なのは溢れんばかりの輝く笑顔でそう断言した。

自身の身になって考える。
俺もそう出来たらよかったのだが、女の子の欲しいものはいまいち分からない。
だから、なのはに聞いたのだけど……そうか、なんでもか。


「だから、竜也君の好きなものを送っても良いと思うよ?」

「俺の好きなもの……」


俺の好きなもの……頭の中で繰り返すと同時に口でも何度も繰り返し言う。

俺の好きなもの。
例えば……いや、一番はやっぱり猫とかかな。
俺の目の前には一匹の白い子猫。
白いと言っても毛並みは栗色で尻尾は二本……ってなんか妖怪みたいだけど。


「た、竜也君。そ、そんなになのはを見ないでよ……」

「いや、好きなものって思ってね。なのは」

「え? なのはがす──」

「猫がいいかなって」

「なのはは猫じゃないーっ!」


この発言でなのはに引っ掻き回されて、俺はなのはの部屋をを急遽退室。
そのまま真っ直ぐ家に帰った。

フェイトとアリシアはよほど深く眠っていたのか、全く起きる気配がしなかったので背負って帰った。
さすがに二人は重かったが……まぁたまには兄らしいこともって思って頑張った。

家に帰れば母さんが、すこし驚いた顔をしたけど、すぐに微笑んで俺と一緒に二人を部屋へと連れて行った。
二人をベッドの上に寝かしつけるも俺の服を強く握ったままだったので、離すまでそっと待った。

それにしても、プレゼントはなんでも良くて、好きなものか……。
ふっ……やっぱりあれしかないよな。

そう心に決め、いざ決戦の日に備えて俺は作戦練る。
しかし、いつのまにか睡魔に襲われそのまま寝てしまった。

運命の日まであと3日。

悩んでます・・・ 

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うぎゃー駄目だー!自分の作品に自信が持てない!


タピですよ。


不調というか、もう色々とだめです。
いくつか別名で理想郷に投稿したりするものの、コメ0が続いたり。
自信たっぷりに書いた物が無反応だったりで、もう無いプライドすらもずたずたです。

小説書くのは好きなので、それだけ続けて、理想郷から全て撤退しようかなとか思ってます。
その際には全ての作品を削除する予定です。

駄目なんですよ。
実行中は書いてて楽しくないときが多すぎるし。
他作品は書いててもなんか・・・やっぱり無反応は辛いといいますか。

ここはいっそ、初心に戻って全てを消してやり直したいと思ってしまいます。

いいですかね? いいですよね!?


という報告です。
このブログを見て、SSも読んでくれてる人は少ないと思いますが・・・。

なので、とりあず実行中は楽しくなるまで更新できないかもしれません;

灼眼のシャナ二次創作SS(タイトル未定 オリ主) 第一話 

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久々に手がけてみました、シャナのSSです。
自分がこの世界(オタク)に踏み入れたきっかけがシャナのラノベでしたので、特別な愛着があります。
なので、ここは初心に戻り書いて見ようと思ったらあれよあれよのうちに書けました。
(実はシャナのSS読もうと思ったらあまりの数の少なさに絶望して、なら書いてみる! と思ったりしました)

とりあえずはブログのみでの公開。
今後の判断で理想郷に投稿するかどうかを決めます


※注意※
これは灼眼のシャナの二次創作です。
オリ主もので、オリジナル展開が非常に多くなると思われます。
アニメの要素は抜きです。

これらの事に悪寒を感じる方は見ないことをオススメします。
また、誤字報告や指摘、感想などありましたらコメや拍手にてお知らせいただけるとありがたいです。

以下より本編




 人間の一生というのは長くもなく短くもなく、それでもやはり短い。短い、過去を遡れば人の一生50年。そんな昔では50年生きればむしろ長生きで老人である。

 現代を生きれば、50年は中年かちょっとしたおじさん程度で、老人というのにはいささか若すぎる。そんな現代では人生80年。もっともこれは、日本という長寿大国での人の一生であり、世界規模の平均を取ればうんと下回る。

 そう学校で学んだ。所詮学校で学んだ程度なので、詳しくは知らない。そして、その学校で習う内容すらも中学生程度なので、高校・大学と進学してしまえば忘れてしまう内容かもしれない。

 俺は覚えていた。

 生きるという事に執着、あるいは執念があるとしかいえない。だからと言って、人一倍健康に気遣ったり、栄養を考えたりするわけではない。

 せめて、普通に生きて普通に死ぬ程度の人生は堪能したい。普通でいいから、不幸の事故とか不幸の病気とかそういうのは是非とも避けたいものだ。

 まぁもちろんそれらは、不幸な出来事、不回避な出来事だからこそ『不幸』などと呼ばれるのだが。そんな世界という大きな規模では些細な。されど、自身の人生にとっては最悪な出来事出くわす。

 不慮の事故。

 単車でブイブイ言わながらも、しっかり制限速度を守って、信号を誠実に守り。より安全を期すために黄色の信号で止まる。

 事故に遭いたくないから、警察に捕まるのは面倒だから。そんな理由で律儀に国の定めた道路交通法を守っていたというのに。

 やつはそれを嘲笑うかのように、俺を吹き飛ばした。

 スローだった。これがテレビでよく見るスーパースローというのか、などという他人行儀な感想を抱く。これはおそらくあまりにも現実離れしているため、自分の出来事だと認識できなかったらだろう。

 貴重な経験だな。

 全く、暢気にそんな事を考えられる自分が恐ろしい。だがしかし、スーパースローを体感できるなんてやっぱりあまりない経験だな。

 視覚の情報に遅れて今度は聴覚の情報が脳へと電気信号が送られ、耳から聞こえてくる。

 
 ひゅーん、どしゃん。


 飛ばされた俺に聞こえたのはその音だけ。何かが飛ぶ音と何かが潰れる音。恐ろしく鮮明に聞こえる。

 こんな音聞きたくない。聞いても楽しいもんじゃない、むしろ不快だ。止めてくれ。

 しかし、音はいつまでも耳に残る。

 
 ひゅーん、どしゃん。

 
 さっきまで聞こえていた、鮮明な音は遠く聞こえ始める。それと同時に、ノイズのように何か聞こえる。だけど、分からない。悲鳴のようにも聞こえるし、ただの雑音のようにも聞こえる。

 意識が遠のく。自然と、ああこれで死ぬんだなんて事を考える。

 死。死ぬ。死亡。亡くなる。無くなる。

──無くなる?

 何が? 命が。

 何が? 俺の人生が。

 何が? 俺の全てが。

 何もかも無くなる。

 いい、それはいい。だけど……俺はこんなところで死にたくない。

 普通に生きて普通に死ぬまで、俺は人生を謳歌したい。まだまだやりたいことがある、やりのこしたことがある。

 だから、俺は……まだ死ぬわけには行かない。

 生きたいんだ!


「ぅ……うぅ……はっ!」


 眩い光が見える。おお、見える。

 白い天井が! 知らない天井が!

 痛い……身体が痛い。でも、動かない。だけど……


「俺は今、猛烈に生きている!」


 死ぬ淵から俺は生き返った。

 一回目の生き返りだった。





 一回目というからには二回目がある。

 病院から、俺の担当の先生から俺への一言、


「もう二度と自分の足で立つ事はできない」


 衝撃過ぎた。あまりにも驚きすぎて、その日一晩は口が閉じなかった。顎が外れるほどというのを経験した瞬間とも言える。貴重な体験だ。

 その体験は一晩寝て起きれば終わっていて、自分の足で立つ事ができないという現実を思い知る事になる。驚きは……無いわけがない。だが、同時になるほどとも思った。

 確かに、足は全く動かない。確かに、足からは痛みを感じない。確かに、足は……存在しなかった。

 正確にはある。在るが有るだけ。使用不可。行動不可の限界突破。全く持ってあるという感覚すらも無く、あると分かっても動かせるという認識は無い。


「あれだ……理解できなくても、納得するしかない現実ってやつか」


 ははは、と空笑い。もしくは空元気を振り絞って笑う。盛大に。大袈裟に。

 自分の笑い声と共に聞こえたのは啜り声。親の……母さんと父さんの涙を流し、声を出して泣いている声。

 俺は足をなくしたのを知って泣く事はできず、親は足をなくした息子を見て笑う事ができなかった。

 その日、病院中は笑い声と泣き声で満ちていた。

 目を覚まして三日目。

 笑いに笑った日の後は、すごく清々しい気分だった。なんだろう、毒が全て抜け切ったというべきか、それとも心の整理がついたというべきか。あるいは……全てに決着がついたというのかもしれない。

 俺の心はここにきてすごく落ち着いてた。まさに無我境地。悟りを開けた気がする。今なら神様の声が聞こえても可笑しくないし、明日には孟華教なんていう、俺の名前がついた新しい宗教が設立してもなんら不思議じゃない気がする。


「よし、新しい神様にでもいっそなってみるか」


 足の無い神様。神様というよりもまるで幽霊みたいだ。

 実際には足があるが、あってないようなもんなのである意味では幽霊みたいなものか。生への執着からこの世に残るという意味だと、まるで幽霊そのものみたいな存在だ。


「実際、亡霊だったりして」


 それはそれで面白いな。この病院の怪談話になって、未来にも語られるのなら……なるほど、それなら死んだ後の世界にも魅力があるかもしれない。

 でも、簡単に死ぬ気は無いけどね。

 太陽が空の上、遙か上の真上に達する頃になると、母さんが面会に来た。

 泣きながら謝ってきた。

 母さんが何故謝るのかわからない。代わってあげられるなら代わってあげたいと何度も言いながら、泣く。

 気持ちは……理解は出来ないが、分からなくもない。

 それなら、今この母親を元気に、昔のように茶目っ気たっぷりの母親に戻すには俺が一肌脱ぐしかないだろう。


「大丈夫だよ、母さん。俺は生きてるから。こんな状態でも生きてるからさ。人間生きてればなんでも出来るって、そう言って教えてくれたのは母さんでしょ? だからさ、泣き止んでよ」


 よりいっそう泣き始める母。俺の足だった物に、必死にしがみつきながら撫でながら泣く母さん。

 病室が個室でよかった。もし、これが個室じゃなかったら、母さんの本来の姿じゃない姿を見せる羽目になってたから。母さんには、是非とも元気な姿を皆に振りまいて欲しい。


「……うん! もう大丈夫。ごめんね、もか。慰めに来たはずなのに慰められちゃったね。ふふ、いつからもかこんなに男気溢れるようになっちゃったのかな? 今のもかはお父さんより少し格好いいよ」


 さっきまでの泣いている姿とは打って変わって、いつもの母さんの姿がそこにはあった。

 もう大丈夫とは、俺のセリフだよ。

 これで全ては元通りとは行かなくても、俺は大切な立ち上がるための足を失ってしまったけれども、元の暖かい場所に戻ってくれたのだから。

 やっぱり生きているって素晴らしい。

 改めて自覚した。

 足が無くても出来る事はたくさんある。

 そうだ、小説を書くのもいいかもしれない。このきっかけを利用してみるのもいいかもしれない。そう考えれば……うん、あながちこの経験も無駄じゃないようにも思える。

 じゃあ、明日からは……

 今後の人生計画を寝ながら考え、夢を見る。

 人生生きていればなんとでもなる。





 俺が都合よく、前向きにポジティブに人生を考えていたときに、俺に会いたいという人が面会にやってきた。

 若い青年。下手すれば俺と変わらないぐらいの人だった。

 俺の乗る車椅子を乗せて俺と彼は屋上で話す。お話。それは和解の為のお話なのか、謝罪の為のお話なのか……

 彼は俺を轢いてしまったトラック運転手だった。トラック運転手だった人だった。

 彼の謝罪を俺は受け入れ、いつのまにかお互いの人生を語り合っていった。

 こうやって人に自身の短い人生、語るほどにも値しない人生を語るとちょっとした感傷に浸れた。どんなに短くても、やはり自身の人生とはこれは中々に興味深いものだ。

 興味深いといっても、俺は彼ほど壮絶な人生ではなかった。

 普通に友達と笑い、家族と泣き、仲間と戯れた普通の人生。しかし、そんな人生こそが俺の好きで、生に執着する理由だ。

 彼の人生は……俺が語ることは出来ないような人生だった。俺のような普通とは程遠いような、そんな人生だった。

 だからと言って、俺は人の人生に同情したり、同情できるような高等な生き方はしていない。なので、黙って聞くしかなかった。


「僕は……僕は! どんな思いであの親元を離れたかは分かるまい? そしてようやく職に就けた! そう、これでやっと普通の人生が歩めると思った! なのに! なのに!」


 途中から空気が怪しくなったのには気付いた。だけど、彼のその言葉に、語りに口を挟むことはできず。結この嫌な空気を甘んじて受けるしかなかった。

 どうすればいい。なんか、なんかとてつもなく嫌な予感がする。

 逃げ出したい。誰か、他の人が傍に来て欲しい。このまま二人といると俺が──


「君が……君がいたから!」


 体が強引に彼に持ち上げられる。

 ああ、足が使えない事がこんな所に弊害がでるなんて、思いもしなかった。

 これじゃ、俺は……


「ごめん。でも、もう限界なんだ……」


 ひゅーん、どしゃん。


 ああ、またこの音だ。

 こうして、俺は二回死んだ。





 二度あることは三度ある、なんていう言葉は小学生でも知っているだろう。つまりはそいうことだ。

 死ぬ事が二度もあれば、生き返ることも二度あった。それだけの話。ただ、今回は生き返った先がこれがなんともまぁ……不思議だ。

 俺が生きていたのは確かに、平成の日本。戦争なんていうものは現代人には遠く感じ、目に見えるお金という価値に右往左往され、人生を左右されるそんな世の中だったはずだ。俺はそんな世の中に、それなりに愛着も沸いていたし、好きだった。

 その現代の言葉にはお金が全てじゃないという言葉があるように、いや言葉通りにその通りだ。

 友情? 愛情? 深愛? 慈愛? なんでもござれ、目に見えない形なんてものはいくらだってある。

 もちろん、その目に見えないものはこの古代のローマにだってあるが……。むしろ、目に見える物が難しい、なんだあの抽象的な文字は。いや、文字といえるのか? 否、少なくとも俺の中の概念では文字とは言えない代物だ。

 なんだ、この生活環境は。ネットなんてものは存在しないし、まして平和なんてものは無縁に近いじゃないか。

 健康なんてものが存在するのか? 埋葬というものは存在するが、俺は死後の事より生きている今を重視して欲しい。

 こんな生活で現代っ子育ちの俺が生きていけるのか?

 生きている。生きていけている。


「そうか、生きてるのか……」


 どんな形であれ、俺は生きているのか。

 なら文句は言うまい。いや、文句は言うがそれこそたらふく愚痴を呟くが、生きてみせようじゃないか。何、これも貴重な体験だと思えば、何のその。

 人間生きていればやれないこともないし、どうとでもなる。生きていれば何でも出来るのさ。

 そう決意したのは過去に逆行して、生まれ変わってから19年が経ったころだった。

 今回は心にけりをつけるのに多少時間がかかってしまった。

 こんなに時間がかかってしまったのは、この世界に順応するためじゃないくて、かつての自分と家族との別れとの心の整理に手間取ったから。

 やはりあの愛おしい家族と別れたのは普通の人として、かなり心に来るものがあった。

 しかし、そんな苦労は意味があったのかなかったのか。この慣れ始めた生活すらも終わりを告げることとなる。

 俺の住んでいる村から丸ごと、まるで存在が魂が吸われるかのように存在が消えてなくなろうとした。

 なんと言うべきか分からないが、言葉にするなら


「な、なんか……存在が、自分という存在が吸収され……て、い」


 二度あることは三度ある。それは当然死ぬ事にも当てはまったという事だ。

 しかし。だがしかし、それは……


──生きたい? まだ生きたい? どうしようもなく生きたい?


 同時に生き返る事にも当てはまった、はまってしまったという事だけの話だ。


──俺はまだ死にたくない! 







まだまだ序の口。
理想郷に出しても大丈夫と判断されるまでここで下地を作りたいです。
タイトルとかも決めないといけないですね……
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灼眼のシャナ二次創作SS(タイトル未定 オリ主) 第二話 

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 視野は相変わらず見えないが、何かに包み込まれている感覚が分かる。これだけで十分に自分が死んでいないことを自覚できた。もしかしたらこれすらも幻想で、現実離れした体験であり、実は天国への導きなのかもしれない。

 どのみち経験した事のないような感覚。判断のしようがない。

 温かい炎に包まれたような感覚? 実際に包まれたことはないが。炎に包まれるなんて激情でとてもじゃないが普通の人なら耐えうるものじゃない。

 なら温水? まるで日差しに暖められた海に沈んでいる心地よい感覚だろうか。こっちのほうが現実味がある。


──ねぇ、生きたい?


 この声を聞くのは何度目だろう。さっきから頭の中に聞こえてくるこの声は一体何なのだろう。

 ただ一ついえることは、その問いに答えることだけ。


──生きたい? まだ生きたい? どうしようもなく生きたい?

──生きたい! 俺はまだ生きたい! まだこの世界に未練がある! やりたいことがある! やってみたいことがある! だからまだ……俺は死にたくない!


 心の底からの、それこそ俺の中にある本能のような根本的なところからの願い。

 生きる。

 別に長生きじゃなくてもいいが、すくなくとも普通に生きて、普通に死ぬぐらいの人生は送りたい。

 一度目の死は不慮の事故

 あんな死に方なんて嫌だ。理不尽極まりないじゃないか。俺が何か悪い事をしたのか? いいやしていない。ただ普通にバイクに乗って普通に法律を守って、丁寧に生きていた。

 それを一瞬で、情け容赦なく俺の命を捥ぎ取るなんて……死んでいくなんて嫌だ。

 二度目は殺された。

 自身の人生の不条理に泣いた青年が。せっかくの普通が手に入る直前で壊れてしまった、壊してしまった青年が。その原因たる俺を屋上から突き落とし、俺を殺した。

 なんだよそれ。俺が一番不条理じゃん。勝手に巻き込んで、勝手に殺して。そんなの……誰も救われないじゃないか。

 俺を殺した青年(犯人)は、この後人を殺した罪を問われることになるだろう。自身の人生を棒に振るだろう。俺に限ってはすでに亡き命。そもそも救われていない。俺の母さんや父さんにしたって、青年の家族や友達にしたって……救いが遠すぎるじゃないか。

 三度目は謎の死。

 わけが分からん。その一言だ。

 何故に時代をトリップして慣れない環境で生きていかなくちゃいけなくなるし。身体は小さくなって、今になってようやく前と同じ年齢の19歳になったばっかしだし。

 それでもようやく、色々とけりをつけたのに、今謎の死を迎えようとするなんて。

 どちらにしろ、俺の今いるこの場所は、ローマ帝国の最後の残りかすである東ローマ帝国。まもなく滅ばされるから死ぬ可能性はあったにしろ、もう少し長生きしたかった。

 だからといって、謎の死なんて洒落にならないが。

 もう理不尽に普通じゃなくて死ぬなんて懲り懲りだ。

 だから、俺は普通に死ぬ為にも。いや、これでは目的が変わってしまう。普通に生きるためにも、俺はまだ死にたくない!


──なら契約成立よね


 その瞬間だった。身を包んでいた炎(海水)が、身の内へと入ってくる。中に入っていたはずの何かが、洗い流されていく感覚がする。それは人として何か大切なもので人というのに決定的なもののように感じるが、それを感じたときには綺麗さっぱり洗い流された後だった。

 その後、そこから溢れるように出て来たのは今まで感じた事のないもの。もしかしたら、人はこれを力と呼ぶのかもしれないものだった。


「よろしくね。私は``青嵐の根``ウェルパ。紅世の徒にして、大きな力を持つ王よ」


 今度は頭の中に響くのではなく、耳から聞こえてきた。その音の元は、この村の住民である事を表す首飾りからであり。その首飾りには似つかわしくないような、光る球がついていた。


 俺はとっさに悟った。

 俺はもしかしたら悪魔と契約してしまったのかもしれない、と。

 でもまあ、それはそれで貴重な体験。生きているという事を実感した瞬間でもあった。





◆  ◆  ◆





 西暦約1400年。約というのは、詳しい日時が現代的に考えていまいち分からなかったから。でも、ウェルと契約して、その後比較的すぐに東ローマ帝国の繁栄が終わったのだから大体そんなもんだろうと予想した。

 三度目の生き返りにしてついに、俺は人間じゃなくなった。


「そもそも、二度目の生き返りの時点で人じゃないよ? 普通過去の世界に来るなんてありえないし」

「でも、人の形してたから問題ない」

「なら人の形、というのなら今もそうよ?」

「それなら変な力は持たなかった、とか」

「それも怪しいかな。もしかしたらその変な力、存在の力を人としてはおかしいほどに持っていて、過去に行っちゃったとかも」

「それを言い出したらきりがなくない?」

「それもそうね。そんなのはどうでもいいことなんでしょ? モウカからしたら」

「生きていれば十分」

「……まあこの世界で生きていくのにも、それなりに大変だと思うけど」

「その為にも色々と教えて欲しいな」

「手っ取り早いのは自身を磨いて、素の力を挙げることだけど。私の特性を考えみるに自在師の方がいいかもね」


 人と紅世の王と契約することによって成り立つ『フレイムヘイズ』へとなった。この世に存在する根源的なエネルギーである、存在の力という異能を操り、寿命だけで考えれば不老不死に近い元人間。

 それがフレイムヘイズ。

 しかし、ある意味では他の代名詞もある。それは──復讐者


『フレイムヘイズになる人は大抵は、紅世の徒に自身や親しい人を殺された人たちが多いの。つまりは、やられた紅世の徒に復讐する為にフレイムヘイズになる。たまに、それとは違う目的の人もいるけどほとんどが大抵これに当てはまる。

 だからフレイムヘイズは復讐者。さあ、貴方は貴方をこんな風にしたあの徒をどうしたい? やっぱり復讐したい?』


 契約したばかりの頃、まだ俺の名前をウェルに教える前の話であり、ようやく自分の状況が分かり始めたときに聞いた言葉。

 この言葉を聞くと、どこからか沸々と暗い何かが、もしくは熱い何かが湧き上がるのを感じた。


『いいや』

『……え?』

『復讐なんて崇高な真似は俺には出来ない』


 復讐を実行できる人はすごい、と本気で思ったことがある。崇高なという言葉そんな事を思ったことがあるから出た言葉だ。

 俺はただ生きていく事だけにも必死なのに、復讐だの恨みだので他の事に気をとられながら生きていくのはすごい。まして、復讐をすれば自分も恨まれることになるのを知っていながら、出来るのがすごい。

 復讐は復讐を呼ぶというけれど、それは確かに人の強さでもあると思った。同時に弱さでもあると考えた。

 だけど、俺には到底出来ない。やはり、普通に生きていくにはそんなもの必要ない。まして、復讐なんて現代チックじゃないし、漫画やドラマの世界だろうと考えてしまう。


『そんなことないわよ。私が力を貸すし、あの程度の徒なんてこの小規模な人を喰ったって力は変わらない。むしろ、逆効果。阿呆らしい行為。今の貴方なら十分に復讐できるわよ』

『それでも、だよ』

『そう、なら別にいいよ。私が貴方を選んだのだし。それで、じゃあどうするの? このままじゃまた襲われるよ?』

『そっか、なら……』


──逃げちゃえ


 これが``不朽の逃げ手``の一回目の逃避行だった。


「逃げるための自在法とかは?」

「いいと思うよ。そういうのって意外と応用きいたりするしね」

「あとは逃げ足を早くする為に鍛錬、かな?」

「結局そこに繋がるんだ……でも、いいと思うよ。結局最後に頼れるのは存在の力のような不思議な力より素の自分だろうからね」


 これからの方針が決まった。

 普通に生きるためには、まずその基盤を作るために自身が強くなる。どんな理不尽(徒との戦い)に遭っても、生きられる強さを、跳ね返す力を手に入れる。

 全てはまずそこからだ。





 と、都合よく修行イベントをこなし、よっしゃー! これで平和に生きれるぜ! 何て事になればよかったのに。心底そう思ったのに、事態はそうも行かないらしい。

 フレイムヘイズになって一ヶ月ほど。長生きすればきっと一ヶ月なんて単位は小さく感じる様になるのだろうけど、今の俺には十分に長い時。

 この一ヶ月でやってきた事といえば、緻密な自在式を計算したり編み込んだり、自在法を自由に使えるようになるためにそこらじゅうを駆け回ったり。人間だった時よりも愉快爽快に走れるので、思わず気持ちが高ぶったりもする。

 特に雨の日はすこぶる調子がいい。これはおそらくウェルの特性から来るものだと思われる。

 しかし、世の中物騒だ。盗賊が出るのはあたりまえ(しかし、盗賊が貴重な資金源だった)、それ以上に、食べ物や衣服を求め町に出ると、最近都市伝説をよく聞く。雨の日に笑いながら駆ける悪魔がいるとのことだ。悪魔ってもしかして徒じゃないだろうな。

 もしそうなら、俺は早期にこの町を離れたい。

 多少の徒なら打ち倒せるとウェルは言うけれど、やはりなるべくなら戦闘は避けたい。それでも避けられない戦いというのはここ数日よく起きている。

 でも、大体そのときは頑張って習得したウェル特有の自在法『嵐の夜』を使って撹乱の後、戦闘区域から脱出というのを繰り返している。

 『嵐の夜』は、その名の通り空間に雨嵐を引き起こすことによって、存在の力の在り処自体を闇に紛れ込ます自在法。これを応用すれば奇襲なんて真似もできるだろうが、それをするぐらいなら逃げる。尻尾を巻いて逃げる。

 もし、奇襲して何らかの攻撃察知能力なんて持ってたら危ないじゃないか。そんな事を考え出せば、いくらだって思い浮かんでしまうのは仕方ない事だけれども、しかし保身的な日本人な俺はどうしても考えてしまう。

 そんなわけで、何度も徒をやり過ごしての一ヶ月だった。 使える様になった自在法は『嵐の夜』と他一点のみ。あとは存在の力をある程度自由につ使えるようになった程度。とてもじゃないが巨大な力を持つ王と戦えるような力じゃないと思う。

 ああ、早く平和に生きれるような力が欲しい。

 にしても、あの徒は変に語尾を延ばして奇声をあげながら近づかないで欲しい。今のところは逃げれてるけど段々追い詰められている気がするし。












 最近、``紅世の徒``はあるフレイムヘイズの噂で持ちきりになっている。正確には、``紅世の徒``の巨大組織である``ともらいの鐘(グーテンクロッケ)``と``仮装舞踏会(バス・マルケ)``の組織の中の一部の徒が、である。

 この二つの組織はかなりの数の``紅世の徒``を管理、もしくは臣下に置いている為、自然にここからでた噂話はこの世に来ている徒の話題となっていく。

 そして、その噂とはあの教授にストーカーされている悲劇の新人フレイムヘイズの話だった。


『若いのにかわいそうに』

『あの教授から今だ逃げられてるってすごいよな』


 そんな会話がそこらから聞こえてくる。

 その新人フレイムヘイズに他の徒が近づかないのは、教授が彼を付けねらっているからだ。関わらずに済むなら関わりたくない。これは、フレイムヘイズにしろ``紅世の徒``にしろ、大半の考えだったりする。

 さて、ここで注目されるのは教授が何故彼を狙っているかだ。

 新人といえどもフレイムヘイズ。徒の中にはその理由だけで襲うような輩も多いが、当然彼はそんな理由程度では動かない。むしろ、そんなんで動いていたらこの世界のフレイムヘイズの大半はとうに消えてしまっているだろう。

 それほどまでに教授は強く、そしてあらゆる意味で鬼畜だった。

 だが、その噂もある程度時が経てば自然と消えていった。彼らは議論の結果として、あの教授の事だから考えても無駄という結論に至ったのだ。

 当の教授はと言うと、興味の対象だからという理由に過ぎない。しかし、その興味の対象はフレイムヘイズの彼にあらず、``紅世の王``である``青嵐の根``ウェルパにあった。

 ウェルパの王としての特性である、``宝具探し``を利用できないかと考えていたのだ。徒が用いる宝具には何かと面白い能力が多い。また、とある機関に頼まれているあの宝具を探すのにも適している。

 後者は完全にダンタリオンにとってはおまけのようなものだが、前者は完全に興味の対象に当てはまる。だが、付け狙われているのがあのダンタリオンというのは、別の意味で救いでもあった。

 これがフレイムヘイズに固執するような徒なら追い返すことも無駄な事となってしまう。

 ダンタリオンは他に興味のあるモノが見つかれば、すぐにそちらへとまた移り行く存在。全ては己が欲望のままに。

 結局、彼にして彼女の二人で一人のフレイムヘイズは、一週間狙われたの後、ようやく開放される事となった。

 その理由は彼がとある計画をふと思いついたからである。後にその計画は『強制契約実験』と呼ばれるようになる。この実験がまるで大きな戦のちょっとした前触れに見える様になるのはそれよりもさらに後の話である。







この回で好感触が得られた場合、添削編集してから理想郷に投稿してみようと思います。
なのは以外の二次創作を投稿するの初めてだから今から緊張してしまいます。

誤字やその他の指摘、感想などありましたら気楽に教えてください。


以下コメ返

>通りすがり様

ここまでは結構早く更新できましたが、この先は多少のんびりペースになると思いますので、ゆったりとお待ちいただけるとありがたいです。
シャナの二次をまともに書くのは初めてなので、上手く展開できるように最大限の努力をさせて頂きます。

忠告ありがとうございます。多少修正して図々しくないようにしてみましたが、どうでしょうか?


> 様
全ての謎は少しずつ明かされるという事で。
次話も読んでもらえると嬉しいです。

皆さんのコメントが心に響きました 

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世界で一番幸せなSS作家かもしれません。

タピです。

励ましの言葉、激励の言葉。
本当にありがとうございます。

涙が出ました。というか、泣きました。
本当に、嬉しかったです。

すみません、SS作家なのにありきたりな言葉しか出てきません。

……

こういう時って何を言えばいいんでしょうかね?
感謝の言葉でしょうか?
でも、それじゃ安いような気がしますね。

なので、ここは一つ改めた事を言わせて頂きますね。

消さないで、という声。確かに聞きました。
本当に嬉しい言葉です。
自分に余りあるその言葉が、自分なんかがこんな言葉を貰っていいのかなどと思ってしまいました。

でも、もらえた。

もう、SSを書かずに人生を歩む事ができないかもしれないですね。

なので、理想郷からの撤退は止めました。
完結してしまった今、誰も読まないだろうなどと思っていたのですが、今も読んでくれる方がいるなら消せないですね。

本当に……嬉しい言葉です。

どうしましょう。
このままずっと感謝の言葉でずっとループしてしまいそうです。

なので、ここまでで。あとはコメ返をさせて頂こうと思います。





コメ返


>拍手の方
批判は怖くないですよ? 怖いのは無反応ですから。


> 様
すみません。
しばらく更新できない可能性がありますが、それでも気長に待ってもらえると嬉しいです。


>ロード様
>>自信を持っていい作品だと私は思いますよ。
そう言って頂けると嬉しいです。でも、作者は基本的に胸を晴れないのでなかなか自信がつかないんですよね。
これでいいのか? 本当にいいのか? と疑問ばかり強くなってしまいます。

>>ってか「ありのまま」の続きが投稿されてる!!大好きな作品なので嬉しいです
その言葉が一番作者が嬉しいですね。
この後の更新は完全に未定ですが、それでもよろしかったら気長に待ってもらえるとありがたいです。

>>理想郷の作品消すのは個人的にはやめてほしいかな・・・。
未だに読み返していただけているとは・・・作者としては本当にもう・・・号泣ものです。
ひとまずは消さずに残しておきます。例え消す際でも、こちらに移る形になるようにさせて頂きます。


>あみぞん様
>>自分は作者さんの作品好きですよ。ちょっと起承転結の結の部分が物足りないな、と思うことはありましたが雰囲気がほのぼのしてていい作品ばかりです。
結が物足りないとは、作者も常々思っていて、何とかしようと思っている部分です。いやはや、やはり見抜かれますよね。なんとか上手くまとめられるよう精進します。
いい作品と読んで頂けるのは最高に光栄な事です。ありがとうございます。

>>感想書いてない自分が言うのもなんですが自信をもってもいいのでは?
別の奴はすでに削除しちゃったんですよね。完全に創作意欲がわかないので。
ただ、PVは最初にしたらかなりあったので、見てくれる人は多いと感じながらもやはり自信が持てませんでした。
自信・・・作者にはどうも遠い存在ですね。

>>作者さんの作品が見れなくなるのは寂しいです。
・・・泣きました。この言葉で泣きました。
作者にとって、何事にも変えがたい言葉でした。

>>理想郷のものはそのまま残しておいてほしいです。やはり好きな作品は忘れた頃に読んでみたいものなので。
は、はい!
上記の通りにとりあえず、残させて頂きます。
少なくとも完全に消し去る事はせず、何らかの形で残れるようにはします。


みなさまの暖かな声援ありがとうございます。
また、コメントはなくとも日記を見て、心の中だけでも応援してくれた方もありがとうございます。
本当に・・・幸せを感じました。








追伸
まことに勝手ながら実行中は前回の雑記で言った通り、スランプというか調子が戻ってくるまで休止しようかと思います。
とはいうものの、たぶん自分のことなので休止期間は長くても三ヶ月程度。
更新が今までより遅くなるという程度の違いになります。

本当に作者の身勝手な都合なのですが、ご理解のほどをお願いいたします。
またこの場にて謝罪のほうをさせて頂きます。

申し訳ございません。

ただ、決してここで投げ出すわけでは無いのでそこはご安心をください。

お知らせですよ! 

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どうも絶賛絶不調中のタピです。
ブログではお久しぶりです。

小説のほうは細々とマテリアル書いたり、シャナを定期更新していたりします。
お読みいただいていたらありがたいです。

マテリアルは『にじふぁん』にてです。間違いなくー。

tapi@shu

というお決まりのPNで書かせていただいております。






お知らせです。
今年のコミケ参戦(お客側だよ)に決定しました!
それだけではありません!

26からの電気街祭りも参戦いたします。


さて、そのコミケを筆頭とするイベントを目の前にして、オフ会を開きます。

12月18日土曜日

秋葉原にてオフ会を開く事になりました。

自分も企画者の一人です。(と言っても二人だけですけどね)

詳細は参加者の希望がある程度決まってから決める予定です。

なのはファン大歓迎

初心者大歓迎

もちろんなのはが知らない人も大歓迎です。
初心者の方も大丈夫。自分も人見知りでしたが、同じ趣味の人と会うと意外と仲良く慣れますよ?
自分はその他のアニメ、エロゲ、ラノベ、漫画などわりと広い範囲をカバーしているので大抵のお話は出来ますしね。
声優もおk


ということで、是非ともみなさんでワイワイとしながら交友関係を広げたりしませんか?

突然の参加も大丈夫です。ドタキャンもおk
参加してくださる方は、自分の日記にコメや拍手。
メールを送ってくださいね。


連絡先
メール:amaterasushuji@以下ヤフー
スカイプ:tapi○○
○○には54とお入れください。
参加をお待ちしております。

今年一年の総まとめ 

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気付けば12月……時が過ぎるのも早いものですね。
タピです。

更新している日はなんと言ってもクリスマスとかいう、どっかの宗教イベントの日ですが、関係ありませんね。
日本は無宗教大国なんで。

それはさておき、この日記が今年最後となります。
このブログには数多くの作品を載せたり、色々と不安や悩み、そして歓喜の心を綴ったりしました。

新しい出会いもたくさんありました。

その多くが、というよりもほぼ全ては『魔法少女リリカルなのは』関連です。
自分がSS作家として再び活動したのも今年でした。

今まではただの趣味として書いて、自己満足だった物を理想郷を始めいろんなところで読者の方に見てもらい、
作家としての質を高める年になりました。


自分は良作を書けたでしょうか?


この質問を投げかけると、多方面から十分面白いという言葉や、良作だよと言う言葉を聞きます。
初めてその言葉を聞いた時は涙が出るかと思いました。

自分個人としてはもっと、もっと上を目指して行きたいと思っております。
向上心が人間の最大の糧ですからね。

また作家としてだけでなく、なのはの一ファンとしての交流も増えました。
ブロ友がいい例です。

数多くの物を得た一年。
おそらく成長できた一年だったのではないかと思ってます。

今年のSSの更新は後一回出来るかどうか、というところなのでこちらにて挨拶させて頂きました。
まだ今年は終わっていませんが、どうかよいお年をお過ごしください。


ちなみに、
自分は26日の電気街祭りから、29日のコミケまで全日参加しております。
詳しくはよくツイッターなどで呟いているのでそちらより、ご覧ください。



では、みなんさん一年間ありがとうございました。
自分の小説を読んでくださった方々、どうか来年もご贔屓にお願いします。

東京都青少年健全育成条例改正案について語る 

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さてと・・・そろそろ語る時がきたようだ。

タピです。


今回はタイトルの通り
『東京都青少年健全育成条例改正案』のお話をを取り上げたいと思います。

たまには真面目に語るのもいいと思いますしね。
さて、この条例についてもはや知らない人はマイミクの中にはいないと思いますが、
どのような内容か簡単にご説明いたします。

この条例は、
マンガやアニメの過激過剰な性表現に対する規制を主とする条例である。

この過剰過激というものが「どれほどのもの」かも分からないために余計に混乱が乗じているといえる。
この過激過剰という表現の仕方が、当てはまるものの定めや規律を作るのは非常に難しい問題である。
そういった感性的なものは、個々人の意識や考えによって変化する為、
とりようによってはありとあらゆるアニメやマンガが規制の対象となりえてしまう。

このように条例や法律などと規律を定める際にはその明確化が必要とされるのに、
それができていない、むしろ不可能であるのに都はこれを条例とすることをほぼ決定付けた。

さて、まずはこの条例を作ることになった理由はいくつかある。
表向きは、近年性犯罪が増え、その増えた原因となる、なっている可能性がある過激な表現のあるマンガやアニメを規制しようと考えた為だ。
裏向きとは、この規制を成り立たせようとしている人物の思惑である。

第一にオタクというだけで、偏見を持つ物が都議会内にいるのはすでに証明されている。
これは、前回否決された時に小さい子に対して愛、いわゆるロリコンというものに対して、病気だという発現をしたことからもとれる。
無論、この小さい子に対しての愛というのは、確かに中には恋愛感情を含むものもいるだろうが、しかしそれが悪い事かといえば、そうはいえず。また、それが病気かといえばそれも言えない。
常識としてずれているかもしれないが、ただそういった感情がマンガやアニメが原因だというのもまた証明さえ出来ない。
それこそ個々人の完成であり感情のため規制しようがしまいがどうにもならない問題である。

事実、とある国では同じような規制により性犯罪が増加した国が多々ある。


となると、この規制はいくつか見当違いのものに見えてくるのが分かるだろうか?

性犯罪の抑制の為のマンガやアニメの規制が、マンガにアニメ自体には性犯罪を勃発させる効果があると言えないのではないか?

もちろん、これは証明されていない。
あるともないとも証明されていない事ではあるが、つまりない可能性もある時点で見当違いにも近い。
あるという可能性上、やる意味は多少ながらあるのかもしれないが、むしろ規制によって増幅する可能性もあるのだから、無理矢理に進めるまでの事では無いように見える。

ここまでが条例自体の必要性について。
次は問題点についてだ。

この条例、『自分は都民じゃないから』や『オタクじゃないし、マンガやアニメは関係ない』とは言ってられない問題である事を知ってほしい。

現在日本経済において、オタク関連の経済的効果がかなり大きいことは周知の事実だといえよう。
代表例といっては、けいおん! の楽器関連の売り上げのみならず、コミケを代表とするイベントにおいても経済効果は大きい。
もちろん、海外に進出しているマンガやアニメだって多数あるのだから国際的に考えても影響力や経済力は大きいといえよう。

もし、この文化が規制されてしまったら?
まず間違いなく経済力は低下するだろう。これは直接的な不景気を表す結果となる。

しかし、一部では
「でも、規制するといっても過激なものだけだし、普通のものは関係ないんじゃない?」
という疑問も浮かぶものもいるだろう。

答えは、関係ないなんてありえない。
むしろバリバリ関係ある。


一例として、すでに角川や集英社を代表とする大手出版社が、都主催のアニフェスへの参加をボイコットを公言している。
これは目に見えて、悪影響を及ぼしているのが分かる一例だ。

他にも、これからの発展にも影響が出る。
規制により作家がのびのびと描けなくなる可能性が出てくる。
また、今まで出版されていたものやこれから出版される物が18禁設定されたらどうだろう?
これだけで読者は確実に減るのがありありと見える。
中には18禁というだけで買わないい人がいるのだから当然の反応であるし、
逆に18禁を求めたのに求めたのとは違う物が入ってくる事もあるので、求める側として邪魔極まりない。
18禁というのだから、周りから求められるものもそれ相応の物と化さなければならい必要性だって出てくるかもしれない。
そうなれば、ますます作品が減り、読む人が減っていくのは分かりきっている事だ。


このように経済的な面からの打撃を与えかねないこの規制は、実は関係ないと思っていた人たちにも影響を与える可能性があるのである。


ちなみに、この規制は小説や実写を対象外としている。
その点での批判もあるのも事実だ。



他にも細々としたものがあるが、これでなんとなくは分かって頂けただろうか?

要点をまとめると

・条例自体に無理がある
・確固たる基準の定められない条例
・経済の衰退の危険性がある
・文化の衰退の可能性もある
・性犯罪の増加に繋がる可能性がある

と言った事になる。

もちろん、これらについて述べた俺自体が批判派の人間なので肯定派の人はこうじゃない、と思うだろう。
現実として、この条例を是としている人の多くは小さい子供を持つ保護者が多い。
保護者は皆
「こんなものは子供に見せられない」や「子供に悪影響」などと言う。
まぁ彼らの場合は
国民的アニメのクレヨンしんちゃんを批判したり、
銀魂を単なる糞マンガと思ってる人が大半なので、それが正論なのかといえば疑問を抱くが。
しかし、これもまた一つの主張だ。

だが、俺に言わせて貰えば、

「だったら見せなければいいだけの話」

と思っている。
この条例自体もたぶんに偏見や独断や極論が混じったものであると思われるので、なんだかなぁという気持ちだが・・・



以上、東京都青少年健全育成条例改正案について語ってみた。

みんなにも意見や主張があると思うから是非とも聞かせて欲しい。


参照サイトとURL

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E9%9D%92%E5%B0%91%E5%B9%B4%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%85%A8%E3%81%AA%E8%82%B2%E6%88%90%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%9D%A1%E4%BE%8B(wikiより)

「ジャンプは載せる」規制抗議
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1438095&media_id=4

都青少年健全育成条例改正案:都議会委可決 漫画家・野上武志さんに聞く
http://mainichi.jp/enta/art/news/20101214ddm041010116000c.html

青少年健全育成条例改正案:都議会委可決 付帯決議で慎重運用要求
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20101214ddlk13010236000c.html

漫画の主要出版社、東京アニメフェア参加を拒否
http://woman.infoseek.co.jp/news/entertainment/story.html?q=20101210_yol_oyt1t01028

ツイッターより、
都議会傍聴者の方の発言など

最近書いてないな・・・なんてことはないんですよ 

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奈々さんのライブに二日連続で行った今日この頃。
みなさまはどうお過ごしでしょうか?

ええ、自分はのらりくらりと早めの春休みが今日訪れたところで、テンションもやや高めなんですっ!

タピです。


とはいうものの、今日は一つお知らせを。



実行中の更新停止の話。
感想板でも謝罪をさせて頂きましたが、向こうの感想板に書いたとおりです。
実はその他にも理由がありますが……まあそれは些細な事、というか作者の問題なので、言いませんが;

本当にすみませんでした。

作者としてもできれば書きたいのですが、プロットもあり不可能というわけでは無いのですが、
自分にとってみなさまに見せて読ませるほどの作品が書けないと判断し、区切りをつけさせてもらいました。

投稿するからにはベストの作品を書いていきたいので……

とらハ版、なのはの二次創作ですが今後また書いていきたいという意思はあるので、また投稿する日があったら、
読んで頂ければ光栄です。

ありのままに─第1話─ 

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「今日からこの町が、私達の町よ」

「海鳴市ね。海が近くにあっていいね、母さん」

「そうね、冬は冷えるかもしれないわね」

ふふふ、と笑う母さん。
父さんが死んでしまってあまり笑うことがなかった、母さんがこの町についてすぐに笑った。
まぁ冗談交じりだったけど。

それでも、俺としては嬉しかった。
前の町にいたころは、笑いかけては何かを思い出して笑うのを止めてしまうことが多かった。

きっと、この町では再スタートできると思う。

母さんはここで新たな一歩を踏み出そうとこの町にやってきた。
その気持ちは俺も同じで、何が言いたいかというと、なんだかんだで期待するところがある。


「でも、何でこの町に来たの? 」


そういえば、この町を選んだ理由を聞いてなかった気がした。
俺としてはどんな理由でもいいんだけど、それでも一応は聞いてみるべきかな、と。


「なんでかしらね、風の赴くままって感じかしら」


それでは就職先がないじゃないか母よ。
はなはだ迷惑な話だった。


「冗談よ、母さんの古い友達がいてね、そこでアルバイトしながら探すのよ」


どっちにしろ就職先はないじゃないか。
仕事のない人が風の赴くままとか言うなよ。

しかも、就職じゃなくてアルバイトですか。


「この時代でしょ、アルバイトだって見つけにくいのよ?
それを考えたら、知り合いのところで優遇されてのんびりとバイトしながら、就職先を探せるのは天国だと思うわ」

天国は行きすぎなような気がするけど、まぁ母さんがそれで幸せを感じて笑えるのならそれでもいいかな。
それで生きていけるという前提があるけど。


「それなら大丈夫よ。住む所は確保できてるわ」


なんか引っかかる言い方だけど……
住むところはって、衣食住のうち住しかないじゃないか……
しかも、衣食住の中で一番難易度? が高い


「その通りよ、よく分かったわね。食事などはその古い友達がなんとかしてくれるって」


母さんの友達はとんだ迷惑じゃないのかな? それは。
見ず知らずではないにしろ、お人よし過ぎないかと思う。


「そうなの、お人よしなのよ。あそこは一家揃ってね。まぁおかげで私達は助かるんだけど」


一家揃って……まぁいいか。
俺が考えてもどうにもならないよね。なるようになるさ。

今はこんなにも笑顔を見せてくれるようになった、母さんに従うだけだね。

その一家には多大なる迷惑をかけるけどさ。


「じゃあ、まずはその古い友達、高町さんの家の人に挨拶に行こうね。家に行くのはそれからか」

「分かったよ。どんな家なのか気になるけど、お世話になる人たちに挨拶のほうが大切だよね」

「ホント、小学校1年生のわりにしっかりしてるわね、私の子って」

「母さんが頼りないからだよ」

「私の教育が正しかったということね」

「ああ、もう分かったから行こうよ」

「そうね、こんなところで親馬鹿してても仕方ないわね」



あれ、親馬鹿だったのか……
どこに親馬鹿の要素があったのかわからないけど。

ん? ということは俺が褒められた……のか?
そう考えると嬉しいような。


「あら、顔を真っ赤にしちゃって、そんなに嬉しかったの?かわいいわね~
まぁ行くって言っても、もう目の前なんだけどね」

「はやっ!てか、いつのまに!」


この母親はよく不思議なことをしでかすんだよね、全く。
俺が話に夢中になってただけだと思うけどさ。


「じゃあ、行くわよ~~」


そして、なぜそんなに張り切っているんだ、母よ。


「ぽちっとな♪」


そしてノリノリだね!


「はい、どなた様ですか?」


インターフォンから、軽快な声がする。
声を聞く限りでは女性のようだ。


「私よ、早くあけて」


すっかり上機嫌の母さん。
父さんが死んで暗かったころの母よ、帰ってきてくれ、元気な方がいいけどさ。

それほどまでにここの人に会うのは楽しみなのかな?


「あいちゃん?待ってたわよ」


声だけで誰か分かるってすごいね。
ん?あいちゃん?


「相沢愛子であいちゃんね。ありきたりよね~なんか悔しい」


どこに悔しがってるのか、いまいち分からないね。
普通の名前だからなのか? 普通のあだ名だからなのか?


「久しぶりね、お葬式のとき以来かしら? 元気だったって、元気なわけないか。
旦那さんは残念だったわね」


葬式……ああ、全然記憶ないからわかんないや。
でも、そうか、葬式に来てくれたってことは諸事情知ってるわけね。
だから、助けてくれるのかな。


「葬式のときはありがとうね。でも大丈夫よ。この町で何もかもリセットしようと思って来たんだから」


うん、あながち間違ってないけど、今までの思い出とかもリセットするつもりなのかな?
それは父さんとの日々も忘れると言うことじゃ……

やめよう。
母さんの言葉をいちいち気にしてたら駄目だ。


「その言葉聞いて安心したわ、大丈夫そうね」


安心しちゃまずいと思います。
突っ込みどころ満載でしたよ?


「立ち話もなんだから、中に入って頂戴」

「うん、そうさせてもらうね」

「すみません、お邪魔します」

「いらっしゃい、しっかりした子ね」

「当たり前でしょ?私の子よ」


あ、そこやっぱり威張るんだ。
俺としては嬉しいんだけど、なんていうのかな……考慮して欲しい?

発言はもうちょい慎重にね。


「そうだったわね、それにあの人とあいちゃんの子だもんね。ええっと名前は─」

「相沢竜也です。簡単なりゅうに、なりと書いてたつやです」

「そうだったわね。初めまして竜也君、これからよろしくね」

「いえ、こちらこそ。母さんと自分が世話になります」


これからお世話になる人だからね、しっかり挨拶しないとね。
それに初対面だからイメージもよくしないとな。

まぁそんなことを考える時点で無粋な気がするけど。


「母さん達だけで話してないで、私達にも紹介してよ」


そう言うのは、メガネをかけたお姉さん。
自分たちがいい加減に蚊帳の外だったので加わりたかったようだ。


「そうね、じゃあ、今度はうちの家族から紹介するわね。
あいちゃんは知ってるだろうけど、竜也君は知らないだろうから、私から挨拶するわね。
私は高町桃子よ、よろしくね。それで、私の横に座ってるのが士郎さん。私の夫よ」


母さんと古い友達なんだっけ、母さんもたいがい若作りだと思うけど、この人もまたすごいな。
そして、その旦那さんもまた……常人じゃないオーラを漂わせているし。


「じゃあ、今度は私ね。私は美由紀、高町美由紀ね。お姉ちゃんでも何でも好きなように呼んでいいよ」


さっきのメガネをかけたお姉さんだ。
陽気で明るい感じだね。なんかしゃべりやすそうな人だなぁ。


「じゃあ、次は俺だな。高町恭也だ、一応長男だな。よろしく」


ちょっと無愛想な兄ちゃんって感じだ。
それでもどこか温厚そうなかな?


「な、なのはは高町なのはって言います。よ、よろしくお願いします」


ちょっとおどおどしてる子だな~


「なのはは竜也君と同い年よ。仲良くしてあげてね」


しかも、同い年ときたか。
見た感じだと一番絡みにくいんだけどね。


「ついでにいうなら、同じ学校になるわよ」

「「え?」」

「だから、竜也も明日からなのはちゃんと同じ、私立聖祥に通うのよ」

「え、だってお金ないのに私立って、普通無理じゃない!?」

「あそこの理事長と知り合いでね、竜也の成績見せたら余裕でOKしてくれたわ。
しかも、成績が良い限りは学費はただよ!頑張ってね」


頑張ってねじゃないよ!
色々と突っ込みどころ満載だよ!
どれだけ人脈あるんですか!?母よ!

どんな知り合いだよ、全く。

前からそうだったけど、本当に謎の多い母だ。


「にゃはは、よろしくね、竜也君。私のことはなのはでいいよ」


さっきとはまるで違う雰囲気のなのは。
ちょっと陽気と言うか、元気な女の子って感じだ。
これなら親しくできるかもって、そうじゃなくて!


「あら、もう仲良しになったの?竜也君なのはのことよろしくね」


ああ、桃子さんまでか。


「じゃあ、挨拶もほどほどにして今日は帰ろうか、私達の家に!!」


なんで、この人の目はこんなにもキラキラしてるんだろう。
本当にこの間まで人生の絶望と言う雰囲気を発していた人だろうか……

でも、この町にはそれだけのものがあるということなのかな。

でも……うん。
やっぱり、母さんはこうやって無鉄砲で生き生きしているほうが、俺は嬉しいな。



「ああ、そういえば」

「どうしたの?母さん」

「うん、士郎さん」

「どうかしましたか?」

「息子の件、お願いしますね」


うん?俺のこと?


「ああ、はい、分かりました。でも、いいんですね?」

「とことん苛めてください!なに大丈夫です、この子は私と父さんの子ですから」

「そう言われると説得力がありますね。きっと立派な剣士にしますよ」


え?立派な剣士?


「あら、知らなかったかしら?貴方のお父さんは御神流の使い手の一人だったのよ?」

「は?使い手?」

「そう、歴代でも1.2位を争うほどだったのよ」


い、意味が分からない。


「だからね、貴方も剣士になるのよ!竜也!かっこよかったお父さんのように」

「は!?」

「にゃはは、頑張ってね。竜也君」

「ということだそうだ。頑張ろうな竜也君」


ということはどういうことなのだ!?

「明日は朝5時にここに集合な」


そうか、本当に今までの生活とはおさらばなんだね。

父さん、俺だけは貴方の存在を忘れないよ。
そして夜空を見上げる俺。

まだ、夕方で夕日だし、そもそも見上げたら天井だけどね……
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ありのままに─第2話─ 

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午前5時。一応言われたとおりに高町家へやって来た。


「おはよう、竜也君」

「おはようございます、士郎さん、美由希さん、恭也さん」

「はい、おはよう」

「おはよう」


三者三様はとはこのことを言うのかな。

「ところで、竜也君」

「はい」

「君は本当に御神流を習いたいと思ってるのかい?昨日は成り行きでああなってしまったが、やはり本人に意思が無ければ、な」


確かにその通りだろう。
やる気が無ければ意味は無いだろうし。

昨日は確かに母さんにあんなこと言われて半強制的に習うことになった。
自分の意思はほとんど無視だとしても、俺も別に嫌と言うわけでもなかった。

元より、父さんが剣術を使えたことにも驚いたが、
それ以上に今は亡き父さんの残したものの一つだと思い、興味がある。


「やります。これは自分の意思で」

「そうか。なら、教えてあげよう」

「はい、お願いします」


結局は教えを請うことになるんだな。
たぶん母さんも分かってて言ってたと思うけど。

にしても、剣術か、夢というかまさか教えてもらうことになるなんて夢にも思わなかったな。
昔はあんなに平凡な生活だったもんな。


「よし、まずは町内一周だ!頑張って付いて来い」

「え、あ……ちょっと」


この町に来てまだ一日だ。
町のことは全然知らないから、見失ったら一巻の終わりじゃないか!

それが小学1年生に対する教え方ですか!?
血も涙も無いですよ。

そもそも町内一周という時点で、かなりハードなんだけどさ。

そんな事を思いながらも、一応は頑張ってみる俺はすごいと思う。
見失わないように必死に食らいつく。


「はぁ…はぁ…」

「す、すごいな。結構本気で走ったんだが、付いて来るとは……」

「すごいね、まだなのはと同じ年なのに」

「ああ、予想以上だ」


伊達に父さんの息子じゃないですよ。
父さんと遊ぶとなぜかすごい体力使いますから。

遊んでもらってるはずなのに、遊んであげている状態になることもしばしばだったし。
なので、体力はそこそこあると思う。


「意外と基礎体力はあるみたいだな。じゃあ、次は道場で素振りだ。
まだまだ朝は長いぞ、はっはっは」


だから、それは小学1年生に対するトレーニングじゃないでしょ……
それでも、素振りってなんだか、楽しそうだよね。

ああいうのってテレビとかで見てたら、すごいかっこいいし。


「竜也君は刀……木刀を持つのは初めてか?」

「はい、初めてです」


家には木刀もあった気がするけど、振り回そうとは考えたことも無かった。
俺はどちらかというとインドアのはずだからね。


「じゃあ、まずは型からだ。こうやって……」

「こう……ですか?」

「そうだ。あとは、二人のように素振りをする」


道場の奥の方では恭也さんと美由希さんが素振りをしていた。

それを手本にか……
見ながら試行錯誤を繰り返す。
間違っていたり、改善すべきとこがあれば士郎さんが修正してくれる。


「うん、中々いい剣筋だ」


そして、良かったら褒めてくれる。
こういうのが理想の師匠というのかな。

褒められるとやる気が出るし、頑張れる。


「ハッ……ハッ……ハッ」

「よし、このくらいにしよう」

「「「はい」」」

「しばらくは今日みたいに竜也君に付きっ切りで教えるから、よろしくな」

「お願いします」

「うん、いい返事だ。じゃあ、順番にシャワーを浴びて朝ごはんにしよう」


そんなわけで、初めてのトレーニングが終わった。
素振りは思ったより、面白かった。

たぶん、初めてのことっていうのが大きいんだろうなぁ。
やってて時間が経つのがあっという間だったからね。


「じゃあ、シャワー浴びる順番が来る前にリビングにって……は?」

「おはよう、竜也。朝の鍛錬お疲れ様」

「お疲れ様、じゃないよ!!なんでここに?」

「だって、朝昼晩全部面倒見てもらうのよ?」


さも当然のように高町家に居座る母。

そうか、そうだった。
油断してたよ、この母を。

お世話になるって本当に住以外のことだったのか?


「よく考えて見なさいよ、私たちの家を……」


ああ、そうだった。
昨日帰った家には、ベッドと最低限の家具のみ。
冷蔵庫すらなかった気がするぞ。


「まぁそういうことよ。本当に世話になるわね」

「いいのよ、そっちも大変だったんでしょ?それにお店のほうもよろしくね」


ああ、例のアルバイト先ってこのことかな?


「翠屋って言ってね、高町一家が営んでる美味しい喫茶店よ。そこでアルバイトさせてもらうの」


やっぱりね。そういうことだと思ったよ。


「何から何まですみません。本当にお世話になります」

「本当出来た子よね。いいのよ、子供は気にしなくて。それよりどうだった?」

「そうですね、楽しかったです。結構夢中になっちゃって時間も忘れるぐらいでした」

「そうだな、筋も良いし、美由希以上の才能かもしれないな」

「あ、士郎さん。あんま褒めないでくださいよ。才能とか言われても困ります」


初めてやったことにいきなり才能があるといわれても困る。
俺はあくまで興味があったから、やってるだけなのに。


「あるものをあると素直に評価したんだが、そうか、すまなかった」

「あたりまえでしょ、だってこの子は私の─」

「いい加減にしてよ、母さん、いい加減しつこいよ?」

「え、ああ。ごめん」


この母、気付いたら自慢ばっかしなんだから。
息子の自慢といいながら、自分のことだし。

いや、俺は嬉しいよ?
嬉しいけど、この母には常識と限度を覚えて欲しい。


「竜也君、シャワー浴びてきたらどうだい?」

「あ、はい。じゃあ浴びてきます」

すっかりシャワーのことを忘れていたよ。
これも全てあの母のせい……

でも、本当にいい笑顔を浮かべるようになったな。


お風呂場に向かうと、先約がいた。

「あ、竜也君今からシャワー?」

「はい、そうです」

お風呂上りと言った様子の美由希さん。
ということは、さっきまで入ってたのは美由希さんかな。


「あのさぁ、一つ聞いていい?」

「なんですか?」

「どうして、剣術やろうと思ったの?」


ん、意外に真面目な質問が来た。
と言ったら失礼なのかな?

この人はなんかいつも陽気って感じがするからなぁ。


「興味本意ですね。父さんがやってた、剣術と言うのに興味があって」


事実それだけの理由しかない。
別に強くなりたいとかそういうのじゃなくて、単純な興味。


「それなら、一つ忠告。まだ竜也くんには分からないと思うけど、
強くなったらその力の使い道をどうするか今のうちに決めたほうが良いよ?」


強くなったときの使い道?
まだ、強くなるとも分からないのに?

それにいきなりこういう話って……


「竜也君は才能あるよ? 見ててそれが分かるほどだからかなりね。
だからこそ、その力の使い道をちゃんと見つけなくちゃ駄目。
たぶん、私から言わなくても、そのうち恭ちゃんとかお父さんから言われると思うけどね」


使い道、ね。
どうだろうね、考えたことも無かったよ。

そもそも、今までは先のことを考える余裕もなかったし。
今を生きることが精一杯だった。


「ああ、そんなに考えなくていいよ。まだ先があるんだから。ほら先にシャワー浴びちゃいなよ」


それもそうかな。
強くなるかどうかも分からないしね。

いくら才能あると言われてもね……

まぁいいや、とりあえずシャワー浴びよう。
そういえば、メガネをかけてない美由希さんは綺麗だったなぁ。


「それじゃあ、学校行こうか、今日は職員室に挨拶も行かなくちゃいけないから、母さんも一緒に行くわ」

「うん、了解」

「明日からはなのはちゃんと一緒に行ってあげてね」

「え?どうして?」

「なのはちゃんが行きたがってたわよ」


一緒に行きたがってたね。
まぁこっちに来て友達もいないから別に良いかな。

それになのはって意外とかわいいんだよね。
というよりあの一家全体的に綺麗な人だから、将来的に考えたらなのはも有望か。
よくよく考えるとすごいよな、あの一家。

綺麗だしかっこいいし、剣術だし、めちゃくちゃお人よしだし……
まぁそのおかげで助かってるんだけどね。

それに新しい学校か……
前の学校は父さんが死んじゃったから全然いけなかったからね。

いろんな意味で楽しみだなぁ。

ありのままに─第3話─ 

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俺がこれから通うことになった、私立聖祥小学校は、白を基調とした制服だった。


「じゃあ、これから教室に案内するわね」


そう言って、俺が通うべき教室へ案内をしてくれる、先生。
先ほど、お互いの自己紹介は終わり、俺のクラスの担任とのことだった。

全くの新天地で、ここに友達が一人もいない俺にとっては不安と期待が込み上げる。

ここに来たのは、昨日。これからお世話になる高町家のみなさんに挨拶をして昨日は終わったが、
今日は朝早くから剣術の鍛錬をしてきたばっかしで、今はかなり眠い。

剣術の鍛錬も、自分にとっては初めてのことで、慣れないながらも楽しく出来たので自分としては満足してる。
なにより、これから先も続けていくことになりそうなのでこの気持ちを忘れずにしたい。

まぁそんなわけで、この新天地では新しいこと尽くし、まさに新しい天の地の名に恥じないほどの新環境だった。
そして、この学校もまた新しいことの始まり。


「ここが私達のクラスよ、入って」

「はい、分かりました」

「おはようございます。今日は転校生の子を紹介します」


教室が先生の転校生という言葉で若干騒がしくなった。
春先──といってもすでに6月で、つい最近に入学式も終わったばっかしの頃。
そのせいか、転校生ってだけでも騒がしくなるのに余計に注目を浴びている気がする。


「今日から、この学校で皆さんと一緒に勉強することになる、相沢竜也君です。
相沢君自己紹介お願いね」


ようやく、と言ってもそれほど待ってはいないが、自己紹介。
みんなの視線がとても痛い。
心臓がバクバクする。とてつもなく緊張しているのかな。


「ええっと、この学校に転入してきた、相沢た─」

「竜也君!?」


教室に他の生徒の声が響き渡った、というよりなのはだった。
俺としては一人知り合いがいるだけでやりやすい、もとい居心地がぐっとよくなるのだが、
この場面でその発言は、緊張感を仰ぐだけだと思う。


「高町さん」

「ごめんなさい。」


先生のお叱りの声がなのはに向かって放たれた。
その言葉でなのはは、しゅんとなり小さくなってしまった。
その上隣の女の子は友達なのだろうか、ちやほやされてる様子。


「じゃあ、相沢君もう一回お願いね」

「相沢竜也です。どうぞよろしくお願いします」

「はい、ということです。みなさん、拍手」


先生の言葉に合わせての拍手。


何とか噛まずに言えたと思って少しホッとする。
もしここで噛んでしまえば、ギャグ要員として定着するか、弄りキャラの定着に繋がってしまう。
何より、第一印象が……

そういう意味では、この無難な自己紹介はほぼ完璧だったと言えるのではないのだろうか。
なので、よし! と心の中でガッツポーズを決める。


「高町さんとは知り合いのようだから、高町さんの前に座ってもらいますね。
そうしたほうが色々と過ごしやすいと思うので」


先生の配慮はとても嬉しいものだった。
やはり、知り合いが一人もいないのと、一人いるのとではだいぶ違う。
例え知り合いが同じクラスに来て驚きの声をあげた、なのはであろうともだ。

先生の指示通りになのはの前の席に座る。


「驚いたよ、まさか竜也君が同じクラスになっちゃうだなんて」

「うん、同じ気持ちなんだが、裏で誰かが糸を引いてる気がしてならないよ」


え?と訳が分からないという表情をする、なのは。当然の反応だ、なのははあの母のことをあまり知らないのだから。
だけど、俺は知っている。謎の人脈を誇るあの母のことを。
まぁそのおかげで俺はここにいることが出来るのだが。


「じゃあ、改めてよろしくね、なのは」

「うん、よろしく。竜也君」

「二人だけでなにやってんのよ」

「ちょっと、アリサちゃん……」


なのはの隣から、口を挟んできたのは、金髪ツインテの勝気な雰囲気の女の子と、
紫に近いほど長く綺麗な黒髪の大人しそうな雰囲気を漂わせている女の子。


「なのはちゃん、この子が昨日のメールで言ってた例の?」

「うん、そうだよ。昨日引っ越してきた、竜也君」


どうやら、この二人はなのはの友達のようだった。
それにしてもなのは、昨日会ったばっかしなのにそのことを直ぐに友達に報告とか、
いや、別にいいんだよ。いいんだけどさ。

せめて、俺にも一言欲しいよ。


「ふ~ん、容姿はかっこいい系と言うよりは綺麗系ね。結構整ってるし、いいんじゃない合格」

「アリサちゃん、失礼だよ」


全くその通りである。
しかも合格って何、合格って……

ええっと名前は─


「私の名前は月村すずか。すずかって呼んでね、よろしくね、竜也君」

「私はアリサ・バニングスよ。アリサでいいわよ、私も竜也って呼ぶから」


すずかは見た目どおり温厚な感じの女の子だな。
それに比べ、アリサは……しかも、いきなり呼び捨てですかい。
まぁいいか、その方が親しみやすいしね。


「こちらこそ、なのはがお世話になってます」

「え、竜也君それは私のセリフなの!」


なのはのセリフでもないと思うが。


「なのはの使い方を心得ているわ、やるわね。なのは、ちゃんと挨拶しなさい」

「え、はい。高町なのはです、よろしくお─ってそうじゃないの!」


なるほど、アリサも心得ていると言うのか!
さすがなのはの友人であるだけはある……って俺何キャラ?


「まぁ冗談はさておき、よろしくね、アリサ、すずか、おまけになのは」

「うん、よろしくね。竜也君」

「あんたとはいい仲になれそうだわ。よろしくね、竜也」

「もう、いい加減にしてよ、竜也君……でも、よろしくね、竜也君」


こんなわけで俺の初陣は、ほぼ最高と言える結果で迎えられたと俺は思う。
やっぱり、なのはという一つのキーセンテンスが大きいんだろうな。
いなかったら、この二人とは仲良くなったかもしれないが、こんなに早くは打ち解けられないだろうから。




─なのはSIDE

昨日引っ越してきたばっかしの竜也君。

初めて見たときに素直に思ったのは、綺麗な顔だなということ。
その綺麗と言うのは男の子としてと言う意味で、女の子みたいということではないよ。

それでも、いきなりなのはの家に来たからビックリして、最初はちょっとびくびくしたけど、今は全然平気。

男の子としゃべる機会はあまりなかったのもびくびくしちゃった理由の一つ。
お兄ちゃんはいるけど、同年代の子はほとんど初めてだったから。

でも、実際に話してみたらとても話やすくて、面白い人だった。
今日はアリサちゃんと一緒になのはで遊んでたけど、それでも楽しかったから許してあげるの。

それに、すずかちゃんとアリサちゃんの二人とももう仲良くなったから、とても嬉しい。
ちょっと竜也君すごいかもって思った。

なのはでも、あの二人と仲良くなるにはあのことがあってからだったから。
それなのに、竜也君は紹介しただけでもう仲良しだもん。

あ…でも、それってなのはのおかげ? なんて思ったり。


そういえば、竜也君は他にもすごかったよ……
アリサちゃんとすずかちゃんを合わせた感じのすごさ。

勉強はアリサちゃんと全くの互角だし、運動はすずかちゃんと互角。
なのはが勝てる要素が一つもないの……

アリサちゃんが


「なんて、チートよそれ。どこのガンダム?」


とか言ってたの。意味が全く分からないけど、とりあえずアリサちゃんがかなり驚いてたのには違いないと思う。

竜也君って一体何者なの!?

竜也君のお父さんは、家の剣術の使い手だったみたいだし、その中でも1・2位を争うほどって。

お母さんのほうは……よく分からないの。
でもなんだか大物臭がする……気のせいだよね?


「なのは、帰るわよ」

「あ、うん。帰ろう、すずかちゃんも、竜也君も」

「うん」

「え、俺も?」

「当たり前だよ。友達なんだから」

「そ、そうか。友達だもんな」


うん、そうだよ。竜也君はもうなのはの大切な友達の一人だよ。
竜也君と一緒にいるとまた新鮮で楽しいな~




─SIDEOUT

なんだかんだで、学校初日はあっという間に過ぎてしまった。
最初の自己紹介の後は、たくさん人が来て色々といっぺんに話しかけられて大変だったが、
アリサとなのはのおかげでことなきをえた、と思う。

授業は簡単だったし、体育は楽しかったので文句のない学校生活かな。

あえて言うならなのはたちが驚いていたということかな。

理由は、勉強面がアリサと同じぐらいだったのと、運動面がすずかと同じぐらいだったかららしい。
むしろね、俺が驚きなんだよ?

俺の場合はいい成績取れなくちゃここに残れないから、必死だし。
運動はすずかは女の子だよ?
それが男子である、俺と一緒っておかしいでしょ。

こう見えても運動能力にそこそこの自信があったから、軽く落ち込むぐらい……

まぁそれを含め、アリサもすずかもとても優しいし、一緒にいると楽しいからいいんだけどね。


「じゃあ、今日は用事があるから私は先に帰るわね」


学校の前でそう言ったのはアリサ。
先に帰るって別に俺……まぁなのはも別に寄り道するわけじゃないだろうから一緒に帰ればいいのに。

そう思うと、学校の前に一台のリムジンが止まってそれに乗り込むアリ─


「はあ!?」

「ああそうか、竜也君知らないもんね、アリサちゃんの家はとてもお金もちなんだよ。
すずかちゃんの家もアリサちゃんの家ほどじゃないけどすごいんだよ」


いやいや、お金持ちでも限度があると思うぞ?
お出迎えがリムジンってすごすぎでしょ。

周りの人は違和感ないのかよ。

そう思い周りを見渡しても誰も首を傾けるしぐさもない。
……そうか、ここの学校はこれぐらいで普通なのか。とんでもないお嬢様学校だな。

俺は場違いなところに通ってるんじゃないかと思う。
ああ、なのはも場違いか。


「いま、失礼なこと考えたでしょ?」


きっと気のせいである。


「じゃあ、アリサちゃん私も送ってもらってもいいかな?」

「いいわよ、じゃあ、なのは、竜也また明日ね」

「なのはちゃん、竜也君また明日」

「ああ、また明日」

「またね、アリサちゃん、すずかちゃん」


本当にこの新天地は新しいことや驚きばかりだ。
そして、楽しいことばかりで、友達も出来て。

まだ、ここに来て1日しか経ってないけど、来てよかったと心の底から思う。

父さんはいないけれど、
母さんは笑顔を取り戻してくれて、本当にいいこと尽くしだ。


最後のおちと言ってはなんだが、
なのはに言われるがままになのはの家に遊びに行けば、当然のように母さんがいた。

その上、なのはの部屋に入れてもらうことになったときには、どこからか殺気を感じたのは言うまでもない。

ありのままに─第4話─ 

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この町に引っ越してきて、すでに一ヶ月が過ぎていた。

相変わらず、朝の鍛錬、学校、鍛錬と言った感じだが、とても充実していると言える。

最初こそ鍛錬は士郎さんが付きっ切りで見てくれていたが、
今は恭也さんと美由希さんの二人で見てくれている。

元より、士郎さんは喫茶店翠屋の準備に朝が忙しいからだ。
そんななか最初だけでもわざわざ面倒見てくれた、士郎さんはとても面倒見がいいと言えるんじゃないか。

その翠屋で母さんも一緒に働いているわけだが、面倒をかけていなければいいな。
たぶん無理だと思うけど。

ただ、母さんは料理腕も非常に良かったりするわけだから、その面では大丈夫と言えるだろう。
問題は接客だが……

まぁまだクビになってないなところを見れば大丈夫なんだろう。

話が逸れた。
朝の鍛錬だが、美由紀さんはどちらかと言うと身内に甘いタイプだと思ってたんだが、
剣術でも多少はそういう面が見られるものの、厳しい人ではあった。

それ以上に、恭也さんは厳しく、妥協と言うものがない。

そのせいで、恭也さんに見てもらった最初の一週間は筋肉痛に……
ましてや授業に集中するのも厳しかった。

そうそう、授業といえば学校だ。
一ヶ月経った今ではすっかり馴染めている。

それもこれもあの三人娘のおかげだけど、口に出して礼を言うのは恥ずかしいので心のうちに黙っとくとする。
実際に言ったら、感謝しろとか言いそうだしね、アリサが。

そんなわけで、一ヶ月間つつがなく終了しました。


「竜也君は夏休みの予定あるの?」

「特にはないね~というより考えたこともなかった」


そして、気付いたら夏休みの直前だったんです。
今日の授業の最後に成績表が返されて、とりあえず成績はそこそこ良かったので今ホッとしてました。
ついでに言うなら、この短い一ヶ月を振り返ってた、と。


「それなら、なのはの家に泊まりに来ない?」

「泊まりに来ない? ってしょっちゅう行ってるじゃん。というより毎日」


ここに来てからというものの、なのはの家にいるのがほとんどだった。
自分の家にいるときは寝るときぐらいのもの。


「へぇ~あんた毎日なのはの家に行ってるんだ」

「アリサは知ってるだろ? ここに来るまでの経緯話したわけだし」


ここにいる三人娘には俺の過去というほど大業なものではないが、経緯を話した。
というより、聞かれたから答えただけだけどね。


「ほら、竜也君の家は特殊だから、しかたないよ。アリサちゃん」

「それでも、限度があると思うけど」

「アリサの意見には同意せざるを得ない」


俺もそう思うぞ。
あの母の図々しさといったら天下一品だ。


「じゃあ、みんなでお泊まり会しようよ」

「うん、それならいいわ。私の家とすずかの家でもやって、計三回ってとこかしら」

「アリサちゃん、勝手に私の家のまで決めないでよ。でも、いいよ」

「待て待て、女の子3人に男の子1人って問題じゃないか? だから俺は断─」

「私達に手を出すわけじゃないんだからいいじゃない。
それにもし手を出したら、各方面から焼けどじゃ済まされない怪我を負うわよ」


もちろんそんな下心があるわけじゃないが、確かに手を出したら怖いな。


「まぁその件は置いておいてだ。俺は予定も何も分かっちゃいないから、分かってからということで」

「そうね。後日改めて決めましょう」


俺の夏休みの予定は何も決まってないからね。
仮に決まっていたとしても、知らないからね。

そんなことを考えてる最中、俺のケータイが鳴る。


「どうしたの? メール?」


音に気付いたすずかが率直な疑問を口にする。


「ん、母さんからだ。ええっと『今日はちょっと大切(笑)な話があるからまっすぐ家に帰ってきて』だってさ。
そういうわけだから、先に帰るよ」


(笑)の使い道が微妙に間違っていて、本当に大切な話なのか分かりづらいが、
まぁ直接家に帰るのが珍しい俺にとっては十分に大切な話であると理解できた。


「そう、じゃあ、予定が分かったら連絡頂戴ねって竜也君ならなのはの家で会うね」


にゃはは、と笑うなのは。


「でも、私達には連絡しなさいよ」

「分かってるよ」

「うん、じゃあ連絡待ってるね、竜也君」

「ああ、じゃあね。みんな」


「またね~」というみんなを背にして、
おそらく学校から直接、家に帰るのは初めてであろう帰路をどんな話なのか考えながら帰った。





「お帰り~竜也。成績どうだった」

「一応はノルマ達成だよ」


どれどれと、成績表を覗く母さん。
そして「おみごと」の一言をいただきました。

その次の言葉は、


「さすが母さんと父さんの子ね。うん、私たちの誇りよ」


と続く。もはやお決まりのセリフとなっていた。


「それで、大切な話って何?」

「あれ、もう本題に入っちゃうの? もう少し世間話したかったんだけどな~」


世間話ならいつも聞いてるよ。


「まぁまぁそう言わずにさ。でも、そうね。竜也は今気になっていることってある?」


気になっていること?
それこそ今話そうとしてる大切な話かな。


「それもそうよね。うん、分かった。話の内容なんだけど二つあるの」

「二つ?」

「そう、一つは‘魔法’のお話。もう一つは母さんと父さんの話」


魔法? 何の前触れもなくでてきたその言葉の意味がよく分からなかった。
そして、母さんと父さんの話……なぜ急に、と思う。


「それはね、父さんと母さんが竜也が小学校に入ったら話そうと決めてたからかな。
だから、本当は入った瞬間に話そうと思ったんだけど父さん死んじゃったでしょ?
それからバタバタとして落ち着かなかったから、今に至るの」


理由はなんとなく理解は出来たが、
大切な話の意味はよく分からなかった。

そもそも、なぜ魔法と母さんと父さんの話が並列に出てくるのかも。


「それは、今から話すことで分かるわよ」

「それもそうだね」

「はい。じゃあ、問題です。魔法はこの世界に存在るでしょうか?」


魔法の話をするというのに、その質問はないじゃないのかな?
この話をするにあたって魔法があるのは大前提だ。


「ある。じゃなくちゃ話が進まない」

「仮にあったとして、竜也は魔法を認められる?そんなものありえないといって否定する?」

「愚問だよ。あるから話をするんでしょ?」

「そう、そうだね。では正解を発表します。
『魔法はこの世界には存在しなくて、それでも魔法はある』
この意味が分かるかな?」


一言言おう、分からない。
そもそも矛盾してるよ。あるのにないって。


「竜也、こんな言葉聞いたことない?
『この世には無数の世界が存在していて、この世界はその一つに過ぎない。』
という言葉。答えはこの中だよ」


この世には無数の世界がある?
それはつまり平行世界といったようなパラレルワールド言うことなのかな?
小説や夢物語、漫画にはありがちの設定だけど。


「そうね、ありがちよね。でも、平行世界は惜しいけど違う。
答えは、魔法の存在する世界があるということ。そして、母さんはそこを知っているということ」

「なんで?」


当然の疑問だと思う。なんで母さんはそんなことを知っていいるのか。
なぜ、この世界に住んでいるのに……


「それはね、私がその世界出身だからね。その世界では魔法を使う人のことを魔導師っていうんだけどね。
母さんもその一人だった。そして、研究者の一人であったのよ」


それは、母さんが魔法を使えるということだった。
魔法を使えるというのは、なんだが憧れるものがあった。
それはこの世界にないもので、ファンタジーに過ぎないと思ってたからだろうか。


「まぁ魔法については大まかに言えばそんな感じね。詳しい話しはまたあとで。
次は父さんと母さんについて話すわね」


俺はなんとなくだが、こっちのほうが本題のような気がした。
魔法の話はあくまでこれを語るために必要だった話という感じかな。


「さっき言ったとおり、母さんはこの世界の人じゃないわ。
でも、向こうの世界でちょっとやらかしちゃってね。追い出されちゃったの。
それで命かながら辿り着いたのがこの世界。魔法のない世界だった」


そこで、運命の人に出会ったの、と続ける。

確かに命かながら逃げたところに助けがあればその人は運命の人に見えるだろうなぁ。


「それが父さんよ。熱心に怪我の介護をしてくれてね。一目ぼれだったわ。
そこからは母さんがもうアタックであっという間に結婚。そのときかしらね、桃子に会ったのも」

ちょっと懐かしげに遠くを見ながら話す。

なるほど、いつごろの話か分からないが桃子さんは父さんの親類縁者だったということかな。
というよりは桃子さんと結婚した士郎さんがか。
父さんと士郎さんはおなじ流派みたいだからね。


「もちろん、父さんには私が魔法を使えるのも知ってたし、事情を全部話したわ。
でも、他の人に話はしてない。まぁ話をしても信じてくれるかどうかは怪しいけどね」


この言葉の意見するのは、魔法のこと、母さんのことは他のどんな人でも話しちゃ駄目ってことかな。

この世界には魔法がない。
だから本来は話す必要もないことなのだろう。もちろん知る必要もない。

でも、俺には話をした。
それが一体どういうことなのか……


「じゃあ、大切な友達にも話さないのに竜也に話す理由を言うわね」

「うん」

「竜也はしっかり私達の血を受け継いだ。
どういうことかというとね、父さんからは天性の剣の才能を、母さんからは魔導師としての才能をしっかり受け継いでるわ」

「剣の才能と、魔導師としての才能?」


よく分からなかった。
どうしてそんなことが分かるのだろうか?
それとも持っていたらまずいのか?

そのことが自分にとってどう影響すると言うのか……


「そう。剣の才能はこの間、士郎さんが言ってた通りよ。それは私から見るよりも確か。
それで、魔導師のほうなんだけど……」


はぁとため息交じりの深呼吸をしさらに続ける。


「たぶん、かなりの魔力を持ってるわ。これも実際に測ってみないと確信は出来ないけどね」

「だから?」

「うん、これだけじゃわからないわよね。
ようするに、私達は竜也にはありのままに生きて欲しいの。自分の思ったままに選んで、先を進んで欲しいの。
この二つの才能はあなたの力になるもの。力は選択肢を広げるわ。今までになかった未来も、可能性もでてくる。
だから私達は竜也に、この二つの力を使いこなせるようになって欲しい」


言いたいことはなんとなくだけど分かった。
ありのままに生きて欲しいことと。
せっかく持って生まれた才能を使って可能性を広げ、未来を生きて欲しい。
たぶん、そういうことなんだと思う。


「でも、私達はその選択肢。力を使うと言うことも竜也自身に決めて欲しい。
ここまではあくまで、死んじゃった父さんの意思でもある。
でも、この先は達也の意志で決めて欲しい。どうする?竜也は持って生まれた才能を背負って生きていく気はある?」

ありのままに─第5話─ 

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母さんは実は異世界人だった。
そのことに衝撃は受けたものの、なんとなく納得させてしまうのがこの母のすごいところだと思う。

そして、運命の出会い。
あまり詳しい経緯は話してくれなかったけど、母さんの一目惚れだったそうだ。

母に目を付けられた父さんも迷惑な話だと思う。

そして、俺が生まれて。幸せに生きていたところで、父さんが死んでしまった。

実は父さんが死んだ詳しい経緯も知らないわけだが、
知ることもないかなと思う。

理由を知ったところで戻ってくるわけじゃないし、環境が変わるわけじゃない。
それに、俺には泣いたり、悲しんでる暇はなかった。

父さんが死んで母さんがずっと泣いて、悲しんでばっかしだったからだ。

そんな、母に代わり俺は大人に振舞わなければなかった。

そして、父が死んであまり時を経たずとして、この町に来た。
かつての悲しみに溢れた町から逃げるように。

でも結果的には、それが功を奏したと思う。

この町に来て、母は笑顔を取り戻して、俺は友達が出来て。
友達と一緒にいると楽しい。
時を忘れるぐらいに。


そうして今に至る、と。
以上分かりやすい回想、終わり。


「それで、どうなの。竜也は力が欲しい?」


父から受け継いだ、剣の才能。
もし、それが俺にあるとすれば、今士郎さんや恭也さん、美由紀さんに剣を教わっていることで力を手に入れるだろう。

元々は興味本意。
いや、今も興味本意で習っているに過ぎない。


そして今度は母から受け継いだ魔法の力。
全く実感の持てない話。

それでも、母さんは俺にはその力があるという。
興味はある。

自分の知らない未知の力に。
知らなかった新しい世界に。

話を聞いてる限りでは簡単に触れていい世界ではないようだった。
だけどそれでも、今は興味があると言う回答しか得られなかった。


「母さん」

「何? 決まった?」

「興味はある。力がほしいとか、そういう意味じゃなくてただ単純に魔法に興味がある。
だから、魔法を教えて欲しい」

「そう、でもその魔法は何れは力になるわよ。それでも?」

「今は分からないけど。でも、必ず答えは見つけるよ」


そう、今は分からない。
自分の魔法を使った未来像が、刀を持った未来像が。

どんな生活をしている未来なのか。

だから、答えは先延ばしにするしかなかった。


「そう、分かったわ。とりあえずは、魔法の使い方は教えてあげる」

「ありがとう」

「ううん、これぐらいは当然。でも、これだけは覚えておいて」


そういうと、真面目な顔になる母さん。
今ままでも十分に真面目だったのだが、それ以上に。

そして、そこからは圧迫感と緊張感も伝わってくる。


「使い方は教えるけど、使い道は自分で見つけないさい」


使い方は教えるけど、使い道は自分で見つけろ?
いまいちその違いが分からない。

そんなことを考えていると言葉を付け足した。


「使い方と言うのは魔法を扱うこと。いわば技術ね。使い道は魔法を使うこと。いわば精神よ。
どうやって使うかはこれから私がみっちり教えてあげるけど、何に使うかは自分で考えなさいと言うこと。
そうね、使い道が決まるまでは防御魔法と補助魔法を基本的に教えていくわ。覚悟しなさいね」


覚悟しなさいねと言ったときの目のぎらつき様が半端なかった気がするけど、
気のせいだと思いたい。


「じゃあ、早速トレーニングと魔法の勉強よ。
初めてだから今日は素質を見るために、色々やるからハードになるわよ」


今日はなんかハードな一日だな。

ああ、そうだ。聞かなくちゃいけないことが……


「母さん。夏休みの予定ある?」

「特にはないわよ。毎日修行以外には」


何気にハードスケジュールな気がする。
けど、まぁいいか。


「そっか、分かったよ」


なら、夏休みは予定通り、なのはたちとお泊り会になりそうだな。
でも、改めて考えるけど男一人でいいのかな?

まぁ深く考えてもしょうがないけど。


「じゃあ、トレーニングルームに行くわよ」

「え?トレーニングルーム?」


初耳なのですが。
てか、ここアパートですよ?


「そう、この日のために地下に勝手に作ったトレーニングルームよ。
大丈夫、結界張ってるからばれるようなへまはしないわ」


そういう問題なのだろうか。
相変わらずスケールのよく分からないは母だった。






─愛子SIDE


竜也に、剣の才能があったときは驚いたわ。
魔法の才能があるのは、生まれたときすぐにリンカーコアを確認できたから分かったけど。

剣のほうは詳しくは分からなかったからね。

今日は早速魔力値とか、魔法の特性を測ってみたんだけど、
血は争えないわね。奇しくも私と同じかそれ以上の魔力値。

魔力値はSランクはあるんじゃないかしら、この子。

魔力の最大出力を測れてないから、正確には言わないけど、
まぁ第一級の力は持ってるわね。


そして、その魔法の才能だけど。

補助魔法・防御魔法・攻撃魔法どれをとってもトップクラスの資質。
ただ、どれか一つが特化してるわけじゃなくてオールラウンダータイプね。

元々魔力はあるから、育て方次第では幾らにでも化ける。
私の子ながら恐ろしいわね。

でも、とりあえずは補助と防御を極めようかしらね。
攻撃は基礎程度にして。

デバイスは……まだ早いわね。
最初のうちはデバイス無しでも魔法を使えるように教えていきますか。

本当にこれは育てがいがありそうね。
たぶん、成長していく様子も分かりやすいだろうし。

さぁこれから忙しくなるわね、ふふふ。


「ちょっと、母さん怖いよ」


そう言って、少し怯えるかわいい私の子。
嫌だわ、ついつい素が……


「この後はどうすればいいの?」

「そうね、これからは魔法と学校を二つをまとめて勉強しなさい」

「二つの勉強を同時にって、それは無理だよ」

「そうね、普通なら難しいけど。魔法を使えばいいのよ」


まずは日常から魔法を使って慣れていくこと。
そうすれば、魔法を日常に感じることが出来るようになって使うことに繋がる。


「う~ん、よく分からないけど、まぁ頑張ってやってみるよ」


まぁ最初のうちは難しいだろうけど、
たぶんこの子ならあっという間にものにすると思う。

だから、使い方はマスターできる。
問題は使い道、よね。

竜也自身は、まだ力を興味本意だけで手に入れているに過ぎない。

確かに興味を抱いて、それを手に入れようとするのは大切なことだけど、
使い余した力ほど危険なものはない。

使い道が分からずに、危険なことに手を出すことだって、利用されることだってある。
それだけは何としても防がなければならない。

だからこそ、竜也は知らなければならないことが、
教えなくちゃならないことがたくさんある。

それに竜也は、力を持ってるがゆえに、才能があるばっかしに苦労することが多くなると思う。

それはきっと、常人には理解されないもので。

理不尽なもので。

でも、それを知ることになるのはもっと先の話。

それまではただ、ありのままに生きて欲しい。

……違うわね。

そんな現実とぶつかってもありのままに生きて欲しい。

例えどんな壁があろうとも、ありのままに……


ありのままに─第6話─ 

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あ、ありのままに起きたことを話すぜ!

昨日は初めて魔力を使ったばっかしで、めちゃくちゃ疲れたから、
トレーニングが終わったら直ぐに睡魔に襲われて、ケータイもチェックせずにそのまま睡魔に身体をゆだねて寝て、
朝起きたら、そこにはアリサがいた!


「今日は、いい天気だね。アリサ」

「そうね、今日は快晴ね」


空には雲がほとんどない。
まさに快晴、夏の青空と言うのにピッタシの風景だ。

そして、まだ初夏ということもあってなのか粘っこい暑さではなく、スカッとした暑さ。
おそらくは、初夏だけと言うだけでなく近くには海があるからというのもあるのだろう。


「アリサ、窓を開けてくれないか」

「分かったわ」


そういうと直ぐに窓を開けてくれた、アリサ。
実に素直である。普段の様子とはまったく別人だ。

窓から外の空気が入ってくる。
さっきまでの篭った空気ではなく新鮮な空気だ。

空気の入れ替えにより、少しの風が発生する。
その風は気温に比べて少し冷たくとても気持ちのいいものだった。

さて、今は一体何時なんだろう。


「今は10時よ。夏休みだからって随分遅い起床ね」

「昨日は色々あって、疲れたんだよ。だから今日は朝の鍛錬も無し」


母さんは、俺が疲れてダウンをするのを見越してあらかじめ、士郎さんに鍛錬を今日は休むことを
伝えていてくれた。


「そう、まるで普段はもっと早起きしてるような言いようね」

「実際早いんだ」


俺の起床時間は午前4時半。
5時過ぎから鍛錬が始まるので、準備の時間を含めるとかなりの早起きになっていまう。
でも、習慣になれば出来ちゃうもんで、
人間の状況対応能力というか、習慣性というのは優れていることをこの身で味わった結果だった。


よし、現実逃避はこんなもんにしてこの状況を分析するとしよう。

現時刻はさっきアリサが言ってたように10時のようだ。
アリサに言われたとおり、まぁ普段からすれば遅い起床だな。

では、現状を確認する方法としてケータイを見てみよう。


「アリサ、そこの机にあるケータイをとってくれないか?」

「いいわよ。ええっと、これね。はい」

「サンキュー」


さて、ケータイを確認、確認と。
ケータイの待ち受け画面を見る。

そこには着信とメールのお知らせがあった。

まずは着信を見てみる。
昨日の家に帰った時刻から、その日が終わるまで、つまりは夜の0時までに、
アリサからの着信が30分おきにあった。

今度はメール。
未確認のメールの数は100を超えていた。
下のほうにはすずかやなのはのメールもあるのだが、ほとんどがアリサに埋め尽くされていた。

そして、この状況を照らし合わせてみる。

起きた瞬間からそこにいるアリサ。

これらのことから結びつく答えは……


「もしもし、警察ですか。ここに、ストーカーが─」

「ちょっと、なに言ってるのよ!ストーカーじゃないわよ!」

「大量のメールと電話をしたうえに、勝手に家にいるおまえのどこがストーカーじゃないんだ!?
嫌がらせか!?これは俺に対する嫌がらせなのか!?」

「べ、別に嫌がらせじゃないわよ!夏休みの件が少し気になったから、あんたに連絡したら、
全く通じなかったから家にきただけでしょ!」

「心配してくれたと言うことか?」

「ち、違うわよ!ただ、気になっただけよ」


むきになってキーキー言っても、
顔を少し赤くしながら言ったら説得力を感じないぞ?

まぁただ単純に口論してて、熱くなっちゃっただけだと思うが。


「心配して来て見れば、これよ。心配したのが馬鹿みたい」

「ん?何か言ったか?」

「な、何も言ってないわよ! 」

「そうか、じゃあメールを確認させてもら─」

「あ!ちょっとケータイ貸しなさい!」

「え?」


そういうと、強引にケータイを奪うと勝手に色々と操作し始めるアリサ。
別に弄くるなとは言わないけど、本人の許可なしにやるのは止めてほしいな~


「これでよし、と。はい、返すわよ」

「え、ああ」


アリサは一体何をしてたんだ……
まぁいいか、とりあえずアリサからのメールを確認

……


「アリサ……」

「何?」

「何で自分の送ったメールを消した?」

「べ、別にいいじゃない。私が送ったんだから。私に消す権利があるわよ」


権利どうこうはいいとして、そんなに必死になって消さなければならない理由でもあったのか?
まぁ今となっては、知る由もないけどさ。


「あら、竜也起きたの?」


母さんが茶菓子などを持ってきて、俺の部屋に入ってきた。
そして、その母さんの顔はこれ異常ないほどににやついていた。


「今さっきね」

「お邪魔してます、おばさん」

「ごめんね、うちの子が寝坊助さんで。はい、これをどうぞ」

「いえ、お構いなく」

「いいのよ。ゆっくりしていってね♪」


そう言うとそそくさと、部屋を後にした母さん。
おそらくは、茶菓子を届けるついでに女の子と二人でいるのを茶化しに来たのだろう。


「気が利く素敵なお母さんね」

「ちょっと無鉄砲なところが有るけど、それでも自慢の母だからね」


実際、俺はこの母が好きだった。
ちょっと回りに迷惑なところとか理不尽なところとかもあるけど、
基本的には俺のことをよく考えてくれるこの母が。

昨日のことも俺の将来を考えた上での判断だったと思う。
まぁ後はその期待に俺が答えられるかどうかだけど。


「そう、本当に羨ましいわ」


どこか遠くを思うような、そんな言葉だった。
アリサの両親が忙しいのは知ってる。

アリサは精神的には大人びていいるけど、やっぱり思うところはあるんだろうな。


「寂しいのか?」

「な、何よ急に!」

「いや、寂しそうだったから」

「そんなことは……ないわよ。
私のために頑張ってくれてるのは知ってるから、私が何か言う権限はないの!」

「そうか、そうか。うん、うん」

「な、何よ。まるで悟ったかのようなその返事は」

「かわいいな、アリサは」

「ちょっと、そういうのは……」


アリサの顔が見る見る赤くなる。
アリサをからかうのはとても楽しいな。

言葉と表情がドンドン変わるもん。


「まぁ寂しかったら、いつでもメールでも電話でもすればいいさ。
家に来たっていいしな」

「ふぇ!?……そうね、そうさせてもらうわよ。
そんなに私に構って貰いたいなら、付き合ってやってもいいわ」

「まぁそういうことにしといてやる」

「ど、どういう意味よ!」


『何言ってるの、あんたがそう言ったんでしょ。』とか、『私は別にそういうつもりじゃ。』なんて何度もいいながら、
顔を赤くしてして必死に抗議をする。
相変わらずテンションの高いお嬢様なことだ。

そして、今更なんだがアリサはなにしに来たんだ?
最初は心配したから来てくれたのかと思ったが、本人曰くそうじゃないらしいし。

本人に聞けばいいか。


「アリサ」

「何よ改まって」

「何しに家に来たの?」

「……今更の質問よね、それ」

「それで、何しに? 」

「だから……心配して……」

「え、何? 小さくて聞こえなかった」

「な、何でもないわよ!理由もなくちゃ来ちゃ駄目なの!?」

「いや、別にいいんだけどさ」


理由が少し気になっただけだから別にいいんだけどさ。
なぜ答えるのをそんなに拒むのかな。

それに、理由無しで来るってどこの彼女だよ、そのセリフ。

にしても、俺とアリサだけってこの環境……


「アリサ」

「何よ?」

「いや、別に……あのう。二人きりですね」

「な……」


そういうと顔が真っ赤に。
今日はよく顔が赤くなるなぁ。リンゴでも食べたのか?
あ、それはりんご病か。

よくよく考えると俺ってあの三人娘とよく絡むけど、二人きりってなかったな。
なのは以外は。

あれは例外だからなぁ。
ご近所付き合い的な意味で、よく会ってるし。
なのはの家にいると何かと話しかけてくるし。

ああ、そうか!
なのはにピンチヒッターを!


「もしもし、なのは」

『あ、竜也くん。昨日電話とメールしたのにどうして出てくれないの?』

「ちょっと、いろいろあってな」

「なのはに電話してるの?」

「ああ、なんか二人だけだと気まずいから」

「ふ~ん、私とだと気まずいけど、なのはがいればいいのね。」


なんで、そんな棘のあるような言い方なんだ?
俺が何をしたって言うんだ……


『え? 誰か一緒にいるの?』

「おう、アリサが俺の部屋に」

『え!? アリサちゃんが竜也くんと二人っきり!? す、すぐにそっちに向かうね。』

そう言うと直ぐに電話を切った、なのは。
どうしてそんなに慌ててたんだ?

まぁ何にしてもこれ以上状況が悪くなることはないだろうな。





─アリサSIDE


まったく!なんなのよ、あいつ。
私が昨日からずっと心配して、メールとか電話とかしてあげたのに出ないだけじゃなくて気付かないなんて。

でも、そのおかげで恥ずかしいメールは見られないで済んだんだけど……

かわいいとか、そんなストレートに……
あの男に羞恥心なんて言葉はないのかしら?

そのせいで私が恥ずかしくなっちゃったじゃない

でも、う…うれしいことを言ってくれるわよね。

もしかして、竜也って私に気がある?
いや、ないわ。
あってもこっちからお断り……

でも、悪くはないかな……いやいや、やっぱり。

それに、私と二人きりで気まずいってどういうこと?
そ、そりゃあ私だってある程度は思うところあるけど、それって失礼じゃないかしら?

しかも、それでなのはを呼ぶって。
私のプライドがズタズタじゃない。

でも、悪くないかも……って悪いわよ。

これじゃあ堂々巡りじゃない!

ああもう!何であんなやつのためにこんなに悩まなくちゃならないの!?
馬鹿みたいじゃない。

まぁいいわ、保留よ、保留。


それにしても、寂しそうね。
ばれないようにしてたはずなんだけど……勘づかれたかしら?

しかも、それに対しての言葉が……
あ、案外いいところもあるじゃないの。


「どうした、アリサ。顔が赤いぞ?」

「う、うるさいわね。ほっときなさい!」


無駄なところで鋭いし優しいわね。
本当に無駄なところで。


「た、竜也くん。はぁ…はぁ…き、来たよ」


な、なんでそんなに息切らしてるのよ。


「はぁ…お、お話しようか。アリサちゃん」


ありのままに─第7話─ 

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なのはが電話に出て、その後切ってからここに来るまでは早かった。

俺の家からなのはの家に行くには徒歩で最低でも30分かかる道のりだ。
それをあろうことか、運動の苦手なのはが20分で来た。

これはおそらく、走ってきたんだろう。
ここに来てからもしばらく、息切れが止まらなかった事からも予想して。


「ま、まぁ落ち着けよ、なのは。水でも飲んでさ」

「はぁ…ありがとうね。竜也君」


俺の言葉に甘えて、コップ一杯に入った水を一気飲み干す。
本当に相当焦ってたんだな。

服のあちこちに泥とか葉っぱも付いてるし。


「ほら、泥が付いてるから払ってあげるよ」

「え、あ…うん。ありがとう」


一瞬戸惑ったものの、すぐにお礼を言う。

服を払ってると、ところどころ汗でぬれているところが分かった。
そして、時々「にゃっ」なんて声を上げる。

何ゆえ猫?

それにしても無理したんだろうな。
こんなに汗をかくというとことは、運動が苦手なのに。


「ほれ、タオルだ。汗を拭かないと風邪を引くぞ」

「何か何までありがとうね、竜也君」

「別に気にしなくていいぞ。普段世話になってるからな、なのはにはね。
そのタオルも洗って返さなくてもいいぞ?」

「え、うん。洗って大切にするね!」


大切にするって、別に普通のタオルだぞ?
それにあげるって意味でもなかったんだけどなぁ。

なのはは洗って返さなくてもいいという言葉を、返さなくていいと誤解したみたいだけど。
でも、すごく嬉しそうな顔を見ると、返せと言う気にもなれないな。


「あんたってなのはには優しいわね。私の時とはちがくない?」

「そ、そんなことは無いと思うけど」


俺は二人に対する態度を変えたつもりはないんだけどなぁ。


「そ、そうなんだ。なのはには優しいんだ……ありがとうね。竜也君♪」


なのはよ、そこは感謝するとこなのか?

普段の俺がなのはに対する扱いを思い出してくれ……
いつもいつだって、俺はなのはをおもちゃのような扱いばっかしだったぞ?

アリサと一緒に弄ったり、アリサと一緒に煽ったりって、
アリサも共犯者じゃないか!


「まぁいいわ、許してあげる」


人に優しくすることに許可が必要なんですか?

俺はなのはが来ることでこの状況を打破できると思ったが、とんだ爆弾だったようだ。

なんか悪化してるような気がしてならない……
気のせいだよね?






─なのはSIDE


竜也君から電話が来たときは焦った。
何を焦ったかというと、昨日まで連絡が付かなかった竜也君の方から電話がきたから。

思わずワンコールででちゃったもん。
返信が来ないか確認してたときだからちょうどよかったの。

それで、話を聞いてみるとアリサちゃんと二人きりって言ってて、
余計に焦ったの。

だって、アリサちゃんだけずるいよ。
一人で竜也君と遊んで、なのはだって竜也君と遊びたいの!

だから、なのはは急いで竜也君の家に来たんだ。

自分でも驚くほど早く走れたけど、たくさん転んじゃった。
そしたら、それに気付いた竜也君が泥を払ってくれて……

くすぐったくて「にゃ」なんて声上げちゃったけど、竜也君の手は優しかったなぁ。

そのとき、ちょっと顔が熱くて真っ赤になっちゃった思うけど、
背中を向けてたから恥かしい所見られなくて済んだの。

しかも、竜也君からタオルのプレゼントなの。
初めて竜也君からプレゼントもらえて嬉しかった。

アリサちゃんが言うにはなのはだけに優しいって。
嬉しい。

でも、あれ……?

確か竜也君っていつもなのはで遊んでなかったっけ?
学校ではアリサちゃんと二人で遊ばれてたような気がするけど……

よく考えらば、なのはの家にいるときもどことなく、からかわれているような気がするの。

優しい? あれ?

う~ん、でも今日は優しいのは事実だから、いいかな。

そういえば、アリサちゃんって何時からここにいるのかな?


「アリサは何時からここにいるんだ?
俺が起きたときからすでにいたけどさ……」


あ、竜也君も同じこと考えてたの。


「7……時」

「え?」

「朝の7時からよ!何? 居ちゃ悪かったの? おかげで竜也の寝顔が見れたわよ!可愛かったじゃない!」


アリサちゃん竜也君の寝顔見たの!?
なのはも見たかったなぁ


「いやいや、おかげで見れたって、怒ってるのか、褒めてるのかハッキリしてくれよ。
それに、男に可愛かったといわれてもあまり嬉しくないぞ」

「う、うるさいわね。そこは気にしなくていいのよ」


いま、竜也君の本音が聞こえた気がする……
竜也君も朝から大変だったんだね。

でも、これがなのはのいつもの気持ちだよ?
いつも竜也君とアリサちゃんに遊ばれる。

あ、やっぱり竜也君はいつもなのはで遊んでる。

よし、今日は仕返しをしてやるの。


「竜也君はいつも可愛いと思うよ」


決まった。

竜也君はさっき、男は可愛いと褒められても嬉しくないはずだから、
この言葉は効いたと思うの!


「な、なのははいつも俺をそんな目で見ていたのか?」

「ちょ、ちょっと引くわね」

「にゃあ!?にゃにゃ!!」


あ、あれおかしいの!?
なんで、なのはが攻められてる!?

しかも、アリサちゃんにも引かれてるし。


「ち、違うよ。竜也君は寝顔じゃなくても十分に可愛いって」

「俺はなのはに対する認識を改めなくちゃいけないかも知れない」

「私もそう思うわ。竜也、今後なのはには気をつけなさい。私もいざとなったら協力するわ」

「ああ、その時は頼りにしてるよ」


そのときってなんなの!?
二人ともなんで協力関係になっちゃうの?


「アリサこれからも俺をよろしくな」

「もちろん。私たち親友じゃない」


新しい友情まで生まれちゃってるの。
な、なのはだけ置いてきぼりなの……


「そ、そんな仲間はずれみたいな顔するなよ、なのは」


な、なのははついには竜也君にまで置いていかれちゃったの。

せっかくなのはの家でも相手しくれる人が出来たのに……


「お、おい、泣くなよ。なのは」

「ああ、泣かせちゃったわね、竜也」

「いやいや、責任の一旦はアリサにもってそんな場合じゃないし」

「た、竜也君にまで置いていかれたら、な、なのはは……」

「ま、待てってほら。俺がいるから、なのは泣くなよ」

「う、うん。竜也君……」


も、もう限界なの。


「ああ、抱きつくなよ。アリサもそんな人が殺せるような目線を送らないでくれよ」

「竜也君……竜也君……」

「……そこで泣くなよ。」


竜也君の胸の中はとても温かかったの。



─SIDEOUT

急に俺の胸の中というか、寄り添って泣き出す、なのは。
一体何がどうなってこうなった?

意味が全然分からなかった。


「あんたは知らないの?」


アリサが驚いているような表情をしてた。


「なのはね、ちょっと家族内で揉めた、というほどでもないんだろうけど、問題があって、
それから孤独とか、独りということに敏感なのよ。だからいつも私たちが傍にいてあげるのよ」


俺はよくなのはの家にお邪魔することがあったが、
なるほど、確かに思い返してみれば、
家にいる時のなのは家族ではなく異様に俺に話しかけていた気もしなくはない。

俺には詳しいことは知らないが、いや、教える必要もないか。


「なのは」

「何?竜也君」


涙を流したせいで赤くなってる目を向けてくるなのは。
まだ寄り添ってるせいで非常に距離が近い。


「泣きたいときに泣けばいいじゃないか」

「うん、だから今泣いてるよ?」


さっきまでの、おどおどした雰囲気はなくなっていた。
そして逆にけろっとした表情だ。


「ここは、なのはの家でもないし俺がいるから気を遣う必要もないぞ?
アリサを見てみろ。この部屋の主よりも堂々としてるぞ?」

アリサは悪かったわね、と一言。

「うん、そうだね」

「それはさすがに聞き捨てならないわよ? なのは。」

「アリサは置いといてだ」

「放置かしら? 二人とも後で覚えておきなさいよ」

「だからな、なのは。何時でもここに来ていいぞ?何もないけどね」


実際この部屋には何もないからね。
あるのはベッドと勉強机とイスぐらい。
他にはクローゼットとか必要最低限のものしかない。


「いいの?」


今にも泣きそうな潤った目と、子猫のような小さい声で言わないでくれ。
かわいいじゃないか。


「ああ、俺がいいって言ったんだ。問題ないよ」

「うん、ありがとうね」


そう言うとまた身体を小さくして身を寄せて泣き出す、なのは。


「それ私のときにも言ったわよね?」

「気にしたら負けだ」


まったく今日はとんだ一日……ってまだ昼前かよ!
一体どれだけ長いんだ、俺の夏休み初日。

ありのままに─第8話─ 

未分類

時刻はお昼過ぎ。
俺が起きてからまだたった2時間しか経っていないのだが、
異様に長く感じる2時間であったのは確かだ。

起きたらアリサが居て、なのはを呼んで。

なのはが泣いて、慰めて。

もうなんか夏休みってこんなにハードなの?

まぁそんなことは置いといて、もうお昼か……

ぐぅ~、と誰かのお腹の虫がなる音がした。

全く空気の読めてないやつだな、そいつは。
まだなのはが完全に立ち直りきってないのによ!

…………

まぁ俺なんだが。


「あんた、場の空気を読みなさいよね……」


「はぁ」とため息混じりに、俺への空気読めない宣言。
俺が空気を読めていないというよりは、俺のお腹がなのだが、
そんなことを言えばアリサがまたうるさくなりかねないので、ぐっと我慢だ。


「にゃはは、ごめんね。竜也君。せっかく呼んでくれたのになのはこんなんで」

「別にいいけどさ。まぁあえて言うならあまり溜め込むなよ?
俺もアリサもいるんだし相談に乗るからさ」

「そうよ、いつもでも言いなさい!」


やはり、こういうときに頼りになるのはアリサだよなぁ、と改めて認識。


「それに、すずかだってい……あ」

「「あ」」


なのはを呼ぶことばっかし考えてて、その後は慰めてたからすっかり忘れてたよ。


「どうする? すずかも呼ぶ?」


一応同意を求めてみる。

俺たちが集まってるのに、すずかだけのけ者ではかわいそうだしな。

それに仲良し三人娘だから即答でいい返事が来るだろう。


「今日はいいかな」

「そうね、すずかはまた今度ね」

「え? 」

「どうしたの? 竜也君そんなに驚いた顔をして」

「いやいや、当然の反応だと思うよ?」


いつも一緒にいる3人娘。
なのは、すずか、アリサのトリオが解散の危機である。


「当然って、別にいつだって三人でいるわけじゃないわよ。
仲がいいのは事実として、ベッタリという訳じゃないんだから」


その言葉を普段の自分たちを映した鏡に言ってみてください。
もしくは、同じクラスメイトに……

みんな俺と同じかそれ以上に驚くと思うよ?


「まぁいいか。俺も少しお腹が空いたから台所から軽く食べられるもの持ってくるよ」

「お願いね」

「まぁ特に弄るものとか遊ぶものとかないけど、ゆっくり待っててくれ」


さて、台所に何かあったかな。
お菓子とかじゃあ、お昼にはあれだけど、
まぁ最悪の手段お菓子でもいいか。

近くのパン屋でお惣菜パンでもいいかなぁ。

そう思いながら台所に行くと、母さんが料理を作っていた。


「あれ? アリサちゃんたちは?」

「部屋で待っててもらってる」


そういえば、この母は俺が寝てるにも拘らずにアリサを部屋に上げたのだろう?


「母さん─」

「それはね、アリサちゃんがあまりにも焦りながら来たから、かわいくってね」


明らかに楽しんでる、面白がってる口調だった。
そう思われた、アリサもたまったものじゃないだろうな。


「それにしても、アリサちゃんだけじゃなくてなのはちゃんまでねぇ。
さすがお父さんの血を受け継いでいるというか、やる子ね竜也。」


いまいち言葉の節々に分からないものがあるのだが……
まぁこの母の言動にいちいち気にしてたら切りがないしね。


「それで一体何を作ってるの?」


この母はまぁ料理はできる方ではある。
そのため、最初こそは冷蔵庫すらなかったが、今はちゃんとある。

それでも、必要最低限の電化製品という言葉が後に付くが。


「お昼だから、なのはちゃんたいにも食べやすいもの。
あっさりして、夏に食べ物といえばあれしかにでしょ?」


あれしかないな。

風鈴と同じぐらいの夏の風物といっても過言ではない食べ物。


「「そうめん」」


まぁ確かにそれなら、なのはたちでも食べやすいだろうし、手ごろだね。


「盛り付けの用意するから手伝って。それが終わったらなのはちゃん達呼んできてね」

「了解」


こうみてても母と二人暮らしがもう板についているので、料理の手伝いとかは普通にするようになった。
料理って意外と楽しいしね。

そういえば、今頃なのはたちどうしたんだろう……




─アリサSIDE


竜也が食べ物を持ってくるといって、この部屋に残ったのは私となのはだけになった。

今日のなのはには、私ですらも驚かされたわ。

息切れしながらここに来たと思ったら、服には泥が付いてるし、
一体どれだけ焦ってたのよ。

そして、そのなのはに対する竜也の反応と行動。

一体どういうことなのよ、あれ?
私の時には優しさのかけらもないじゃない!

あ…でも、少し優しくされたわね。
本当にあのときの竜也は優しくって私は嬉しかったのに。

それなのに、なのはにも?

そうなんだ……竜也って誰にも優しいのね。

って、何一人で納得してるのよ、私。

ああ、もう!
なんか今日ずっとこんな感じだわ。
何でかしら、ホームじゃないから?

そうね、きっと私の家じゃなくて竜也の家で、ペースをあいつに握られてるからだわ。
別に悪い気はしないけど。

もっと優しくしてほしいわねってそれも違うわよ。


なのはは竜也に抱きついちゃうし……なんで、私が取り残されてるのよ。
べ、別に羨ましくはないけど……


「竜也君居なくなったからお話しようか、アリサちゃん」


不敵な笑みを浮かべながらこちらを見つめてくる、なのは。
なんか軽く背筋が凍るものがあるわよ。

普段のなのはからは想像できないわね。


「何の話かしら?」

「うん、なんで一人で勝手に竜也君と会ってるのかな?って思ったの」


一人で勝手にって、別に会うのに許可は要らないでしょ。

それに会いに来た理由は、

心配だったから……なんて言えない、口が裂けても言えないわ。


「別に、会いに来たのは暇だったからで─」

「暇だと竜也君の家に遊びに来るの?」


墓穴を掘ったかしら……
これじゃあまるで、理由もなく会いたいから会いに来たみたいに聞こえるわね。

守りじゃ不利だわ。
なら逆に攻めるてやるしかないわね、いつも通りに。


「そんななのはこそ何しに来たのよ?」

「え、なのはは竜也君が心配だったから来ただけだよ?
アリサちゃんと二人きりだったて言うのもあるけど……」


最後の方は声が小さくて聞こえなかったわ。
でも、そういうことを平然と言うのよね、この子。

これは、どう切り返しても私の分が悪いじゃない!


「それで、アリサちゃんは? なのは答えたよ?」

「う、そ…そうね」


まずいわね。
なのはに押されっぱなしだわ。

何とか話をそらさないと……


「竜也は一体どんなお昼ご飯を用意してくれるのかしらね」

「え…そうだね、楽しみだね」


よし、上手く乗ってきたわね。
後はこのまま押し切るま─


「でも、それは後でのお楽しみとして、アリサちゃんはどうなの?」


今日に限って、引き下がらないわね。
むしろ、私が押されてるわ。


「アリサちゃん、私ね。前にアリサちゃんとけんかしたときに分かったんだ」

「けんか、ね」


あの時は本当に大人気なかったというか、
恥ずかしいわね、今思い出してみると。

あれじゃあ、ただの我侭なお嬢様じゃない。


「言葉だけじゃ伝わらないこともあるって」

「そうね、確かにあるわね」

「だからね、アリサちゃん。ちゃんと教えて、その為にお話しようよ?」


なのは……なんか最後のお話の部分に迫力というか、
殺気に近いものを感じたわよ?

さすがの私でも後ずさりするぐらい……


「アリサちゃん、お話しようよ」

「ま、待ってなのは。なんか怖いわよ」

「怖い? アリサちゃんはおかしなこと言うね。
なのはこんなに笑いながらお話しようって言ってるだけなのに」


その笑みが怖いのよ、なのは。

この状況をどうすればいいのかしら……
このままじゃ私がやられるわ確実に!


「ご飯の準備が出来たぞって……なんか、やばい雰囲気だった?」

「あ、竜也君。お帰り♪別になんでもないよ? ね、アリサちゃん」

「え? そ、そうね。別に普通よ」

「ならいいけど。ちょっと台所まで来てくれ、お昼ご飯を食べるぞ」

「うん、分かった。行こう、アリサちゃん。お話はまた今度ね」


この状況を切り開いてくれたのは竜也だった。

本当に助かったわ。

これは感謝しても切れないわね。
今度お礼もしなくちゃ駄目かしら?

それにしても、なのは……化けるわね、将来的に。
何かの片鱗を垣間見た気がするわ。

その上、さっきまでの殺気が竜也が来た瞬間になくなったもの。

なんなんのよ、その切り替えの早さ。

一体なのはは私に恨みでもあるわけ?
まぁいいわ、また今度お話とか言ってたけど、二人だけにならないように気を付ければいいだけだしね。

竜也がいれば、平気みたいだから竜也の近くにいてもいいわね。

うん、それがいいわ。これは、私が自分の身を護る為だからしょうがないわね。

ありのままに─第9話─ 

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そうめん。
それは日本の夏という季節において大活躍をする食べ物。

そうめん。
それは日本の夏の風物といえるほどの食べ物。

そうめん。
あまりに手ごろに作れてしまうので、夏場ではよく出てくる食べ物。


「なんで、期待したお昼がそうめんなのよ!」

「そうめんを悪く言うなあああああ!!」


偉大な食べ物なんだぞ、そうめん。


「まぁまぁ、アリサちゃん。でも、なのはも少し期待はずれだったかな?」

「家の食卓に何を期待してるんだよ……」

「だって、ねぇ? なのは」

「だよね、アリサちゃん」


二人で顔を見合わせてお互いの気持ちを確認し合っている。

というより、何を期待したんだ? この二人は。


「竜也君が腕をかけて作ってくれると思ってたから」

「その発言は俺じゃなくて、母さんに失礼だぞ?」

「いいわよ、竜也。ごめんね、なのはちゃん」

「いえ、そういうわけじゃ…」

「今度は竜也に作らせるわ」

「是非、お願いします」


作らせるって……

そして即答するな!アリサよ。

本人の意思は関係ないのでしょうか?

料理は愛情が大切なんだぞ?
無理やり作らせても駄目だぞ。


「それにな、アリサ」

「何?」

「そうめんって美味しく作るの難しいんだぞ。
そうめんってよくめんが絡み合ってて食べにくいだろ?」

「そうね、あれって結構嫌なのよね」

「うん、あれはなのはも苦手かも」

「それを解決する為の工夫がこれにはされているんだぞ?
実際にそうめんを取ってみれば分かると思うよ」


そういうと二人はテーブルの中央にある、そうめんの入ったざるに手を伸ばし、そうめんを取った。


「あ、すごい取りやすいよ」

「しかも、そうめんがある程度束になって食べやすいし」

「そうだ、そうめんを茹でる前に束になった状態で紐で結ぶことによって、絡み合うのを防いだというわけだ」

「い、意外に料理上手だわ……」

「作ったのは、母さんだけどね」


この作り方を教えたのは俺というか、
とある美味しい漫画に載ってたやり方を真似しただけだけどね。

あの漫画見ると、ついつい試したくなるから不思議だよねー


「そして、つゆには鶉の卵お好みでどうぞ」

「うん、使ってみるね」

「無駄にそうめんにこだわってるわね」


なのはは楽しそうにそうめんを食べてくれるのだが、
アリサはどこか呆れたといった感じだった。

しかも、無駄って……

し、しょうがいじゃん。
去年の時とか母さんが楽だからって、ほぼ毎日そうめんだったから、工夫して食べないと飽きるんだよ。

そういった立派な経緯があってこうなったんだから、無駄じゃない。
むしろ必死だ。


「そういうなら、アリサは食べなくていいぞ。せっかく俺も手伝って作ったのにそういうなら」

「え……た、食べないだなんて言ってないわよ!
そんなに、食べて欲しいんなら食べてあげるわよ」

「別に食べて欲しいなんて思ってないから、食べなくていいぞ?」

「う、うるさいわね。竜也の作ったそうめんが食べたいです!これで満足かしら?」


何故そのセリフを言うのに、顔が真っ赤になってるかは知らんが……

まぁいいか。
食べてくれるみたいだしね。


「ああ、満足」

「たく、何で私がこんなことを言わなくちゃ……でも、無駄に美味しいし」

「何か言った?」

「なんでもないわよ。美味しいだなんて思ってないわ」

「ふむ、その発言は母さんに失礼じゃ……」

「あんたに言ったのよ!」


いやいや、明らかに作った人に対する侮辱でしょ?
俺は手伝っただけで、ほとんど作ったのは母さんなんだし。

そして、その侮辱の言葉を言われた母さんだが、
さっきからずっとニコニコしてて、逆に怖いというか不気味だ。

まるで、俺達のおしゃべりを楽しんでるような……

そんなことを思いながら母さんを見てると、目が合った。

そうすると、少し悩む素振りをした。


「あら、私邪魔かしら?」


邪魔って何の?
まったく、相変わらず素っ頓狂なことを言う母だ。


「そうね……あ、母さん急用思い出したから、ちょっと買い物行って来るわね」


そう言うと直ぐに身支度を整え、あっという間に家を出た。
そうなると、家に残されたのは俺となのはとアリサだけになった。

急用って何だよ。
しかも去り際の、空気読んでるわ私、的な顔はなんなんだ?

非常に腹がたつ顔だった。
なんか、してやったりみたいな雰囲気だったし。

残った三人は呆然としながらも、とりあえずは目の前にあるそうめんを食べようと思い、
ズズズッというそうめんをすする音だけがしばらく部屋に響いた。






そうめんを食べ終わり、再び俺の部屋と戻ってきた、三人。
しかし、やることがない。

俺の部屋には……もういいか。
何もないから遊び道具すらも……


「あ、麻雀ならある」

「なんで4人いないと出来ないものがあるのよ!」

「いや、父さんが好きでさ~」

「あれ? 竜也君ってお父さん入れても3人だけなんじゃ」

「そうだよ。しかも、母さん出来ないから一騎打ちだったなぁ」


懐かしいな。
父さんと麻雀を打った日々。
全然役覚えられらなくて、ぼろぼろにされてたけど……

父さんは相手が弱いのに楽しそうだったなぁ。
『なんだ、竜也それじゃあ、終わってしまうぞ。』とか言ってからかいながらも、
手加減無しでやるんだもんな~

大人気ないと思うけど。


「か、悲しすぎるわ」


アリサが俺に同情して、なのはがにゃははと失笑。
まぁ仕方ないね。


「でも、本当に何もないわね。一体どんな生活してるのよ?」

「そうだよね。なのはの家に来ても剣術の練習とご飯食べて、なのはとしゃべるだけだし」


ふむ、そういえば俺はこの家で何をしてるんだろう……
少し考えてみようかな。

剣術の鍛錬のために朝早起きして、なのはの家へ。

そのまま学校行って、終わったらなのはの家で再び鍛錬。

その後は、食事とお風呂入れてもらって、なのはの部屋に行ったりする。

ある程度時間が経ったら家に帰って、勉強して、就寝。

あ、でもこれからは魔法の練習と勉強もあるから、寝る前に付け足して……


「うん、この家では寝る直前までいないね。起きたらすぐになのはの家だし」

「あ、あんたね。それじゃあ、家としての機能ほとんどないじゃない!」

「竜也君はいつもなのはの家にいるからね、竜也君専用の場所もあるくらいだし。
そう考えると、なのはといつも一緒だね。竜也君」


ちょっと嬉しそうに、そして勝気にいうなのは。

確かになのはの家にいることが多いから、なのはとは必然的に行動が一緒になるんだよな。
そのせいか、この部屋もとい家に何もないのは。


「さすがにそこまで聞くと呆れるわね。あんたにもそうだけど、あんたのお母さんにも」


今日、何度目か分からないアリサのため息交じりの口調。
ため息が妙に似合っているように感じるのは気のせいだろうか。


苦労人なんだな、アリサは。

「あんたのせいでしょ!?」

「俺がいつ苦労させた!?」


あと、心を読むのも止めてほしいかな。


「昨日から……」

「昨日から、何?」

「なんでもないわよ」


昨日からの続きが気になるけど……
まぁ無理に言わせてもしょうがないか。


「そういえば、なのははなんで慌ててきたんだ? ここに。
確かに誘おうとしたのは俺だけどさ」


なのはを使ってアリサとの気まずい雰囲気から脱出しようとしたが、
その話をする前にここに飛んできたからな。


「あ、うん。竜也君が昨日ずっと連絡がつかなかったから、心配してきたんだよ?」


そういえば、なのはからも着信あったもんなぁ。

それで、心配して家にまで飛んでくるって……

まぁ嬉しいんだけどさ。
そこまで心配してくれるのはね。

ただ、心配しすぎじゃないか?
たった一日、もないか。半日連絡がつかないだけで……


「まぁありがとうな、なのは。心配させたようで悪かった」

「うん。別にいいよ」


そういうと満面の笑みをみせてくれた。

その笑みは俺には眩しすぎて、真っ直ぐ見るのは厳しい。

で、でも、かわいいからついついちら見を……

─チラッ
──キラキラ

や、やばい。

─チラッチラッ
─キラキラキラ

まるで子猫のような、純粋な瞳とか……
……中毒になりそう。


「い、いつまで二人でいちゃついてるのよ!!」

「え…あ、うん。ごめん、アリサちゃん」

「ど、どうしてそこで謝るのよ!」


あ、終わってしまった……残念。空気読めてないな、アリサは。
ってそうじゃないだろ、俺は。


「そ、そうだぞ、なのは! 危うく……」

「え、竜也君まで!? 危うく?」

「いや、なんでもない」


危うく見惚れるところだったとは言えないよな。
でも、あのなのはかわいかったなぁ。

いつまでも、こんななのはでいて欲しいな。


「まったく、あんたたちは」


アリサがまたため息交じりの……

アリサは本当に苦労人だね!


こんな感じでずっとしゃべってたら、あっという間に時間が過ぎていった。


「じゃあ、今日はもうこんな時間だし帰るわね。また明日来るわ」

「じゃあね、竜也君。明日来るね」


うん、いつ来てもいいとは言ったけど、明日すか……
それになのはには、明日からまたなのはの家で会うと思うんだけどな。

まぁいいか。
二人も今日は楽しんでもらえたみたいだし。


「ああ、じゃあまた明日。楽しみに待ってるよ」



一応玄関までは見送った。
外にリムジンが駐車してあった気がするが、気のせいじゃなかっただろう。

時刻はすでに夕方。
さて、そろそろ魔法の練習でもしようかなと思った矢先にケータイがなった。

どうやら、電話のようだ。

電話の相手が誰かも確認せずにとりあえず通話に出た。


「もしもし、相沢達也です」

『ケータイにかけてるんだから、竜也君以外が出たらビックリするなぁ』

「うん? その声は」

『昨日メールも電話もしたのに返信がないからこっちから電話したんだよ?』

「はは、ごめん。すずか」


アリサ、なのはの次はすずかですか。
本当に忙しいなぁ、夏休み初日。

ありのままに─第10話─ 

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昨日にメールと電話?

そんなのが着てたかなと思い、着信履歴、メール履歴を見ると何も残っていなかった。

すずかの思い過ごしかなと思ったが、
そもそも、かけてきた張本人そんなわけがない。

とすれば……


「アリサの仕業か……」

『アリサちゃんがどうしたの?』

「いや、今日アリサがうちにきてね。
着信とかメールとかのもろもろを削除しされたから、すずかのもなくなってたって言うこと」


自分のだけを消せばいいのに、なぜすずかのまで?
そういえば、なのはのも消えてるし。

うむ、不思議だ。


『そう。アリサちゃんもずいぶん心配してたよ?』

「え?誰を?」

『誰をってたつ……あ、そっか。ううん、なんでもないよ』

「誰をだよ……」


誰を心配したんだよ。
すずかも言いかけてやめちゃうしさ。

たつ……たつのこ!?

無理があるか。
妥当に考えたら俺かな、竜也だし。
でも、どうだろうな……アリサが俺を心配、か。

もし、それが本当なら普段のアリサの様子からは思いがけない行動だよな。
というか、そう思ってのあの発言ならかわいいと思うしなぁ。

だけど、人を弄ってばっかしで、あんまり周りを気にしないタイプでお嬢様だし。

ああ、でもあれで結構友達思いだからなぁ。
ありえない可能性ではないけど。

本人に聞くのが早いんだけど……

うん、絶対に答えてくれないね。


『アリサちゃんのことはいいとして』


アリサのことはいいとしてってかなりひどい言い様だと思うよ?
今日のアリサとなのはの発言といい、この3人娘は意外と仲が悪いのか?

それとも、俺が現実以上に仲良しだと思ってるだけとか。


『私も竜也君のこと心配したのになぁ』

「え?そうなのか」

『当たり前だよ。親友だし私の対等な相手なんだから、いなくなったら困るよ』

「後ろの言葉は聞いてなかったことにして、ありがとうな」


親友という言葉はとても嬉しかった。
まだ、この町に着てから1ヶ月しか経ってないのに、こうやって交友関係を持てた証だからだ。

まぁそれもなのはのおかげでもあるんだけどね。
そこらへんはすごく感謝してるんだよね、なのはには。

それにしても……対等な相手ね。
すずかまでそのことを気にしてるのは意外だったかな。


『ううん、当然のことだよ』


すずかはどこか誇らしげにしながらも嬉しそうに言った。

俺としても当然と言い切ってくれるあたりが本当にいい。
こういうスパスパというか、丁寧でありながらもハッキリ言ってくれるのは聞いてて清々しいね。

なのはも、丁寧だけどすずかに比べると幼いイメージだし、
なにより甘えっ子という感じなんだよね。

なのはの家ではそんな雰囲気ではないんだけど、二人だと結構ベッタリというか、
まぁ甘えてくるんだろうな。

それを別に俺は嫌じゃない……むしろ、好きというかかわいいな。
うん、かわいいな。

じゃれてくる子猫みたいで、しかも癒し系だ。

今日もそんな感じだったしなぁ。


それに対してアリサは、魔逆?
物事をスパスパ言うし、ハッキリさせるしね。

何より甘えないよな。

でも、ちょっとしたことで顔赤くなるのはかわいかったな。
普段見ない姿だから余計なのかな?


そして、そのずずか。
この二人のバランサーだよな、正直。

落ち着いた雰囲気に、おしとやかで、でもその中には熱いものがある。

うん、とても熱いものがあるよね!
あの時とかすごかったよ……

まぁそのおかげもあり、アリサとなのはとは、
また違う意味で親しくなったわけだからいいんだけどさ。

だから仲いいんだろうなぁ。
この三人は。

癒し系のなのは。
リーダーのアリサ。
バランサーのすずか。

お互いがお互いをカバーしあってて。

でも、あえて言うなら他にも、天然系とかギャグ担当とかいたら素晴らしいバランスだな。
まぁありえないと思うけどね。

それに今日分かったが、三人とも心配性でお節介なんだな。

 
「にしてもだ」

『うん?』

「経った一日連絡つかない程度で、これは心配しすぎなんじゃないか?」

『ううん、そんなこと無いと思うよ?』

「そんなもんなのか?」

『そんなもんなんだよ』


目の前にいてしゃべってるわけじゃないから分からないけど、
おそらく『だよ』って言ったときに笑顔になってたんだろうなぁと思う。

うん、推測でしかないけど。
すずかって綺麗な日本人の女の子って感じだから、笑顔が似合うんだよね。
なのはとは違った意味で。

絵になるって言うのかな?


「じゃあ、お節介な三人だな」

『そうだよ? 今頃気付いたの、竜也君』

「まぁね、といってもまだ1ヶ月程度の付き合いだろ?」

『うん、でも、あんまりそんな感じしないよね』


そう言えば、そうだね。と続けた。

仲がよくなるのに時間は関係ないということかな。


『今日は何をしてたの? 竜也君は』

「いきなりだね」

『う~ん、そうかな。でも、少し気になったから』

「気になった……ね。大したことないぞ? 今日はなの─」

『なのはちゃん!?』

「そんなに驚くところか? あとアリサも来たぞ」

『アリサちゃんまで……なんで私を呼んでくれなかったのかな?』

「ああ、それはだな。二人が……ん?」

『二人が、どうしたの?』


まてまて、竜也よく考えろ!
もし、もしもだよ。
ここで、アリサとなのはが誘うのを断ったからなんて言ったら、まずいんじゃないか?

まずいっていうのは、その……あれだ。

解散の危機ってやつじゃないか?
仲良し三人娘の。

いや、そもそもすずかが二人にのけ者されたからといって二人を恨むか?
俺と遊んだだけだぞ?

だったら平気な気がする…するけど、なんか危ない気がする!
主に俺の身に何が起こりそうだ。

根拠もないただの勘だけど……

どうするべきかな……本当のことを言ってもいいけど。
嫌な予感がする。

予感を信じてみるか。
嘘をつくのは嫌だけど……


「二人がね、すずかはたぶん忙しいから呼ばない方がいいって気を遣ったからかな」


く、苦しいよ。
この嘘は苦しいよ、自分で言っといてなんだけど。

それにいてから気付いたんだが、
これってばれたときってやばいような気がするぞ。


『そう、なんだ。気を遣ってくれたのは嬉しいけど、ありがた迷惑かな』


あれ、なんかこの発言は俺にとっては予想外というか、
二人にありがた迷惑なんて言っちゃったぞ!?

聞いちゃいけない言葉を聞いたような……


『あ、今の聞かなかったことにしてね。内緒だよ、竜也君』


ああ、でも、かわいく言われたから内緒でいいかなぁ。
てか、言ったらまずいんですよね? これって。

俺の心の奥底にしまっとくとするか。


『あ、いつの間にかこんな時間だね』


時計はすでに9時を回っていた。

すずかとしゃべってると楽でいいなぁ。
あの二人に比べて落ち着いてるからかな?


『じゃあ、今度は私も誘ってね、竜也君』

「了解。おやすみね」

『うん、じゃあ、おやすみなさい』


そう言って、すずかも電話を切った。

ああ、本当に長い一日だった。
でも、今日はまだ終わってない。

俺はこの後は魔法の勉強と練習をして、学校の宿題をやらなくちゃいけないからね。
ハードもいいところだよ……




─すずかSIDE

昨日も連絡がつかなかった、竜也君にようやく連絡が取れた。

竜也君は知らない、私が昨日どれだけ大変だったかを……

お泊り会のことで連絡をしようとしたのに、連絡が取れなかったので、
どうしたもんかと思ってるときに、アリサちゃんから電話が来た。

アリサちゃんからはよく電話は来るし、別に不思議なことじゃないから大して気にせずに電話に出た。

その電話の内容としては、竜也君を心配しているような感じだった。

実際に心配してるんだと思うけど。

アリサちゃんは自分の感情を素直に言うのが、苦手だけど私には分かる。
それにしても、アリサちゃんが他の人の心配を……

アリサちゃんは身内には優しいタイプだからね、
それほどまでに、竜也君が自分達の中に馴染んでるってことなのかな?


私はあれがなければこんなにまでは親しくなってなかったと思う。

そうじゃなかったら、なのはちゃんの友達の一人ってだけだったと思うし。
親友になっていないと思うなぁ。

ぶつかり合った方が、仲良くなれるっていうジンクスみたいのが出来ちゃった感じだけど。
でも、この場合はそれで仲良く慣れたからいいのかなぁ。

アリサちゃんとなのはちゃんはあのけんかで。

竜也君とはあれで……

私って誰かとぶつかり合わないと友達になれないのかな?
あ、でもそれを言ったらアリサちゃんも同じか。


それにしても、竜也君とこんなにしゃべったの初めて……かな?

そもそも、男の子とこんなにしゃべるのが初めてかもしれない……

あっという間に時間が過ぎるほど、楽しかったなぁ。
思わずたくさん笑顔になっちゃった。

竜也君に見せられなかったのが残念、かな。

今度は電話じゃなくてあって話したいな。


『すずか、部屋に入るよ?』


あ、お姉ちゃんだ。
こんな時間になんのようだろう?


「いいよ」

「お邪魔しま~すって、なんだか嬉しそうじゃない? 何かいいことあったの?」

「そんなに嬉しそうかな?」

「少なくとも私の目にはそう見えるよ」


そうなんだ。
やっぱり竜也君とのおしゃべりが楽しかったからかな。


「うん? もしかして、すずか好きな人でも出来た!?」

「え、違うよ、お姉ちゃん」


お姉ちゃんはせっかちだなぁ。
私の周りにはまず男の子だって少ないのに。

一番近くて竜也君だよ?
顔は綺麗だし、優しいとは思うけど……

好きとかじゃないんだよね。

アリサちゃんとかなのはちゃんとかと比べると、なんか違うんだよなぁ。
親友ではあるんだけど……

大切?
ううん、二人も大切な友達だし竜也君も当てはまるけど。

まだ、よく分からないなぁ。

ありのままに─第11話─ 

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俺もすずかが言ったように、つい1ヶ月前からの付き合いとは思えない親しさだなと思う。

例えばなのは、
なのははあの三人の中では、最も接する機会が多かった。
そういう意味でも非常になつかれているような気がする。

すずかは最初は興味本意で俺に接してきたと思う。
なのはの知り合いというのが興味をそそったんだろうな。

でも、ただそれだけだったはずだ。
俺としてもそんなに気にすることもなくといった感じだったし。

普通ならなのはの知り合いの俺となのはの友達のすずか、という関係だけで終わってたと思う。

あのきっかけがなければ……



引っ越して間もないころの、3回目の体育の時間。


「今日の体育は、ドッチボールをやります。
しかも、男子対女子です」


先生のこの一言が嵐を呼んだ。

男子勢の『ええええええええ!?』という不満の声の。

俺もそう言った男子勢の一人だけど。

俺からすれば、女子相手にボールをぶつけるなんてことは出来ない。
本気を出そうが出さなくても。

それを人は男のプライドという……と思う。

しかし、男子勢の考えはそんな男のプライドとかそういうものから出たものではなかった。
それが判明したのが次の男子の言葉。


「先生、それじゃあ、僕たち勝てませんよ」

「そうだそうだ!不平等だぞー」

「男女平等にするべきだ」


まるで、男子が女子に勝てないかの言いようだった。


「勝てないんじゃなくて、勝ったことがないんだよ」


俺の疑問に一人気付いたのか答えてくれた。


「むこうには、すずかがいるんだぞ? 勝てるわけが」


その発言を聞いた男子勢が全員、うんうんとうなずく。
つまりは、女子側にすずかがいるから勝てないということだった。

確かにすずかは運動神経はすごい。
それは俺もよく分かるけど、球技でもすごいのだろうか?

ある男子いわく、「あれは鬼神」

とある男子いわく、「あれはドッチボールの申し子」

とのことだった。

う~ん、でも実際に見てみないことには、そんなことを思っていると4人の男子が立ち上がった。


「ふふふ、今日は俺たちに任せてもらいたい」

「我らが内外4兄弟!」

「俺達のチームワークですずかを倒して見せよう」

「この日のために、鍛錬を重ねてきた!」

「「「見せてやろう!俺達の力を!!」」」

『なんか分からないけど、すごい感じがするぞ!』

『勝てる、これで俺勝てるぞ!そんな感じがする』


急に現れた…訳でもないけど、ものすごく気合の入った、4人がそこにはいた。
そして、その4人の気合に引きづられる形で男子勢の士気が上がっていった。


「あんた達バカじゃないの?」


と呟く、呆れたアリサがいたのを知ってる男子は俺しかいないと思う。
俺もそう思うし。


「先生!その勝負、引き受けましょう!」


4人組のリーダと思われる男の子が先生に宣戦布告をした。



ドッチボールがはじめって、10分程度の時間が経っただろうか。

あの4人組は序盤、非常に効率のいいテンポで相手をアウトにさせていった。
一人、また一人、残り3人といった感じで。

こちら側も一人アウトにするたびに、すずかにボールを拾われ、
地味に削られているが、それでもこちらの方が優勢だった、序盤は。

4人組は、一人を内野にして外野を3人で囲み華麗なボール捌きでアウトにしているのだが、
それに対して向こうはすずか一人。
いや、リーダのアリサを含めればこっちの半分の戦力で撃墜している。

途中から4人組の内野担当が狙われ始め、アウトになったが、
外野と交代や、チームワークを使ってアウトにして内野に戻ったりと上手くやっていた。

相手の陣地内に残ったのは、アリサ、すずか、なのはの仲良し3人組だけとなり、
肝心のすずかはおとせずじまい。

その結果、内野担当も再びアウトにされ、残ったのは俺のみとなってしまった。


「あんた、これまで一回も投げてないじゃない!」


そう、俺は目立つのは4人組に任せひたすら逃げ回っていた。
時には味方を盾にしたりして。


「逃げるが勝ちだろ?」

「それじゃあ、終わんないのよ!」

「いいよ、アリサちゃん。私が当てればいいんだから」


次は絶対に当てる!といった表情を見せるすずか。

普段とは違う雰囲気だ。
いつもはおっとりとしているのに今は燃えている。

それはもう、背景に「ゴゴゴゴゴ」なんて見えるほどに。

しかし、そのすずかの後ろにはなのはがいる。


「それで、なのは何故すずかの後ろに隠れてるの?」

「え? いつもここが安全だから」


運動音痴ななのはからすれば、確かに鉄壁の要塞だよなすずかの後ろ。
でも、すずかが避けたときはどうするつもりなんだろう?

「にゃ!」なんて言ってるなのはが目に浮かぶよ。


「それじゃあ、いくよ!」


そう言うが早いか、すずかがボールを投げてきた。
小学1年生が投げるとは思えない弾だ。

うん、誤字じゃないよ?

銃弾だもん、あれ。
初見なら確実にアウトだろう。

しかし、俺もただ見てただけではない。

飛んできたボールを胸の位置でがっちりとキャッチして見せた。


「え? 嘘……」

「すずかの弾を捕っちゃったわよ……」

「さ、さすが竜也君なの」


三人の驚きもすごかったが、他の男子勢の驚きもすさまじかった。


『うぉおおおおおおお、これで勝てるぞ!』

『ついに、俺たちが勝つときに!』

「「「「我ら4兄弟も無駄死にではなかった……」」」」

「月村さんのボールを……捕った?」


などなど、すごかった。
ちなみに先生までもが驚いている。

まぁ俺としても、女の子に負けるわけにはいかないので、
ここはしっかり意地を見せた形になった。


「よし、すずかを狙うと見せかけて、アリサ!」

「ふぇ!?」


不意を突かれた、アリサは間抜けな声と共にアウトになった。


「い、今の流れ的にすずかを狙うべきでしょ!」

「そんな流れなどないわ!」


ただでさえ不利な状況だ。
卑劣な手を使わざるを得ない。

男のプライドはどこいったって?
何それ? おいしいの?


「やるね、竜也君。今度は本気で投げるよ、覚悟してね」


今までのは本気ではなかったと申すのか!?
覚悟してねって体育の授業だよ? これ。

俺が人のこと言えた義理ではないと思うけど。

それにしても本気か。
今までの通りで捕るのは厳しいということになるだろう。

ということは、対策が必要なんだがどうやらそんな時間を与えてはくれないらしい。


「いくよ!」


そういって放たれた、ボールは見るからに速くて重たい一撃。
ただ壁になって受け止めるだけでは、はじかれてしまうだろう。

となれば……

向かってくる弾のスピードに合わせて身体をクッションのように引き込みながら、包み込む。
ボールの勢いを殺すのではなく、流れのままに受け止める。


「嘘……私の本気が……」


すずかはありえないといった感じだった。
そしてその目の中には畏怖がって酷いなぁ、俺はただの普通の男の子だよ?


「じゃあ、次は俺のターンだね」


俺はすずかに決して劣らないボールを投げ返した。
しかし、すずかはすでに自分の本気の弾が受け止められたことに絶望している。

よって、俺の投げたボールに反応できずに本気の一撃が直撃した。

ボコッ!という鈍い音が聞こえた瞬間、バタンとすずかが倒れてしまった。


「す、すずかちゃん!」


近くにいた、というより後ろにいたなのはが慌ててすずかに駆け寄る。
そして、アリサも直ぐに駆けつけた。


「ああ、気絶しちゃったわね」

「これって俺が悪いのか?」

『他にいる?』


満場一致だった。
さっきまでノリノリだったくせに!


「分かったよ、俺が負ぶって保健室に行けばいいんでしょ?」

「え、そこま─」

「いいよ、少なくとも多少の責任はあるし連れて行くよ」


俺としては、言ったように責任云々もあるが、この気まずい雰囲気を何とかしたかった。
というより逃げたかった。

なので、すぐにすずかを背負って保健室に向かった。




「あれ、ここどこ?」


ここに運んでから、約30分。
もう直ぐ体育の時間が終わる時間だった。

すずかは本当にぐっすりと眠っていた。
気絶してるはずなのに、時々嬉しそうな顔をしたり、
悔しそうな顔になったりしてたのをずっと見てたのはここだけの秘密だ。


「保健室だよ」

「あ、そうか……竜也君に負けたんだっけ?」

「負けたというか……すまん、ボール当てちゃって」

「え? う…ううん、お互い様だよ。私も本気だったんだから。それにもう大丈夫だから」


そう言うすずかのかをはまだ少し、青ざめているような気がする。
無理をして言ってるのだろう、俺に気を遣わせまいと。


「無茶はしちゃ駄目だよ。まだフラフラじゃないか」

「え、うん。でも、次の授業もあるし……」

「大丈夫だって、先生の方にも言っといたし、俺も付き添うように言われてるから」


あのあと、担任の先生がここに顔を出してきた。
そのときにすずかの容態がよくなるまでは教室に戻ってくるなと言われた。

なんて無茶苦茶なと思ったが、教室の雰囲気が悪いような気がしたから素直に指示に従った。


「ごめんね、わざわざ付き合わせちゃって」

「全くだよ」

「え?」

「ちょっと本気を言っただけだよ、気にしないで」

「ほ、本音なの!?」


事実本音である。
こんなかわいい子と、じゃなくてあんまりしゃべったことない人と一緒にいるのが気まずくてしょうがない。


「でも、変に気を遣われるよりはいいかな。意外に優しいんだね」

「え?」

「ううん、何でもないよ。なのはちゃんが言ってた通りだなと思っただけ」


一体なのははすずかに何を言ったのだろうか……


「それにね、本気で相手して負けたのは初めてなんだ」

「へぇ、そうなんだ」

「そこ軽く流しちゃうんだね、ちょっとシリアスな部分だと思うんだけど」


大して興味ないことだから。

俺からすれば相手が本気であろうと無かろうが、
俺自身がやりたいようにできればいいだけだからね。

自分で思いながらなんと自己中なと思うけど。


「じゃあ、俺は先に戻るわ」

「え? 看病してくれないの?」

「だって平気そうじゃん」

「え……ああ、駄目かもしれない。フラフラするよ、竜也君」


だからって自分でベッドの上で頭をクラクラさせるなよ。自分で酔ってるだけじゃん。
それにわざとらしいぞ。


「だから、まだここにいてね」


そう言うと、素晴らしい本当にすごい綺麗な笑顔を見せてくれた。
もしこれで断ったら、男のプライドもあったもんじゃないだろう。


「しょうがない、ここにいるよ」

「ありがとう、竜也君」


素晴らしきかな、男のプライド。



今回のおちは、
この後戻った教室で男子勢に英雄と呼ばれるようになったことだ。



ありのままに─第12話─ 

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すでに八月は初旬。

八月の初旬といえば、夏休みとしてはギリギリ序盤に入ると思う。

夏という単位においては、もっとも盛んな時期。
最も暑い時期といっても過言ではない。

実際に暑いのだから過言な訳がない。

外では元気よくミーンミーンと油蝉が鳴いている。
この鳴いている音に夏だなぁと思わせると同時に、暑さも倍増にさせれる気分だった。

そして、もうすぐお盆休みがやってくる。

お盆というのは親が休みを取れる時期という意味合いでもあると思う。

俺たちが夏中は休みでも、親はそうではない。
そのため、実際に父さん母さんと一緒に出かけたり、
遊んだり出来る時期であるという意味だ。

まぁうちの場合は父さんは死んでいないし、母さんはいつも翠屋にいて、
俺はなのはの家にいることが多いので、お盆があろうとなかろうが関係ないんだけどね。

結局俺は、初日を除いては毎朝毎夕にここに来て鍛錬をしている。

未だにランニングと素振りの基本練習がメインだけど、
たまに恭也さんや美由希さん相手に試合をすることがある。

やっても全く相手にならず、ぼろ負けだけどね。
それでも、普通より─普通のレベルがわからないが─は上達が早いらしい。

さっき言ったとおり毎日剣術の鍛錬もしているが、ほかにも毎日していることがある。

魔法の練習と鍛錬だ。

初めて魔法を使った日の次の日。
つまりは、アリサが家に怒鳴り込んできて、なのはが泣いて、すずかと電話した日だ。
その日にも魔法を練習した。

まずは魔法に慣れることといわれ、マルチタスクという複数のことを考えられるようになる魔法だっけ?
を毎日やっている。

正確には、念話というテレパシーみたいな魔法を使いながら母さんと魔法の勉強をしながら、夏休みの宿題をやりながら、魔法のイメージトレーニングをやっている。

これが最初は滅茶苦茶つらかった。

二つぐらいなら何とかできたのだ、でもそれが三つとなると頭の中がパンクして、
くらくらして来て、目が回ったり、異様に疲れたりした。

でも、毎日やっていくうちに慣れてきて今ならお手の物である。

『人間の最もすばらしい能力は適応力である』といった人がいるようないないような……
全くそのとおりだと思う。

それが出来るようになったのを見越してか、次の段階の練習になった。

とてもシンプルな練習だ。

母さんが魔法の攻撃をしまくるから、避けるか防御しろ!
もしくは、私の動きを抑えてみろ!攻撃以外でな!
と言うものである。

もちろんそんなのいきなり言われても出来るわけが無く、あっという間に怪我だらけ、ボロボロである。

そんな怪我した俺を見て、それじゃあ動けないから自分で魔法で治せや!
とのこと。

全く鬼である。
鬼以外の何も出も無かった。攻撃しててもすごく楽しそうな笑顔なんだなこれが。
余計萎えてくる。

もちろん、ただ攻撃してくるだけでなくアドバイスをしながら、また、うまく抑えたりかわせたり出来るようにしているのだから、文句が言えない。

なので、なお性質がわるいというのだろうか、
むやみやたらなら、文句のつけようがあるのになぁ。

そんな怪我の絶えない毎日だ。
もちろん、そんな非日常ともいえるような毎日ではあるがそれだけではない。

ある日は家で、ある日は翠屋で、ある日はアリサの豪邸、ある日は……

日時場所を変えて、毎日のようにアリサ・なのは・すずかに会っている。

特になのはは会っていない日は無い。
必ず朝か夕方の何れかはなのはの家にいるわけだから、逆に会わないわけが無い。

まぁおかげでなのはが俺に懐いちゃったなぁ。
子猫みたいに後ろについてくるからね。

そんな予断はここまでにして、今日もそんな日常の一つである。

今俺は朝の鍛錬を終えて、なのはの家にいる。ここまでは変わらない。

なのはの家なので、なのはもいる。
うん、いつもどおりだ。

そして、アリサやすずかもいる。
今日はなのはの家で遊ぶ日だったといえるだろう。


「みんなでお泊り会って楽しそうだよね」

「そうね、夜もずっと一緒って初めてだから私も楽しみだよ」

「今日はゆっくりしていってね。竜也のお母さんも張り切っちゃうから!」

「母さんはこの家の人じゃないだろ……」


つまりは今日がお泊り会の日である。


「ここじゃ、しゃべりにくいからなのはの部屋に行こうぜ」

「うん、そうだね」

「なんであんたが先導を切るのよ……」


実質この家、なのはの家は俺の家以上に俺の家なのでしょうがない。
なので、なのはの部屋にも気兼ねなく俺が先陣を切って入っていく。


「お邪魔するわよ」

「お邪魔します、なのはちゃん」

「どうぞ、ぞうぞ。汚い部屋ですが、ゆっくりしていってね」

「竜也君の部屋じゃないの!それに汚いって毎日掃除してるもん」


ぷんぷんといった様子だ。
俺の知らないところで意外と努力してるんだな、なのは。


「してるよ!竜也君が知らないだけで」

「そうか、そうか偉いな、なのは。はい、お手」

「にゃ!?にゃ~ん」

「よし、よく出来ました。」

「何で、飼いならされてるのよ。なのは……」


にゃはは、と笑う子猫のなのは。
この夏休み中、餌付けを怠らなかったからな。


「あんたは夏休み中に何をしてるのよ……」

「なのはとじゃれる事はよくやってたな」

「うん、よく遊んでるの!」


おかげでこの手のことはお手の物だぜ。
お手だけに。

ここまで一切出番のないすずかさんですが、そこらへんはどうなんだろう?


「なのはちゃん楽しそうだなぁ」

「え!?すずか!?」

「すずかもやってみる?」

「え、私はいいよ、別に……」

「お手」


沈黙が場を支配する。
なのははすずかに期待の目線を送り、
アリサは呆れたご様子で俺を見つめている。

俺は相変わらず右手を出したままだ。

そしてすずかは……


「…………」


お悩みのようだ。
相当悩んでいると見える。


そして、決心を固めたのか、決意の目をして。


ポンっと俺の手に手を載せた。
そして直ぐに引っ込めた。

みるみる顔が赤くなってるのが分かる。

なるほどなるほど、これはなのはとは違うかわいさが……

そして、今にもプシューという音が聞こえそうなほど真っ赤になって止まった。
思考が停止したみたいだ。

これでしばらく、すずかはダウンかな。


「すずか……」

「すずかちゃんも仲間入りだね!」


すずかに呆れ果てているアリサとは違い、なのはご満悦のようだ。
もちろん、俺もご満悦。

これはもしかしたらすずかも飼いならせるかも?

だから俺も一言。


「すずか、大切なのは慣れさ!」

「…………」


反応がないただの屍のようだ。

言葉の通り、ようは慣れだと俺は思う。
なのはも最初の頃は恥ずかしそうに……


「どうしたの? 竜也君ずっとこっちみて?」

「はぁ~」

「何でそんな深いため息するの!?」


してなかったな!
なのはは最初から恥ずかしさとか慣れと関係なくやっていたのを思い出したよ。


「どうするのよ、竜也。すずか止まっちゃったじゃない」

「さぁ、俺に言われてもね」

「あんたのせいでしょうが!」

「俺は振っただけだぞ? 後はすずかの意志じゃないか?」

「提案したのはあんたでしょ!?」

「まぁまぁアリサちゃん、竜也君も悪気があったんじゃ─」

「なのは、おかわり」

「にゃ」

「なのは…私には悪気があるようにしか見えないわ」

「アリサよ」

「何よ?」


今この状況を考えようぜ?
なのははすでに見たとおり餌付け完了してる。

そして、すずかはすでに俺の餌食に……
残ったのは誰だろうね?


「……アリサちゃん」

「お、すずかが戻ってきた」

「何?」

「私はやったよ?」

「え?」

「なのはもやったよ?」

「な、なんなのよ……」


みんな多くは語らなかった。

俺も何も言わず、静かに右手を差し出す。
すずか、なのはは今か今かとそのときが来るのをじっと見つめている。

主にアリサの手に。


「い、一体なんなのよ!!」

「アリサ……」

「「アリサちゃん」」


駄々をこねている子供をあやすかのような、そんな心境だ。
なのはとすずかはまるでその子を悟らすかのような。


「や、やればいいんでしょ!はい」


そう言うと、アリサは俺の手にただ単純にのせた。
そうのせただけ!


「……アリサ」

「な、何よ!?」

「違うんだよ……なのは見本!お手!」


俺はそういうと、『にゃん』と言いながらかわいさ百倍の笑顔と目をこちらに向けながら、
手をちょこんとのせた。

その様子、子猫以外の何者でもなかった。
者だけど者じゃない!


「アリサちゃんこれが『お手』だよ」

「威張って言うことじゃないと思うけど……」

「アリサちゃん……」

「どうしろっていうのよ!」

「手をのせる時に、にゃんと言ってみてよ」

「そ、そんなの……」

「「アリサちゃん」」

「わ、分かったわよ……」


再びなのは・すずかペアにあやされると、しぶしぶと言った表情をした。
そして……


「……にゃん」

「「「……!?」」」


ものすごく小さく、そして、照れくさそうに顔を赤くしながらそっぽを向いて、
ちょことん、と手をのせてきたアリサは……


「「「かわいすぎる」」」


その一言に尽きた。

もはや何も語るまい。
俺はこのときを一生胸に大事に抱えて、脳内に焼き付けて生きていこうとしよう……


「な、何をこのぐらいのことで人生悟ってるのよ!!」


何も言うまい、ああ、何も言わん。
今回のお泊り会はこれだけ。

いや、すずかを含めた、お手の姿を見れただけで俺は満足だ。
ん、なんかおっさんくさいぞ?
なんて思ったが気にしない、気にしない。


「っで、これで終わりじゃないわよね?」

「うん、そうだね」

「まだ一人残ってるよね、ね? 竜也君?」


あれ~いやな、おち、もといフラグが立った気がします。


「いやいや、これで全員だろ? そろそろご飯だろ? 」


気付けばすでに晩御飯時。
いや~実に楽しかったな。

うん、俺はもう家に帰ろう。そうしよう。


「そうね。そろそろ、ご飯ね」

「そうだね、普段ならその後は解散だけど……」

「今日はお泊り会なの!」


よし、察しのいい俺は分かったぞ。
今回のおち!


「じゃあ、後でゆっくりね。竜也」

「楽しみなの」

「楽しみだね、竜也君」



そして、今回のおちは予想通りにこのあと酷い目に会いました。
その上、この3人組と同じ部屋で寝かされたけど、早寝の俺には関係ないと思う、たぶん。

3人は夜中までしゃべってたみたいだけどね。


ありのままに─第13話─ 

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季節は夏。

夏休みらしさといえば、蝉であるが、蝉の勢いは序盤比べるとさらに増し、
それと比較するように気温も高かった。

何が言いたいかというと、とてつもなく熱い。猛暑である。
今年は例年に比べても暑いらしく、海水浴場はどこも大賑わいとのこと。

また、それと同じように某地域のサマーなランドも大繁盛のとのこと。
海鳴市は海が近い、というより名のとおり目の前には海があるのだが、海水浴場というわけでもないらしい。

泳いでみればどこも変わらないと思うのだけど……

こんな暑い中は、風鈴の音とちょっとした生暖かい風とアイスに癒される。


夏休みは中盤。

序盤もかなりのペースで鍛錬・修行・勉強・遊びと毎日繰り返していたのだが、
相変わらずその勢いは止まらず。

未だにそんな毎日を送っている。

この間なのはの家に泊まったときに、餌付けをしようと思ったすずかだが、あれ以来やってくれない。
実に悲しいものだ。

かわいかったのに……

それに対し意外と言うか、アリサは実はやってくれたりする。
10回に1回ぐらいのペースだが。

それでも、新鮮味はなくならず。
いつ見ても聞いてもかわいい、というかかわいすぎる。

そしてなのはだが……
更なる餌付けに今挑戦している。

お手やおかわりはすでにお手の物で、今はマテまで習得済み。

これは将来のなのはが楽しみでしょうがない、と言うのはここだけの話。


剣の鍛錬は相変わらずと言った感じだ。
それは進歩をしていないというわけでなく、徐々にだが伸びている……と思うということ。

あくまで、そう周り─恭也さんなど─が言ってるだけだ。

魔法の方はと言うと目に見える形で成果がでてきた。
母さんの攻撃を食らっても簡単に防御が破られることもなくなったし、
回避も出来るようになった。

また、ある程度の怪我なら自分で治せるようになったことだ。

こういった、目に見える形で自分の努力が分かるというのは、余計に力が入り、気合も入るというものだ。

気合が入ったのは俺だけじゃないようだけど……

最近では母さんと目が合うと自然に体が回避行動を取るようになった気がする。

そして、魔法の勉強だがこれもいいペースと言えると思う。
ただ、覚える量がかなり多くまだまだ終わりそうにない。

それに引き換え、学校の宿題は毎日やってたせいか、はたまたおかげかで自由研究を残して終わってしまった。

今は、自由研究を何にしようかと悩んでいるところだ。


時期はお盆。

お盆と言えば、墓参りである。

家の家庭も大黒柱であった、父さんが死んでしまったので、その例外なく墓参りに来ている。

場所はど田舎というわけでもないが、
山あり谷ありの海ありで、観光地と言うわけではないがこれぞ田舎!と魅せてくれるものがある。

たまにはこういう雰囲気も大切だ。


そして、来ている面子は、
うちの家族、つまりは、俺と母さん。

そのうえ親戚である、なのは一家と……


「なんで、私たちまで来ることになるのよ」

「まぁまぁアリサちゃん。せっかく御呼ばれしたんだから」

「そうは言っても、竜也のお父さんの墓参りよ? 私達ほとんど関わりないじゃない!」

「まぁその通りだと思うよ」


なぜか、アリサとすずかである。

理由は至極簡単。


「家の主人は賑やかな方が好きな人だったの。
だから、竜也がいつもお世話になってる、すずかちゃんとアリサちゃんもご一緒にってね。
迷惑だったかしら?」

「いえ、そんなことありません。ね? アリサちゃん」

「そう、ね。せっかくだからお参りさせてもらいます」


と、母さんが勧誘してあっさり承諾して一緒に来たと言うわけだ。
来てからもぐちぐち文句を言ってるアリサだが、もういちいち付き合うのは面倒なのですずかに任せきりだ。


「竜也?」

「なに、アリサ」

「一つ気になったけど、あんたのお父さんってどんな人だったのよ?
あんたから話をしてもらったこと一度もないから……」

「そう……だったかな」


俺の父さん、相沢真也。

死後に知った話だが、御神流の使い手の一人でかなり腕利きだった。

仕事は何をやってたかは、知らない。

聞いたことはあったがあまり理解できるような仕事ではなかったような気がするし、
記憶もあやふやなので分からない。

性格は基本的には熱い人。
何事でも本気を出し、誰が相手だろうが完膚なきまでに叩き潰す。
それが自分の息子であっても。

一緒に遊ぶのが一苦労だった。
遊んでもらうと言うよりは遊んであげたみたいな感じだった気がする。

そして、自由気ままな感じがした。
感じがしただけで、俺から見れば自由とは程遠いような気がしたけど。

自由奔放、その言葉が似合う人だったと母さんは言っていた。
きっと、昔は無茶をしたんだろうなと思う。

これが俺の知っている父さん。
ほとんどの記憶があやふやでよく覚えていないが、
母さんいわく、今の俺は父さんに似てきているとのこと。

顔がと言う事ではない。
顔はどちらかというと母さん似でよく髪を伸ばせば男の子かどうかも分からない。

よって、性格面とか生き様のことを示す。

『ありのままに』確か父さんと母さんが俺に望んだ生き方。
俺自身もそれを意識しているわけではないが本能のままに生きていると思ってる。


「わからないな」

「何よそれ……」


呆れた口調で言うアリサ。
何よそれって本当に分からないのだからしょうがない。


「あんたって意外と達観的というか客観的よね」

「そうか? 結構主観的だと思ってるよ?」


言い換えれば、自己中ということになるけど。


「私達とか一部の人間にはね。少なくとも私にはそう見えるって言いたかっただけ。
あんた興味ないことは反応示さないもんね」


確かに、興味ないことには見る気もしない。
つまらない。
その一言で終わる。

だから、興味あること・ものや興味ある人には積極的にいくっていうのかな?
まぁそんな感じだね。

自分から動くとでも言うのだろうか。


「そうだよね。学校でも竜也君って私達以外とほとんどしゃべらないもんね」

「あまりしゃべらないだけで、よく絡まれるけどね」


教室の中では英雄扱いだしね、俺。
とくにあの4人組がもう……

とんだ迷惑だ。
楽しいからいいんだけどね。


「そんな話をしている間についたぞ」


目の前は俺の父さんの墓である。


「ふぅん、普通の墓ね」

「当たり前だろ、何を期待したんだ?」

「あんたなら、とんでもないおちを作りそうじゃない? 古墳とか?」


そっちか……
俺はてっきり墓に刀が一本突き刺さってる風景を思い浮かべたぞ。


「そういう問題じゃないと思うんだけど……」


すずかはいたって冷静なようだ。


「二人はそこで見てて、と言うのもおかしいな。待っててくれすぐに掃除して綺麗ににするから」

「私も手伝うわよ?」

「いいよ、というかやらせて欲しい」

「そう…分かったわ」


せめてもの、だよ。
短い期間でしか、一緒にいられなかったけど、大した思いでもないけど。
そのぶんの……ね?

そう思いながらせっせ、せっせと母さんと雑草やら墓の掃除をした。

二人で効率やったおかげで、ものの数分で終わった。
もともと大して荒れてなかったというのもあるが。

そして、墓の前に立ち瞳を閉じ、父さんの自分の思いが届くように願う。

俺も剣術始めたよと、魔法も出来るんだ、と。
たくさんの友達にも恵まれて、今も幸せだよ。

だから、安心して見守っていて欲しい、と。

目を開ける。

さっきまで近くにいたはずのすずかとアリサがいなかった。
少し周りを見渡してみると、隣で母さんが泣いていた……

こういう時ってどうすればいいのかな?

父さんが死んだばっかしのころは好きなようにというか放っておいたのだけど……


「竜也」


涙声だった。


「何?」

「夜には予定してた宿に戻るから先に戻ってて。場所分かるよね?」

「……了解」


一人になりたい。
そういうことなのだろう。

俺はその場からゆっくり離れていった。



墓場の出口付近に、目立つ金髪発見。
どうやら、二人も空気を呼んで退散したみたいだった。


「待ってたわよ。結構長く拝んでたじゃない」

「まぁね、それなりに報告があったからさ」

「そう、じゃあこれからどうするの?」

「宿でなのはたちと合流かな。高町家は明日墓参りするみたいだから」


ここまで来るのは一緒だったが墓参りは別行動だった。
なので、なのはたちが先に宿に着いて、俺達の帰りを待っている状態だった。


「そうだね、じゃあ宿にいこっか」


三人でのんびりと宿に向かって歩き出す。
今度ここに来るときは、一回忌のときになりそうだ。



「え、じゃあ今はなのはちゃんと桃子さんだけなの?」

「うん、竜也君たちが来るの待ってたの」

「それはご苦労なことだね」


宿について待っていたのは高町家の末っ子のなのはと桃子さんだけだった。

上の兄妹は、近くにいいサバイバル環境があるから、修行に行ったという。
士郎さんはそれの付き添いだそうだ。

熱心なことだ、見習おうとは思わないけど。

そこに山があるから、サバイバルってどこの軍人なのかな?
蛇とかきのこでも食べそうだ。

カ○リーメイトも空気を読んで落ちてんるじゃないのだろうか。

でも、美由希さんは嫌がったんじゃないかな?
あの人ああ見えて普通に近いし。


「それでどうするのよ?」

「どうするって?」

「まだ、お昼過ぎよ? 暇じゃない」


そういうことか。
早朝に家を出て、まだお昼の時間。
今日が終わるにはまだまだ時間がある。

そして、ここは田舎だ。

海とか山や墓はあるけどね。


「えっとね、竜也君!」

「ん? 何なのは?」

「なのは海に行きたいの」


海、ね。
確かに今日は暑いし海水浴にはピッタシだろう。

しかし、残念ながら水着は持ち合わせてはいなかった。


「ふふふ、竜也君甘いわね」

「え?」

「そんなこともあろうかと、これを持ってきたのよ」


さぞ誇らしげに言いながら手から出したものは……


「ビーチバレーボール?」


なぜ、水着じゃないんだ!?
このタイミングは水着じゃないのか!?


「面白いわね。」

「アリサ!?」

「竜也、勝負よ!」



ありのままに─第14話─ 

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とある県のとある田舎。
という言い回しはへんだとは思うが、実際にここは田舎であるのだから仕方ない。

田舎といえば、思い出すゲームがいくつかあるね。
そのゲームからも思い浮かばせるのが、田舎ならではの雰囲気だと思う。

例えば、川があって、虫がいて、海があって、山がある。
人には温かみがあって、都会にあるはずのものがなくてなど。

いくらでも連想が出来る。

そういう意味でも、俺の父さんの墓があるここも思いっきり田舎の範囲に入る。

そして、今現在海に来ている。
ビーチバレーボールをやるためにだ。

有名どころの海水浴場と比べれば、貧相なものに見える。
だけど、俺の予想以上に活気があった。

田舎の海水浴場など地元の人しか来ないと思うのだが、
人はけっこう来ている。

どうやら、イベントがあるみたいだ。
とある人に聞いたところ「ガンダムのプラモが……」とか言ってた気がするけど、
別段興味あることでもないのでスルーをすることにした。

あくまで、目的はビーチバレーボールである。

なぜ、そうなったかというとなのはの海に行きたいという願いと、
桃子さんの微妙な気の配りようと、アリサの勝負魂に火がついたからである。


「勝負よって、具体的にどうするの?」

「何を言ってるのすずか? 竜也と勝負をするに決まってるじゃない!」

「なぜ当然のことのように言う……」

「この間の恨み……」


この間、と言われてもいわれのない恨みだと思う。
俺には何のことかサッパリだ。


「ドッチボールのことじゃないかな? かなり根に持ってたよ」

「ああ、不意打ちしたやつか」

「そうよ! 今日はその雪辱戦よ!」


雪辱って……アリサ的にはそうとう悔しかったのか?
俺、あの時に卑怯呼ばわりされてたしなぁ。


「じゃあ、やってもいいけど。ただ勝負するのじゃつまらなくないか?」

「そうね、私が勝ったら一つなんでも言うことを聞くでどうよ」

「それって普通男が女に求める要求じゃ……」

「う、うるさいわね!いいのよ! であんたは?」


俺も同じことでもいいと思った、が。
それじゃあ普通すぎる。

なので……


「アリサが今日一日猫化、ってのはどう?」

「な……」


アリサ猫はとてつもなくかわいいからなぁ。
素っ気無いところとか最高だ。

そして、そのときに赤くなる顔ときたら……


「わ、わかったわよ」

「よし、じゃあコートは……あった」


なんとも都合のいいことにそこには、
俺たちが使うのにちょうどいいくらいの大きさのネットとコートがあった。

空気の読めるビーチである。


「じゃあ、チームわけね」

「は?」

「すずかと竜也が一緒だと下手したらプロでも勝てないから合わせられないから、
私とすずかペアとなのは竜也ペアの一択で決定ね」

「一対一じゃないの!?」

「あたりまえじゃない。あんたと一対一でやったらすずかでも勝てないのよ?」


プロでも勝てないって……俺もすずかもそこまで人外じゃないよ。

それに、それはドッチボールでは、じゃないのか?
ビーチバレーボールと言うことは、バレーの実力はもちろんのこと。

地面が砂場なのでバランス力もそして体力も大切になる。

それに、二対二となるとチームワークと仲間も実力も……

そして、そもそも、アリサは運動が決して苦手と言うわけではない。
そのうえすずかとのコンビネーションはドッチボールのとからでも完璧だ。
文句のないペア。

それに対して俺となのは。
俺はバレーこそ少しやったけど、基本的には初心者。
まぁ相手もどれほどの実力かは分からないからそこは問題ないとして、ペアが……


「どうしたの竜也君、ずっとなのはを見て」

「はぁ」

「にゃ! どうしてそんなに深いため息をするの!?」


そりゃあ、ため息の一桁や二桁はしたくなるものですよ。


「多くない!?」


気のせいだ。

なのはは泣く子も黙るほどの、いや、泣く子が泣き止むほどの(同じか)
運動音痴である。

多少大げさな言い方かもしれないが、でも運動音痴ではある。

徒競走をすれば途中で転び、ドッチボールをすれば顔面強打。
バレーをすれば……アタックの標的?

そんな彼女が同じチームなら、ハンディも同然である。


「竜也君が酷いこといってる気がするの」

「なのは、気がするんじゃない。言ってるんだ」

「よけい酷いの!」

「運動音痴」

「にゃ……本当のことでも酷いの……」

「あんたたちいつまで漫才してるのよ。始めるわよ」


そう言って、サーブをする構えに入るアリサ。
そっちボールからなんだ、とか言いたいことはあるが、やるからには勝たないといけない!
罰ゲームがやだとかもあるが、それよりも負けることが嫌だ。

絶対に負けられない戦いがそこにはある!!





ビギナーズラックという言葉がる。
これは初心者の奇跡という意味だと勝手に解釈してみる。

俺はそこに賭けた。
否かけざるを得なかった。

なのはが奇跡の才能を開花するとか。
なのはが実はバレーが得意だったとか。

まぁ実際には起こらなかったわけだが……

そのせいで1セットをとられてしまった。
ルールは1セット10点の3セット先取りというかシンプルなもの。

2セット目は、スポーツにおける「スポーツは何が起こるかわからない」という名言に縋った。

すずかが砂地に足をすくわれるとか、
すずかが足を捻って事態とか、
すずかが裏切るとか……

まぁ何も起こらず2セット目もとられたわけだが。

しかし、俺もただやられていたわけではない!
2セットの間に砂地の感覚はつかんだし、ビーチバレーの感覚もつかんだ。

そして、可能性も見つけた。
そう、勝つための可能性である。


なのはは子猫である。
それは俺に対してという条件付であるが、子猫のときは基本的に俺の言うことを聞くように、
餌付けされている。

最近、この子猫に教えていることは……


「なのは」

「はぁ…はぁ…な、何?竜也君」


すでに、なのははぼろぼろな上で涙目である。

ぼろぼろな理由はかっこよく飛びついたとかではなく自滅。

涙目な理由はやられたい放題にやられたからと言うのと
自分のふがいなさが故が原因であると思う。
なんだかんだで負けず嫌いだからね。


「お手」

「にゃ~ん」


俺が出した右手にちょこんとお手をする。
相変わらずこの子猫はかわいいと思う。
素直に言うことを聞くしな。

とそんなことを考えている場合ではなかった。

「待て」

「にゃん」


そういうと待機状態に入る、子猫。
ずっと俺の顔を御視している。


「何してんのよ! 油断してんじゃ……ないわよ!!」


そういうとアリサの強烈なサーブが飛んでくる。
俺なら反応することが出来るが、なのはではまず不可能だ。

普段のなのはなら。


「右に飛んで、前にお手の体制だ!」

「にゃん!」


俺の言葉通りに動くなのは。
右に猫のようにスパッと飛び、お手のように手を前に出す。

そして、そこにボールが当たり、絶妙なレシーブとなる。

俺はそのボールを直接あいて陣地にアタック!
お互いに初心者なのでアタックされると基本的に返すことが出来ない。

そのため……


「う、嘘でしょ……」

「子猫状態のなのは無限の可能性を秘めているんだぞ」


にゃにゃんと言う俺の横の子猫。
そして、相手を威嚇するようにフシャーフシャーと言っている。

いままで餌付けしてきた甲斐があったというものだ。
最近教えてきたことは、俺の言うとおり100%動くこと、である。

もちろん、人間の能力を超越したことなどは無理だから範囲内で。

最初は俺の言うことをよく聞かせる程度のつもりでやってたが、
まさか、こんなことに役に立つなんて……

子猫なのは、恐ろしい子!


「でも、まだ私たちが有利よ!」


まったくもってその通りだ。
しかし、ここからが俺達の逆襲の始まりである!



「なのはちゃんと竜也君のペアすごかったね」

「俺も予想以上でビックリしたよ。な? なのは」

「にゃん♪」


あのあと大逆転劇が始まった。

なのはの普段の運動音痴からはそうぞうもつかない運動能力で、
ボールを拾い、俺がアタック。

ひたすらこれの繰り返しだった。

なのはのサーブのときは残念な感じだったが、相手のサーブを拾うことが出来るし、
アタックもなのはが拾えたので負けはなかった。

なのは自身も、俺の言うことどおりに動くと、思うように動けたようでビックリしたみたいだ。
そして、未だに猫モードである。

なのはは後ろからベッタリとついてくる……すっかり子猫が板についたようだ。
これは、家のペットになる日も遠くないかもしれない。


それに対しアリサ猫はと言うと


「……」

「アリサ、何かしゃべってよ」

「……アリサちゃん」


負けたときから一言もしゃべってくれない。
これじゃあ罰ゲームの意味がないじゃないか!


「大体ね!あんたが!」

「アリサ、猫語」

「う……にゃん……」


相変わらず恥ずかしそうにやるねぇ、アリサ猫は。
顔が真っ赤だし、声は小さいし。

そこが、かわいいからいいんだけどさ。


「にゃ、にゃん。にゃにゃにゃ」

「なのは通訳」

「『今度覚えておきなさいよ!』だって」

「そうかそうか。かわいいぞ、アリサ猫」

「にゃ……にゃん」


褒めてあげると顔をよりいっそう赤くなる。
でも、そっぽは向けずにこっちを真っ直ぐ見つめてくる。


「ジーーッ」


俺がむしろ顔をそらすぐらいだ。

まったく、アリサ猫もなのは猫もかわいすぎるよ。
ああ、ひさびさにすずか猫も見てみたいなぁ。


「どうしたの? 竜也君」

「いや、すずか猫も見たいなって」

「え!? それはちょっと、ね」


少し考えをする素振りをするものの断るすずか。

彼女の壁はまだ崩せないか……
何かきっかけがあればいいのになぁ。

ありのままに─第15話─ 

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前略天国のお父さん。

俺はすこぶる元気です。

父さんはどうでしょうか?
天国はいいところですか?

俺の生きているこの世界は本当にいいところですね、最近よく思います。
この世界と言うかこの海鳴市ですが。

父さんに朗報があります。

家に新しい家族が出来ました。

なぜ生まれたのではなく出来たという言葉なのはか、理由があります。

新しい家族と言うのはペットのことだからです。
このペット、名はなのはと言うのですが、子猫です。

とてもかわいいです。

人でありながら人じゃなくてペットなのです。
不思議な生物でしょ? 父さん。

子猫とじゃれていると本当に癒されます。
今後も少しずつですが、ペットの数増やそうかなと思います。

現状で候補が二人──二匹います。
みんな個性があって、見たりじゃれたりすると幸せになれるんです。

話は変わりますが、夏休みも終わっていまい、もう新学期です。
最後まで残ってしまった、自由研究ですが。

『子猫の実態』というものを提出してみたところ、高い評価をもらって、
学校で表彰されました。

今度その表彰状もって、墓参りに行きますね。

さて、新学期と言うことで秋なんです。

スポーツの秋と言われますが、俺の学校ではその秋にちなんで、もうすぐ運動会があります。

天国から応援しててくださいね。




「では、皆さんの参加する種目を決めたいと思います」


先生の声が教室に響く。
今日は、近いうちに開かれる運動会の種目を決めをするようだ。

ようだという、他人事っぽい感じなのは、別段興味がないからだ。
普段から運動はしてるし、やれと言われればやるが、そうじゃないなら大人しくしてたいなぁという。


「我々四兄弟は騎馬戦をやらせて欲しい!先生」

「さ、さすが兄じゃ!かっこいいよ」

「騎馬戦こそ男だよね!」

「俺が一番上に決まってるけどね」


この運動会をやるにあたってもっともやる気満々なのは、
この間の内科四兄弟だっけ? あ、内科ならアウトドア系じゃないよな……

じゃあ、外科かな? うん、外っぽい!
漢字に外ってついてるし。

まぁどっちでもいいけど。


「一年生の種目に騎馬戦はないんだけど……」


なんというか殊勝な心がけだね。
でも、残念だったね。

騎馬戦ないってさ。
まぁ本人達には聞こえてないみたいだけど。


「やるからには絶対に勝つわよ!すずか!なのは!竜也!」


ああ、もう一人いたよやる気満々なのが、身近に。


「なんであんたそんなにやる気なさそうにしてるのよ!?」

「だって……ね?なのは」

「にゃ? ああ、竜也君はいいじゃん……私なんて……」

「なのはちゃんは運動苦手だもんね」


なのはが運動会を嫌がるのは当然と言ったら、なのはに失礼かもしれないが、
理解も出来るし、同情もするよ。

運動音痴だからね、なのはは。


「では、種目を発表します」


そう言うと、黒板に書目が書かれていく。

・選抜50m走 1
・障害物競走 1
・二人三脚 2
・代表リレー 4


「この他には全員が絶対に参加する、徒競走と全員リレーがあります。
また、この種目をやらない人は応援組みになります。
その時には学年で決めた演技をしてもらうことになります。では、この種目をやる人を決めましょう」


全員が強制参加するものと代表でやるものがあるのかぁ。


「先生!」

「はい、どうしましたか」

「その種目の決め方はどうするのですか?」

「立候補、もしくは推薦で決めようと思います、
なので今から順に先生が種目を読み上げていくので立候補したい人、
もしくは推薦したい人がいれば手を上げてくださいね」


うん、実に平等だね。
これなら立候補しなければ、強制参加のみになれそうだ。
そうなれば、運動会でも多少は楽になるかなぁ。


「では、まず選抜50m走ですね。
この種目は単純に足が早い人が良いと思います。
立候補のかたもしくは、推薦者はいますか?」


みんなを見渡しながら話を進行する、先生。
あとは、立候補者がでればまず第一関門突破だ。

その為には目立たないように顔を伏せとこうと思う。

…………

なんか、視線が集まってる気がする。
た、たぶん気のせいだと思うが、一応顔を上げて周りを確認してみよう。

前を向いてみる。
先生がにこやかにこっちを見てるのを確認した。
前の生徒がこちらに振り向いているのも確認をしたぞ。

もう一回伏せてみよう。

よく考えるんだ俺。
きっと俺を見ているわけじゃない。

そう、きっとみんな俺の後ろにいるスタン○を見てるに違いない。
珍しいからなスタ○ドは……

うん、この見解だとみんなスタンドもちに……細かいことはいいか。

ね、念のためだ横も確認してみよう。

横を見るとそこには当然、なのはが座っている。

そのなのははなぜか俺の方向(あくまで俺じゃない!)を向いて、
期待の眼差しを送っている。

一体誰だよ!
こんなにもなのはの情熱的な期待を受けるやつとか、もう俺嫉妬しちゃうぞ。


「先生!」

「なんですか? 高町さん」

「相沢竜也君を推薦しま─」

「い、異議あり! 人の意見を無視した推薦は駄目だと思います! 民主主義的に!」

「異議を却下します。相沢君が選抜50m走に出るのに賛成の人は手を挙げてください」


満場一致だった。
これは、もう清々しいほどに満場一致だった。

どうやら、俺に拒否権はないらしい。
民主主義万歳である。


「では、相沢君よろしくね。」


先生の素敵な笑顔だった。
これはもう、あれだ……諦めるしかなさそうだ。


「お願いね、竜也君」

「期待してるよ」

「あんたにかかってるんだから、期待してるわ」


うるさい!
そもそも、こうなったのなのはのせいじゃないか!

なのはが推薦しなければきっと俺以外の誰かがなっていたに決まってる!


「それは、無いと思うわ……」


いや、あるね。
十分にあるよ。

こうなったらせめてもなのはも道連れだ!


「先生!」

「どうしたんですか? 相沢君」

「障害物競走になのはを推薦します!」

「にゃ!?」

「はい。では、障害物競走は高町さん、お願いしますね。」

「にゃにゃ!? 竜也君それは無いと思─」

「なのは、静かに待て」

「にゃい」

「言うこと聞いちゃうんだ、なのはちゃん……」


ふん、俺に逆らおうとするからそうなるのだ!
せいぜい障害物だらけの、競争に巻き込まれて恥をかくがいい、ははは。

いや、なのはの場合は障害物に当たる前にこけるか……

ふっ、これは運動会が見ものだな。

なんか、俺の大切なものが失われた気がするけど。
気にしたら負けだね。

それにしても、なのははいい感じに餌付けされてるな。
なんか、もう俺に逆らえないんじゃないか?

すずかもさすがに少し引いてるみたいだし。

うん? この場合はすずかはどっちに引いてるんだ?

餌付けした俺か?
されたなのはか?

まぁ俺からすれば餌付けされるなのはが悪い……ってなんか悪者のセリフみたいだ。


「うん、順調に決まってますね。
次は二人三脚ですが、ある程度の運動能力と二人の抜群なコンビネーションが大切になります。
誰か立候補か推薦者はいますか?」


たぶん、どの種目よりも難易度が高いと俺は思う。

俺の種目なんかは、単純な足の速さのみ、いわゆる個人戦。
なのはの種目も、障害物こそあるが同じく個人戦。
そして、残っているリレーはチーム戦ではあるものの、やはり個人の力に頼るしかない。

それに比べて、二人三脚は自分の力を出しつつも、相方の力出さなければならない。
そして、それにはコンビネーションが絶対に必要。

こんな種目、このためだけに組まれた新生コンビなら上手く行くはずがない。
となれば、このクラスの熟練コンビとなれば……


「すずか、でるわよ!」

「あ、アリサちゃん!?」

「この種目はまさに私達のためのものだわ!
私とすずかの友情を試そうとしてるに違いないわ!」

「そ、そんなことは無いと思うけど……」

「先生!私と月村すずかが立候補します!」

「分かりました。お二人に命運を託します!」

「任せてください」

「私、出るって言ってないのに……」


すずか近くの人にしか聞こえないような声で呟いた。
その目には少し涙も浮かんでいる。

うん、それにしても予想通りだな。
実際、この二人以外に適任がいないのだから、しょうがない。


「人の意見を無視してやるのっていけないことだよね……竜也君の気持ちが分かったよ」

「そうだろ……なのはも分かったか?」

「分かったの……でも、竜也君は人のことを言えた義理じゃないと思うの」

「お前が最初だぞ?」

「うにゃぁ……ごめんなさい」

「分かればよろしい」


なのはもすずかも民主主義の偉大さが分かったようだ。
ははは、本当に民主主義万歳だな。

いや、多数決万歳と言うべきか。
平和的解決だよな、まったく!


「では、最後の代表リレーですが─」

「兄じゃこれは出るしかないんじゃないですか?」

「そ、そうですよ! ちょうど四人だし」

「え、いや…まぁ、そのだな」

「なら、俺が立候補しよう」

「はい、ではそこの四人組お願いしますね。」

「ちょ、ちょっとまってくれ!」

「煮えきらないですなぁ」

「じ、事情があって─」

「じゃあ、早速特訓だああああ」

「「おおおおおおおおおおおお」」


なんていうか、熱い四人組みだな。
クラスのみんなが軽く引いているのに気付かないのだろうか……


「あ、あのう……まだ、授業終わってないんですけど」

「ま、まて!俺にはだな!」


でも、まぁなんだかお祭り気分で楽しそうだからいっか。
なんか俺も熱くなってきたな。

となれば俺も本気を出すとするか。


「なのは、特訓だな」

「にゃ? た、竜也君!?」

「すずか、私達も負けてられないわ!」

「だ、誰に負けてられないの!?」


俺はなのはを強引に引きずって外に出る。
ふふふ、高町家伝統の特訓を俺がしてあげるとしよう。

まずはランニングからだな。


「ま、まだ授業が……」


なのはとすずかが連れて行かれる際に、ドナドナを歌ってたような気がするが、
気のせいだということにしよう。




ありのままに─第16話─ 

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「ええ、本日は晴天なり、晴天なり」


本日は晴天なり。
この言葉は通常はマイクテストのときよく使われる2大言語だと思う。

もう一つは、『マイクのテスト中』だ。

両方とも行事ごとや、朝礼などでよく耳にする。

特に、本日は晴天なりなんて言葉は、外で使われるんじゃないのだろうか?

それにしても、本日は晴天なり、この言葉が合う日は今日を除いてはそうそうないのではないだろうか。

今日、つまりは運動会当日。
空は青く澄み渡っており、太陽サンサンという感じ。
雲もちょうどいいくらいに浮かんでいて、とても清々しい。

もし、近くに草原があるのなら、寝転がって昼寝すると気持ちがいいかもしれない。

気温もさほど高くもない。
だからと言って、寒いわけもなく、絶好のスポーツ日和だ。

スポーツの秋と言われる要因、はたまた起源を今実感していると言っても大げさじゃないと思う。

まぁ何にしても、今日は運動会である。


「ふふふ、ついにやってきたわね! 運動会!」

「そうだな、アリサ。この日のために血も涙も流して努力してきたもんな」

「血も涙も流したのは、なのはなの!」


この運動会のために、俺となのは。
そして、アリサすずかペア。
さらに言うならば、外科4兄弟も特訓を重ねてきた。

たぶん、俺たちほど、この日のために努力してきたクラスはないんじゃないだろうか?
それほどまでにして頑張った!

俺はタイムを縮めることとなのはの障害物競走の対策を。

俺のタイムを縮めることは俺自身の努力でどうにかなる問題だったが、
なのはの障害物競走は少し手間取った。

原因はなのはの運動音痴のせいである。

どんなに運動に慣れてもらおうとしても、素のなのはではまったくお話にならなかった。

しかし、なのはが猫モードになり、俺が指示を出すと、かのビーチのときのように驚くべき運動能力を発揮した。

ここから、俺はその状態を上手く利用できないか考えた。
しかし、さすがに、競技中になのはの横で指示を出すことは出来ない。

そこから、いくつかの方法を考えた。
ようするに俺が指示を出せればいい。

一つ目、念話。
これは最も便利な方法だと思った、が盲点があった。

魔法を教えちゃいけないんだった。

考えなくても分かることだったのに、馬鹿か俺は。

二つ目、無線。
遠くにいても確実に指示を出すことが出来る。
しかし、指示を出すにはなのはにも無線機を持ってもらわなければならない。

無線機と言えば、ケータイ電話を大きくしたようなやつ。
持ち歩けるはずがなかった。

同じ理由でケータイも駄目だ。

もはや、万事休すかと思われた。

最後の手段として、母さんに相談をしてみた。


「え? 魔法を使わずに誰にもばれない様に人に指示出す方法?」

「そ、そうなんだけどさ。なんかない?」

「あるわよ。無線が」

「無線じゃばればれじゃ……」

「ふふ、母の科学力をなめちゃいけないわよ? これでも元科学者よ?」


そう言うと、母さんは一日研究室と書かれた部屋に閉じこもり、翌日になると、
手に耳栓のようなものと小型マイクを持って出てきた。


「これって……まさか!?」

「そのまさかよ。この程度のことならおちゃのこさいさいよ!」


母さんの謎がまた一つ増えたような気がする。
てか、これってオーバーテクノロジーじゃないの?

あ、でも今の世の中これぐらいはできるのかな?


『なのは聞こえる?』

『うん、聞こえるよ。すごいね、この小型無線機』

『特注品だからね』


練習で実際使ってみたところ、見事に遠くからの指示ができた。
これで対策は完璧である。

あとは、本番で結果を残すのみとなったわけだ。


『今日最初の競技は1年生による、選抜50m走です。
代表の生徒は、集合場所まで集まってください』


学校全体にアナウンスが響き渡る。
運動会は基本的にこのアナウンスにしたがって動くように言われている。

もちろん、プログラムは生徒達に配られていて大体の予定は分かるが、
時間などの変更が例年珍しいことではないらしいので、アナウンスが重要になるとのことだった。


「頑張ってきなさいよ!」

「頑張ってね、竜也君」


アリサとすずかの声援だった。
こういうときの声援は非常に心強い。


「頑張ってなの!」


なんだかんだで、応援の声にも気合が入ってるなのは。
やっぱりこういう行事ものはみんなで楽しまないとな。


「もちろん、やるからには一等を狙うさ!」


みんなの応援の声を背にして、いざ参る!戦場へ!




選抜50m走は、その名の通り各クラスの猛者たちが集まって単純な脚力を競う競技である。
もちろん、それだけに注目度は高い。

1年生は新入生であり、これに出場する保護者の我が子の雄姿を焼き付けようとするのも注目度が高いひとつの理由でもあるが、
それ以上に、今日最初の競技という意味でも異様なほどの注目が集まってる。

俺はそんな注目を緊張の理由にはなるもの、
実力を見せ付けてやろうと思う心と、応援してるなのはたちのためにも頑張りたい。

運動会は学年ごとのクラス対抗戦である。
戦いと言うからには初戦は勢いをつけるためにもぜひとも勝ちたい。

いや、俺が勝てばいいだけのことだけど。


「竜也! 負けたら承知しないわよ!」

「怪我しないように頑張ってね」

「負けたら、私の子じゃないわよ!」


一際大きな声で声援をしてくれるのは、アリサとなのはと……母だった。

負けたら私の子じゃないって、周りの人が軽く引いてるぞ、母よ。


スタートラインに選手が一列に並び、スタートの合図を待つ。
もっとも緊張感が場を包み込み、見ている人たちもが静まり返る。

最も緊張する瞬間。
俺も心臓がバクバクしてる。

こんなに注目されるのは初めてだ。

ドン!と発砲音が静寂してた場に響き渡った。
それと同時にみんな走り出す。

また、一気に声援声が校庭に怒号のように飛び交う。

く、出遅れた。

無駄なことを考えてたせいで、スタートダッシュに失敗した。
しかし、それもつかの間、俺より前に走っていた人を追い抜く。

正確には横で走っているのだが、気分的には同じだ。

一人、二人、三人……

あと、一人!

ここまでですでに、残り半分。
十分に追いつける距離。

トップを走ってた男子のスピードが落ちた。

今だ!

俺は一気に加速して、トップに並び、そのまま追い越した!


「ゴール」


テープを切ると同時に、俺は呟いた。


『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』


歓声の声が耳に聞こえる。
これで、特訓の成果は結果にて現れた。

俺の最低限の仕事を果たした瞬間である。
気持ちいいです!


「よくやったわ、竜也!」

「お疲れ様」

「竜也君すごく速かったの!」


クラスの待機場所に戻ってきたら、三人が賞賛の声と同時に、出迎えてくれた。


「ああ、駄目かと思った」


なわけないけどね、絶対に勝つ自信はあったし。
あれだけ、特訓したら負けられないしね。


「嘘つくんじゃないわよ、顔がにやけてるし」


ばればれだった。


「はい、竜也君タオル」

「ありがとう、なのは」


相変わらずなのはは気の利くやつだ。
さすが俺のペットだ。


「それにしても、練習のときより速かったんじゃないの?」

「ん? そうかな?」

「速かったみたいだよ。さっき本部に行くついでに記録を見てみたら、もしかしたら日本記録更新かもだって」


そんな、話があるのだろうか?
俺はただの小学1年生だよ?

先生達も大げさだな、まったく。


『プログラム5番の1年生による障害物競走にでる、人は所定の場所に集まってください。』

「あ、私の番だ」

「そうみたいね、期待してるわよ」

「頑張ってね、なのはちゃん」

「ありがとう、アリサちゃん、すずかちゃん。頑張るね」


そう言って気合を入れなおす、なのは。
その目には燃える炎が見える。

さすが、腐っても高町家の一人か、勝負事には熱いからな。


『なのは、予定通りに』

『うん、分かってるよ。お願いね、竜也君』


なのはは集合場所へ向かって歩いていった。

まだまだ、運動会が始まったばかりだというのに、
俺にとっては最大の山場だな。

ある意味で、一番の楽しみでもあるんだけどね。


「ところで、アリサ」

「何よ?」

「例のあの約束をだなぁ」

「え……そ、それは二人のときでって約束じゃない!」

「いや、そんなことないぞ」

「アリサちゃん、約束って?」


俺はこの運動会を本気でやるにあたって、とある約束をした。
それは……


「俺がもし50m走で圧勝したら─」

「わ、分かったわよ!な、なのはの競技が始まるまでまだ時間があるから、
体育館の裏に行くわよ!」

「え、ちょっとアリサちゃん!?」

「ほら、さっさといく!」


アリサに強引に手を引っ張られ、体育館へ引きづられていく。

アリサって意外と力があったんだなぁ。
でも、そんなこと言ったら、殺されかねないので心のうちにしまっとくことにしよう。


「さぁ、ここならいいわよ」


観衆の目はみんな競技が行われる、校庭に向かっているので、体育館に人の姿は見えなかった。

確かに、恥ずかしがるアリサ的には好都合かもしれないが、
俺的には公衆の面前でやって欲しかったな。

まぁやってくれるならいいか。


「じ、じゃあ行くぞ……」

「い、いいわよ」


お互いにごくりとつばを飲み込む。


「お、お手!」

「にゃ……にゃん!」


元気よく、しかしそれでも恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら、
「にゃん!」と言い、手を出す、アリサ猫。

な……何なんだこのかわいさ!?

前にやったときとは比べ物ならない破壊力だった。

どう違うって?
それはあれだよ、前は素っ気無かったけど、今はどことなく嬉しそうな顔でこっちを向いてるんだよ!

なんか、力説してる俺がHENTAIに見えなくもないが、いいや。
この猫のためならそんな貞操捨ててしまおう。


「おかわり」

「うにゃ~ん」


うにゃ~ん……だと!?

なのはですら言わないぞ!
な、なんなんだよ、ちきしょう!


「にゃ~ん、にゃ~ん」


そう言いながら、身体をこすり付けるアリサ猫。

え? ほわぁい?
何が起きたのだろうか……
突然の行動で体が動かないんだが……そう思ってると、アリサが耳元で、


「さ、サービスよ」


小さく呟いた。

俺はもう、この世に未練はないかもしれない。

しかし、運動会は無情にもまだまだ続く。




ありのままに─第17話─ 

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今回の運動会に備えていたものがいくつかある。

それは、主にはなのはの運動音痴対策についてのだが、
猫モードの時には必要はなかった。

でも、参考までに買ってみた本はある。

猫をもっと知るために、なのは猫をもっと使いこなす為に、飼った本だ。

『できる!猫の餌付け!』である。

どこかで聞いたことあるようなシリーズな気がしてならないが、気のせいである。
これはフィクションであり、この作品に出てくる団体名・個人名、作品名は、現実のそれとは無関係です!

まぁそんなことはどうでもいいとして、
その本にはいくつか項目があり、その中に『猫に芸を仕込む』というものがあったので試しに呼んでみた。

具体的な内容としては、指示を出す際は簡単な言葉がベスト!
ちゃんと言うことを聞いたら、餌を上げたり、撫でるのがいいと書いてあった。

なんとも当たり障りのない回答……

しかし、それゆえにと言うこともあるだろう。
シンプルイズベスト。

大抵こういうのはある程度のパターンがあると言うのだから、間違ってはいないのだろう。

実際に試した見たところ。

うん、効果覿面だった。

ちゃんということを聞いたら、褒め殺して、撫でると喜んだ。
でも、それ以上にそのあとのお手の方が喜んだのはどういうことなんだろう?

これが本物の猫との違いということなのだろうか。

なんにしても、餌をあげるよりは安く済むので問題はなかった。
雑種なのかな?


まぁそんな話は置いといてだ、いよいよなのはの本番である。


『竜也君、お願いなの!』

『OK。なのは猫モードだ!』

『にゃん!!』


一言で猫モードになるなのは。
見た目でもその姿が分かる、手を軽く握って軽く腰を曲げている。

四速歩行にならないのは、完全になりきることが出来ないからなのだろうか。

前々から思ってたのだが、どういう切り替えと言うかシステムになってるんだろう?

なのはの頭の中がいつも不思議でしょうがない。

やっぱお花畑なのかな? 菜の花の。


『位置について!用意……スタート!』


俺のときとは違い声による、スタートの合図。
それはなんだが間の抜けたような感じがするが、その通りなのである。

先生いわく、障害物競走は保護者の方が楽しむようなものなのだとか。
毎年、毎年、かわいいアクシデントが続出するので見てる方は癒されるとか何とか。

要するに、そんなに本気でやるような競技では普通ないらしいのだが、
本人達は真面目なので、真剣に見て欲しいなと思う反面、
その真面目さが楽しいかなとも思う。

そんなことを考えていると、なのはが最初の障害物にたどり着いた。

6段の跳び箱である。

常識的に考えて、小学1年生では跳び箱を飛ぶのも難しいはずだ。
俺やすずかは例外として。
もちろん、なのはが飛べるはずもなく、普通なら、「よいしょ」なんていいながらかわいく上ると思う。

いや、誰もがそう考えているはずだ。
逆に言えばそれに期待しているといっても過言ではない!

実際に、高町家の方々がなのはがかわいく上るのを今か今かとカメラを覗きながら見ている。

だが、非常に残念だ。
その期待には答えられそうにない。


『なのは……JUMP』

「にゃ~~ん」


なのはが猫語声に出しながら、飛び越えた。
跳び箱を飛んだのではなく、飛び越えた。

旅箱に飛ぶ直前に、身体を縮ませて、バネのように飛んだ。


『……う、うぉおおおおおおおおおおおおおお』


観客が一間を置いて、歓声の声を上げた。
一間置いたのはあまりの出来事に呆然としてたからだろう。

なんてったってこういうことができるのを知ってるのは、俺とアリサ、すずかぐらいだからな。

見ろよ、あの高町家の面々の顔。
驚きのあまりカメラを落としてるぞ。

未だにフリーズしてるしね。

しかし、まだまだ競技は無情にも進むのだよ。

なのはが次に当たった障害物はネット。
このネットはサッカーのゴールネットを応用したものだ。

うまく工夫されてると思う。
しかし、甘いな。


『なのは、CUT』

「にゃにゃにゃにゃい!」


そういうと、なのはの前のネットが無残な姿に……
どういう原理かは俺にも分からん。

練習のときに試しにやってみろと言ったら、出来たんだもん。

そして、先生方は唖然としていた。
来年はゴールネットじゃなくなるだろうね。

鋼糸とかになるんじゃないかな?


ついには、最終障害物。
ちょっと高めの平均台である。なのは体の半分ぐらいの高さだから、約60cmぐらいかな。
平均台の下に台のようなものを置くことで、この高さを作ったようだ。

もちろん、落ちたとき用に横にはマッドが敷いてある。

まぁそれでも、大した障害じゃないだろう。


『なのは、GO!』


俺は行けの指示を出す。
しかし、なのはは平均台の上から動こうとしない。

一度上ったのにそこから動けないでいるのだ。
まるで怖がってるかのように……

どういうことだ?
仕方ないのでもう一度指示を出す。


『GO!』

「にゃ、にゃにゃん」


頭を左右に振る振るさせる。
拒否と言うことなのか。

なのはが俺のほうに向いた。
なのはの競技してる場所からは結構離れているはずだが、その目は俺に向いていた。

体がこわばり、目には涙を浮かべていた。

俺の場所からでも見えるぐらいに、ハッキリした表情だった。


『にゃにゃにゃん。にゃにゃにゃ』

『なになに、高いとこが怖くて動けない、だと?』

『にゃい』


たぶん涙声だと思う。

これは、もう無理かもしれない、自然にそう思させられた。
しょうがない、これはリタイアするしかないな。

俺は決断をしてなのは猫の場所に行く。


「にゃ、にゃ~ん」


そういって俺に飛びついて来る、なのは猫。
本当に怖かったのだろう。
目には必死にこらえてた涙が浮かんでいた。

ウルウル目かわいいって俺違う。
そんなことを考えてる場合じゃない!

それにしても、大衆の前で俺の身体にスリスリするな。
見られている俺が恥ずかしいだろ。

まぁ別に悪い気持ちではないけどさ。
むしろ、スリスリ気持ちいいけどさ!


この結果なのははリタイア。
実はこの障害物競走において、リタイアは珍しいことではないと後日談。



「す、すっごい怖かったの!」

「普段は全然平気なのにか?」

「うん、なんか駄目だったの……どうしちゃったんだろう、なのは」


心底不安そうにするなのは。
俺にはちょっとその原因に心当たりがある。


「子猫だったからじゃないかな?」

「え、そうなの!すずかちゃん!」

「え、う~ん。子猫って高いところに登りたがるけど、怖くて降りられないなんてことがよくあるからね」

「なのはは完全に子猫になっちゃって言うの!? そんな話あるわけないじゃない」


俺もアリサの言いたいことはわかるんだが、
実際にあんなことがあったんじゃ、あながちすずかの理論も的外れじゃない気がする。

猫モード……まだまだ謎がありそうだ。


「そういえば、アリサちゃんたち一位おめでとう」

「遅いわよ!」

「もう、アリサちゃん。ありがとう、なのはちゃん」


アリサとすずかの二人三脚だが、実はもう終わってしまった。

俺がなのは猫をあやすのに予想以上に時間がかかってしまって、
泣き止んだのが、ついさっき、つまりは1年生の最終種目の代表リレーを残すだけとなっていた。

お昼ごはんの際も、ずっとべったりな感じだったから、周りからは変な目線で見られるし、
母さんはずっとニコニコしてるし、困り果てたよ。

挙句の果てには、最後のなのはを俺が救出するシーンが桃子さんの手によって映像に残ってしまう始末。
嬉しいのやら、悲しいのやら、なんとも複雑な映像だった。


「相変わらずと言うか、素晴らしいコンビネーションだったな」

「あたりまえじゃないの。私とすずかが本気でやってるんだから」


結果はなのはが言ってたように1位だった。
他を引き寄せない、圧倒的1位。

ビーチのときにも思ったが、本当にこの二人はいいコンビだな。

二人でシンクロしたら、金でも取れるんじゃないのだろうか?


「でも、クラス優勝決まっちゃったね」

「俺たちのクラス圧勝だったからね。」


運動会午前の時点で、100点以上の差をつけ、午後はさらに拍車をかけ、首位独走状態。
最終種目を前に、優勝が決定してしまったのだ。

嬉しいは嬉しいんだけど……う~ん。
いまいち盛り上げが足りないような。

俺的には美味しいことは多くあったけど。

まぁ何はともわれ次が最終競技。
あの四兄弟がでるリレーである。

最終競技というのもあってか、最初の競技時以来の熱烈な注目度だ。
みんなが一心に最後の競技を見届けようとしている。

もちろん、俺もそんな観客の一人だ。


『位置について!』


最後の競技が始まろうとしている。
俺も心臓がドキドキだ。

─パン、とスタートの発砲音が響き渡る。

一斉にスタートした第一走者。
現在の1位は……我がクラスのようだ。

案外速いなあいつ。
今度名前で呼んであげてもいいかなと思う。

50mを走りきり第二走者。
順位が入れ替わる。

現在我がクラスは2位。
これじゃあ、名前で呼んであげるのは厳しそうだ。

それでも、なんとかトップに食らいつき、2位で第三走者へ。

差がほとんどなかったおかげか、
はたまたバトンの渡し方が上手かったのか、1位を奪還した。

こうやってみてるとハラハラドキドキの展開だ。
保護者を含めた観客もみな、この展開に手を汗握るものがあるようで、声援の声がよりいっそう強まる。

そして、ついには最終走者。
つまり、いつも兄じゃとか呼ばれてるやつだ。

1位でバトンを渡されたが、あまりは足は速くないらしい。
これが嫌がってる理由だったのか。

それでも、差はかなりあったので、ギリギリ1位でゴールテープを切れそうだ。

しかし、そう思った矢先である。


『え……ああああああ』


ため息交じりの歓声が響き渡った。

1位がこけた……

ようするに、兄じゃと呼ばれている人物がこけてしまったのだ。


「だ、だから俺は嫌だったんだあああああああああああああ」


無情な叫びが場を支配した。
しかし、それでどうにかなるもんだいではなく、諦めがついたのか立ち上がり、最後にゴールをした。

こけても完走しきった彼に、賞賛の声援がそこかしこから聞こえる。


「よく頑張った」

「君が1位だよ」

「来年があるさ」


はたして、その声は彼にはどのように伝わったのか。

俺がその後に見た彼の目からは涙流れていて、その背中には泥がついていて、とても哀愁に満ち溢れていた。

ありのままに─第18話─ 

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季節は未だに秋である。

秋の一大イベントと言えば、この間の運動会が真っ先に上がると思う。

実際ここ最近の記憶の中では最も印象的だった。

それは、ただ単に運動会のお祭り騒ぎで楽しかったからと言う意味合いもあるのだが、
その後の、翠屋での打ち上げとかもあり、楽しき一日だったということでもある。

他にも、まぁいろいろと盛りだくさんだった。

でも、多くは語らないさ。
俺の心のうちにとどめておくべきことだってある。

運動会が終わり、次に待っていたのはテストテストテストの毎日だった、ような気がする。
記憶にないというか、あんまり深く考えず受けたから印象的ではなかったということだ。

まぁそれでも、テストではいつも通りの点数を取り、上々ではあった。

アリサが「勝負よ!」と言って、なんだか知らない間に勝負になっていた気がするけど、
双方共に全教科満点で引き分けに終わった。

なのはからは軽く呆れらた上に、軽く涙目だった気がするが、なぜだろう?
なのはに泣く要点でもあったのだろうか……

それとも、点数がよっぽど酷かったとか?
うん、それならありえる。

なのはは子猫だからな。

理由になってない気もしなくはない。


運動会も終わり、テストも終わり、残すところは冬を待つだけとなった。

季節は未だに秋である。
秋……と言っても、すでに肌寒い季節ではあり、半そでで出歩くにはすでにきつい時期だ。

運動会のときはまだ温もりがあったけど、ここのところは冷たさが増した。

この町の場合は海がある分、風がよく吹くのでそれが一番寒く感じるかな。

別に寒いのが嫌いとかそういうのはない。
冬の寒さはツンと来るものがあって、それが清々しいと感じることもある。

だからと言って好き好んで寒いのが良いというわけでもないけどね。

まぁ冬は近いが、まだ秋だ。
あまり先のことを考えてもしょうがないと思うし、とりあえずは今やることを考えよう。


「なのはちゃんもアリサちゃんも今日は、遊べなくて残念だったね」

「そう、だね」


場所は月村家の豪邸である。
外にある、なんとも金持ちだなと思わせられるような庭ですずかと遊んでいる、
というか一緒にいる。


「ノエルもファリンもお姉ちゃんまで、今日はこの家にいないからなんか寂しいね」

「そうだな」


今日は本来ならアリサやなのはも一緒に遊ぶ予定だったが、
アリサは家の事情、なのはは家の手伝いというわけで、ドタキャンした。

まぁなのはの場合は、この間のテストの結果が芳しくなかったせいで遊びの許可がもらえなかったというだけの話なんだけど……

ふむ、今後このようなことがないようになのはに勉強でも教えてやるか。

また、すずかの使用人のノエルさんやファリンさんまでもがすずかのお姉さん、
忍さんの付き添いで今は家にいないらしい。
恭也さんもその付き添いとのことだった。

みなさんこんな休日にご苦労なことというか、殊勝というか、
そんな日に暇な俺とすずかがまるで暇人というか、怠け者みたいじゃないか!

いや、俺は怠け者だけどさ。
すずかは違うよね? ね?


「今日は……肌寒いね」

「そうだね」


会話が続かないなぁと思っているのは俺だけじゃないはずだ。
さっきから、こんなんばっかしだよ。

よくよく考えると、俺とすずかの二人きりっていうのも初めてな気がする。
いつもすずかにはアリサがついてたし、俺にはなのはがついてたからね。

そう考えると、ふむ。
中々に気まずいものがあると言うか、話題がないというか、間がもたないというか……

いや、ここは意を決して話しかけないと駄目だよな!


「「あ」」

「「え?」」


あ、声が被ってしまった。
なんなんだこのシチュエーション。

恋人同士じゃないんだから!

もう一回。


「「その」」

「「お先にどうぞ」」

「あ……どうぞ」

「いやいや、すずかから」

「ううん、竜也君から」

「「……」」


お互いに先を譲り合った上に、目が合っちゃって、顔が熱くなる。
すずかは顔が真っ赤に……

な、なんか妙に恥ずかしいな。

どうしてこうなったんだ。
声がさっきから被ってしまうじゃないか。

この広い庭の中で俺とすずかの二人き─
二人きり!?

ああ、駄目だ。
なんか妙なニュアンスが混じってる。

俺は最近毒されてるな……アニメとか小説のせいかな?

さて、どうやってこの均衡を破るか……


『にゃ~』


にゃ~?
不意に猫の鳴き声が聞こえ、周りを見渡してみるとそこには子猫が!

あ、なのはじゃないよ?

そうか、ここ猫屋敷だった。


「猫、集まってきちゃったね」


気付けば、周りには猫!猫!猫!そして、にゃ~、にゃ~、にゃ~の大合唱と化していた。
一体どれくらいいるんだろう……

少なく見積もっても30はいると思う。
種類もさまざまだ。
といっても俺は猫の種類が分かるわけじゃないんだけど、毛並みが違うからたぶん色々な種類だろう。


「猫って和むね、すずか」

「そうだね、こうやって眺めてるだけで結構癒されるよ」


猫が自由気ままに、ありのままに過ごしているのをみてると本当に癒される。
そして、のんきな「にゃ~」という泣き声が絶妙なんだ。

猫の中には猫同士でじゃれあったりしてるのもいれば、トンボを必死に追いかけていたりもするし、
中には俺のひざの上や頭のうえ、方に乗ってくるのもいる……って、
なんか俺の回りにいように集まってるような気がしてならないんだけど!


「竜也君の周りに不思議と猫も集まってるね」

「みたいだな。気付いたら俺の足元にも寝転んでるし、両肩に乗ってるし」

「竜也君ってそういう不思議な魅力があるのかな?」

「魅力?」

「うん、猫に懐かれるみたいな。なのはちゃんとかアリサちゃんの時もそうだったよね?」


すずかが言ってるのは猫化の話だろう。

それにしても、猫に懐かれるか。
なるほど、それがもし本当ならなのはに懐かれる理由はよく分かるな。

逆に言えば、なのはが猫であるということを証明していると言える。


「それを言ったら、すずかだってそうじゃないのか?」

「ふぇ!?」

「ふぇ、じゃなくてさ。一度だけ見せてくれたじゃん」


過去に一度だけ。
なのははしょっちゅう子猫だし、アリサはなんだかんだで猫になってくれる。
いつも条件付だとか、勝負に勝ったらとかだけど。

それに比べ、すずかはまだ一度しか、見せてくれていない。
そう、一度しか、だ!

これでは、自称猫マスターの通り名に傷がつく。


「で、でも、あの時はその場の雰囲気とかあったし」

「今も十分雰囲気あると思うよ?」


周りは猫だらけ。
むしろ、俺とすずかを残して、猫しかいない。

この月村低を含めたとしてもだ。

雰囲気、もしくは条件としては十分すぎると思う。


「そうかもしれないけど」

「すずか」

「な、何かな?」

「俺は猫がとてもとても好きなんだ」


俺はそういってニカっと笑顔をすずかに見せる。


「竜也君、どんなにいい笑顔でも私はやらないよ?」


意味がなかった。
精一杯の笑顔だったのに。

これは中々に堅い城壁だ。
どうやって切り崩すか……


「猫ってかわいいよな?」

「そうだね、癒されるし、知ってる木の上に上って降りれなくなった子猫ってすっごくかわいいんだよ?
だから、その場面見るとついつい見入っちゃうんだ」


たしかに、この間のなのはを想像すればかわいいなんて容易にわかる。
それ以上に、すずかよ。
その状況は助けてあげようよ。

気持ちは分かるけどさ。


「運動会のときのなのはちゃんもかわいかったよね。本当に子猫みたいだったよ」

「俺もあのシーンは何度も見返してるよ」


高町家『なのはの成長映像その5運動会編』はそれはそれはとても素敵な映像でした。
ついつい焼き回ししてもらっちゃったよ。
途中からしか移ってないけど……

にしても、その5って多いのか、少ないのか分からないよ。


「だからさ、すずかも、もう一回猫化してみようよ?」

「理由になってないと思うよ」

「いや、なのはがあれだけかわいいんだ。すずかがかわいくないはずがないよ!」

「そ、そんなに熱く語られても」


若干引き気味のすずか。
ちょっと強引に行き過ぎたか。

これは、すずかの猫化計画は諦めるしかなさそうだよ。


「でも、うん」


改めて決意したかのような口調。


「どうしてもって言うなら、一回だけ」

「え?」


今、なんて言った?
どうしてもっていうなら一回だけ?

え、どういう心境の変化?


「あ、あのね。別にやってみたいとかじゃなくてね。
なんか、みんなやってるのに私だけやらないみたいてちうのは、ね?」


なんとなく、疎外感と続けるすずか。

俺はそれがどうして疎外感なのかは分からない。


「疎外感?」

「うん、竜也君が来る前の話になっちゃうんだけどね」


昔は誰にも声をかけられず、一人だったと。
でも、そのあとにけんかをした果てに、なのはとアリサという親友が出来たと。

そう、少し前の話をしてくれた。
実はこの話は断片だけなら聞いていたが、実際には知らなかった。


「もちろん、竜也君もね」

「そうか」

「うん、だから、疎外感。みんながやってるならっていう」

「前にやったじゃん」

「そう、なんだけどね。この間のなのはちゃん見たら少しありかなって」


興味が湧いたと言うことかな。
この間もやった時は空気からとのことだから、今回は積極的に自分からということかな。


「そういうことだから。じゃあ……いくよ」

「ああ」


なぜか、緊張した雰囲気が漂う。
猫たちもそれを察してか、黙っている。


「にゃ……にゃ~ん」

『にゃ~~ん』


すずかが恥ずかしそうに猫の声をした後に、周りの猫たちも鳴いた。
それはまさにコーラスという言葉がピッタシだった。


「え、じゃあ。お手」

「うにゃい」


俺の手に優しくちょこんと手を置くすずか。
周りの猫たちがそれに合わせて、空中に手を置き、お手のポーズをとる。

なんというチームワーク。
すずかの仕草を真似してうごく30を超える猫たち……

とてもシュールな絵だった。

だが……それが、こう……なんていうか、胸に来るものがあった。

興味本意で、すずかの頭を撫でてみる。


「にゃにゃ~ん」


嬉し恥ずかしそうに、身体を猫みたいに縮める。

この状況……まさに、『猫パラダイス』だった。

結局この状況が俺が帰るまで続いた。
最終的には猫の数が50を超えていたと思う。

数えたわけじゃないけど、どうだろう。
飼ってる猫だけじゃなくて、野生のも来てた気がする。

なのはがいつのまにか混じっていてもおかしくないなと中から思い出したのはここだけの秘密である。


「竜也君、今日のことは内緒にね」

「え? ああ、うん。むしろ誰かに教えたら価値が下がりそうだ」

「そう?」

「ああ、今度は写真が撮りたいな」

「それはだめ……だけど」

「だけど?」

「二人きりのときなら、またやってもいいかな?」

「!?」

「ううん、とね。意外と楽しかったと言うか、なのはちゃんの気持ちが分かった感じかな?」


なのはの気持ちが分かった……だと?
全くもって謎発言である。

なのはの気持ちと言うと、子猫の気持ちと言うことなのだろうか?

なら、『猫の気持ち』でも買えばいいと思う。
あれ、そんな雑誌あったよね?


「えっとね、何が言いたいかというと、また遊びに来てねってこと」

「言い方が遠まわしなんだよ……」


俺は察しが悪いから分からなかったじゃないか。


「ごめんね。じゃあ、また明日。学校でね」

「ああ、また明日」


そういって、俺は月村邸を離れた。

今日はなのはやアリサには会えなかったけど、
これはこれで大きな収穫だったかな?

にしても……


「猫かわいい猫!!」


思わず海に向かって叫んだのはこの日の夕日が沈むころの話である。


ありのままに─第19話─ 

未分類

秋がすぎ~冬が来る。

ということで、早くも季節は冬である。

秋と言う、生暖かくもすこし寒い季節とは異なり、本格的に寒い日々が始まった。

ここ、海鳴市は海の近くであるがために結構冷え込むことも多く、
また雪が降るのも珍しくはなかった。

俺的には雪と言うのは嫌いじゃない。
これは逆に言えば好きとも取れるような言い方ではあるが、好きでもない。

理由は至極簡単で、寒すぎるからだ。

ちょうどいいくらいの寒さってのはあると思う。
でも、雪ってのはやりすぎだ。

幸い、まだ大雪と言えるほどの雪は降ってないけど、まめにパラパラとは降るのだ。
その日は寒いったらありゃしない。

まぁ雪が降った日は、地面が凍って危ない為、剣術の鍛錬は室内、
つまりは道場内だけで行われる。

相変わらずトレーニングの内容は変わらないが、意外と飽きが来ないのは指導者がいいからだろうと俺は思う。

自分で言うのもなんだが、結構面倒くさがりやなので本当にすごいと思う。

それに対して、魔法の練習は結構本格派である。
本格派と言っても初期はただ母さんが暴れまわってるだけだったが、今は真面目な模擬戦や、
細かい術式の構成なども教えてくれる。

現時点では、防御魔法と治癒魔法、捕獲魔法は結構な領域にまで来てるとのこと。

俺からすると対比する相手が母さんしかいないから、
どれほどすごいのかも分からないから、回りと比べてどれくらいのレベルかは分からない。

それでも、母さんがすごいことぐらいは分かる。
室内一杯に、無数の光の刀を出現させて、四方八方から攻撃するあの魔法は、おそらく相当のものだと思う。

母さんの魔導師ランクってどれくらいなんだろう……
一回だけ尋ねたことがあるが。誤魔化されてしまったのを覚えている。

魔導師としての実力もさることながら、科学者としての方がすごいと本人談。

母は一体どこに行こうとしたのだろうか。

まぁそんな平凡な毎日を繰り返しているうちに、冬休みが来てしまった。

学校の終業式が12月の23日の出来事。
そして、現在は冬休み初日つまりは……


「「「メリークリスマース!!」」」


と言うわけであった。


「ほら、竜也君も言ってよ」

「ああ、メリークルシミマス」

「違うわよ!今日はクリスマスイブでしょ!」

「イブだろうが、エヴァだろうが面倒なのには変わりない」


本来なら今日は翠屋でクリスマスパーティ!
と行きたい所だったらしいのだが、何せクリスマス。

ケーキ屋からすればここ一番のかきいれ時で、ここ数週間は寝る間を惜しんで、商売とのことだった。

その結果、なのはたちはどこかでのんびりとクリスマスを過ごせないかと考えた末に、
我が家に突撃してきたと言うわけだ。


「来るなら来るって言ってよ……何にも用意してないんだから」

「別にいいじゃないの。こういう日はみんなで盛り上がる方が楽しいのよ」

「そうだよ!最近なのはと遊んでないんだから、今日は付き合ってよ!」


突撃に誤字はあらず、本当に唐突にやってきた。
今日は母さんも朝から翠屋にてバイト中なので、家は俺だけだ。

たぶんこの三人はそれを見越した上でここにやってきたんだろうが……


「やるならもっと広いとこがいいだろ。アリサの家とかすずかの家とか」

「私の家はお姉ちゃんと恭也さんが……ね」


ああ、そういうことか。
確かにそんな空間に放り込まれたらたまったもんじゃないよな。

そこには同情するが……ならアリサはどうなんだ?


「む、無駄に広いと寂しいじゃない。ここならちょうどよくて落ち着くわ」


声小さめに寂しい発言。
アリサ……かわいいやつめ。

そういうことなら早く言えばいいものを。

ってそれってここが狭いと暗に言われてないか!?

そういう意味合いなら、かわいくないな、うん。


「はぁ」

「な、何でそんな深くため息するの!」

「いや、いつも一人で寂しくしてるなのはさんを見てると同情して涙が」

「なのはは一人じゃないもん……一人じゃないもん」

「まぁそうだな。一人なのはアリサか」

「私だって違うわよ!」

「じゃあ─」

「私も違うよ?」


先に潰されてしまった。
さすがすずかやりおるな……

じゃあ、残ってるのは俺か……
まぁ確かに最近あまりなのは猫で遊べなかったから、寂しいと思ってたし、
アリサがいなくて賑やかじゃなかったなぁってのもあるし、
すずかがいなくて落ち着かなかったなぁ。

うん、依存してるの俺かもしれない。

絶対に誰にも言わないけどね!


「まぁ別にここに来て悪いってわけじゃないけどさ」

「ならいいじゃない」

「いや、ね。何にもないよ、ここ」

「知ってるわよ。だから持って来たんじゃない」

「え?」


そう言うと、アリサは自分が持ってきたバッグの中から取り出したのは……
猫じゃらし?


「おいおい、まさかアリサそれは!?」

「ふふふ、竜也も分かったようね」

「アリサちゃん本当にもってきたんだ」

「マタタビもあるわよ」


何とも用意周到なやつだ。
なかなかに猫の扱いが慣れているじゃないか。

家では犬しか飼ってないくせに。


「そうか、アリサ」

「そうよ」

「それで遊んで欲しいんだな?」

「え!? ち、違うわよ!」

「なんだ……ちがうのか」


俺はてっきりこれで、
「ご主人様遊んでください」とアリサが言うものだと思ったんだが……そうか違ったのか。
残念、無念極まりない。


「え、何々?アリサちゃん何かもってきたの?」

「な、なんでもないわよ!」

「ど、どうして怒ってるの? 顔真っ赤にして」

「う、うるさいわね!べ、別に怒ってないわよ」

「お、怒られたの……」


なのはは分かってないのか。
まぁ猫じゃらしとマタタビはあとでなのはに使うとして、
これから何をするかだが……


「今日はクリスマスだよ? 竜也君」

「だからどうした?」

「だ・か・ら、クリスマスと言えば!」


クリスマスと言えば?
ケーキ会社が儲かる季節とか、雪が降る季節とか、プレゼント……あ、そういうことか。


「プレゼント?」

「そう、そうなの!」

「ない」

「「「え?」」」


いやいや、そんなに驚かれてもね?
家は貧乏だし?

俺はお小遣いとかもらってないからプレゼントとか用意できないからしょうがなくない?


「そういう、お前達はもってきたのか?」

「持ってきたわよ」

「当たり前なの」

「もちろんあるけど」

「……そうか」


ははは、なんか空気読めてないね、俺。
で、でもさしょうがないじゃん!

クリスマスに気付いたのが今日だし?
さっき言ったとおりお金もないし。

にしても、この状況落ち込むね。
なんか甲斐性無しに見えるよ。


「じゃあ、プレゼントはあんたにはあげられないわね」

「え? 俺の分を用意してくれたと言うことか?」

「……そうよ」

「アリサちゃんね、すっごい悩ん─」

「なのは!余計なこと言うんじゃないわよ!」


キッとなのはをにらみつけるアリサ。
なのはシュンとなってごめんなさいと言い、すずかは苦笑してた。

しかし、残念だったなアリサ。
しっかり聞こえたぞ?

アリサは俺にプレゼントをあげようかどうか悩んでいたと。

悩んだ末にもらえるとか……嬉しいような悲しいような。
できれば悩まずにパッとあげると決断して欲しいものだ。



「プレゼントもらえないのは残念だな」

「え、別に絶対あげないとは……」

「なのははあげるよ?」

「そうか、なのはいい子だな」


にゃはは、と喜ぶなのは。
やっぱなのは見ると和むねぇ。
子猫にしか見えないもん、俺には。


「私からもちゃんとあげるよ」

「すずかもサンキューな。それに比べて……」


ジーーッとアリサを見つめてみる。
ちょっと目をウルウルさせて悲しそうにするのがコツだ。


「な、何よ!私が悪者みたいじゃない!」

「え?……ソンナコトナイヨ」

「何で片言なのよ!わ、分かったわよ。あげるわよ、ちゃんと」

「それを聞いてホッとしたよ」


なんという状況!
俺は何もあげずにみんなからはもらえるとな。

ノーリスクハイリータン。
意味がちょっと違うような気もしなくもないが、まぁいいかな。

でも、あれだよね。
なんかこのまま貰いっ放しだと、後でなんだかんだとか言われたりするかもしれないな。

それ以上に、男として駄目な気がする……

ふむ、どうするべきか……

クリスマスだろ……サンタにプレゼントにチキンにケーキ。
ケーキ?

そ、それだ!!

確か、冷蔵庫にはケーキを作る材料があった気がする。
母さんが翠屋で大量にもらってきた、ケーキの材料が!


「よし、じゃあこうしよう!」

「いきなり何よ?」

「俺はケーキを作る!それでそれを食べながらプレゼント交換タイムと行こうじゃないか!」


俺のこの発言でみんなの目が光る。


「そ、それいいかも……」

「あんたケーキ作れるの?」

「もちのろんろんだ」

「た、竜也君。私も手伝うの!」

「いや、いい。これは俺からみんなへのプレゼントだ。しばらく時間がかかるが、そこで待っててくれないか?」

「そ、それは別にいいわよ、期待してもいいのかしら?」

「さぁ? 好みのケーキとかある?」

「何でもいいよ。竜也君が得意なので」

「なのはも同じかな」

「了解した。じゃあ、ゆっくりまっててくれ」


さて、ケーキの準備に取り掛かるとしよう。
ふふふ、我が料理の腕に嫉妬させて、頬をたれさせてやるわ!



ケーキが出来上がったのは、夕方はすでに6時は回っていた。
そもそも、作り始めたのがおやつ時の時間だから生地を作る時間を含めても、妥当な時間だろう。


「ほれ、出来上がったぞ」

「遅いわよ!」

「しょうがないだろ、完全手作りなんだから」

「そうなの?」

「ああ、ちょうど材料一式揃ってたからね」


ちょうどショートケーキワンホール分の材料があったから、ショートケーキにした。
出来としては……まぁそれを判断するのは、なのはたちか。


「ほれ、早く食べちゃいな。晩飯食べれなくなっちゃうぞ?」

「うん、そうだね。じゃあ、みんなで均等に分けよう」


俺はすずかの言葉通りにワンホールを4等分……にするとあまりに多いから、8等分にした。


「残ったのはお土産にでもしてくれ、まぁ美味しかったらの話だと思うけど」

「じゃあ、食べさせてもらうよ。いただきます」

「「「いただきます」」」

「「「「…………」」」」


やはりみんな食べるときは無言になっちゃうな。
まぁ真剣に食べるという言い方はおかしいけど、味をみながら食べるとなるとそうなるか。

みんながまず一口ずつ食べる。


「「「!?」」」


見を真ん丸くして、驚くなのはたち。
う~ん、この場合はどっちの意味でとれるのかな?

俺も一口食べてみる。

うん、まずくないな。
味見は一応したけど、思ったよりまともだな。

この分ならまずいということは無いと思うけど。


「……竜也君」

「どうしたなのは?」

「うん、これ本当に手作り?」

「ああ、何から何まで手作りだぞ? といっても原料はさすがに市販だが、どうだったか?」

「もしかしたら、お母さんの作るやつよりも好きな味かも」

「え?」


いやいや、翠屋に勝っちゃまずいだろ。
あそこのケーキはかなり美味しいし、俺でもさすがに勝てる気がしないというか。


「そうね、翠屋とはタイプが違うから、比較は出来ないけど、これで十分店を出せるレベルじゃないかしら?」

「私も、そう思うよ。竜也君、なんでこんな特技があるのを教えてくれなかったの?」


そういわれてもねぇ。
俺としては予想以上の反響振りにビックリしてるんだが。


「まぁ気に入ってもらえたようで何よりだ。じゃあ、そろそろプレゼント交換タイムにしようぜ。
俺からはこのケーキでいいな?」

「異論はないわ」

「うん、十分すぎるぐらいなの」

「私もこれで十分」

「うん、そう言って貰えるとありがたいよ」

「実はあんたが来る間暇だったから私達の交換タイムは終わってしまったのよ。
だから、あとは私たちがあげるだけ。」

「そうか、ずいぶん待たせたらからね、しょうがないか」


まぁ3時間以上もこの何もない部屋に待たされたら、しょうがないよな。
少し寂しいけど、なんか疎外感だけど……

うん、負けない!


「「「メリークリスマス」」」

「あ……ああ、ありがとう」


3人が一斉にプレゼント渡してきた、これでもかと言う笑顔で。
そのせいで、一瞬見惚れちゃったけど……し、仕方ないじゃないか、この三人ってすごいかわいいんだぞ?

猫状態もさることながら、普通もかわいいから困るんだよな。
まぁ猫状態のほうが好きだけど。

3人のプレゼントは全員、箱に入っていて大中小と言った感じだった。
なのはが小、すずかが中、アリサが大である。

そして、渡し終わると、三人に後であけてねと言われた。

人に見せられないものがあるのか、それとも焦れさせてるのか。
もしくは、「あけるな、絶対にあけるなよ」と言ってるのか……

悩む、あけてしまおうかと一瞬本気で考えたけど、こういうのって雰囲気だよな?
うん、俺空気読めてる。


「分かったよ、じゃあこのあとどうする?」

「そうね、これしかないわよね?」


そう言って、バッグからまたチラつかせたのは、例のあのアイテムだ。


「そうか、分かったよ。アリサ」

「よった分かってくれたわね」

「遊んで欲しいんだな?」

「違うわよ!」


思いっきりたたかれました。
ボケたわけじゃないのに……

アリサだってちょっとやりたそうにしてたじゃん。

そんなことを考えてると、急にドアが開いた。


「たっだいまーー!!」

「母さんどうしたの!? 言ってた時間より早いじゃん!」


母さんは今日は遅くなると言っていたはずなのに、はて?
どうしたのだろうか。


「完売したから、帰ってきたのよ。それに母さんだけじゃないわよ? みんな入ってきてー」


そう言うと、ぞろぞろ入ってくる入ってくる。
この狭い家に入り切らないんじゃないかという面子。

高町家ご一家全員に、すずかの家の忍さんやメイドの人、
それに、アリサの家の執事の鮫島さんに、たぶんアリサのお父さんだろう人。


「さぁ、これからクリスマスパーティよ!」


全くこんな狭い家でやるなんてどうかしてるよ、みんな。

でも、それでも……すごく、すごく暖かいクリスマスだなぁ。
外はあんなにも雪が降っているのに、ここは人の温もりで一杯だよ。



おまけ

「では一発芸やります!」

『待ってましたー』

「なのは猫との戯れです、なのはまずはお手!」

「にゃん!」

「おかわり!」

「にゃにゃん!」

「そしてこの秘密兵器……ねこじゃらしで……」

猫じゃらしがなのは猫のまで舞う。

「にゃ、にゃにゃにゃ、にゃん!うにゃ~ん、にゃい」

なのは猫が猫じゃらしに向かってちょんちょん猫パンチを繰り広げる。

「よし、未だ一回転!」

「にゃ~~ん」

猫じゃらしなのは猫の周りを縦に円を描くとと、それと同じ軌道を回るなのは猫。

「着地!」

「にゃい!」

最後ににゃんにゃんのポーズをとり、固まる。

『か、かわいすぎる!!』



ありのままに─第20話─ 

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気温は温暖。
花粉が縦横無尽に宙を舞い、新たな季節の訪れに喜びを感じる人と、絶望を味わう季節と言えば、
誰もがわかると思う。

そう、寒い季節は終わりつげ、やってくるは始まりの代名詞。

海鳴市にも春がやってきました。

1年と言う意味では12月のお正月、1月の元旦で終わっているが、
小学校に通う身としては、やはり新年度の方が終わりと始まりを感じさせる。

かくいう、俺も今、少しこの1年間を振り返ってみる。


この1年を一言で言うなら、猫な年で。
複数の言葉を使うとなる、すべての始まりの年であったのは事実だ。

この町に引っ越すことから始まった。

高町家と出会い、アリサやすずかとの出会い。

また、始まりと言う意味では、剣術もそこに含まれるであろう。

季節の変わり目に毎回思うことがあるとするならば、やはりこの剣術の鍛錬の成果と魔法の練習だと思う。

まぁ冬の時期に比べると、時間も若干短いせいか、大した差もない。
冬のように語るべきこともないしね。

思い返してみれば、この冬の季節。
また、学校の単位で言えば、3学期というのは非常に変化に乏しい時期だった。

何か特別なことが起きるわけもなく、大したイベントもなかった。
あえて語れる内容としては、バレンタインと言うものがあった。

女の子が好きな男の子にチョコを上げる、恒例のイベントだ。

そう、女の子が男の子に……なんだけど。
はて、何を取り違えたか、あの三人娘達は俺からチョコをもらう気満々だった。

なぜかと理由を聞けば、


「え? だって竜也君は料理上手だから」

「むしろあげる側に回るべきだわ」

「なのは楽しみにしてるの!」


と、見当違いもいい回答が帰ってきた。

俺はそのあまりにも理不尽な要求をされたが、
そこまで期待するとかえって引くに引けないというよりは、火がついた。

これでもかと言う、本気のチョコを作り上げて、プレゼントして見せたところ。


「これ、本命……なの?」

「や、やりすぎじゃないかしら……」

「ちょっと……ね?」


むしろ引かれてしまった。
やりすぎたのは駄目だったらしい。

要求してきたくせに、贅沢なんだよ全く。

まぁ何はともわれ、美味しかったらしく、味には満足してもらえたので俺としては頑張った甲斐があるものというものだ。

最近、自分の知らない才能が開花し始めてるような気がするが、
気のせいだと思う。

そんな出来事もあったが、今日から新学期だ。


「じゃあ、いってきま~す。ほら、竜也君も行くよ」


なのはの元気な声が高町家に響き渡る。
今日はやはり、新学期と言うこともあって、なのはも浮かれている様だ。


「はぁ、じゃあ行ってきます。なのはそんなに慌てるところ─」

「にゃ!?」


もはや、定例イベントであるのはここだけの秘密だ。
なのはは大抵こういう浮かれ気分時はよく転ぶ。

浮かれ気分という文字の通り彼女の場合は地面に足がついてないようだ。

まぁこんなの毎朝の為、簡単に予想がつくから、倒れないように手をつかんでやる。


「にゃはは、ありがとう」

「いい加減、猫モード以外のときは駄目駄目だな」

「にゃ!そ、そんなことないよ」


だんだんと声が小さくなる。
自覚があるのだろうか、自信なさ気に答えた。

立ち話だと学校に遅れかねないので、学校に向かいながらしゃべる。


「そもそも、猫モードってどんな感じなんだよ」

「なんていうのかぁ。なんか竜也君の言うこと聞かなくちゃいけない気分になると言うか。
う~ん、なんか竜也君の傍にいると落ち着くと言うか、引き寄せられると言うか」


本人にもあまり分かっていない様子だ。
もし、これが解明できるようになれば、猫モードをもっと有効活用できると思ったんだが、
思ったより難しそうだ。

傍にいると落ち着く、ね。
俺は猫に好かれる体質と言うか、最近を思うと、猫に限らない感じだった。

ボーっと突っ立っていれば、自然に鳥が肩に止まるのもそう珍しいことじゃない。
伝書鳩などもお手の物である。

将来は、動物を使った新しい運搬業なんかいいかもしれないな、なんて思ってる。


「なのはでも分からないのか」

「うん、ごめんね。でも、いうこと聞いてると気持ちがいいんだよ?」

「俺には分からない感性だ」


全く意味不明だよ。
言うこと聞いてると気持ちがいいってなのははMな……安易な発言は止めとこう。

最近分かったことなんだが、なのは猫やアリサ猫、すずか猫では微妙に違う点がある。
いや、アリサ猫やすずか猫に関しては、ほとんど同じだが、それに対しなのは猫は色々と違う。

簡単に言うならば、なのは猫は天然もの、アリサ猫とすずか猫は人工ものという感じだ。

なのは猫はあくまで天性から来るものといってもいい。
じゃなかったら、あの身体能力もありえん。

瞬発力や反射神経だけなら、俺やすずかも凌駕するかもしれない。
たぶん、ここら辺の影響は完全に血と言えるだろう。

御神の血。さすがは高町家の末っ子と言った感じなんだろうな。


それに比べ、アリサやすずかは演技じみているというと、やな言い方かもしれないが、
たぶんこの言葉が分かりやすいと思う。

まぁアリサなんかは多少は天然っぽさは感じるが、すずかは物まねの領域だろうな。

俺としては、どの猫も半端なく、それはもう半端なくかわいいんだが、
あえて言うなら、従順?ななのは猫は特にかわいがってると言っていいだろう。

面白がってると言う意味ではアリサ猫が一番だが。
すずか猫の場合はあの猫軍団とのコラボがそれはもう……キュンと来るものがあった。

いつかはそこに、なのは猫やアリサ猫も交えさせたいもんだ。


「なのはにも全然分からないの……どうしてなんだろうね」


うーん、と人差し指をあごの部分にさして、少し悩むなのは。
俺からすれば、なのはの中の猫の本能みたいなものだろうと思う。

まぁこれからもこんな感じの子猫なら愛でてやろう。
猫の飼い主として。


「なのはちゃん、竜也君おはよう」

「あ、すずかちゃん、おはよう」

「おはよう」


いつもどおりの通学路で、いつものタイミングで居合わせるすずか。
今日も清楚というイメージがあうね。

しかし、一度猫化すると……ふふふ。

このことを知ってるのは俺のみだからなんだか得した気分だ。

バスに向かい学校に行く途中も雑談は続く。


「今年も同じクラスだといいね。ね? 竜也君」

「図らずもそうなると思うよ」

「え、どういうことなの?」


去年もそうだったが、あの母のことだ、絶対に仕組んでる!

だって、昨日それっぽいことを言ってたから。


「竜也、クラス替えが楽しみね」

「え、まぁどうなろうと別にいいけど」

「安心して、竜也を一人にはしないわ」

「いやいや、意味が分からないけど?」

「学校に行けば分かるわ」


去年のことと照らし合わせれば、十分に予想がつく。
最後の学校に行けばで。

こんな他愛のない話をしていたら、いつの間にやら学校の前に……


校門の前に目立つ金髪発見。
いつどこからみてもやはり金髪ってのは目立ちすぎじゃなかろうか?


「おはよう、アリサ」

「え!? あ、なんだ竜也ね、おはよう。すずかもなのはも」


アリサの挨拶に笑顔でおはようと返す二人。
新学期とはいえ、いつもと変わらないこの雰囲気にやっぱり春でも変化しないと、
若干期待してた俺は少し悲しくなる。

男の子はいつだって変化を求めるものだよね?


「なんだとは失礼な。まぁいいや、早くクラス名簿見ようぜ」

「そうね、それを見なくちゃ始まらないわ」


俺とアリサが先頭に立ち、まずは名簿が張り出されている場所に行き、掲示板を見た。


「あ、みんな同じクラスなの」

「そうみたいだね、今年もよろしくね」

「変化なし、ね。でもいいわ、今年も付き合ってあげるわよ」


三者三様に1年よろしくと言ったことを言う。

俺は予想がついていたが、うん、母さんは本当に何者なんだよ。
魔導師であり、科学者であり、この人脈。

なんで……なんでそれなのに貧乏なんだ!


「ああ、俺からもよろしくな」


まぁ今回は感謝しとくとしよう。
案外この3人を抜いたら友達いな─


「お、我らが皇帝と再び同じクラスか」

「兄じゃ、我や5兄弟もみな同じクラスですぞ!」

「皇帝閣下と同じですか、嬉しいです!」

「僕はみんなと一緒で一安心だよ」

「今年こそは俺がメインに」


あ、他にも知り合いいた。
かの4兄弟って5兄弟になってるし!

しかも、皇帝って、ああ、ちなみに俺のことね。

あの運動会の後、ナポレオンが授業に出てきてその時に英雄の話になって、
ナポレオンに一時期なったんだけど、
そのあと、ナポレオンが皇帝になったことから皇帝に……

なんか、そのうち神様になりそうだよ。

最近は尊敬よりも崇拝の眼差しを感じるんだが、気のせいだと思いたい。

それにしても、新入りよ。
皇帝閣下って、人通り多いここで言わないでくれよ。
みんながこっちに見てるじゃないか。


「あいつ、皇帝閣下だって」

「ちょっとしっくりくるから困るよね」

「いつもなのはに命令ばっかしするから、あながち間違いじゃないと思うの」


おい、そこ三人娘聞こえてるぞ!
俺が望んだことじゃないと言うのに……


『みなのもの図が高いぞ!!皇帝閣下のお通りだ!!』


や、やめて!
新しいクラスでいきなりそんなこと言わないで。
誤解されるじゃないか。

そして、一部の男子!
「ハハ!」とか言いながら、本当にひれふくすな。
そして、拝むな! 神様じゃないんだよ!

全く、新学期早々先が思いやられるよ。




猫成分が足りないと感じた作者によるおまけ

「アリサ」

「なによ?」

「猫モード、お手」

「にゃん。って何やってるのよ私!」

今はお手と言うと条件反射的に手を出すようになった、アリサ。

「おかわり」

「にゃい。じゃなくて!竜也!」

このギャップを最近楽しんでいます。
面白いじゃん、なんかころころ表情が変わるの。

「まて」

「にゃ~ん」

しかし、まての前では無力なり。

は! そうかこれが本当のツンデレ!?

猫状態がデレで、普通状態がツンの。

となれば、これからの目標は猫モードを長く続けさせることだな。
自意識がでないように。





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