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ありのままに─第21話─ 

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いつだって充実した日々を送っていれば、時間の流れは早く感じるものだ。

俺にとって、この学校生活というのはとても楽しく過ごしている。
楽しいと言うことと充実しているということは、必ずイコールになることはないとは思うけど、
俺自身が実感しているものとしては、充実していると言える。

ひとえに、そのことに関してはなのはたちが大きく関わっているおかげともいうべきなのかもしれない。

彼女らと一緒にいると飽きることない、楽しさがある。
よく俺に絡んでくると言う意味でもとても接しやすい。

あの4兄弟……が、なんか勝手四天王を語りだしているが、
何の四天王だって聞いてみたら、


「何を言ってるのですか、閣下!」

「我々はいつだって、貴方様と一緒ですよ!」

「ありがたやありがたや」

「僕は止めてるんだけどね」

「今度は俺が……」


間違えた、今は5人兄弟だったね。
でも、それで四天王なんだ……誰が省かれたんだ?

そんなことより、この面子でまともなのが一人しかいないじゃないか!
あ、でも、この5兄弟の一人って時点でまともじゃないか……

こういった感じで、どうやら自称俺の取り巻き、もとい四天王らしいです。
そして、一人は取り巻きって言うか、崇拝してるし。

なんだよ、ありがたやありがたやって、俺は皇帝であって神様じゃないって!
いやいや、皇帝でもないけどね!

たぶん、そういうのやりたい年頃なんだよね!

そうなんだよね!

まさか高学年になってもこの状態が続くなんてないよね?
今の状態でも十分恥ずかしいんだけど。

まぁこの5人のせいで、クラスに悪影響を、少なくとも俺のイメージに悪影響を及ぼしているのは間違い無しだった。
男子が近寄ろうとしない。
こんなことがクラスで起きている。

これだけならまだいいかもしれない。
俺は基本的に面倒なことは嫌だから、それが省略される分には。

ただね。

廊下を歩いてるとね、なぜかみんな俺に道をあけるしね。
知らない人が拝んでるなんてことがよくあるんだよ?

どう思うよ、これ?

酷いときなんて頭を下げてる人もいるからね。

これはあれなのか?
俺は、


「苦しゅうないぞ」


なんていいながら歩くべきなのか?
あ、それじゃあ皇帝というより貴族っぽいな。

どっちでもいいけどさ!

こうなった原因はあの、自称四天王だけど、先生も先生だろ。
去年の運動会のときからなんか、やけに俺を褒めるし。

そりゃあ先生からしたらさ、成績優秀で運動が出来る子って自分で言うのもなんだけど、
そんな子がクラスにいたら、褒めて伸ばしたくなるのは分かるけどさ。

授業前に拝むのは止めようよ。

俺まだ小学校2年生だよ。

あと、この流れで『皇帝ケーキ』とかいうのを売るな翠屋。
便乗しすぎだ。

たぶん母さんと桃子さんの共犯だろうけど、俺が恥ずかしいは。
しかも、最近の売れ行きNO.1ってなんなのさ。

俺は町興しのマスコットなのか?

でも、逆に考えるのなら、そういうマスコットの需要は短いから、安心できるよね。
だっていつ消えてもおかしくないでしょ?

そんなわけで違う意味で刺激に溢れた毎日を過ごしています。


「じゃあ、これで終わりにします。起立、さようなら」

『さようなら』


今日もいつもどおりの授業が終わり、時間はすでに3時ごろ。


「ふわぁ、やっと終わったわね」

「お疲れ様、アリサちゃん」

「今日の体育は頑張ったから眠くなっちゃったわよ」

「にゃはは、結局竜也君に負けちゃったけどね」

「そもそも、女子が勝つほうが無理があるだろ」

「男女差別反対よ! 絶対に次は勝つわ!」


相変わらず勝負事に熱くなるなぁアリサは。
俺からすれば負けるほうが、問題ありなんだよ。

てか、先生もいい加減女子対男子やめようよ。

実は5兄弟の新入りが中々すごいので、最近は余裕なんだよ。


「そうだよね、アリサちゃん。私も次は負けないよ、竜也君!」


すずかも、こと運動になると熱いな……というよりは俺に対してというのが正しいのか?
とことんライバル視だからなぁ。


「はいはい、じゃあ次を楽しみにしてますよ」

「何よ、その適当な対応、癇に障るわね」

「お、落ち着いてよ、アリサちゃん」


からかうとすぐにムキーっとなるアリサはなのはの次にからかいようがあると思うんだ。
すずかは基本的に落ち着いてるから、そういう意味ではからかいようがない。


「竜也君、今、私にへんな評価つけたでしょ?」


こういう思考を読む癖があるから余計に……


「じゃあ、今日はどうする? 私もすずかも習い事ないし」

「なのははいつだってフリーだよ?」

「じゃあ、竜也の家でいいわね」

「大賛成なの!」

「俺の意見は?」

「何か言ったかしら?」

「てか、昨日もきただろ!」


最近こいつらはよく家に来る。

いや、よくよく考えたら最近じゃなくて前からか。
家はたまり場じゃないんだよ。


「いいじゃないの、最近遊び道具増えたんだから」

「竜也君の家でゲームできるようになったもんね」


そう、家にはついにはテレビゲームが出来るようになった。
これは俺が買ったわけでも、母さんが買ってくれたわけでもない。

なんていうの、貢物?
実はあの5兄弟がたびたび家に来ることがある。

それはもう、ハイテンションで接待じみた感じでだ。

5兄弟は家に初めて来たときに、俺の部屋に何もないのを不便に思ってか、
自分の持ってるゲームを家に持ってきたのだ。

それはあげるというものではなく、ここに置いていくということらしいのだったのだが、
はて、今となってはもはや俺の扱いなんだが、それでいいのかな?

まぁそのおかげであの何もなかった部屋にはテレビゲームをはじめとして、
ボードゲームやカードゲームなども置かれるようになった。

ほとんどが5兄弟からの差し入れだけどね。


「なのはも貢献したの」

「お前は家だと制限が付けられるから、都合のいい場所にもってきただけだろ?」

「にゃ!?、違うの! これは竜也君のために」

「言い訳は見苦しいぞ? 気付けば最近よく俺の家に泊まってるなと思ったら、
夜更かししてゲームをやってるじゃないか、俺の部屋で」

「え……ばれてたの?」

「ゲームの光と音で気付くわ!」

「なのは……あんたそんなことを」

「なのはちゃん」


なのはがにゃーにゃー言いながら言い訳するも、すでに手遅れ。
後の祭りであった。

たぶん、いまアリサとすずかの中のなのはの株がとある飛行機会社の如く低下してることだろう。
しかし、売る人いれば、飼う人もいるのだ。

あ、誤字じゃないよ?
猫的な意味で、だよ?


「なのは、俺は気にしてないから、存分にやっていいんだぞ?」

「え、本当に?」

「ああ、俺は猫には寛容だから」


俺の一言でにゃーと言って喜ぶなのは。
うん、やっぱなのはの笑顔は最高だね。
さっきまでの泣き顔も好きだけど。


「なのは、そいつのせいで私たちが失望したことに気付きなさい。
これは罠よ。自分で下げさせた株を自分で買っただけよ」

「アリサちゃん……残念だけど、なのはちゃんに聞こえてないよ」


なのはは未だに俺にベッタリとくっついていた。


「で、どうするのよ?」

「どうするってなにが?」

「今日この後どうするかって話よ!」


二人をからかうことばかり考えてたから忘れてたよ。
今日の今後の予定はっと。

そう思いながらケータイにあるメモ帳やメールを見るためにケータイを取り出す。

そうすると、今日の占いに「駅で素敵な動物とのふれあいが」などという文字が見えた。
ケータイにある今日の占いとは最初からついてたアプリのようなもので、待ちうけ画面に出ているので自然に目がいく。


「ああ、ごめん」

「なんか今日予定あるわけ?」

「うん、占いに素敵な動物とのふれあいが駅であるみたいなんだ」

「「「はぁ?」」」

「だ・か・ら俺は駅にいってくる!」

「え、ちょ、ちょっと待ちなさいよ!私達より動物ゆうせ─」

「じゃ、また明日!」


俺はその言葉を最後に、なのはたちとは悲しい別れを告げる。
うん、実に感動的だ。

去り際にアリサの明日は覚えてなさいよ!と言う言葉が聞こえたが、
そんなこと言われて覚えているはずもなかろうが!



占いに言われたとおりに駅に行ったものの、特にこれと言って出会いはなかった。

やはり、ディフォをついてる占いなど信じるべきではなかったのかな。
ああいうのって大体パターンが決まってて、
一週間ぐらい経つと前にあったのが平然と出てきたりするしね。

でも、『占いは当たるもはっけ、あたらぬもはっけ』だっけ?
そんな言葉があった気がするから、占い自体に罪はない。

ああ、罪はないさ!
だが、せめて罰は当たって欲しいものだと心底思う。
そんなことをケータイの所詮おまけである占いに思ってもしょうがないけどさ!

アリサ達の好意きり素捨ててまで来たのに、取り越し苦労?
意味がやや違う気がするが、無駄足になってしまったじゃないか。

全く、はやく出会いたいがために全力疾走までして、
ちょっといい運動になったかも、と達成感に浸っていた自分が馬鹿みたいだ。

こんな感じに駅の真ん中で絶望した。


「す、すみません」


こんなことをしてると周りから見ればさぞかし変態に見えるだろう。
いや、百歩譲ってちょっと逝っちゃってる少年ぐらいか。

うん?どっちも救い難いような気がするぞ……
恒例の如く気にしたら負けだよね。


「すみません、話を」


なんかこんなこと思ってると自己嫌悪に走りそうだよ。
止めよう、考えるのを止めよう。


「……すみません」


そうだ、思考を停止しよう。
うん、それがいい。

よし何も考えないで無我の境地へいざまい─


「す、すみません!」

「え?」


自分の世界から帰ってくるとそこには、
どうすればいいのか分からずに困惑している、金髪の少女がいた。





ありのままに─第22話─ 

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そこには金髪の少女が立っていた。

いやいや、もしそれが現実だったら驚きの新事実だよ?

ここは駅の真ん中。
正確には真ん中ではないとは思うが、改札口の近くだから真ん中と言っても差し支えはないだろう。

そんな中、一人絶望してる少年に声をかけるだろうか。
一人、駅で頭抱えて、ひざを抱えてブツブツ言ってたんだから。

その俺に普通声をかけるか?
少女が。

おかしいなと思い、もう一度自分の世界から現実に戻ってみる。

金髪の少女が、心配そうに俺を見ていた。

もう一度だ、もう一度だけ考えよう。
今度は現実的に。

まず、こんな駅に金髪の少女がいるだろうか?
答えは、否!

ここは日本である。

金髪は一人だけいるだけでも十分に驚くのに、偶然俺に駅で話しかけるはずがない。
再び現実に目を向けてみた。


やはりそこには金髪の少女がいた。

うん、もう諦めよう。
現実逃避はよくないよな。


「す、すみません」

「うん、どうしたのかな?」


金髪の少女はようやく返ってきた言葉に安堵したかのような表情だった。


「道を尋ねたいんですが?」


道を尋ねるのに、なぜわざわざ俺なんだ?
近寄りがたかったはずの俺に。

そんな疑問がすぐに思い浮かんだが、
よくよく考えれば、知らない町に一人で、大人に声をかけるのは相当度胸のいることだと思う。

それに比べれば、同年代ぐらいの変態であっても自分のほうが声をかけやすい、ということなのだろう。
なんか、自分で変態って言うのは抵抗があるような、ないような。


「分かる範囲でなら、いいよ」

「あ、ありがとうございます。ここに、行きたいの、ですが」


そういって見せてきたのは、スーパーの名前と簡易的な地図の書いたメモ。
その地図があまりにも簡易すぎていた為に分からなかったようだ。


「うん、ここなら分かるから、連れてってあげるよ」

「ありがとう、ございます」


丁寧に一礼してお礼を言う金髪少女。
ああ、そう言えばまだ名前知らなかったよ。


「俺の名前は、相沢竜也って言うんだ」

「え?」

「そっちの名前は?」

「フェイト・テスタロッサ、です」

「フェイトね、俺のことも竜也でいいから、敬語もいいよ」

「そう、で……分かった。竜也、道案内お願いね」

「了解」


道を教えるだけなら、名前を名乗る必要はないかもしれないけど、
何かと不便かもしれないしね。

それに、占いの言葉が気になるし。

にしても、フェイト・テスタロッサ、ね。
外国人なのかな? 見た目はそうにしか見えないけど。
でも、日本語が流暢だよなぁ。

まぁ外国語話されるよりはいいけどさ。


「「…………」」


お互いに無言で歩く。

沈黙が痛いです。
とても気まずい雰囲気である。
どうやら、フェイトは無口な子のようだ。

同じ金髪でもアリサとは大違いである。
あれは、うるさいくらいだけど、こっちは静か過ぎるよ……

このままだと、気まずすぎるので話をかけてみるとするか。


「フェイト」

「何? 竜也」

「フェイトは買い物でそこに行くの?」

「うん、お母さんに頼まれて」

「そっか、お母さんに、ね」

「お母さん、忙しいから」


忙しい、ね。
そういう意味だけで娘を一人買い物させるってどうなのかなとは思うものがあるけど、
家庭の事情だよね。

家もあまり人のこと言えた立場じゃないし。


「家の母さんも忙しいんだよなぁ。お互い母さんに苦労するね」

「え? うん、そうだね」


今、少し笑ったような気がした。
今まで仏頂面でどこか悲しげだったけど、共感するものがあったのか、やっと笑ってくれた。

笑った方がかわいいのにな。
なんで、無表情な顔をしちゃうんだろう。

やっぱり、家庭の事情が……やめとこう。
下手にそういうのは言うもんじゃないよな。
俺も昔は嫌だったし……


「竜也はここに住んでるの?」


ようやく話しかけてきてくれた。
さっきの話が大きかったのかな?
共感することによって、仲良くというより仲間認識ってやつなのかな?


「そうだよ、と言っても来たのは1年前だけどね」

「そう、なんだ。いい町?」

「ああ、とても、とても好きな町だよ」


俺にとっては始まるきっかけをくれた町。
温かい人の温もりにあふれる町。

たった1年、されど1年いただけだけど胸を張って言える。


「本当にいい町だよ」

「うん、竜也見てるとそう思えるよ」


そういって、こっちに顔を少し向けて、笑顔を見せてくれるフェイト。

優しい顔だねぇ。
なのはたちとはまた違うタイプだね、これは。

それに俺はそんな幸せそうだったかな?
まぁ確かにこの町に来て良かったけどさ。


「私も、いつか、ここに住みたいな」


遠いところを見ながら呟いた。
たぶん、誰に言うということでもなく独り言だと思う。

でも、その言葉の中には悲しみと言うか、切なさが感じられた。

やっぱり家庭なのかな……
今日何度目か分からない疑問を浮かべる。

俺が考えたところでどうしようもないんだろうけど、
何かしてあげたいなと言う気持ちにはなる。

というより、そうさせるものがこの子にあると思った。


「フェイトさ、あんま悲しそうにするなよ」

「悲しそう、だった?」


無自覚ですか。
それって自覚あるより重症な気がするな。


「うん……まぁね。まぁあんまり気にしないほうがいいぞ?」

「え?」

「なんでもない」


危うくプライベートに関与するところだった。
あまり、そういうのは好ましくないよな。


「お、ついたぞ」

「そう、みたいだね。ありがとう」

「ん?」

「ここまで、ありがとうね。楽しかった、よ?」


何で最後に疑問詞なんだ?
そもそも、楽しかったって、ちょっと違う気がするけど。


「ああ、どうしたしまして。俺も楽しかったよ」


俺がそう言うと、フェイトはパッと笑顔になって微笑んでくれた。
今までの無表情が嘘のように。

その顔は、金色に輝いているようだ。

というのは、なんかあれだな。
うん、きざな奴みたいじゃないか、俺が。

にしても、今日の占い的には、素敵な動物とのふれあいがあるはずなんだけどなぁ。
人間も動物って言えば、動物なんだけどさ……

まさか、フェイトがその動物なのか?

どうなんだろう……
物は試しってことなのかな。


「フェイト」

「どうしたの? 竜也」

「……お手」

「え?」



フェイトはとても戸惑っていた。
ああ、それはもう見るからに慌てている。

どうすればいいのか分からないようだ。
なので、もう一押ししてみる。


「お手」


もう一回言うと、また悩む。
そして、恐る恐るながら、


「わ……ん?」


そうか……素敵な動物とのふれあい。
フェイトは……犬なのか。

ははは、新しい動物を見つけた!

たぶんなのだが、このときの俺は他の人から見たら目が輝いていたんではないだろうか?
フェイトも若干引いてた気がするし。

うん、でも俺はもう満足だ。


「じゃあな、フェイト」

「え……あ、うん。じゃあね、竜也。……また、会える?」

「俺はこの街にいるから会いたかったらまたこの町に来てくれれば会えるさ」

「そう……うん。また会いに来るね」

「ああ、その日を楽しみにしてる」


俺はこの言葉を最後に、フェイトに別れを告げて、家に帰った。


「I'm home」 


確か、ただいまと言う意味だった気がする。
今日は母さんは帰りが遅いので、家に誰もいるはずがないが、
それでもついついただいまと言ってしまうのは日本人の癖だと思う。

よく、一人暮らしのただいまは寂しいと言うが、たぶん、俺は今それをじっ─


「お、おかえり。た、竜也君」


声が聞こえた。
俺の部屋の方から、何かをやって集中しながらなのか、声が途切れ途切れだったけど、
確かに声が聞こえた。

誰もいないはずなのに……

慌てて、自分の部屋に駆け込むとそこには……


「もしもし、警察ですか。ええ、ここに不法侵入し─」

「にゃ! にゃにゃ!! にゃのはだよ!」


前にも警察ネタはやった記憶があるが、すでに遠い記憶の中だ。

あまりにも焦っているのか猫語がでまくる上に、自分の名前を噛んだ。

そう、つまりは俺の部屋には、一生懸命RPGをやっているなのはがいた。
そして、俺は悟ったんだ。


「だめだ、こいつ早く何とかしないと……」

「にゃ! そういうことは失礼なの!」

「勝手に家に上がってるお前のセリフか!」

「ちゃんと、竜也君のお母さんに許可はもらったよ?」


ほら、合鍵もあるし、と言うなのは。

母よ、なのはに鍵を渡したら、毎日ゲームしに来るぞ。

ちなみにやっているRPGはとあるねずみ王国の王様が出てくるやつだ。
確か他にも、最後の幻想とかのキャラも出てたよな、あれ。

俺的にはⅡがお勧めだ。
黒い翼の生えた、最強の剣術を使う人もいるしね。


「なのははやっぱりⅠなの」


お前の意見は聞いてない。
たく、勝手に上がった上に、ゲームまでやるとは、お仕置きが必要だな。


「なのは、まて」

「にゃん」


そういうと、ゲームをやっているのを無視して俺の指示に従うなのは。
俺はその状態をほんの1分ぐらい続ける。


「よし」

「にゃ。って、あ!死んじゃったじゃん……竜也君の意地悪なの!」


ざまぁみやがれだ。
部屋の主に許可を得ずに勝手に遊んでるからいけないんだ。


「にゃ~、じゃあ、竜也君も一緒になんかやろうよ?」

「うん、まぁいいけどさ。じゃあ、一緒に出来るのは……」


そこそこの数あるゲームソフトの束から対戦できるものを探す。


「え……これはやったことないんだけど?」

「そんなもん知らんよ。ならできるようになれ」


それから、月の形のゲームをなのはが帰るまで続けた。
なのははプレイしながら「うにゃー!」「にゃにゃ!」とか言いながら必死にやってた。

その、必死さがまたなんというか、うん、見ててとても和んだよ。

それで、時間になると、なのはは「今度は絶対勝ってみせるの!」と三下のせりふを言って、帰っていった。

なのはが帰った後は、割とすぐに母さんが帰ってきた。


「ただいま、竜也いる?」

「いるよ~おかえり」


母さんは今日もいつも通りに帰ってすぐに、ご飯の準備を始めた。
最近は高町家でご飯を食べることよりも、こうやって帰ってきて食べることの方が多くなってる。

それは、ようやく安定したお金が手に入るようになったのと、
生命保険とかから入ってきたお金が大きかった。


「今日は、どうだった?」

「どうだったって?」

「今日一日よ」


母さんは必ず食事の時間もしくはその準備の時間に、
今日何があったか質問するのが日課になってた。


「今日は、素敵な出会いが会ったよ」

「出会い?」

「うん、犬との」

「い、犬?」


母さんは少し拍子抜けした声になった。
まぁ驚くのも無理はないかもしれないけどね。


「名前は、フェイト・テスタロッサっていうんだけどね」

「フェイト……テスタロッサ、ね。またずいぶん懐かしい名前……」


母さんが最後の方に言った言葉はよく聞こえなかったが。

その様子はどこか懐かしむような、そんな感じがした。


「どうしたの?」

「ううん、なんでもないわ」


すぐに平静に戻る母。
昔に何かあったのかもしれないが、たぶん、聞いても話してくれないんだろうな。

まぁこんなことを気にしても仕方ない。
俺からすれば、今日一日も充実した、楽しい日々を送れた。
それだけで十分だ。



ありのままに─第23話─ 

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外は未だに雨が降り続けている。
この時期と言うのは雨が多くとても、じめじめする。

中にはこのじめじめがたまらないなんていう人もいるかもしれないが、
大抵の人は忌み嫌う季節だと思う。

それに、もしじめじめが好きならカエルの星に行くことをお勧めする。
 
カエルといえば、今にもその鳴き声が聞こえそうな、そんな気分にとらわれる。
実際には、カエルの鳴き声は聞こえることはあまりないのだが、やはりそれを想像するのは、日本人独特なのかなと思う。

雨が降れば降るほど、あさがおは綺麗に見える。

そんな景色を俺は窓越しから、ぼんやりと遠くを見るように外を眺める。

どうして、こんな季節があるんだろう。
雨は嫌いではない。
正しくはこのじめじめが嫌いなのだけだが、同じようなもんなのかもしれない。


「相沢君」


ジーっと外を眺め続ける。

今日は家に帰ったら何をしよう。
ああ、今日は鍛錬だから、なのはの家か。

その上、雨だから道場で素振りと試合かな。

あんまり深く考えずに、ただ薄っすらと今日の予定を考える。
いや、確認すると言っても間違いじゃない。


「相沢君! 今は授業中です!」


先生のお叱りの声が聞こえて、ようやく現実に戻る。

授業が決してつまらないと言うわけじゃないんだけど、
こんな雨模様を見せられてはやる気もうせると言うものだ。


「ねぇねぇ、竜也君」


今年になって初めての席替えで、隣の席になったなのはが声をかけてくる。
こんな回想をしてれば分かると思うが、俺は窓際である。

窓際族とは関係ないぞ?
俺はその言葉の意味は判らないけど、でも、違うことぐらいは分かる。


「なに? なのは」

「あ、あのね。ここが分からないんだけど」


そういって自分のノートを見せてくるなのは。

そのノートにはかわいらしい絵が書いてあった。
落書きである。
それも、アリサやとすずかさらには俺のも。

なのはって勉強苦手だったっけ? と若干寝ぼけ気味の頭で考える。
理数系以外は苦手だったっけ?

少しずつ現実味の戻ってきた結果、ようやく今の時間が社会であることが分かった。
よくよく考えれば、ノートを見た時点で漢字や年号が書いてあったはずだから、分かるはずだけど、
かわいらしい落書きを見てしまって、肝心なところを見てなかった。


「今、授業中だろ? ちゃんと集中しなさい」


授業中にしゃべりかけてきたのに対して叱ってやる。
俺は猫思いだからね。


「にゃ!? 竜也君に言われたくはないの!」

「高町さん、静かにしなさい!」


なのはの声が大きかったのか、先生に注意されてしまったなのは。
それに対して、竜也君のせいなの、とブツブツ言っているが俺は気にしない。

そういえば、後3週間もすれば、夏休みになる。
小学校二回目の夏休み。

と言っても、その前には期末テストがあって、そのために勉強をしなくちゃいけないのだが、
俺はさしてそれは問題だと思ってない。

今も、魔法の勉強と一緒に学校の勉強も進めているので、今の授業の内容よりも結構先までやってるからだ。

毎日の予習復習以上のことをやってることになる。

たぶん、今、なのはが声をかけてきたのも、それが理由であるのだろう。
なのはは普段はそんなに勉強をする方ではない……と思う。
実際は知らないけどね。

そのなのはが苦手な教科を俺に教えを請うと言うことは、少なからずテストを意識してるんだろう。
まぁ頼られると言うのは悪い気はしない。


「家で教えてあげるよ」


そう言った文面を書いた手紙をなのはに渡す。

お節介かなとは思うものの、たまにはそれぐらいやってやるかと思う。

それを受け取ったなのはは、ぱあっと笑顔になり、手紙を返す。


「ありがとうね、よろしくお願いします」


まぁそんなわけで今日一日の予定は決定だね。

剣術の鍛錬の後の勉強だと、眠くなりそうだけど……
いつものことだから頑張るか。


「これで今日の授業を終わります、つづけて帰りの……」


今日最後の授業が先生の言葉で終わりを告げた。
そして、そのまま明日の連絡の時間になり、先生はみんなにさようならといい、みんなもそれに答え、
放課後になった。


「じゃあ、私とすずかは塾だから、じゃあねまた明日」

「またね、竜也君、なのはちゃん」

「うん、また明日」

「ああ、また明日」


二人に別れを告げると、俺となのははまずなのはの家に向かうべく歩き出す。


「そういえば、竜也君と二人だけ帰るのって久しぶり、かな?」

「そうだったか?」


俺は直接なのはの家に行かずに、自分の家にまず帰ってから行く事が多くなった。
そのため、ここ最近は3人でつるむか、全員ばらばらのときが多かった。


「うん、まぁ別に俺となのはが二人きりって珍しいことではなくない?」

「そうだけど、二人だけで帰るのはなんだか新鮮だよね」


言われてみればそうかもしれないけど……
あえて主張することでもないかな。

こんな、いつもどおりの会話が続けていると、バス停に着き、
気付けばなのはの家である。


「ただいま~」

「お邪魔します」


なのはの気の抜けた、声が家に響き渡るが、誰もいないので返事がない。

たぶん、恭也さんも美由希さんもまだ学校なんだろう。
士郎さんと、桃子さんは喫茶店だろうしね。


「誰もいないね」

「そう……だね、だけど、いつものことだから平気なの」


ちょっと無理した感じに答えた。

前まではよくなのはと一緒に帰ってたからしっているが、
なのはが帰る時間は大抵誰もいない。

そのため、俺がいないといつも一人ぼっちだった。

こういうところから孤独感とかでちゃってるんだろうな。


「でも、今日は竜也君がいるからいいの!」


俺に振り返って笑顔を見せるなのは。

寂しいなら家族に言えばいいのに……
恭也さんも美由希さんもこの状況を知れば、絶対に放っておくような人じゃないと思うし。

それなのに、なのは大丈夫でいようとする。
全くこの家族はお人よし過ぎると思うよ。


「じゃあ、俺は先に鍛錬始めるけど、道場に一緒にくる?」

「うん、見学させてもらうね」


観客がいる分には問題ない。
むしろ、そのほうが燃えると言うものだ。

それに……なのはを一人にさせるわけもいかないしな。


すぐに、動きやすい服に着替えて、道場に入る。
なのはも俺の後ろについて来て、道場に入る。

まずは精神集中のために座禅をとる。
なのはも真似して座禅をとる。


「「…………」」


お互いに1分ほど無言で集中する。

俺はこの静かな時間が好きだ。
まるで時間が止まっているかのような、そんな静けさが孤高感を感じさせる。


「よし!」

「はい!」


俺が鍛錬を始める前に切り替えをするために一喝したら、
なのはが元気よく答えてくれた。

その声はとても清々しい。


「じゃあ、なのははそこで見学しててくれな」

「うん、頑張ってね」


なのはの応援の声にやる気がうなぎのぼりに上がる俺。
自分で意外と単純なやつだなと思うほどだ。

人に応援されるのって嬉しいとか通り越して、その気持ちに答えなきゃって思わせられる。


「ハッ!……ハッ!……ハッ!……ハッ!」


道場に俺の気合声と、素振りをするときにでる、ビュンビュンという、空気を切る音が響く。
なのはは静かに座禅を組んだまま、じっと俺の鍛錬を見つめる。

時々目を瞑って、精神集中をしたりもしているが、決して姿勢は乱れない。

さすがは、高町家の末っ子。
武術をやってなくても、たとえ運動音痴でも心得はしっている。

それが素振りに集中している俺にも伝わる。
人に練習を見られているはずなのに、全く緊張せずにいつもどおりに出来るのは、
たぶん、なのはがそういう雰囲気を出しているからだと思う。


何分……何時間が経っただろうか、気付けば外は暗くなり始めていた。
結局この日に、恭也さんも美由希さんも道場に顔を出してこなかった。


「なのは、そろそろ疲れたし、戻るか」

「うん、竜也君お疲れ様」


そう言ったなのはの手にはいつとりに行ったのだろうか、タオルを持っており、
俺に、「はい、どうぞ」と言う掛け声とともに、渡してくれた。

軽くお礼を言って、なのはの家のリビングに戻った。


「あ、お疲れ様。竜也君」

「お疲れ、精が出るな」


リビングには夕食の準備をしている、桃子さんと母さんのほかに、
恭也さんと美由希さんもいた。

おまけで士郎さん。


「あれ、なんで二人は顔を出さなかったんですか?」

「え……二人がいい雰囲気だったから、ね? 恭ちゃん」

「そうだな、とても入れる空気じゃなかったな」


二人は俺となのは? に気を遣って入れなかったらしい。

まぁ確かにいつもの数倍は集中してやってた気はするけど。
いい雰囲気ってどういうことだ?

俺は練習してただけなんだけどな……

まぁ気にしてもしょうがないか、いい練習が出来たわけだからね。


「はい、雑談はここまでね。ご飯が出来たわよ、いただきましょ」


いつのまにやら、テーブルの上にはご飯が並んでいた。


「それじゃあ、いただきます」

『いただきます』


みんなで一斉にいただきますを言い、食事を始める。
その風景はまさに一家団欒だった。

とても、なのはが孤独には見えないような……

雑談あり、笑いありの食事が終わって、なのはの勉強を見るために、
なのはの部屋に向かった。


「ええっとね、こことここが分からないんだけど」

「そこは、1192(良い国)作れなくて、北条氏に乗っ取られた鎌倉幕府って覚えるんだ」

「わ、分かりにくいよ!しかも長いの!」

「ちなみに北条氏は執権だからな」

「執権って?」


なのははやっぱり社会などの文系がわからいようだ。
理系が得意なのは、ゲーマーだからなのかな?


「そういえばなんだけど」


なのはが勉強の手を止めて、椅子をくるりと回転させ、俺に向き合った。


「竜也君ってさ、鍛錬とかしてるときかっこいいよね」

「は?」


いきなりのかっこいい宣言で間が抜けた。
勉強中だって言うのに全く。

まか嬉しいんだけどさ。
それを口に出すとバカにされそうなので言わない。

頑張ってうれしさを隠す。


「え……い、いや。そんなこと無いと思うけど」

「あ、竜也君が珍しく慌ててるの。しかも、顔まで赤くして」

「う、うるさい!それで、それがどうしたんだよ!?」

「にゃ!? うん、普段と違うなって、いつもはやる気なさそうにしてるのに、
鍛錬のときはお兄ちゃんみたいに集中しててかっこよかったなぁって思ったの」


お兄ちゃんみたいに、ね。
なのはも別に家族が嫌いってわけじゃないんだよな。

家族といえば、あのフェイトって子がなぁ……
そういえば、あれ以来会ってないな。


「今日だって授業中は上の空だったの、それでなのはよりテストの結果が良いって許せないの!」

ああ、そうか。
かっこいいとかは前ぶりに過ぎず、最終的にはそこか。
嫉妬ですか? なのはさん。
見苦しいですね。

そんな君には


「なのは、以後猫語以外使用禁止」

「にゃにゃ!? にゃにゃにゃい、にゃんにゃー」

「『そんなの反則だって?』だって? はん! ぬか喜びさせたやつが悪いんだ!」


ちゃんと言われたとおり猫語で反抗するあたり、なのはは染まってるなぁ。
もう、何でも俺の言うとおりになるんじゃないだろうか?


「ほら、早く勉強しな。また外出禁止になるぞ?」

「にゃ!? ……にゃん」


俺の脅しが効いたのか、シュンとなりつつも手を動かし始める。
今日はなのは猫と遊びに来たわけではないからね。
ちゃんと勉強しなくちゃ意味がないというものだ。

前回、前々回は俺がなのはで遊びすぎたせいで外出禁止になったようなものだからな。
ちょっとは責任を感じてるんだぞ?

そんな事を思いつつ、なのはに勉強を教える、夜は続いた。


おまけ

翌日学校にて。

「にゃーにゃにゃ。にゃにゃんにゃん!?」

「『いつまで猫語でいればいいの!?』だって? 俺が飽きるまで」

学校でも猫語縛りが続き、なのはは羞恥プレイを味わうことになった。
と、思ったのだが、案外みんなそのなのはがかわいかったらしく、頭を撫でられそうになったりした。

でも、なのははそれを嫌がってなのか、俺の下に戻ってくる。
なので、代わりに撫でてやると

「にゃ~ん」

と言いながら、気持ちよさそうに見えた。
本当になのは猫は俺にしか懐かないな。

「にゃにゃい」

「え? 『もっと撫でてほしい』、う~んだが断る!」

「にゃ~ん」

悲しそうな声を出すなのは猫。

「というより、あんたなんで猫語が分かるのよ……」

「アリサちゃん、たぶんそこに突っ込んだら負けだと思うよ?」

この日一日中、教室に猫の鳴き声が響き渡っていたらしい。



ありのままに─第24話─ 

未分類

長きに渡る雨模様の空。
といいつつもほんの1ヶ月にも満たない雨の季節ではあるが、それが終わりを告げた。

そのことの意味するとこは、夏の始まりである。
海鳴市の二回目の夏だ。

夏、と言ってもまだ本格的には暑くはならずに、未だにじめじめした独特の雰囲気が漂っている。

外では、夏の象徴のミーンミーンと鳴く油蝉ではなく、
ジリリリリと鳴く夏の始まりと終わりを告げる蜩がないている。

この、蝉の鳴き声に、俺は少しじんわりと来るものがある。
それはひとえに、あの5兄弟がもってきたパソコン用のゲームのせいなのだが、
明らかに小学2年生がやるような内容ではないと思った。

クリアは攻略サイトを見てやっとだった。

でも、それほどまでに苦労したことと、ゲームのないように思わず涙を流してしまった。
そして、この蜩の鳴き声は、それを思い出さした。

正確には、名前だけでも思い出せるのだが、やはり鳴き声の方が良い。

鳥肌がたつ。


まだ、夏はやってきてないな。
主観的にはそう思わせる。

季節的には夏と言っても過言ではないが。

しかし、目前ではあった。

テストは1週間ほど前に終わり、答案はすでに返却されている。
今回のテストは前回に比べて1点低かった。

たった1点だけだ。

なのに……この1点が勝負の明暗を分けた。


「ふふ、やっと……やっと勝ったわよ! 竜也約束どおり一回だけ私の言うことを聞いてもらうわよ!」


恒例の如くアリサと勝負していたが、前回は引き分けにより延長されていたため、
賭けの内容はそのままだった。

賭けの内容……俺が勝った場合は1日アリサ猫状態。
俺が負けた場合は、アリサの言うことをなんでも一回聞く。

実にシンプルで分かりやすい内容だった。

ちなみに、テストの結果だが、俺は算数以外満点、アリサは全教科満点、すずかは全体的に中の上、なのはは理数系は満点、
そして、普段なら残念な点数の文系は上の中クラスだった。
俺の指導のたわものと言っても良いだろう。

なのははそんな自分のテストの結果を見て自分で驚いていた。

なのははやれば出来ることタイプなんだな。
ただ、苦手と言う意識だけが先掛けしてしまうタイプだんだろう。

まぁ今回のテストは俺のおかげと言うこともあったので、


「俺のおかげでいい点数取れたんだから、なのはは俺のペットで完全に決定な」

「にゃ? ……感謝はしてるよ、竜也君。
それに、なのはも別に嫌じゃないけど、ただそれを認めたら駄目って本能が言ってるの!」


本能で俺の発言は危ないと気付いたと申したか、この猫め。
どっちにしろ、今の状態はほぼ俺のペットだから本人公認になるかどうか程度の違いに過ぎないけどね。

まぁそんな半分冗談、もちろん半分は本気のトークをしてアリサとの約束を誤魔化そうとしたのだが、


「ふふ、何を頼もうかしら」


不気味な笑いと共に、自分の世界に閉じこもっているアリサがすぐ傍にはいた。

俺は一体どんなこと命令されるのだろうか……
考えるだけで背中に凍るものを感じる。


「アリサちゃん、大丈夫?」

「ええ、大丈夫。私は大丈夫よ、すずか」


ふふっと未だに笑いを止めない、アリサ。
すずかも心底心配そうにしている。

俺もそんなアリサを見て心配になる。

何が心配かって、自分の身に決まってるじゃないか!

きっと残虐非道な、そう、どこかの悪役な超人たちも驚きの恐ろしい罰ゲームが待ってるに違いない。
俺はそれをただ、ここでじっと待ってるしかないんじゃないのか。

父さん、きっと俺もすぐそちらの世界に逝くことになります。
体は無残な姿かもしれませんがそんな息子を許してください。

そんなことを天に願ってみると、父さんの声が聞こえてきた気がする。

きっと、まだ生きろとか、励ましや、希望の言葉を言ってくれるのだろうと期待する。


「竜也よ……散々に殺られて来い」


死の宣告だった。

今度のお盆には墓に塩をまいてやろう。
ああ、そうしよう。
ついでにお焼香も叩き付けてやろう。

俺はそんな事を密かに決心する。

そんな時だった、アリサが決心したのか、今までの不気味な笑みを止めた。


「竜也!」

「お、なんだよ急に?」

「今日あいてるかしら?」

「ん? 今日?」


今日は週に一度の鍛錬のない日だった。
寝る前には魔法の勉強と練習と学校の勉強があるがそれ以外はない。
つまり、放課後から家に帰るまでの間は暇である。

こういうときはケータイの占いをチェックしてみる。

そこには

「今日はあなたの友人と時を過ごすが吉」

と書いてあった。
これは、なのはたちと遊べと言うことなのだろうか。

あの「動物と……」以来はあまり当ってないが、まぁたまには信じるのもいいかもしれない。
何より暇だしね。


「今日は暇だよ」

「そう、じゃあ、今日は私に付き合って頂戴!」

「え、じゃあ。なのはも一緒にい─」

「駄目よ! すずかもね。今日は遠慮して頂戴」


アリサが二人の申し出を断るとは珍しい。
なのはも、渋々ながら、諦めたようだ。

それに対し、すずかには少し思い当たる節があるみたいだ。

俺じゃなくちゃいけない理由でもあるのだろうか?
まぁ賭けだからと言ってしまえばそれまでだと思う。

結果的には暇な時間を潰せるわけだし、俺的には問題ないからいいんだけどね。


「それで、俺がアリサの家に呼ばれた理由はこいつか?」


アリサの家は、すずかの家と負けず劣らず……
むしろ、勝つぐらいの豪邸である。

ただ、タイプが違うから比較の仕様もないのだが……
お金の規模的に考えれば、バニングス家のほうが月村家よりも上だろう。

ただ、地位的なものになるとどうだろう?

お互いに得意とする分野も違えば、力を持っている国も違う。

まぁ俺たち、庶民からすれば、どちらも「お金持ち」という範囲に収まるものなので、
大して気にする必要はない。

ああ、気にする必要ないのさ。

家なんかオンボロ、でもないが所詮はマンションさ。
ローンつきの安いマンションだよ。

それに比べて全く。

いや、全然腹に立たないよ?
諦めたもん、この二人の家だけは格が違うもん。

俺が気にしてるのは高町家だよ。
一戸建てならまだ許そう。

なんで一般家庭に道場があるんだよ!
そこからして、もう普通に範疇超えてるだろ!


「ちっ、なのはの癖に」

「なんか言ったかしら?」

「いや、気にするな」

「そう、それより本題なんだけど、この犬のことね」


俺の前にはかなり大きい犬がいる。
俺には品種とかは分からないけど、たぶん大型犬だろう。
そして、全身は黒く毛はさほどない。

その体格からして、猛者という雰囲気を漂わせている。

アリサの家は、猫屋敷のすずかの家とは打って変わって、犬屋敷である。
この家にもかなりの犬がいる。

俺は猫も好きだが犬も好きだ。
なので、アリサの家に来たときは必ず犬と戯れる。

猫よりも忠実な生き物。
なぜか知らんが俺の場合は猫も言うことを聞いてくれるが。

そんな例外は置いといて、普通は、犬は飼い主には忠実である。


「この犬ね、森で彷徨ってたのを保護したのよ。
それで、首輪もしてないから野犬かなって思ったけど、どう見ても血統書付きでしょ?
飼い主も探してみたんだけど見つからなくてね、結局私が飼う事になったのよ」

「ほう、それで? そのままじゃ俺を呼ぶ必要はないよね?」

「話は最後まで聞きなさい。餌をあげようと思ったんだけど、食べてくれないのよ。
かれこれ2・3日ぐらいかしらね。そのままじゃ死んじゃうから、あんたに助けを求めたのよ」

「動物病院に助けを求めろよ……」


なんで、俺なんだよ。
動物病院で見てもらった方がいいじゃないかよ、常識的にさ。


「動物病院より、あんたの方が頼りになるわ」

「え?」

「な、なんでもないわよ! 早く何とかしなさい!」


そう言われてもね……

ようするに、この犬にご飯を食べさせなくちゃいけないってことなんだよな。
なんか、かなり面倒なことを押し付けられたような気がするけど、しょうがない。

賭けに負けた方が悪いんだし。
それに、アリサが頼むってのも珍しいし、この犬も放っておけないよな。

そんな事を思いながら、犬に近づく。


「あ、危ないわよ! 私も近づいたら噛まれかけたし……」

「大丈夫だろ、俺は動物に噛まれたことないんだよ」


俺はさらに近づく、犬との距離は1mにも満たない。

犬はじっと俺を見てくる。
俺も犬の目を見返す。

その状態が数秒続き次の瞬間、犬が俺に飛び掛った。


「え?」

「……きゃー!」


アリサが叫ぶ。
襲われたと思ったからだろう。

しかし、犬はそのアリサの考えとは裏腹に、
俺にのしかかり、ペロっと舌で顔をなめてくる。
尻尾を左右に振っていた。


「くぅ~ん」


その、でかい図体からでたとは思えない、かわいらしい鳴き声が聞こえる。


「え?」


アリサは拍子抜けした声と、驚きの顔した。


「アリサ、犬の餌ない?」

「え……分かったわ、ちょっと待ってて」


そういうと近くにあったビーフジャーキー?みたいなものを俺に渡す。

俺はそのビーフジャーキーを、犬にあげると。

パクっと一口で食べた。

そうして、もう一個と言わんばかりに、尻尾を振る犬。
それは、とても可愛かった。


「まて」

「わん!」


そういうとお座りして、待つ。
うん、とても賢いようだ。

もう一回アリサから食べ物を受け取り、犬の前に置く。
まだまては、解かない。


「よし!」

「わおん!」


その声と同時に、食べ物にがっつく。

実に嬉しそうに食べるなこいつ。
みてて、和むよ。

もう……大丈夫だろ。


「アリサ、こっちにおいで」

「う、うん。分かったわ」


そう言いながら、恐る恐る近づくアリサ。
その瞬間飛びつく、犬。

でも、その姿は。


「助けてありがとうだとよ、そして遊んで欲しいってさ」

「もう、分かったから、舐めるの止めなさいよ!」


そういわれると、アリサの前に座って、尻尾を振り続ける犬。
本当に利口な子だな。

そして、付き離すも、少し嬉しそうにいうアリサ。
やっぱり純粋に心を開いてくれたのが嬉しいんだろうな。


「それにしても、あんた。犬の言葉がわかるの?
いや、そうじゃないわね。動物の言葉が分かるのかしら?」

「いや、なんとなくだよ」

「そう……まぁそういうことにしとくわ」


そういうことも何も、そのまんままだよ。
俺は全部なんとなく、なんだって、なのは猫は分かるけどさ。


俺たちは沈むごろまで、その犬を含めた複数の犬と遊んだ。


「アリサは優しいんだな」

「な、何よ急に!」

「いやな、彷徨ってた犬を拾うだけじゃなくて、飼い主まで探してさ、
見つからなかったら自分が飼い主になるって、本当にすごいなって」

「……ふんっ! 当然のことをしただけよ! それにあんただって見つけたら同じことするでしょ?」


どうかな……
そこら辺はなんともいない。確かに動物は好きだが、実際に飼った事はない。
飼うとなると色々と大変だろうし、何よりマンションだ飼う事もできないしね。


「じゃあ、俺はもう帰るわ。そろそろ暗くなるしね」

「……そう」

「じゃあ、その犬よろしくな、また明日」

「くぅ~ん」

「うん? 寂しいのかな? まぁまた会えるさ」

「わん!」

「はは、俺も楽しみにしてるよ」


犬と会話をする。
ん? これって普通に考えたらおかしいか?


「竜也!」

「どうした? そんな大声で」

「き、今日は助かったわ」

「ああ、そんなことか。何を今更、そういう約束だろ」

「そうだけど……」

「じゃあ、また明日な」

「……あ、ありがとう」


アリサが顔を真っ赤にしながら、何かを呟いたが何を言ったのかは分からなかった。


「今日のあんたは、……かっこよかったわよ、本当にありがとう!」


今度はハッキリと聞こえた。
アリサには珍しくと言ったら、失礼なのかもしれないが、恥ずかしがらずにハッキリと言った。

そして、そのアリサの顔は……姿は。

夕日とその金色の髪の靡きからなのか、輝いて見えて、そして
……とても綺麗に見えた。



ありのままに─第25話─ 

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空は青空。
晴天と言っても足りないぐらいの、青一面の空だった。

ここ一番に太陽が輝き、そのおかげか、いや、そのせいか気温はとことん高い。
数字にして、36度。

真夏であった。

とてつもなく暑い。
気温にして36度だが、体感温度は40度はあるんじゃないだろうか?
それほどまでに、暑く感じる。

俺にとって暑さと言うのは、嫌だった。
冬の寒さには清々しさがあるが、夏の暑さにはそういった気持ちよさはない。

まぁこの町は他の街に比べ、風があるからまだましなのだろうが、
その風も海のせいか、塩っ気があり、若干肌触りも悪い。
そのうえで、浴びすぎるぞベタッとするものだから、性質も悪い。

風があるのがいいのか悪いのか分からないのはそのせいだ。

夏は序盤。
今年の夏はテレビのニュースによると猛暑らしい。
まぁそんなのは、こうやって外を歩いていれば十分に分かりきっているときことだ。

今年の夏も去年と同じ、
否、去年のほどの騒がしさはないにしろ、俺の日常は大差ないものだった。

あえているのが、家にいると、とても暑いので、今年は図書館にでも行って身体を冷やそうと思ったことぐらいだ。
それもこれも、暑いせいである。

ついでと言ってはなんだが、図書館には何度か行った事はある。
理由としては、読書の秋だから図書館だろ?

という、ちょっとしたお茶目な心構えから、流行? にのろうと思い行ったからだ。
それからも、たまにいったりはするけどそんなのしょっちゅう行こうとは思ったことも無い。

図書館と言えば、分厚い本や、ちょっとした単行本が置いてある場所だが、
家には勉強に必要なものも揃っているし、欲しい本は手に入る。

母さんはそういうことは惜しみなくお金を使ってくれるのでありがたい限りだ。

そんな、図書館に行く途中のちょっと長めで急な坂道。
そこに、車椅子に乗った少女がいた。

車椅子は珍しいものではないとは思う。
それと同様に少女も珍しいものじゃない。

しかし、その二つを掛け合わせれば、あら不思議!
とっても珍しいってそういうことじゃなくて!


「……あ」


車椅子を握る手が離れた。

そうすると車椅子は重力に逆らえずに坂の下へ滑り落ちる。
このままでは、彼女が怪我をしていまう。

俺はとっさの判断で、車椅子に手をかけて、滑り落ちるのを止めた。
まるでヒーローみたいに!

と、自分で言ったしまったら台無しだけどね!


「あ……ありがとうございます。助かりました」

「お礼はいいんだけど、なんで車椅子にはきついこの坂道を通ったのさ?」


この坂道は普通の人が歩くのでも少しきついぐらいの坂道。
まして、車椅子、そして俺と同じぐらいの少女には厳しすぎるものだ。


「ふ、普段は平気なんよ。でも、今日はいつも通りに図書館に行こうと思ったんやけど、この暑さのせいかいつも以上に疲れてしもうてな」

「いいわけは結構だよ。まぁ俺がいたからよかったものの」

「ほんまありがとうなぁ」


少女の顔は本当に申し訳ない、といった表情だった。
今の失敗は自分でもよく分かってるのだろう。

あんまり責め過ぎるのはよくないかな。


「それに、命の恩人や」

「大げさだよ」

「そんなことないで? 兄ちゃんのような普通の人には問題ないかもしれへんけど、私らにとってはこれで致命傷になるんや。
だから、兄ちゃんは命の恩人やで?」


どうなんだろう……
そういうものだろうか?

それでも、命の恩人はちょっと言いすぎだと思うけどな。


「まぁそういうことでもいいけどさ。図書行くんだっけ?」

「うん? そやけど」

「奇遇だね、俺もそうなんだ。ついでだから一緒に行くか」

「ほんまか? ならお言葉に甘えて」


これが、俺とこの少女の出会いだった。


「さっきから少女少女って嫌なんやけど?」

「え、ああ。そうだよな、名前なんて言うのか?」

「人に名前を聞くときは自分の名前からって言うやろ?」


少女は、ちょっと楽しそうに、そして冗談交じりに、いやらしく言った。
俺は悟った。

そうか……ニューキャラか。


「それが命の恩人に対する態度かよ?」

「そうか? そうやな、じゃあ」


そういうと少し悩むように目を瞑り、
後ろで車椅子を押している俺のほうを向いて言った。


「命の恩人様、ぜひともその名をお聞かせくださいな」


まるで、悲劇のヒロインのような立ち回り。
そして、俺はなんだ、駆けつけた王子様かこのやろう!

この少女はまさにいたずらっ子、そう言うのがしっくりくる。


「ああ、分かったよ。俺の名前は相沢竜也だ。小学2年生だよ」

「かっこいいお名前ですね! 憧れるわ」


妙にわざとらしく、芝居じみた口調で言うな。
言われる俺がはずか……しくもないがボケ!


「はいはい、分かったから。お前の名前は?」

「なんや、乗りわるいなぁ」

「うるさい! 暑さで面倒なのは嫌なんだよ」

「私の演技を面倒事って、ちょっと落ち込むわ。まぁええわ、私は八神はやてや。ひらがなではやてや」

「別に漢字聞いてないぞ?」

「そういうふうに言うのがお決まりなんや!」


何のお決まりなんだよ……
まぁいいか、細かいことは気にしないようにしよう。面倒くさいし。


「じゃあ、とっとと図書館に行くぞ。暑いのは懲り懲りだ」

「賛成や、安全運転で頼むで」


そのあとはやては「GO! GO!」と言いながら、目の前の道を指差したので、
言葉通りに、思いっきり全速力で走り抜けてやった。



「はぁ……はぁ……、や、やっとついた、はぁ…」

「ほ、ほんまに怖かったわ……でも」

「でも?」

「楽しかった、面白かったで。ありがとうな」

「はは、そりゃあどうも」


時々車輪が浮いたりしてたのだが、それでも面白かったって……
さては、はやてはMなのか!?


「なんや、今とてつもない勘違いされたような気がするで」

「き、気のせいじゃないのかな?」

「なら、何でそんなに慌ててるんや」


どうやら、はやてには読心術と言う特技があるようだ。

まぁ危険でありながらも、目的地の図書館に着いたし、はやても送り届けたから、
早速涼むとするか。


「じゃあ、はやて。またこん─」

「竜也くん!」

「何?」

「あ、あのなぁ。せっかくやから一緒に本読もうや」

「え、いや。俺はここに涼みに来ただけなんだけど……」

「そんなけち臭いこと言うなや、な?一緒に読もうな」


はやてはそういいながら、車椅子で俺を押す。
ん? 車椅子で……おい!

それはある意味に轢いてないか?

車、だぞ、一応。
名前に車がつくんだから、え?そうだよね?
車の一種だよね?


「なんや、バカみたいなこと考えてるんや? あれか、竜也君はアホの子なんか?」

「ち、違うわ! ボケ! 俺はどちらかと言うと……なんだ?」

「自分でも分かってないんか? ああ、痛い子のほうやったか」

「ち、違う。たぶん……」


アホの子ではないと思う。
漢字かけるし、読めるからね。小説だってたくさん読む。

それに、痛い子でもないと思う。
そりゃあ、ゲームだってやるし、ちょっとかっこいいことをしてやろうとか思うけど……
え? あれ? これって痛い子の条件に入ってるような……

いやいや、違うだろ。

痛い子はどちらかと言うと……なのは、じゃね?

なんか猫みたいなことしてるし、俺の言うこと聞くの嬉しがってたし……
うん、なのはは痛い子だな。

間違いない。
今度から危険だからちょっと避けるようにしようかな。


「まぁええか。それより何か本もってきてなぁ」

「は?」

「だから、本を持ってきて欲しいんや。ここは図書館だから読書するのは当たり前やろ?」

「あ、ああ。どんな本もってくればいいのか?」

「う~ん、竜也君に任せるよ」

「はいよ、了解」


まぁ図書館にきたんだから本を読むのは普通だよな。
俺は涼みにきたんだけど……まぁいいか。

はて、俺の自由でいいといわれてもな。


とりあえず、分厚い本が並んでいるコーナーに向かう。


「俺らしい本、俺らしい本」


俺がはやてにすすめられるような本を探す。
どれもこれも広辞苑並みの厚さがある。

題名を見た限りとても難しそうなばっかりだが……


「お、いいの発見」


そこには子供でも分かりそうなタイトルの本を見つけた。


「よし、これを読むか」


早速のその本を持って、はやての待つ場所へ戻る。


「ず、ずいぶん、分厚いのもってきなぁ。どれどれ中はっと。
ほう、かわいい動物がたくさんやな、ほんまかわいいな……って、読書できないやんか!
これは本は本でも図鑑やんか! なんや『犬猫動物大百科』って何でこんなに無駄に分厚いんや!」

「お、おお!」

「『おお』やないで! もっとまともなのはないんか!?」


はやてののり突込みが爆発した。
さすが、関西人、素晴らしいのりだった。

はやて的には犬猫は嫌いらしい。
ちょっと残念だ。

なので、もう一冊の本を机に置く。


「ま、また分厚んやな。どれどれ……はぁ、グリフォンとかかっこええな。
あ、それ以上にドラゴンもカッコええな。ほんまにファンタジーな世界があったらええなぁ。
魔法とかもあるんかな……ってこれも図鑑やないか!
しかも、今度はなんや!『世界の不思議な動物大紹介』ってこんな動物が本当に居たら大ニュースや!
もっと普通の本はないんか!?」


またもや、大炸裂した。
おかしいな、俺らしい本を探してきたはずなんだけどな……

悔しいので、ちょっと小説、というかエッセイっぽい本を今度ははやてに渡す。


「お、今度はまともそうやな……」


今度は逆に沈黙するはやて。
どうやら、気に入ってもらえたようだ。

そんな事を思ってると、はやてが大きく、はぁ、とため息をついた。


「あのなぁ、竜也君。何でこの本なんや? 『子狸と世界と笑いについて』ってどいうつもりや?
なんや、これは私に対する嫌がらせかいな」


どうやら、はやては俺の行為を嫌がらせと、とってしまったようだ。
俺は、単純に子狸って新しいジャンルでかわいいだろうなと思って手に取っただけなのに。


「たしかになぁ、竜也君。私はこんな体格上、子狸に見えるかもしれへんよ?
でもなぁ、あえて言葉に出さずにこうやって間接的に嫌がらせされるのは結構傷つんくやで?」

「子狸かわいいじゃん」

「え!? そ……そうやな。子狸はかわいいなぁ」


少し顔を赤くしながら、答えるはやて。

はやてよ、その発言はまるで自分が子狸かのように聞こえるぞ?
それとも、子狸と言ってほしいのか?


「子狸」

「なんや」


今度は躊躇せずに返事をする、はやて。
なるほど、本人公認の子狸なのか。

猫・犬・子狸。
俺の周りには愛玩動物パラダイスだ!

うん? 子狸は愛玩動物か?

こんな感じで漫才を繰り返していると、図書館が閉館の時間になってしまった。


「そうか、そうか、はやては子狸なのか」

「い、いい加減にせえや、竜也君。ずっとそればっかしやないか」

「別にいいじゃん、子狸かわいいんだし」

「え……面と向かって言われると恥ずかしいで竜也君」


俺は別にはやてに向かって言ったつもりはないんだけどな。
本人は勘違いしてるようだけど……まぁいいか。

かわいいと言うたびに、顔を赤くして嬉しがるはやては見てて楽しいし。


「なぁ竜也君」

「ん? どうかした?」

「こ、今度な、家に来てくれへんか?」

「ああ、遊びに行くって事?」

「そうや」

「はやての家は涼しいのか?」

「え? そ、それはもうめっちゃ涼しいで! 北極並や!」


そうか、北極並に涼しいのか……涼しいと言うか寒そうだな。
でも、暑いのよりはいいかな。


「いいよ、じゃあまた今度な」

「ほ、ほんまか! 絶対やで! 約束やからな!」

「ああ、約束は破らないよ」

「そか、じゃあ、またなぁ竜也君。また会おうなぁ」

「おう、またね」


はやてと遊びに行く約束をして、俺も家に帰る。
帰ったらまた、魔法の練習だ。


ありのままに─第26話─ 

未分類

「……座のあなた、今日は街に出ましょう!きっと素敵な出会いが……」


別に、今日の占いが気になるわけではないが、
なんとなく点けたテレビでは偶然、朝の占いをやっていたのでついつい見てしまった。

たぶん、誰にもで経験のあることだと思う。
俺は占いを信じるわけではないが、どうなんだろう。

時々見る占いほど当たるものも無いと思う。

占って欲しいと思って見るよりは、なんとなく見た先でいい結果がでてたと言う方が、
気分もいいものだ。

そんなときは、ちょっと信じてみようかな、何て思う。


「では、朝8時の占いを終わります。続きましては……」


ニュースはまだ続くようだが、とりあえず占いが終わったのでテレビを消す。

俺はついさっき朝の鍛錬を終えたばっかしで、今風呂から上がったところ。
まだ、身体はぽかぽかする。

真夏の暑い時期だから、シャワーは水でもいいかなと思ったが、
恭也さんが


「疲れをとるなら、水じゃなくて温かい方がいいんだ」


と言っていたので、言われたとおりに温水シャワー浴びた。
まぁ普通はあったかいんだけどね。


にしても、今日は町に出たほうがいい、ね。

念のためにケータイの占いも見てみる。
そこには、
「駅で素敵な動物とのふれあいが」
という、いつかの懐かしいフレームがあった。

本当に使いまわしだよな。

まぁデフォでついてる占いに、満足感を求めちゃいけないとは思うけど。

ただ、この場合テレビの占いとケータイの占いの意味するところは同じである。
つまり、これの意味するところは……

フェイトとの再会?

いやいや、まさかそんな絵空模様のような、
たぶん意味違うけど……

まぁそんな運命的な出会いなんてないよな。


「竜也君何してるの?」


なのはがちょこんと顔を出して、俺を見る。

俺がケータイを弄くってるのを見て、気になったのだろう。


「ああ、占いをチェックしてるんだよ」

「占いを? 竜也君ってそういうの信じるの? 前にもそれを理由に行動したことあったでしょ?」

「ああ、まぁ面白そうならね」

「竜也君っていつもそうなの。自分が面白そうなの面白そうなのって、
なのはは竜也君のおもちゃじゃないの!」

「……え?」

「な、なんでそんなに驚いた顔をするの!?」


なのはが俺のおもちゃ……だと?
いやいや、最初からそんなこと思ってないって。
なのはは俺のペットだろ?


「いや、あまりにも予想外のことなのはが言ってくるから」

「にゃ? 何がかな?」

「なのはがおもちゃじゃないと言うところだよ。俺はなのはをおもちゃとは思ったこと無いよ」

「そ、それじゃあ」


ぱあっと急に笑顔になるなのは。
何がそんなに嬉しかったのだろう。

俺はおもちゃとはと言ったのに。


「なのはは俺のペットだろ?」

「うん。……にゃ!? ち、違うの!! お友達なの!」


慌てて否定するが、ときすでに遅し、この言葉をすでに聞いてしまった人が居る。
そう、高町家の長女である、


「え、なのはって竜也君のペットだったの? 前からそうじゃないかと思ってたけど」

「にゃにゃ!? 前からってどういうことなの! お姉ちゃん!」

「あ、竜也君の猫が私を襲おうとしてるよー、止めて竜也君」


美由希さんが実にわざとらしく、俺に助けを呼ぶ。
あきらかに小芝居なのだが、なのははそうは思わないらしくよりいっそう抵抗をする。

俺はそのなのはを止める為に言う。


「まて」

「にゃい」


もはやお手のだ。
なのはの餌付けは完璧だからね!

まさになのはは俺の忠実な猫となった。
だいぶ前からだけど。


「ほ、本当にすごいね、竜也君」


美由希さんが若干呆れている。
誰に呆れてるのかは分からないが……

言うことを聞かせられるようにした俺なのか、
それとも聞いてしまう、自分の妹になのか。

まぁどっちにしろ、俺のせいには変わりないだろうね。

自覚がある分性質が悪いんだろうな。


「にゃ!? ま、また竜也君にやられたの……」

「なんかもう反射的にできるようになってるんだな」

「た、竜也君のせいなの!!」


俺のせいだってよ、笑っちまうぜ。
前なんて、なのはに命令してくれなきゃ嫌なんて言って……ないか。

さすがにそれはないか、ははは。

俺もなんか毒されてるな。

たぶん、この間やったあのゲームのせいだろう。
確かジャンルは……うん、18禁だったのは覚えるよ?


「まぁ落ち着けって、なのは。な? お手」

「にゃい」

「なのは……手だしちゃってるよ?」

「にゃ!? ま、またなの……」


美由希さんの一言ですぐに我を取り戻しはしたが、
すこし、落ち込んでる様子のなのは。

まぁもう諦めるんだな。


「今日は、何か用事あるの? 竜也君」

「ん? 用事……ね」


今日の用事……何もないです、はい。
でも、そうだな。

あえて言うなら、占いの内容が気になるな。


「あのね、今日何もないなら一緒にあ─」

「ああ、すまんなのは。今日は用事があるんだ!」

「にゃ!? ちょ、ちょっとまって、竜也君!」

「じゃあな、なのは! アディオス!」

「……竜也君は意地悪なの」


最後は俺の悪口が聞こえた気がするが……
しょうがないな、今度この埋め合わせをしてやるとしよう。


占いの言うとおりに、駅にやってきたが、
俺はここで大きなミスを犯したことに気がついた。

それは、前のときにでも言えるのだが、


「駅で動物に会えるわけなくね?」


駅は普通パッとの持ち込み不可であることに。
よく考えれば、分かることだ。

そして、俺は再び絶望した。

そう、駅の中心で!


「あ、相変わらず、だね。竜也」


そこには、金髪の少女が……って!
これ前にもやったから中略。


「お、フェイトか。また会ったな」

「うん、待ってたよ」

「待ってた?」

「会える、気がしたから」


会える気がしたって、どんな運命ですか?
英語で言うならデスティニー!

あれなのか、あの素敵な云々がでるとフェイトに会うフラグなのか!?

占いってすげーな、おい!


「それで、今日は何の用事?」

「うん、あのね。今日も買い物、なんだけど。一緒に散歩でも、どうかなって」

「散歩?」

「竜也の、住んでる町紹介して欲しいな、って思って。迷惑、だった?」

「いや、別に暇だからいいよ。そう、良かった」


すごいホッとした表情を見せるフェイト。
よっぽど不安だったのかな。

フェイトの様子はいつもどこか儚げのような気がするし。


「じゃあ、とりあえず、海鳴市を散歩でもするか」

「うん!お願い、ね」


俺は先頭に立ち、海鳴市内を歩く。
フェイトは俺の後ろから、無言でテクテクと歩く。俺の服を少し握りながら。

俺が右端であるけば、右端に。
俺がパッとフェイトの方向に振り向けば、フェイトは、どうしたの? と言いたげな顔をする。

駅を抜け、ビルが立ち並ぶ市街を抜けた、あたりでフェイトが急に話しかけてきた。

「た、竜也は、犬がすきなの?」

「うん? どうしたの急に?」

「え、あ……この間のときに、お手とか言うから……」


どうやら、この間のことを気にしているようだった。
そういえば、フェイトは犬なんだよな。


「犬も好きだけど、猫も好きだよ。あと子狸」

「子狸って?」

「ええっと……説明しにくいから、無しで」


俺とはやての関係を説明しろと言うのは無理難題だ。
自分でもよく分からないからな。

はやて風に言うなら、命の恩人なんだろうけど。


「私にもね、アルフっていう犬を飼ってるんだけど……今度、見せてあげるね」

「そうか、よろしくな」

「うん!」


本当に嬉しそうに返事を言うフェイト。

それにしても、犬を飼ってるのか……

どうりで、俺と言ったら、わんというわけだ。
いや、たぶんそれが普通なんだろうけど。

猫にお手させてるからちょっとぶれてるんだよね、自分の中で。

でも、この間のフェイトもかわいかったな。

ん? これってフェイトも餌付けできるんじゃないか?

いやいや、待てよ、俺。
慌てるな、早計過ぎるぞ。

まだフェイトに会ったのは2回目だ。
やりすぎると逆にひかれてしまう。ここはもうちょい懐いてからだな。


「前に、私にお手って、言ったよね」

「あの時は急に悪かったね、ちょっと思いついたからさ」

「ううん、いいよ。竜也なら、嫌……じゃない」


俺ならお手をしても嫌じゃない……だと?
それは暗にお手をさせてください、と言ってるのか?

いや、それこそ暴走しすぎだ。
待て待つんだ!


「そうか……嫌じゃない、ね。じゃあ。またお手をさせてもいいの?」

「え……うん、竜也なら」


や、やばいです。
最後の「竜也なら」と言ったときに顔をすごく赤くしながら恥ずかしそうに言うフェイトがかわいいです。
ちょっと手をもじもじしながらだし。

これは……なのは猫に負けず劣らずの新しいペットの発見かもしれない。

もしかしら、近いうちに知り合いだけの動物園が開くのも夢じゃないかもしれないな。

猫・犬・猫・子狸・猫で。

あれ、ほとんど猫だぞ? まぁ気にしない方向で行こう。

名物はなのは猫の猫じゃらしショーになりそうだ。


「まぁいいや。とりあえずどこか生きたい場所はある?」

「ううん、全部竜也に任せるよ」

「そうか……」


たぶん、男にとって全部任せるよと言う発言は一番難しい問題だと思う。
ここいきたい、あれやりたい、なら好きにさせられるのだが、
任せきりだとね。なんか試されているような感じがする。

と言っても任せられたからには、なんとかエスケープだっけ?
違うな、エス……コートかな? しなくてはならない。

お勧めの場所とかでもいいのだろうか?

今もかなり歩いたから、そろそろ休憩したいんだけど……
本来なら翠屋がいいんだろうな。

お茶とか飲めるし。

でも……行っちゃいけないような気がする。

何が駄目かって、なのはを無視して遊んでるからな。
これがばれた日には……引っ掻かれるな、猫的に。

それにお金もない。

そうなると、お金を使わずに休憩できる場所になるな。
公園、かな?


「フェイト」

「なに?」

「海とか好きか?」

「嫌い、じゃないよ」


せっかく海鳴市に来たんだからね、海と言えばあそこしかない。
あそこなら休憩も出来るし、涼みにもなるだろうしね。


「OK,分かった。なら、ついておいで」

「うん」


そういうと俺の後を再びついてくる、フェイト。
それはもう、サッカー強豪国のマンマークと言ってもいいほど、ピッタシとついてくる。

周りから見たら、主人の後を追う、犬にしか見えないではないだろうかと思う。

そんな事を思いながら歩いていると思いのほかすぐについた。
思ったより俺の近所に来ていたみたいだ。


「すごい、綺麗だね」


俺的、海鳴市の名所、海鳴臨海公園である。
俺も実は夕日を見にちょくちょく来ていたのだが、人と来たのは初めてかもしれないな。


「どうだ? 本当は夕方の方が綺麗なんだけど」


ザプーンと波の音がする。
そして、僅かに吹く、潮風が夏の暑さを和らいでくれる。

海自体も綺麗であり、見ていてとても落ち着く場所でもある。


「ううん、これで十分だよ。ありがとう、竜也」


たぶん、今まで一番の笑顔を見せてくれたフェイト。


「今日は楽しかったよ、ありがとうね」

「あ……ああ、楽しかったなら俺も嬉しいよ。買い物もあるんだろう? 手伝おうか?」

「ううん、今日はここまででいいよ。じゃあ、またね」

「また、な」


そう返すと、フェイトは満足したのか、一人で歩いて行った。

今日フェイトに会ったのは、全くの偶然だけど、
また会うことは普通なら難しいけど、また会えるような気がする。

でも、その日はずいぶん先のような。
そんな感じがする。

ありのままに─第27話─ 

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季節は台風の季節と言われる秋。

台風と言うのは以外にも以外に、夏よりも秋のほうが多く来るのだ。
その結果、季節の中で最も降水量が多いのも秋らしい。

まぁこれらの知識は全部お天気番組の受け売りだが……


「みなさんも、運動会は終わったのですから……」


いわゆる、スポーツの秋の代表である、運動会はつい先日終わった。
競技内容などは去年とほぼ変わりはなかった。

先生いわく、1年生2年生3年生までは競技種目が一緒とのこと。
なので、俺も去年と一緒の種目に出場し、すずかやアリサも一緒だった。

ただ、なのはだけは今年は特に種目を選ばずに、全体と同じ行動をとっていた。
なのはにとって去年のことは相当ショックだったのかな?

まぁあんな公衆の面前で恥ずかしいところを見られたらしばらくは立ち直れないだろう。
実際に、今年の運動会前のなのはは何かに怯えるように、ずっと俺にピッタシだった。

一人になることを恐れるようなそんな感じだった。

トラウマならそうしたってしょうがないのにな。

まぁ俺としてはそのなのはをからかえて楽しかったので問題はない。

そして本番当日、学校の歴史上に残る大勝となった。
各種目で上位独占である。

去年もほぼ独占できていたが、今年はそれ以上のメンバーが揃ったと言うことなのだろう。

去年は失敗した代表リレーだが、今年も5兄弟が出た。
人数的に一人余るのでその一人は必然とあの「兄じゃ」と呼ばれている人物になり、
見事1位を獲得した。

そのときの「兄じゃ」の様子なんだが、嬉しいような悲しいようなそんな複雑そうな顔をしいていた。

まぁ何はともわれ、無事に終わった運動会。
俺自身も2連覇と言うことなので、この調子で連覇を続けたいね。

そう思うと……うん。
来年も頑張ろう。

来年はなのはも参加させてやろう。
そのためには今から訓練が必要かもしれないな!


「みなさん、これからは読書にも励みましょうね。なので、これから毎朝読書時間をとろうと思います。
ご自宅にある本や、図書館にある本を借りたりして、必ず明日もってきてくださいね。では、今日の……」


朝に読書の時間か。
つまりは先生は、読書の秋と言う流行にみんなにも乗ってもうじゃないか!
そのついでに、読書好きになって成績アップだぜ!

そう言いたいのかな?

俺としては、読書するのはやぶさかではないのだが、家にある本は読んじゃったからね。
また読み返すのもいいけど、どうせなら新しい本も読んでみたいな。

となれば、今日は早速図書館にでも行って─


「竜也君!」

「うぉ! どうした? なのは。そんなに慌てて」

「あ、あのね?」

「あ……ああ」

「読書って絵本でもいいのかな!?」


高町なのは8歳。
趣味読書、好きな本は、3匹の子豚です。とでも言う気なのかなこの子は?

まぁ先生も特にジャンルの指定をしてなかったら、いいとは思うけどさ。


「どうだろうな。俺はいいと思うぞ」


そうすると、なのははにぱーっと笑顔になり、
「今日は先に帰るね」と言って、またしても慌てた様子で帰っていった。


「なのはどうしたのかしら? あんなに慌てて」

「さぁな。きっと素晴らしいアイディアでも思いついたから忘れないように急いで帰ったんじゃないか?」

「なのはちゃん、いい本の思い当たりでもあるのかな?」


家にある、絵本の存在を今頃探してるんじゃないかな?


「まぁ今日は私達も塾があるから、先に帰るわね」

「ああ、そうか。じゃあ俺は今日はひとりで帰るのか……」

「ごめんね、竜也君。また、今度」

「気にしなくて結構だよ。じゃあ、また明日」


アリサたちと学校の校門の前までしゃべりながら、別れを告げる。

普段は最低でもなのはと一緒に帰るんだが、今日は先に帰られちゃったからね。
まぁ今日に限れば、一人のほうがいいかもしれない。

図書館で探し物があるときは、複数より一人のほうがやりやすいしね。
図書館までには微妙に距離があるが、今日は特に鍛錬もないので、その分の軽いランニング程度の気持ちで行けば、
30分程度でつくと思う。

あえて言うなら、制服で走るというのが気がかりだが……この際は諦めるか。

よし、そうと決まれば行動を起こすのみである。
荷物は5兄弟にうちに直接運ばせて……

よし、準備完了。


「では、ちょっくら走りますか!」



「ぜぇ……ぜぇ」


軽いランニング程度で済ますつもりが、やっていくうちにテンションも上がっきちゃって、
最終的には全速力になってしまった。


「た……タイムは……」


図書館の時計を確認する。
学校を出たのが3時ごろだったので……今は3時15分。

…………ちょっと頑張りすぎたかな?

制服の下もやや汗がにじんできていた。
今日が気温が低めで助かった。

もし、残暑でもあったら汗だくだっただろう。

まぁいいや。
本来の目的に戻ろう。

今日ここに来たのは、朝読書の時間に読む本だ。
家にないタイプのさらには、周りを圧倒できるような本がいいな。


「あ、あった! これなら読書に最適だ!」


この分厚さ!広辞苑並み!!
そして、この情報の量! 並みの本とは比べ物にならない!

『猫猫大百科~世界の猫たち~』かんぺ─


「だ・か・ら! 大百科を読むのは読書とちゃうねん!!」


バシっとハリセンで頭をたたかれた。
しかも、背後から後頭部を!

人間の大切な期間である、頭を攻撃するとは……いったい誰だ!

そう思い振り返ると、いつかの子狸がいた。


「子狸でもないわ! 相変わらず飛んだ頭してるんやなぁ」


よく見ると、それは子狸ではなく車椅子の少女だった。
べ、別に悪口言われて弱気になったんじゃないんだからね!


「それで、どうしてここに、はやてがいるんだ?」

「どうして……やって?」


急に気迫が出てくるはやて。
どうしたんだろう、はやての後ろに黒いオーラを感じる……
お、おかしいな……前に会ったときのはやてはこんな怖い子じゃないはず。


「……71回」

「え?」

「竜也君に会いたいがために、この図書館に来た回数」


俺に会いたいがために来た回数が71回……だと?
今日の日付から毎日一回だとすると……え?

いやいや、嘘だろ、はやて。


「毎日……来たのか?」

「そうやで、竜也君」


急ににこりと笑いながら、言うはやて。
しかし、目は全く笑っていなかった。

むしろ、さっきよりもオーラがあふれ出ているような気がする。

もしや……はやては暗黒面へと落ちてしまったのか!?


「あの別れた日。まるで、また明日にでも会えるさ、と言ってるかのように別れ、
私はその言葉を頼りに翌日、開館の時間から閉館の時間までずっと待ってたんよ?」


朝から夕方まで……はやてはずいぶん暇なんだな。


「竜也君、私は暇やないで?」


相変わらず微笑んでいるが、今ブチっという音が聞こえた。
確かに聞こえた。

何が切れた音かは分からないが、なんかとにかくまずい気がする。
そうなれば選択肢は……


「ああ、すまん! はやて、俺には用事があるんだ、じゃあな! また今度」


はやてに別れを告げ、そっこうで退避。
36 計逃げるに如かず、である。

はやては、車椅子。普通の人の逃げ足に敵うはずがな─


「はは……はっはっは! 甘いで竜也君! 逃げられると思うてるんか!?」


キキーっという音と共に、車椅子が綺麗な弧を描きながら、俺の逃走路をふさぐ位置に来る。
見事なドリフトとターンだった。


「今日はとことん、付き合ってもらうで!」


俺は初めて知った。
車椅子の可能性について。

そして、この八神はやてという人物の恐ろしさを。




「え……はやて様って一人暮らしだったの?」


俺ははやての家に連行された。
母さんにはすでに帰るのが遅くなると連絡はしておいた。

下手したら、生きて帰って来れないかもしれないけど、まぁそればかりははやて様頼みだ。


「その、はやて様っていうのはやめてもらえへんかなぁ?」

「何を言ってるんです、はやて様! はやて様がはやて様じゃなければ誰がはやて様なのですか!?」


若干面白くなってきているのはここだけの秘密である。


「竜也君……怒るで?」


にこっと言う擬音語出るような笑顔なのだが、どうしてなのかな?
黒オーラが常に見えるのは。

とっても怖いです。


「サー! イエッサー!」

「はぁ、分かればええんや。それで、私が一人暮らしのっ理由なんやけど……」


ちょっと暗い顔をする、はやて。
言うのを躊躇っているというか悩んでいる様子だった。


「まぁ竜也君ならええか。実はな……」


そこから、はやての昔話を聞かされた。
本当は聞かないほうがよかったんじゃないかと途中で思ったけど、
はやても悩んだ末に話しくれたのだ、それなら、その判断をはやてに後悔させたくない。

内容は、幼いころに両親が死んでしまったけど、父親の友人のおかげで、今は不自由なく過ごせていること。
もう、この生活に離れたから寂しくない、と。


「そういうわけや。満足したかぁ?」

「そうだな、はやて。嘘はいけないよ?」

「な、何が嘘なんや! どれも本当のことやで! 父さんや母さんが死んだのだって、父さんの─」

「そこじゃない! 寂しくないはずないだろ? 寂しくなかったら、毎日俺を探しに図書館なんて来ないだろ?」


寂しくなければ、友達になってくれる可能性のあるの人を探す必要がない。
不自由しないなら、家に出る必要はない。

それに……涙を我慢しながら語ってる、はやてに説得力があると思えないよ。


「あのな、はやて」

「…………」

「俺もな父さんを亡くしてるんだよ」

「え?」

「最近だけどね、だから、はやてほどじゃないにしろ、少し分かるよ。
寂しいと言うのも、自分が頑張らなくちゃと言うのもさ。」


父さんが死んで寂しかった。
これは間違いない。だけど俺にはそれを許してもらえなかった。

母さんがダウンしている間、俺が何とかしなくちゃいけなかったから。

気丈に振舞う……それは今の俺にも当てはまるかも知れないし、
それはアリサや、なのは、もしかしたらすずかにも当てはまるかもしれない……


「そう、やったんやな。なんや、気分悪いやないか。私だけが悲劇のヒロインみたいになって」

「気にするな、と言うのも無理か知れないけど、はやてに比べたら平和だよ」

「そ、それは関係ないで! 自分にとって大切な人がいなくなったんや、深刻度合いとか……
そんなのあらへんよ……なぁ竜也君」

「なんだ?」

「今は……幸せ?」


今は幸せか……また難しい問題だな、はやて。
幸せなんて昔と比べようがないけど、父さんのいたころに比べて……

いや、比べることが間違ってるのかな。

見るべきは今、か。
だからこそ、今は幸せか。

それなら、難しい問題だけど。
思うところはある。

アリサや、なのはやすずかがいて、こうやってはやてもいる。
それにフェイトだって。


「まぁ幸せなんじゃないかな?」

「そう、か。なら、ええんや。私も幸せやで、竜也君」


今日、初めてはやての純粋な笑顔を見た気がする。
黒いオーラなど纏わず、むしろ明るい、闇を照らすような……

本来はこういう表情をするのかもしれないな。


「あ、もうこんな時間かいな」


気付けば時計は6時を過ぎていた。
もう、秋も終盤なので外はもう暗くなり始めていた。


「そうやな、ご飯は食べていってや」

「え、いや、いいよ」

「駄目や、食べていかないと帰らせへんよ?」


こうなったはやては、頑固であると今日悟ったからな。
たぶん、これ以上の反抗も意味を成さないだろう。


「しょうがないな、食べていってやるよ」

「なんや、不服そうやな。よし! 絶対に美味いって言わせたるで!」


でも、何だかあれだね。
なのはたちにも知られず、母さんにも知られない、俺とはやて。
二人だけの空間って


「秘密の関係見たいやなぁ、私ら」

「奇遇だね、同じこと考えてたよ」

「ほんまか!? じゃあ……私らは秘密の関係やな。誰にも明かしたらあかんで」

「え? 友達紹介してやろうと思ったのに……」

「え……う、ううん、しばらくはこのままの関係で。だって、なんかこういうのって」


そうだね、秘密の仲って


「「ドキドキするね(なぁ)」」


俺はこの後、はやてに晩御飯をご馳走になって、家に帰った。
はやての料理の腕はかなりのものだった。

でも、俺も負けない。
今度は俺も何か作ってやるとするか。

そうしたら、料理対決できそうだな。
俺も鉄な人になれかなぁ。



ありのままに─第28話─ 

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「それで、結局なのは何の本を持ってきたんだ?」


竜也君が、期待の念を抱いた眼差しでなのはを見てくるの。
なんでなんだろう。

なのはのなにに期待してるのかなぁ。

昨日は、今日の読書のために、家にある本を探してきた。
パッと思いついたから、忘れないうちにと思って急いで帰った。

頑張って探したら、出て来たのは、昔お母さんが読ませてくれた本。
それは、


「じゃーん! これなら文句は無いと思うの!」

「え? 『3匹の子豚』?」

「そうだよ? この子豚さんがとってもかわいいの!」


3匹のかわいい子豚さんが、意地悪な狼さんから頑張って家を守るお話。
涙あり感動ありの、素晴らしい本だと思うの。


「すごい……全く期待を裏切らないと言うか……うん。なのは、さすがだ」

「んにゃ? うん! ありがとう!」


なんかよく分からないけど、すっごい褒めてくれたの。
なんでかなぁ?
竜也君のことだから、絶対に変なこと言うと思ったのに。


「でもさぁ、なのは」


さっきの様子とは打って変わって、少し真面目な雰囲気を、漂わせる竜也君。
なのはの目じっと見てる。


「もっと大人になろうぜ!」

「にゃ? ど、どういうことなのかな?」

「まぁ……いいけどさ。そういうのは、なのはらしくてかわいいと思うから」


た、た、た、竜也君が、なのはのことかわいいって言った……
え? これって夢じゃないのかな?

竜也君ってなのはに会うたびに猫みたいな扱いをするから、こんな竜也君久しぶりなの!


「なに、顔を赤くしてるんだよ?」

「にゃにゃ!? べ、別ににゃんにもにゃいよ?」

「噛みすぎだよ」


うぅ、竜也君の不意打ちのせいなのに……
それに顔だって赤くしてないもん!

別に竜也君に褒められたってうれしくな……嬉しいかも。

最近の竜也君って、なのはの猫化のときにしか褒めてくれないの!
普通のときは全然ないんだもん。

もっと褒めてくれてもいいと思うの。
これだけ竜也君と一緒にいるんだから……


「どうしたんだ? なんかいつもより慌しいと言うか……」

「ううん、普通だよ。今日は一緒に帰るの」

「え? ああ、昨日の気にしてるのか。まぁいいよ。と言うかいつものことだろ。
今日は鍛錬もあるし、ちょうどいいからなのはの家に直接行くから」

「うん!」


今日は竜也君も一緒に家に来てくれるの。
いつも帰ると一人だから、とっても嬉しいの。

そういえば、竜也君ってなのはの家で二人きりのときだけは異様に優しかったような……
なんでなんだろう?

やっぱり、気にしてくれてるのかな?
去年の梅雨に竜也君に泣き付いちゃったのを、未だに……

ああ、そうなんだよね。
もう、竜也君と初めて会ってから1年半なんだ。

早かったような、遅かったような、とても不思議な感覚。

なのはにとって竜也君は、初めての男の子の友達。
あの時はまだ、アリサちゃんとすずかちゃんと仲良くなったばっかしで、まだ不安定だった。

ううん、もしかしたら今でも、竜也君から見れば不安定かもしれないけど。

でも、そんなときにやってきた、竜也君はとても優しかったの。

なのはが家に居場所がないことをしって、竜也君の家を居場所にしてくれたり。
本当に優しい。


「…………」

「ん? 読書中になんだよ?」

「にゃ!? なんでもないの」


ついつい、竜也君を見ちゃったの。
本人は優しいとか言うと否定したり、買いかぶりすぎだって言うけど、なのはは優しいと思うよ。

竜也君はよく、なのは達の、「高町家はお人よし過ぎる」って言うけど、それは自分もなんじゃないかなって思うの。


なのはにとって竜也君は──


「おい、なのは!」

「にゃにゃ!?」

「読書の時間が終わったぞ、というかその絵本ってそんなに読むのに時間かかるのか?」


あ、いつのまにか朝読書の時間が終わってるの……
た、竜也君のせいだよぅ。

竜也君がなのはの昔を振り替えさせるから。


「そもそも、絵本と言うところに突っ込むべきじゃないのかしら?」

「ほら、アリサちゃん。そこは……なのはちゃんだから、ね?」


どういう意味……かな?
なのはだから絵本でいい?

もしかして、今馬鹿にされてる?


「アリサもすずかもなのはに失礼だぞ!」

「そ、そうなの! 竜也君の言う通りなの!」

「この絵本のなのはがいいんじゃないか、みてて楽しいだろ?」

「確かに言われてみれば……」


珍しくなのはの弁護に入る竜也君。
なんかその後もアリサちゃんとしゃべってたみたいだけど、よく聞こえなかった。

でも、いつもの竜也君なら、


「はっはっは、なのは絵本かよ! はっはっは!」


とか言ってるに違いないの!


「なのはの中の俺のイメージって……」

「た、竜也君あんまり落ち込まないで」

「心中察するわ」


あれ? なんで竜也君落ち込んでるの……
しかも、アリサちゃんとすずかちゃんまで竜也君を励ましてるし!

なんだかんだで、二人を味方につけてるの!

竜也君はやっぱり油断ならないの。


「まぁいい。それで、なのは」

「なに?」

「なんで読書の時間中俺を見てたんだ?」

「にゃ!? そ、そんなことはないの」

「なのは、悪いけど私の場所からでもなのはが竜也を見つめてたのは分かったわよ」


や、やばいの!
そ、そんなに竜也君のことみてたかなぁ。
ちょっと前のことを思い出して、ついつい竜也君を少し、見てたつもりだったんだけど。

でも、これを素直に言ったら、竜也君に馬鹿にされるかも……だったら!


「ええっとね、それには理由があるの!」

「え? どんな?」

「た、竜也君のことが……」

「お、俺のことが……」

「竜也君ことが気になったから!」

「な!?」

「「え!?」」


う、上手く誤魔化せたの。
みんな驚いて開いた口がふさがって何も言ってこないの。

あ、チャイムだ。


「ほら、みんな先に戻ろう?」

「え……あ、うん」

「そ、そうね」


あれ、それにしてもみんな驚きすぎなの。
竜也君は妙に顔が赤いし、アリサちゃんはなんか慌ててるし、すずかちゃんなんて未だにフリーズしてるの。

どうしたのかな?


結局今日学校の間ずっとみんなそんな感じだった。
お昼ごはんで一緒に食べてるときも、みんな生返事しか帰ってこないし。

なのはの発言に問題があったのかな?


「じ、じゃあ。また明日な」

「え、ええ。そうね、また明日」

「また……ね、なのはちゃん、竜也君」

「うん、また明日!」


アリサちゃんとすずかちゃんは、アリサちゃん車で一緒に帰宅。
なのはは昨日ぶりに、竜也君と二人で帰宅なの。


「「…………」」


お、おかしいの!
いつもなら二人でしゃべりながら楽しく帰れるのに、すごく緊張すると言うか、
しゃべりにくいの……


「「あ、あの」」

「「先いいよ」」


だ、駄目なの。
なんか、ドキドキしてきちゃったし。
どうしたのかな、竜也君もへんだけど、なのはも変なの……

はっ!もしかしてこれが噂の……反抗期!?

竜也君は反抗期なの!?


「はぁ」


思い切り深いため息をした、竜也君。
そうすると、なのはの目を真剣に見てきた……

なんかその顔で思わず、なのはも緊張する。


「あのさ、なのは」

「なに、かな?」

「今日の朝のさ、俺が気になるってどういうこと?」

「にゃ?」

「ん? 本人でも分かってないのか?」

「何のことだかさっぱりなの」


朝の気になるっていうなのはの発言?
あれって誤魔化す為にいっただけだから、別にどういうも、何もないんだけど……


「はは、そうだよな。当たり前だよな!」

「ど、どうしたの、竜也君?」

「いや、なんでもない。というより、お前が悪い!勘違いしちまったじゃないか」

「にゃ? 勘違い?」

「まぁいいか」

「え? 意味が分からないの、竜也君!」

「ふん、自分で考えろ!」


そういうとどこか怒ってる感じにも見える、竜也君。
ううん、拗ねてる感じなのかな?

竜也君のこういう姿を初めて見るかもしれないの。

でも、どうして拗ねたんだろう。
分からないなぁ。

なんか勘違いしてたみたいだけど……

でも、こういう竜也君との何気ない会話は楽しい。
たぶん、竜也君と出会わなければ男の子とこうやって話す機会もなかったかもしれない。

実際、竜也君とその護衛って感じのあの5人組以外の人とは全然しゃべったことがない。

そういう意味では、なのはの世界を広げてくれた人。
そして、こんななのはに優しくしてくれる……


「どうやって苛めてやろうかな……」


優しくしてくれる……
あれ? 優しくない?


「やっぱり猫じゃらしかな?」

「にゃん!」


ハッ!ついつい反応しちゃったの。
わ、悪い癖なの……

な、なんでかなぁ。
どうして猫状態のときに竜也君の言うこと聞いちゃうんだろう。

あ、でも気持ちいいからいいかな。
……やっぱり駄目なの。

た、確かにお手とか言われるとよろこんでやっちゃうけど。
猫じゃらしあるとついつい遊んじゃうけど。


「そんなに嬉しいのか? じゃあ猫じゃらしは無しだな」

「にゃ~ん……」


え? 今日は猫じゃらし無しなの?
すごい残念なの……あ! ま、まずいよ、影響受けてるの!

でも、やっぱり残念……


「そ、そんなの落ち込むなよ……分かった! じゃあ今日は家でゲームの相手をしてやるよ」

「え、本当に?」

「ああ、たまには徹夜でやるか」

「うん! すごい楽しみなの!」


今日は竜也君の家でお泊りかなぁ。
うん、ゲームもすごく楽しみだけど、それ以上に竜也君と一緒に遊べるのが嬉しいな。
最近、放置されてた気がするし……気のせいだよね? 竜也君?
まさか、なのはたちの知らない女の子と遊んだりなんかしてないよね?


「なんか、今背中にぞくっと来るものが」

「どうしたの?」

「いや、何にも……じゃあ、そうと決まれば、今日の鍛錬も頑張るか」

「頑張ってね、竜也君。なのはも道場で応援するの」

「そうか、ありがとう」


竜也君の練習してる姿は実はアリサちゃんもすずかちゃんも見たことがない。
だから、なのはだけが竜也君のあの真面目な姿を見れる。

なんだかちょっとだけ優越感。
みんなの知らない、竜也君を見ることができると言う。


「竜也君」

「なんだ、なのは?」

「ううん、なんでもないの」

「意味分からん」


竜也君……本当に‘私’にとって特別で、大切な友達。
私に居場所を作ってくれて与えてくれた。

そして、名前を呼んでくれる。

とっても大切な友達。
だから私は密かに思う。

これからもずっと一緒だよ。


ありのままに─第29話─ 

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冬……冬と言うこの季節は俺にとって、どんな意味を表すのか。

冬は寒い。
これは誰もが思い当たる節があるだろう。
例外としては、南の地方。

それこそ、沖縄や小笠原諸島などに行けば暖かいかもしれないが。
しかし、それでもそこに住んでる人にとっては「冬は寒い」という感覚であると思う。

また、南半球や赤道沿いも例外としよう。
条件は日本国内においてということだ。

ここ、海鳴市にも冬は来る。
いや、むしろ他の地域に比べても寒い方に分類されると思う。

それが分かるのは、雪の量だ。

雪の量は降水量にも影響してくるが、
そもそも寒くなければ降らないため、よく雪が降る海鳴市は十分に寒い方だろう。

それこそ、真北。
北海道なんていう場所と比べれば、まだ暖かいかもしれないが、
全国的に見てという点においては、十分寒い。

まぁさっきから俺が寒い寒いって言ってるかというと。
いいわけだね、うん。

ここは寒いのだからしょうがないじゃないか!
だから、布団から出られなくたってしょうがないじゃないか!

そんな言い訳を自分にしてるんだ。

朝の鍛錬があるから、寝ているわけにもいかないし、
すでに習慣になってるから起きることが出来るから差し支えないんだけど。

そのぶん、授業中に


「ふわ~ん」

「はい、相沢君! そんなに大きなあくびを先生に見せないでください」


先生の言葉で教室のあちこちから笑い声が聞こえる。
まぁ俺が間抜けだったわけだからしょうがないけどね。

でも、実際に眠し、これぐらいは許して欲しい。


「兄じゃ、閣下が笑われてますよ?」

「ふむ、そうだな」

「これは……すべきですね」

「そうだ、今こそやつらに制裁を」

「いつかは俺が……」


どこからか、兄弟の不気味な会談が聞こえたような気がするけど気のせいだろう。
そういえば、どことなく最近のクラスが。
否、学校中が俺に対してよそよそしいような気がする。

なぜかは分からないが、みんな俺が通ると避けるというか、近づいてこない。

そういう人の目には大抵、恐怖とかの畏怖のようなものがあった。

どういうことなんだろう……
まさか、5兄弟が何らかのことをしているのだろうか……

まぁ気にしすぎてもしょうがないか。

俺は再び授業に集中……ではなく、睡眠学習をとることにした。
睡眠学習とは寝てる間に授業が終わると言う、近未来的、かつ最も効率のいい勉強方法だ。

次に起きたころには、授業はおろか学校も終わってるであろう。

お昼ごはんも食べ終わり、外とは打って変わって暖房の効く教室は絶好の睡眠学習日和なのだ。

なので、寝よう。
ああ、寝よう。

次起きるときは、学校が終わったときだ。



「──た……君」


どこかで、俺の名前を呼んでる人の声がする。
せっかく睡眠学習をしてるのに勉強の時間を邪魔しようとする、邪推なやつに違いない。

俺はそんな声には片耳の傾けず、再び夢の世界へダイブする。


「──也君!!」


今度はさっきより大きな声がする。
しかも、声と一緒に身体を揺さぶってるようだ。

正直鬱陶しい。
俺は眠いんだ。眠らせて欲しい。

なので俺は相手に俺の意思を伝える。


「5……いや、待て」

「にゃん」


これで、邪魔者は消えた。
あとは、ぐっすり眠るだけだ。

さぁ行こう……理想郷へ!


「にゃにゃー!」

「うわ!?」


顔を引っかかれた。
い、痛い。引っかかれた場所は微妙に赤くなって、水ぶくれのようになっている。


「痛いじゃないか!」

「起きない竜也君が悪いの!」

「待てといったじゃないか!」

「もう、50分待ったの!」


そういわれて、黒板の上にある時計を見返す。
時計はすでに4時を回っていた。

外は雪が降ってるせいか、雲が多いいため、すでに暗くなっていた。

どうやら、俺は授業終わった後も眠っていたらしい。
そのうえ、変な体制で寝たから非常に体中が痛い。


「もう、アリサちゃんもすずかちゃんも帰っちゃったよ?」

「あ……そうか、待たせて悪かったな、なのは」


なのはの親友達も帰ってしまったらしい。
そんな中、なのはは俺の言われたとおり起きるまで待ち続けてたのか。

なんというか……うん、ご苦労なことだな。


「ううん、なのはも竜也君の寝顔が見れたから別にいいよ」

「おまえはうちに泊まるときよく見てるだろ?」

「え……そうなんだけど、学校だと新鮮だったから」


学校と家とじゃ違うのか?
その違いはよく俺には分からないな。

あれなのかな、ランニングでもいつも同じコースを走るのと、すこし違うコースを走るのとで新鮮が違うのと同じようなもんなのか?

まぁそんなことはどうでもいいか。
そんなことより本当に暗くなってきたし、帰らないとな。

特になのは早めに帰さないと、鍛練が鬼モードになりかねない。


「じゃあ、なのは帰るか」

「うん!」


そう言い、ようやく腰の重い俺はって自分で言うようなことも出ないけど、数時間ぶりに、自分の席を立つと、ドサっという物が落ちる音がした。

そして、少し体が軽くなった気がする。


「あ、なのはがかけてくれたのか?」


音がした場所には、茶色いコートが落ちていた。
さっきまで意識がハッキリしてなく、ちょっと寝ぼけ気味だったが、体が重いと感じていた理由はこれのようだった。


「う……うん。寒そうだったから」

「そうか、ありがとうな」

「うん! どういたしまして」


なのはが飛び跳ねるように喜ぶ。
お礼を言われたのが嬉しかったのかな?

感謝してるるのは俺のほうなんだが……

なのはのこういう優しさって本当にいいよな。
たぶん、これがアリサとかが、なのはは優しいと言われる要因なんだろうな。

いや、俺から言わせればお人よしなんだけどな。
こんな時間まで待ってることも含めて。


「まぁいいか」

「にゃ?」

「ほら、帰るぞ」

「うん!」


なのはと二人で家に帰る。
今日は鍛錬もなく、なのはの家にも用事はないが、こんな時間なのでなのはを送って帰る。

自分で言うのもなんだが、俺なら大抵のことからなのはを護れるしね。


「そういえば、竜也君」

「なに?」

「もうすぐ、クリスマスだね」


クリスマス。
冬の3大イベントの一つ。

他の二つとは元旦とお正月だ。

去年のクリスマスはすっかり俺が忘れてた。
というより、プレゼントを準備していなかったせいでケーキを作る羽目になった。

なので、今年はすでに考えてある。

しかし……


「今年はアリサもすずかも家の用事なんだよな」

「そう、なの」


寂しそうな顔をするなのは。

なのはにとって友人と言うのは家族以上に大切な人なんじゃないかと最近思う。
もちろん、なのはは家族のことも大好きなのも知ってるが、
どうしてもそう感じてしまうのは、家で一人きりのなのはを知ってるからだろうか……


「まぁ俺がいるんだから、我慢しなさい」

「そう……だよね。うん、そうか! 竜也君と二人きりだもんね」


思い出したかのように元気になる、なのは。

俺は忘れられていたのか?
ちょっと俺が悲しくなるぞ……


「今年はなのはのプレゼントを用意するぞ!」

「え、本当!?」

「ああ、それの参考までになんだが」

「うん?」

「マタタビと猫じゃらしとかつお、どれがいい?」

「にゃー! 竜也君! またなのはを猫扱いして!」

「え? 猫じゃないの?」


驚きの真実だ!
なのはが猫じゃないなんてありえないよ……

俺の中ではすでにペットだと言うのに……

もしかしたら、俺の知らないうちになのはは猫じゃなくなったのかもしれない。
こうなったら……確認してみるに限る。


「お手」

「にゃん」

「おかわり」

「にゃい」

「俺の上を飛べ!」

「にゃ~~ん」


なのは猫は俺の言うとおりにすべて動いた。
どこからどう見ても、猫である。

ついでいうなら、俺の真上を飛んだときに、見ちゃいけないものを見たが……気のせいだろう。

そして、猫モードのなのはに改めて聞く。


「マタタビ欲しいか?」

「にゃにゃ!? にゃん!」


とっても嬉しそうな目をする。
その目はものすごく輝いている。まさに、純粋そのもの。

ついでに通訳するなら「マタタビ!? ぜ、ぜひとも欲しい!」だ。


「じゃあ、猫じゃらし?」

「にゃ、にゃい!」


遊んで欲しい……だと?
そういえば、最近猫じゃらしで遊んでないな。

しょうがない、今度相手してやるか。


「じゃあ、かつおは?」

「うにゃ~ん」


食べてはみたいが、欲しいほどでもない、ね。
なるほど、非常に参考になった。

なのはへのプレゼントは決まりだな。


「にゃ!? ま、また竜也君の言うとおりに……」

「別にいやじゃないんだろ?」

「え……そうだけど。でも、ううん。やっぱり駄目だと思うの。本人の許可なしにやったら」

「別にいいじゃないか。俺も楽しいし、なのはも楽しい。利害は一致してるじゃん」

「う~ん。そうなんだけど……」


やっぱり、なのはも楽しいのか。
かまかけてやったんだけど、上手く乗ってくれたよ。

さすが、なのはだ。話しやすいなぁ。


「なぁ、なのは」

「なに? 竜也君」

「一人って寂しいか?」

「にゃ!? ……うん、寂しいよ」

「そうだよな」


クリスマス、なのはは俺がいなければ一人だったからな。

そういえば、はやては!?
あいつは両親いないし、学校にも行ってないから友達が……

一人、か。

なのはに紹介してもいいけど……秘密の関係だからな、俺とはやては。
それに何より、紹介した後が怖いような……

さて、どうするか。

せめて、プレゼントぐらいは用意してやるべきかな。


「女の子ってさ、何をもらうと嬉しいの?」

「え? た、竜也君!?


なのはが驚いた顔をすると、次には希望に満ち溢れた顔になった。
勘違いしてるみたいだ。


「なのはにあげるわけじゃないぞ?」

「にゃ……がーん、なの」


言葉の通り、落ち込む様子のなのは。
まぁ期待させてっぽいからしょうがないかもしれないけど。


「なのはにはマタタビがあるって」

「え? 本当! ……って普通は喜ばないの!」


普通に喜んでたじゃん今。すごく嬉しそうにしてたじゃん。

そして、家に帰るまでこんな感じの話のループだった。
俺がなのはをから喜びさせて、落ち込ませるの。

まぁなんとも、なのはの顔の表情の変化が激しいので見てて楽しかった。
なのはとしゃべるのが一番和むかもしれないな。

それにしても、はやてか……う~ん。
まぁいいや、あいつに関しては深く考えたら負けだろ、ギャグ担当でしょ?
はやてにはケーキでも作って渡せばいいだろ。うん、そうだな・これで全部解決だね。

ありのままに─第30話─ 

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クリスマスイブ。

本来祝うべきはクリスマスだ。イブではなく。
そして、世間でもクリスマス、クリスマスというが、最も活気がある、つまりは最もお祭り騒ぎのような状態になるのは、
クリスマスイブのような気がする。

イブ明けの朝、もしくは夜は、本来のクリスマスの日だというのにどこと泣く寂しさを覚える。
それは、イブから次の日のクリスマスの間に、クリスマスの代名詞とも言うべきプレゼント交換が終わってしまうからだと思う。

だから、プレゼントを渡し終わった、クリスマス当日は盛り上がりがかけるのだと思う。
もっともこれは日本限定のようで、ニュースをとかを見るには海外ではイブはもちろん当日にも盛り上がっている。

いや、むしろクリスマスの当日こそ盛り上がっているのかもしれない。
国によってはクリスマスの日は休日になる。

それこそ国を上げての休日になる為からだと思う。

その点から見て、日本の行事は外国に比べて多々異端な部分があるが、まぁそんなの一般庶民。
俺たちみたいな平凡な市民には関係ないことだろう。

宗教的にも、日常的にもね。

そんなわけで、今日はクリスマスイブ。
なのはと二人でパーティ……というとなんだか悲しくなるから、
二人で乏しく貧しいながら幸せいっぱいのクリスマスを過ごそうと思ってる。

そんな事を持ってる中、ようやくピンポーンと言うインタホーンの音がする。


「はいはい、今から出ますよ」


インターホンを聞いて、ドアを開けるときの名台詞? を言いながら、ドアを開けると、そこには……


「メリークリスマス、竜也君」


そう言いながら片手にちょっと大き目の袋を持って、笑顔にこの日限定のお決まりの挨拶をする、なのは。
今日はクリスマスとあってか、テンションもやや高いようだ。

その証拠に、額には若干汗をかいている。たぶん、走ってここにきたのだろう。


「ああ、メリークリスマス。早く家に入れよ」

「うん、お邪魔します」

「お邪魔されます」


なのはを家に招き入れて、俺の部屋に行く。
俺の部屋はなんだかんだで、来客が多い─主にあの兄弟やなのはだが─ため、以外にも片付いている。
自分で以外と言う理由は、たぶんなのはたちが来ないなら、散らかっているだろうと思うからだ。


「う~ん、やっぱり竜也君の部屋は落ち着くね。なのはの部屋もいいけど、ここが一番なの」

「いつのまにか、お前の私物も増えてるしな」


なのはよくこの家に来るせいか、なのはの私物が増えていった。
おもにゲームとかだが、まぁそれ自体は俺のやるゲームも増えるから問題ない。

問題なのは、気がつくとおれが家に帰るころにこいつが部屋で遊んでいることだ。
図々しいとかを飛び越えて呆れてしまうよ。

自分の家があるだろうに……


「それでね、今日はクリスマスだよ! 竜也君!!」

「おう、だから?」

「まずは、プレゼント交換だよ?」


クリスマスの代名詞、プレゼント交換。
なのはは早速それをやろうとする。

普通はとっておきで後に残すものだと思うんだけど……

なのはがものすごくやる気なので水をさす気にはなれないね。


「じゃあ、まずはなのはから」


さっきまで片手にもっていた袋から、四角い箱に赤いリボンがつけられている、まさにTHE プレゼントとでも言うべきものが出てきた。


「はい、メリークリスマス」


今日二度目のメリークリスマス。
去年と同じような、もしくはそれ以上の笑顔で渡してきた。

去年ももらったが、やはりこういうものはもらえると嬉しいね。
今年はすずかやアリサからも、もらえないから余計にそう感じる。

母さんは当てにならないし、そう考えるとなのはのプレゼントが希望の光に見えてきたよ……
俺はもう駄目かもしれない、自分の飼ってるペットに希望を見出すとか……
いや、ペットだからこそいいのか? 癒されていいのか?

うーん、これはなんとも微妙なところだ。
まぁどちらにせよ、なのはからプレゼントをもらえたということに関しては本当に喜びだね。


「なのは、あけていいか?」

「うん! どうぞ」


あまりの感動に、中身を確認せざるを得ない。
そう思い、本人の許可をもらって、中身を取り出すと……


「これ、本当にプレゼント……なのか?」

「うん、竜也君にピッタシなの!」


なのはからもらったプレゼント……それは!


「『裸の王様」の絵本……だと?」

「うん、ぜひとも竜也君に読んでもらいたいの」

「それは、あれか! 俺はこの愚かな王様と一緒だといいたいのか!?
それとも、この本を読んで今の自分の醜態を見てみろと!」

「にゃ!? べ、別にそういうわけじゃないの……」


なのはには失望した。
なのはの中の俺ってどれだけ愚かで醜いやつに見えているんだ!?
しかも、また絵本って……まだ引き摺ってるのかよ!

ふん、まぁいいさ。
大体そんなもんだと思ったよ。

去年のプレゼント、箱の中に小石が入っててその中に手書きで「ぱわーすとーん」と書いてあった時点で、期待してなかったさ。

だから、俺はもらえたという事実のみに固執して喜んだのに。
頑張ってうれしがったのに……そうか、そうか。
なのはは俺をよっぽど怒らせたいらしいな。

ならば、見せてやる!俺の雷を!


「さぁこれが俺のプレゼントだ受け取れ!」

「にゃにゃ!? 投げないでよ」


俺もやや大きめの箱をなのはに投げつける。
もちろん、その中にはなのはへのプレゼントが入っている。

去年は忘れていてうかつだったが、今年はしっかり準備したからネタの仕込みは完璧だ。


「じゃあ、あけさせてもらうね?」

「ああ、どうぞ」


ふふふ、見て驚け、嗅いで慄け!
今回用意したものは、まさに、なのはにうってつけの物だぞ。

ぜひとも明日からはそれを‘着けて’俺に会いに来て欲しいものだ。


「にゃ! ね……猫耳と尻尾!? しかもマタタビまで! た、た、た……竜也君!」


顔を真っ赤にして怒り出す、なのは。
しかし、なのはの怒った顔など、大して怖くない。
それどころか和んでしまうので俺には効果がないようだ。

それに、そもそも俺にあのようなプレゼントするほうが悪い。
1年越しの復讐だぞ? これは。


「まぁまぁそう言わずにさ。ほれ、マタタビだぞ」

「そうやって、やってもい……みはな……いん……うにゃ~ん」


頑張って理性で抑えても本能はそうも行かないようだな。
てか、理性も抑え切れてないし。

すでに俺の手に持ってるマタタビに飛びついてるし!


「ほれほれ~」

「にゃーん、にゃにゃ!」


俺がマタタビを上下左右に動かすと必死に取ろうと動き回る、なのは猫。

実に楽しい。
ああ、何て楽しいんだろう!

分からないな、でも、うん。
とにかく、なのは猫で遊ぶのが楽しすぎる。

あ、いいこと思いついた。
今、俺すごいことを思いついちゃったよ!


「なのは、このマタタビが欲しいか?」

「にゃん!」

「じゃあ、その猫耳と尻尾つけてくれればいいぞ」

「にゃーん」


そういうとものすごい勢いで、その必殺アイテムを取りに行き装着する、なのは猫。

そこまで欲しかったのか……
というよりさっきまであったはずの理性が完全にぶっ飛んでいるなと再認識かな。

そんなことを考えているとあっという間に、着けて戻ってきたなのは猫。
そして、その姿……


「…………」

「にゃ?」


制服のようなワンピース型ではないにしろ、そこそこ短いスカートに、白を基調としたした服。
そこには、ワンポイントで赤が混じっているのだが。
そして、そこそこ短いスカートの下から尻尾が生えていて、本来大きめなリボンがついてるはずの所に、猫耳がある。
つまりは、今は完全に髪をおろした状態である。

そんななのは猫を想像してほしい。
そして、本来おもちゃであるはずの尻尾がなぜか、フリフリと動くのだ。

俺は死んでいいかもしれない……
この猫……かわいすぎる。

ああ、かわいい。
これ以上ないほどに、むしろ俺が異常になるほどそれは素晴らしかった。

もちろん条件どおりに、マタタビをあげる。


「にゃ~ん」


マタタビをあげたら、ものすごく喜んだ上に、そのお礼なのか、顔をスリスリ……
ままままままずすぎぎぎぎるうううううううううう。

やばい頭の回線が切れそうだ……。
落ち着け俺、あまり深く考えるな。

そして、なのはをみるな。
そう思いつつもチラッと見てしまう。

そこには、


「にゃ?」


?マークを頭上に出しながら、頭を横に傾ける仕草をするなのは猫。
その、なのは猫かわいすぎた。

俺のボキャブラリーでは、言葉に出来ない。
それほどまでのものだった。

俺の頭がどうにかなりそうだ。

よし、とりあえずだ。とりあえず、写真を撮ろう。

そうしよう、そうするしかない、そうしなきゃ駄目だろ、三段活用!


「なのは」

「にゃぁ?」


パシャパシャパシャと写真を撮る。右手にデジカメを、左手にケータイでだ。もちろん、ケータイは連射である。
これで完璧だ。これで一生俺は生きていける。
ああ、死ななくてすむんだ。そう思ってくるとどことなく感傷的になる。

そんなときだった、なのは猫の動きに変化が起きた。


「にゃはは、にゃにゃ~」


顔を真っ赤にして、ちょっとふらついているように見える。
その様子はまるで酔っているかのようだった。

その、なのは猫の手にはマタタビがあり。くんかくんか、したようだった。

そういえば、読んだことがある。
『猫の気持ち』に、猫はマタタビを嗅ぐと一種の陶酔状態になると。
また、その刺激は猫にとっては快楽に近いものだと。


「いや……まさかな?」

「にゃひゃ~ごろにゃー」


いやいや、ないだろ。
だって、なのはは猫と言っても、元は人間だぞ! 人間がマタタビで酔うなんて聞いたことがない。

でも、もし、本当に酔っているなら……まずいだろ。
何がまずいって、何がまずいか分からないが、とにかくまずいことになりかねない!

そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、なのは猫は相変わらずふらふらしてる。
そして、


「ねぇ? 竜也君」


ようやく、猫状態から抜け出したのか、人間の言葉を話す。


「どうした、なのは。それよりも、大丈夫か?」

「にゃ? 何がかな、なのはこんな~にも、元気元気だよ~、にゃにゃー」


そういうとにゃーっと言いながら俺に飛びつき、抱きついて来た。
やはり、末期のようである。

しかし、抱きつかれたことによって、なのはの温かみが伝わる、それと同時に柔らかさも……す、すごく気持ちいのだが、
いやいや、このままでは男として問題だろと思い、なのはを振り払おうとした。


「竜也君はなのはの友達だからね。ずっとずっと、友達で一緒だからね」


なのはは酔ったせいか、俺に抱きつきながら寝ていたため、寝言のようだったが、確かに聞こえた。
ずっと友達で一緒だと。

全くこいつは……本当に寂しがりやだな。


「ふん、俺はお前の飼い主なんだから当然だろ」


俺がそういうと、寝ていて聞いてるはずないのに、少し笑ったような気がした。

本当は「二人で思い切り遊べないじゃないか、戯け!」と言おうとしたけど……
なんかいい雰囲気になっちゃったよ。

柄にもないこといったからかな?


とりあえず、なのはは当分起きそうににないので、高町家に運んでやった。

家においといてもいいのだが、俺一人だと心さびしいだろうからね。
もちろん、なのはは猫耳と尻尾をつけたまんまだけどね。

高町家に運んでいくと、美由希さんが家にいたため後を託すことにした。
この姿のなのはを見た瞬間、すっごい明るい顔になり、家族全員を呼びつけて、大写真会が始まった。

店の方はいいのかと聞くと、どうやら母さん一人で今日は切り盛りできそうなので、任せたとのこと。
まぁ母さんとしては、なのはが家族団欒出来るいい機会だと思って引き受けたんだと思う。
肝心のなのはは寝ているんだけどね。

この分だと、今日の母さんの帰りは遅いだろうなと思って店の方にいって聞くと、
今日は帰れないかもしれないと言っていた。

一人になったのは、なのはではなく俺のほうだったとは……かなりショックである。
あの、なのはに負けたとは。

若干悲しみに押しつぶされそうになりながら家に帰ると……


「あれ? 竜也君、おらへんのかなぁ」


家の玄関に不審者を見つけた。
これって青い制服の人を呼ぶべきですかね?

雑記と執筆状況報告会 

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春休みの戯れにニコ生に挑戦することにしましたーっ!

タピです。


ニコ生の話

いやー、なんというか。
前々からいろんな人に誘われたりしていた上、
去年の夏頃勝手に企画した、ホームレスのなんか記念でなんかやるか!
みたいのもあったし、
いい機会かなと思ってやることになりました。

まあSS作家として、ニコ生することはその記念以外ではないのですが、
普通に雑談したりする分にはいいかなと思ってます。

キモ声なのに頑張っちゃうぞ!

という心持ちですよw

そんなわけで、ニコ動にコミュも作っちゃったりもしちゃいました。
ぜひ、見に来てくださいね。
入ってくれると嬉しいです!
ついでにニコ生も見てくれるとうれしささらに倍になります。

【オタク】タピの徒然なる戯れ雑談【雑談】



あ、そこ!
「あーあー、やっちゃったよ、この人」
みたいな顔しない!

自分はシャイボーイなんで傷つきますよ!


執筆状況の話

ありのままにの二話を密かに書き進めてたり、
実行中もまた書き始めてたり、
マテリアルをちまちま書いたり、
ホームレスを改稿して、ifストーリーを書いてたりしていますが。

……しばらく、理想郷に投稿予定はないです。

今は貯めどきといいますか、チャージ期間?
色々と試行錯誤して書いてる真っ最中です。

他にも戯れに、
いろんな人から進められていた、
東方のSSを少し書いてみたり(もちろんオリ主ですが)もしています。

これはどうしようか悩んでます。
たぶん、読みたい人にのみの限定配信か、web拍手。
もしくは、にじふぁんでこっそりと投稿かもしれません。

どちらにしろ、どうしても読みたければ、自分にメールやtwitterでリプしてもらえれば、
何らかの形で渡せるようにはしようと思ってます。

もちろん、一話だけ書いて終了。
明らかに長編の空気を醸し出しているのに、続きは存在していないという……
好評価を得られたら気分が乗って書くかもしれませんけどねw


ところで、
気づいている人もいるかも知れませんが、
右側にweb拍手を設置しました。
そこをポチっと押すと、残念な小説が読めるという厄介な設定になってますので、
やくがほしい人はぜひおしてみてくださいね。
その小説の感想ももちろん承っております。

批判でも嬉しいですよw


>追記
『自分が東方SSを書いてみたらこうなる』
にじふぁんにて期間限定配信(予定)よかったら見に来てね!


以下コメ返

アンケート欄のコメ
>おもしろいです。とても続きがきになります
投票及びコメントありがとうございます。
続きの投稿はだいぶ先になると思いますが、それでもお待ちいただけるとありがたいです。
なにぶん、シャナは文章が硬くて、難産なんですよ。
納得のいく話が書けしだい投稿させていただきます。

灼眼のシャナ二次創作SS(タイトル未定 オリ主) 第三話 

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「いつまでそうやって戦いから逃げ続けるの?」

「いつまでも逃げ続けられるものなら逃げ続けるさ」


 ただし逃げているものは、正確には戦いからではなく死からであり、本質的に戦いとは人の死を大量に生み出すものなので結果的に避けているに他ならない。

 人の死なない戦いなら率先して戦う……なんてことは天地がひっくり返ったとしてもありえないが。ただ、貴重な人生の経験だというなら一度や二度は味わってみるのも悪くないかもしれない、と思うところはある。

 現代に生きていたときはそんな争いなどは無縁だったが、過去に来て以来争いはとても身近に感じてきた。実際にフレイムヘイズになった今だって、今まで以上に争いに近い場所に身を置いている。だからと言って慣れた、なんてことは無く。やはり現代っ子なんだという事を痛感する。


「思ってないけどさ。死にたくないじゃない?」

「うーん、私もできる限りこの世界を堪能したいというのはあるんだけど。別にモウカが死んでも新しい契約者を見つければいいだけ出し」


 ウェルにとって人とは使い捨てみたいのようだ。ペットが死んだら新しいペットを買って飼うみたいな感覚なのだろうか。

 そういう事を言われると、こちらとしては不快に思う以前に恐怖や畏怖の感情が出てくる。今の俺の状態で、ウェルにポイッと捨てられたらなす術もなく殺されてしまうだろう。

 人と彼ら``紅世の徒``との存在の大きさと、規模の大きさの差を感じる。


「でも、残念ながら今はそうは思わないんだよね。変わった人間と契約できたし」

「変わってる?」

「とっても。他のフレイムヘイズと会えばすぐに分かるよ。会う前に殺されなければの話だけどね」


 フレイムヘイズの生存率は特別低いわけじゃない。それは己が内に巨大な``紅世の王``を持ってるからであり、それは並大抵の徒程度では存在の力自体では到底及ばないからだ。

 俺の力も例に漏れずそうらしい。

 問題はその力をしっかり使いこなせるか否かであり、それをこなせるものは優に千をも越える月日を生きる。長生きすればするほど生存率は上がる。使いこなせないものはあっという間に消えて無くなる。

 存在が無くなる。

 嫌だ。ある意味死より怖い。存在が無くなるということは、この世界に生きた証が無くなること。

 普通の死を求める俺にとってそれは……普通では無い死を迎えるのと同義だ。


「それなら長生きしようよ。私がしっかり補佐してあげるよ。そして、生きるのに疲れたときに死のう」

「正確には死ぬのは俺だけだよね?」

「わかんないよ? 私が一緒に死んで上げるかもよ?」

「またまた冗談を。恋人じゃないんだから」

「もしかしたら恋心を抱くかもよ?」


 それこそ冗談を、という話だ。今こうしてウェルと話している間も、彼女は楽しそうに笑いながらしゃべるだけ。そこに真面目さや誠実さは全く感じられず、ただ会話を楽しんでいるだけだった。

 会話を楽しむ……という点に関しては俺も一緒だったりもする。

 過去に遡って以来。奴隷のような待遇に近いような肉体労働を強いられていたので、こうやってしゃべるのは楽しい。とても久々の経験だ。

 もっとも、その奴隷のような肉体労働さえも、貴重な体験だったのかな? と今では思っている。それを強いていた人たちはすでに亡き人なのだけれども。


「そういえば、俺を喰おうとしてた徒はどうなったのかな?」

「知らない。別に向こうでの知り合いというわけでもなかったし、勝手に消えればいいんじゃない? どっちにしろあんなに人が消えたら他のフレイムヘイズが黙ってないから大丈夫よ」


 なんともまあ弱肉強食の世界というべきか。弱きものは消え、強気ものは生き残る。しかも、その単位は桁外れであり、強ければ未来永劫──なんてのも夢じゃないのだろうか。

 「長生きなんてするものじゃない」そんな言葉を聞いた事はあるが、ふむ……なら実際に俺が経験してみて判断してみたいものだ。


「そんなことより、ほら練習練習!」

「練習のどこが楽しいのだか……」


 文句を言いつつも、自らの存在の力を自在に操る鍛錬を始める。何はともわれ、生き残り、死なない為にはまずは己を第一に鍛え上げるしかなかった。

 存在の力を自在に操る事ができれば、身体の強化はおろかありとあらゆる自在法を使えるようになる。現在使えるのは、すでに実践で実証済みの『嵐の夜』と『色沈み』の二つのみ。

 両方とも攻撃系の自在法ではなく、まさに逃避用の自在法だった。これはウェルの特性のおかげで可能となる自在法。どうやら、俺とウェルの相性は絶妙らしい。

 俺が死から逃げる手段になるという意味で。


「やっぱり変わってる」

「何が?」

「フレイムヘイズは徒から逃げるための自在法を、わざわざ編んだりしないから」

「やっぱり復讐のため?」

「他にもあると思うけどね。私には無いけど、一部の``紅世の王``は同胞の暴走を止めるための使命とやらをもってフレイムヘイズになるものもいるのよ。つまり……」

「敵を倒すことを前提としている?」

「そういうこと。その使命とやらに燃えてるのが……有名なのであの堅物だけど。あいつの事語ってもしょうがないかな。こっちにきて幾らかは丸くなってれば良いけど」

「ふーん、ようするにウェルは不真面目ってことでいいのかな?」

「どうしたらそういう見解になるのかなぁ? 別にいいけどさ」


 そのセリフは暗に認めたという事になるのでは無いだろうか。

 ウェルと他愛のない話をしながらも、存在の力を練る。まだまだ完全に扱い切れはしないけど、日々その成果は出ているように思える。それも全て、邪魔者がいないからだ。

 三ヶ月ほど前まで追いかけられたいた徒の姿はもう無く、安心して海のそこで練習が出来る。


「この間まで追いかけてきたあの徒はなんだったんだろう……」

「……口に出すのも嫌な奴、ということよ」

「意味が分からない」


 自在法『色沈み』は、自らの炎の色である海色と一緒の色のところに沈む事ができる。つまるところ、海の中に沈み、身を潜める事ができる。海の中では地上と同じように身動きが出来る便利な自在法なのだが、身を潜めるといっても決して存在の力の発言を阻止できるわけでは無い。

 よって海の中で自在法を使えば気付く輩はいる。だが、わざわざこんな所まで討ちに来るような奇特な奴はそうそういないので、比較的安心して鍛錬できるというものだ。

 安全第一。我が身が一番。保険は大切。

 二重三重の守りを固めて身を固める事に集中する。

 安全な海の中での鍛錬。

 とは言うものの、ずっと海の中で鍛錬というわけにも行かないのが現実である。フレイムヘイズである俺が海の中で行動できるという事は、当然ながら徒だって出来る可能性があるのだ。

 フレイムヘイズに安住の地は無い。といえば嘘になる。別段、徒だってフレイムヘイズと戦いたいわけではなく、自身の欲望を満たす為に人を喰らう。ただ、それを妨害しようとうするフレイムヘイズがいるから、あえなく向かい討つ。

 中には、その同胞殺しを逆に殺してやろう何て考えるようだが、そんな奴は少数に過ぎないらしい。

 人と同じ。人の数だけ考えがあるように徒の数だけ考えがある。たくさんの考えがあれば対立を生み争いが起きる。人の戦争と同じ。


「姿形は人とは違うけれど、私たちと貴方たちは非常に似通った存在なのよ」
「中には契約した人と恋仲になってしまった徒だっているし、普通の人間と徒で恋に落ちたのもいる」
「徒と徒同士ってのも、普通にありえるしね」


 本当に近い存在。ただ規模が違うだけ、この世の存在の仕方が違うだけでほとんど同じような存在。

 なら、逆転の発想もあるのでは無いか。


「つまり、その徒と人間から成り立つフレイムヘイズもまた同じような存在だと?」

「全くもってその通り」

「なら、フレイムヘイズの俺が普通に生きるのもおかしくないのか」

「理屈はそうだけど……色々と壁はあるよ」


 それはそれで、とある種のやる気が溢れてくる俺はやはり変わり者なのだろうか。





◆   ◆   ◆





 ここ数年。これといって徒との大規模の戦闘は無いが、いくつかの衝突は経験した。だが、どの戦闘でも基本的に逃げに徹する事で大した怪我も無く、無事に生にしがみ付く事ができている。

 逃げているものの活動場所は以前と変わらず、ヨーロッパ内。もっと詳しく言うならば神聖ローマ帝国の中でる。

 その戦った徒の内、いくつかは巨大な力を持つ王だったようだが、その王相手でも逃げ切ることが出来るということは、自在法『嵐の夜』は逃走用としてはかなりの精度を持つのではないか。

 だが、逃げることが出来た一番の理由は徒が『逃げるフレイムヘイズ』というのを知らなかったことからだろう。

 未経験。未体験。前例の無い行動を直前にして、最大限で最高の対応を出来るものはそうそういない。

 フレイムヘイズになって数十年。それでもフレイムヘイズとしては赤子同然の俺が、この世界を平然と闊歩しているような王を相手に普通は対抗できるはずも無い。まして俺が稀代の自在師ということでもなく、天才的な武を持つ一騎当千でもない。そういった理由(条件)があったからこそ、俺は無事に逃げ切ることが出来たということ。ただそれだけに過ぎないのだ。


「結局のところ、自分の力がこの世界でどの程度のものなのかは分からない」

「それこそ徒を相手に戦えば嫌でも分かるよ?」


 確かにその通りだが……戦ったら負ける可能性もあるわけで、死ぬ可能性もあるわけで、やはり無理に、無茶に戦う必要は無い。

 さすがに自身の安全が揺らぐような事があれば、戦わざるを得ないかもしれないが。あくまで自衛。謙虚に堅守を貫くべきだ。

 やはり日本人は謙虚につつましく保守的に考えるべきだ。

 まぁ本当に戦いからは身を遠ざけ、ただ長生きしたいだけなら表で活動することなく隠居生活を楽しめばいいだけの話。しかし、そんなの楽しいと言えるか? そんなヒソヒソ隠れて怯えるのが普通といえるか?

 つまりそういう事。心の奥底ではそこはかとなく平和を望んでいるものの、多少のスリル感を味わったり色々な経験をして退屈ではない人生を送りたいのだ。


「じゃあさ、徒と戦うのに別の目的をつけない?」

「というと?」

「徒が作る``宝具``という便利な道具があるのは教えたよね」

「正確には``紅世の徒``と人間が共に望んだときに出来る物体、だっけ?」

「大体そんな感じ。``宝具``とはまさに神秘の塊。この世界に数多くの``宝具``があるけれど、その術とを知るものはいないまた、その全てを活用できるものもいない」

「……それで」

「その貴重な物を集めるのはどう? 私個人としてはとても興味があるのだけれど」


 神秘な道具、この世界に数多にあるのだからその中には俺にとってもありがたい力を持つものも存在しているかもしれない。そう言われれば、確かに宝具を集める為に徒と戦うのは理に適っているように見えるが、その実どうでもない。

 これは俺と同じように宝具狙う物もいるという事を示しており、俺が仮に徒から宝具を手に入れたとしても、逆に狙われる可能性もある。

 新たな戦いの火種となりかねいないもの。


「それこそ逆のことも考えるべきじゃないかな。その戦いの火種を手に入れる(奪う)ことによって、新たな火種を消すことだってできるかもしれない」


 火種は新たな火種を生むだけでなく、より大きな火種を生む前に消せる可能性も秘めている。そうウェルは語ったのだ。

 正論ではある。

 現状では、今のような情勢なら俺はいつまでも逃げ続けることが出来る可能性は高い。その自信も少しずつ出てきている。だが、これから先に大戦が起きてしまったのなら、そうはいかなくなるのは明白。

 もし大戦にフレイムヘイズが負ける事になれば、生きづらくなるだろう。それだけならいい。しかし、予期せぬ自体、この世界そのもの消滅とかに繋がる可能性だってあるのだ。

 徒の暴挙によってそれが起こり得る可能性があるからこそ、フレイムヘイズは同胞を殺している。

 仮にも世界の消滅されたら、生きるどころじゃなくなる。そうなると、自然と大戦にはフレイムヘイズとしては参加せざるを得なくなり、よって死の影が付き纏うようになる。

 俺としてはそれも望んでいない事。

 となれば……


「別に今考える必要も無いよね?」

「そうね。時間はたくさんあるのだし、ゆっくりと考えたらいいかも」


 保留、という結論を出す。如何にも日本人らしい答えを導き出す。





 だがしかし……時代がそうはさせてくれなかったのである。




被災後初日記 

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まずは東北・関東大震災で被災された皆さまに謹んでお見舞い申し上げます。
まだまだ余震も続き余談のならない状況下ではありますが、一日でも早い復興を心より願っております。

タピです。

ああ、この日記を書くまでに随分な時間がたってしまいました。
何かを『書く』ということまでに、どれほどの決意と覚悟をしてきたかということを改めて痛感し。
今まで平常通りにできていた執筆も、かの震災で思った以上の精神的余裕を無くしてたことを実感しました。
事実、現在もどうしようもなく不調と言える状況と言えます。

個人の経験の話ではありますが、
揺れている当時はゲマズで買い物している時だったんですよ。
ちょうど予約してたなのはの特装版を買ってる時でしてね。
その時の揺れで震度五弱。
平気。
揺れてる状態の時は極めて平常心だったんですけどね。
それから時間が経つにつれ、段々と精神を削られていきましたよ。

自分も一応帰宅難民でして、
数時間かけて歩いて友達を見送りながら帰りました。
次の日は筋肉痛他、諸々の理由で家で引きこもってました。

震度五弱……
その程度の地震で、これほど追い詰められてしまうのだから、
震度7や原発という未曽有の危機に陥ってる被災地では並々ならぬ状況であろうことが予想できます。

自分は阪神淡路大震災を知りません。
19歳という若輩者なので、その被害の尋常さというのは、どうも他人事のように感じしまいがちです。
ですが、今回のはどう考えても他人事、とまでは感じられません。
そりゃ、現地に比べれば知ったふうな口をということになるのでしょうが、それだって過去の震災に比べれば予想はできます。


『平常心』


これがどれほど恵まれた環境でないと生まれないかが身に染みて分かりました。

でも、未だに終りではなくこれからも、なんですよね。

絶賛欝中ですが、まあその中でも結構無理に執筆し投稿したおかげで、
皆様のコメントのおかげでまだ書いていくことができそうです。
本当に読者様様です。
作家は読者がいなければ作家ではなく、作品は読者がいなければただの自己満。

本当に救われますね。

同じように自分の書いた作品で救われる人がいてくれると嬉しいのですが、
それは高望みというものでしょうか?


今回の震災で沢山の方が応援の絵を書いたりメッセージを送ったりして、
自分に出来る限りの応援をしてきています。

pixivやtwitterなんかでは、震災後をリアルタイムで追ってたのですが、
もう何度泣いたことか……

心温まる絵や言葉の数々。
人の強さを感じましたね。

言葉一つ一つの強さも感じました。

そんな中自分ができるのはこうやってだらだらだと言葉を綴ることや、
有力な情報や、手助けになる情報をtwitterで提供したり、募金ぐらしかできません。

献血は……血が足りないということで断られてしまいました;
すみません、年中貧血というか、先天的な貧血の病気を持ってるんで力になれなかったです。

今回の地震で多くの人が変わっていくことでしょう。
それは震災にあった人だけでなく、この震災を見た人、感じた人、すべての人が。
是非とも


『良き方向』


に発展できるように願いたいです。

ちょっと無駄話が過ぎましたね。
そんなわけで、自分は通常状態とは言えませんが、なんとか平常通りにいきたいと思ってます。
作品も多分、引っかかりつつ、混乱しつつで止まったりして安定しないかもしれませんが、
その時は一声かけてでもらって『だいじょうぶ?』とでも言ってもらえるとありがたいです。

あなたの一言で救われる人だってたくさんいるはずですから……






コメレスです。
心配をしてくれた方々に心よりお礼と謝罪を申し上げます。
自身はこのように何とかなっておりますゆえ、ご安心ください。

>鮟肝様
中々、言葉にして文字にして言うのって難しいですよね。
色々と伝えたいことや慰めたいことなどあるかもしれないですけど、それを上手く表現するにはこう言葉が生まれなくって……。
舞氏の安否は非常に気になってたので、一安心しましたね。


>KATSU様
中々そちらのブログには顔出し出来ずに申し訳ございません。
お久しぶりです。
思ったよりも被害(精神的なものと落下物的な意味)は大きかったですが、無事でした。
まあ、生きてる分には文句は言えませんよね。


>dust様
ご迷惑をおかけしました。
健康は崩れがちで安定しませんが、概ね大丈夫です。
一日でも早く安寧がほしいですね。

理想郷に投稿中作品について 

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理想郷の撤退を決めました。

はい、本当に身勝手ながら三日のうちに撤退をします。

事情は本当に色々とあったのですが、
主な理由はモチベが上がらず、また作品を投稿しても満足のいく作品を、
書けている自信がないためです。

全部、作者の実力不足が招いた結果です。
罵ってもらって構いません。
非難中傷もどんとこいです。

でも、今まで数多くの作品にコメ、または読んでくれた読者様には非常に申し訳ないことだと、
深くお詫びいたします。

「こんなのは一時的な気の迷いだ」「酒を飲んでるんじゃないか?」

なんて思ってまたまた~なんてことはないのです。
だいぶ前から真剣に悩んでいましたが、ようやっと決心がつきました。

今まで数多くの声援をありがとうございました。
作家としてはまだ活動していく予定ですが、おそらくもう理想郷に作品を投稿することはないとおもます。
度々誰かしらの作品に感想を書いて出没などはするかもしれませんが、
作品の投稿はないです。

しばらくはオリジナルを書いて、なろうを中心に活動すると思います。
まあそれの投稿すらも目処は立っていませんが。

またいつか、みなさまに作品を読んでもらえる日が来るといいなと思ってます。

勝手に決めたことをもう一度お詫びします。
申し訳ございませんでした。



該当作品
・リリカルスポットライト
・リリカル実行中
・不朽のモウカ

完結作品については熟考中

不朽のモウカ─第三話─ 

未分類

とある事情に伴い体裁します


「いつまでそうやって戦いから逃げ続けるの?」

「いつまでも逃げ続けられるものなら逃げ続けるさ」


 ただし逃げているものは、正確には戦いからではなく死からであり、本質的に戦いとは人の死を大量に生み出すものなので結果的に避けているに他ならない。

 人の死なない戦いなら率先して戦う……なんてことは天地がひっくり返ったとしてもありえないが。ただ、貴重な人生の経験だというなら一度や二度は味わってみるのも悪くないかもしれない、と思うところはある。

 現代に生きていたときはそんな争いなどは無縁だったが、過去に来て以来争いはとても身近に感じてきた。実際にフレイムヘイズになった今だって、今まで以上に争いに近い場所に身を置いている。だからと言って慣れた、なんてことは無く。やはり現代っ子なんだという事を痛感する。


「思ってないけどさ。死にたくないじゃない?」

「うーん、私もできる限りこの世界を堪能したいというのはあるんだけど。別にモウカが死んでも新しい契約者を見つければいいだけ出し」


 ウェルにとって人とは使い捨てみたいのようだ。ペットが死んだら新しいペットを買って飼うみたいな感覚なのだろうか。

 そういう事を言われると、こちらとしては不快に思う以前に恐怖や畏怖の感情が出てくる。今の俺の状態で、ウェルにポイッと捨てられたらなす術もなく殺されてしまうだろう。

 人と彼ら``紅世の徒``との存在の大きさと、規模の大きさの差を感じる。


「でも、残念ながら今はそうは思わないんだよね。変わった人間と契約できたし」

「変わってる?」

「とっても。他のフレイムヘイズと会えばすぐに分かるよ。会う前に殺されなければの話だけどね」


 フレイムヘイズの生存率は特別低いわけじゃない。それは己が内に巨大な``紅世の王``を持ってるからであり、それは並大抵の徒程度では存在の力自体では到底及ばないからだ。

 俺の力も例に漏れずそうらしい。

 問題はその力をしっかり使いこなせるか否かであり、それをこなせるものは優に千をも越える月日を生きる。長生きすればするほど生存率は上がる。使いこなせないものはあっという間に消えて無くなる。

 存在が無くなる。

 嫌だ。ある意味死より怖い。存在が無くなるということは、この世界に生きた証が無くなること。

 普通の死を求める俺にとってそれは……普通では無い死を迎えるのと同義だ。


「それなら長生きしようよ。私がしっかり補佐してあげるよ。そして、生きるのに疲れたときに死のう」

「正確には死ぬのは俺だけだよね?」

「わかんないよ? 私が一緒に死んで上げるかもよ?」

「またまた冗談を。恋人じゃないんだから」

「もしかしたら恋心を抱くかもよ?」


 それこそ冗談を、という話だ。今こうしてウェルと話している間も、彼女は楽しそうに笑いながらしゃべるだけ。そこに真面目さや誠実さは全く感じられず、ただ会話を楽しんでいるだけだった。

 会話を楽しむ……という点に関しては俺も一緒だったりもする。

 過去に遡って以来。奴隷のような待遇に近いような肉体労働を強いられていたので、こうやってしゃべるのは楽しい。とても久々の経験だ。

 もっとも、その奴隷のような肉体労働さえも、貴重な体験だったのかな? と今では思っている。それを強いていた人たちはすでに亡き人なのだけれども。


「そういえば、俺を喰おうとしてた徒はどうなったのかな?」

「知らない。別に向こうでの知り合いというわけでもなかったし、勝手に消えればいいんじゃない? どっちにしろあんなに人が消えたら他のフレイムヘイズが黙ってないから大丈夫よ」


 なんともまあ弱肉強食の世界というべきか。弱きものは消え、強気ものは生き残る。しかも、その単位は桁外れであり、強ければ未来永劫──なんてのも夢じゃないのだろうか。

 「長生きなんてするものじゃない」そんな言葉を聞いた事はあるが、ふむ……なら実際に俺が経験してみて判断してみたいものだ。


「そんなことより、ほら練習練習!」

「練習のどこが楽しいのだか……」


 文句を言いつつも、自らの存在の力を自在に操る鍛錬を始める。何はともわれ、生き残り、死なない為にはまずは己を第一に鍛え上げるしかなかった。

 存在の力を自在に操る事ができれば、身体の強化はおろかありとあらゆる自在法を使えるようになる。現在使えるのは、すでに実践で実証済みの『嵐の夜』と『色沈み』の二つのみ。

 両方とも攻撃系の自在法ではなく、まさに逃避用の自在法だった。これはウェルの特性のおかげで可能となる自在法。どうやら、俺とウェルの相性は絶妙らしい。

 俺が死から逃げる手段になるという意味で。


「やっぱり変わってる」

「何が?」

「フレイムヘイズは徒から逃げるための自在法を、わざわざ編んだりしないから」

「やっぱり復讐のため?」

「他にもあると思うけどね。私には無いけど、一部の``紅世の王``は同胞の暴走を止めるための使命とやらをもってフレイムヘイズになるものもいるのよ。つまり……」

「敵を倒すことを前提としている?」

「そういうこと。その使命とやらに燃えてるのが……有名なのであの堅物だけど。あいつの事語ってもしょうがないかな。こっちにきて幾らかは丸くなってれば良いけど」

「ふーん、ようするにウェルは不真面目ってことでいいのかな?」

「どうしたらそういう見解になるのかなぁ? 別にいいけどさ」


 そのセリフは暗に認めたという事になるのでは無いだろうか。

 ウェルと他愛のない話をしながらも、存在の力を練る。まだまだ完全に扱い切れはしないけど、日々その成果は出ているように思える。それも全て、邪魔者がいないからだ。

 三ヶ月ほど前まで追いかけられたいた徒の姿はもう無く、安心して海のそこで練習が出来る。


「この間まで追いかけてきたあの徒はなんだったんだろう……」

「……口に出すのも嫌な奴、ということよ」

「意味が分からない」


 自在法『色沈み』は、自らの炎の色である海色と一緒の色のところに沈む事ができる。つまるところ、海の中に沈み、身を潜める事ができる。海の中では地上と同じように身動きが出来る便利な自在法なのだが、身を潜めるといっても決して存在の力の発言を阻止できるわけでは無い。

 よって海の中で自在法を使えば気付く輩はいる。だが、わざわざこんな所まで討ちに来るような奇特な奴はそうそういないので、比較的安心して鍛錬できるというものだ。

 安全第一。我が身が一番。保険は大切。

 二重三重の守りを固めて身を固める事に集中する。

 安全な海の中での鍛錬。

 とは言うものの、ずっと海の中で鍛錬というわけにも行かないのが現実である。フレイムヘイズである俺が海の中で行動できるという事は、当然ながら徒だって出来る可能性があるのだ。

 フレイムヘイズに安住の地は無い。といえば嘘になる。別段、徒だってフレイムヘイズと戦いたいわけではなく、自身の欲望を満たす為に人を喰らう。ただ、それを妨害しようとうするフレイムヘイズがいるから、あえなく向かい討つ。

 中には、その同胞殺しを逆に殺してやろう何て考えるようだが、そんな奴は少数に過ぎないらしい。

 人と同じ。人の数だけ考えがあるように徒の数だけ考えがある。たくさんの考えがあれば対立を生み争いが起きる。人の戦争と同じ。


「姿形は人とは違うけれど、私たちと貴方たちは非常に似通った存在なのよ」
「中には契約した人と恋仲になってしまった徒だっているし、普通の人間と徒で恋に落ちたのもいる」
「徒と徒同士ってのも、普通にありえるしね」


 本当に近い存在。ただ規模が違うだけ、この世の存在の仕方が違うだけでほとんど同じような存在。

 なら、逆転の発想もあるのでは無いか。


「つまり、その徒と人間から成り立つフレイムヘイズもまた同じような存在だと?」

「全くもってその通り」

「なら、フレイムヘイズの俺が普通に生きるのもおかしくないのか」

「理屈はそうだけど……色々と壁はあるよ」


 それはそれで、とある種のやる気が溢れてくる俺はやはり変わり者なのだろうか。





◆   ◆   ◆





 ここ数年。これといって徒との大規模の戦闘は無いが、いくつかの衝突は経験した。だが、どの戦闘でも基本的に逃げに徹する事で大した怪我も無く、無事に生にしがみ付く事ができている。

 逃げているものの活動場所は以前と変わらず、ヨーロッパ内。もっと詳しく言うならば神聖ローマ帝国の中でる。

 その戦った徒の内、いくつかは巨大な力を持つ王だったようだが、その王相手でも逃げ切ることが出来るということは、自在法『嵐の夜』は逃走用としてはかなりの精度を持つのではないか。

 だが、逃げることが出来た一番の理由は徒が『逃げるフレイムヘイズ』というのを知らなかったことからだろう。

 未経験。未体験。前例の無い行動を直前にして、最大限で最高の対応を出来るものはそうそういない。

 フレイムヘイズになって数十年。それでもフレイムヘイズとしては赤子同然の俺が、この世界を平然と闊歩しているような王を相手に普通は対抗できるはずも無い。まして俺が稀代の自在師ということでもなく、天才的な武を持つ一騎当千でもない。そういった理由(条件)があったからこそ、俺は無事に逃げ切ることが出来たということ。ただそれだけに過ぎないのだ。


「結局のところ、自分の力がこの世界でどの程度のものなのかは分からない」

「それこそ徒を相手に戦えば嫌でも分かるよ?」


 確かにその通りだが……戦ったら負ける可能性もあるわけで、死ぬ可能性もあるわけで、やはり無理に、無茶に戦う必要は無い。

 さすがに自身の安全が揺らぐような事があれば、戦わざるを得ないかもしれないが。あくまで自衛。謙虚に堅守を貫くべきだ。

 やはり日本人は謙虚につつましく保守的に考えるべきだ。

 まぁ本当に戦いからは身を遠ざけ、ただ長生きしたいだけなら表で活動することなく隠居生活を楽しめばいいだけの話。しかし、そんなの楽しいと言えるか? そんなヒソヒソ隠れて怯えるのが普通といえるか?

 つまりそういう事。心の奥底ではそこはとなく平和を望んでいるものの、多少のスリル感を味わったり色々な経験をして退屈ではない人生を送りたいのだ。


「じゃあさ、徒と戦うのに別の目的をつけない?」

「というと?」

「徒が作る``宝具``という便利な道具があるのは教えたよね」

「正確には``紅世の徒``と人間が共に望んだときに出来る物体、だっけ?」

「大体そんな感じ。``宝具``とはまさに神秘の塊。この世界に数多くの``宝具``があるけれど、その術とを知るものはいないまた、その全てを活用できるものもいない」

「……それで」

「その貴重な物を集めるのはどう? 私個人としてはとても興味があるのだけれど」


 神秘な道具、この世界に数多にあるのだからその中には俺にとってもありがたい力を持つものも存在しているかもしれない。そう言われれば、確かに宝具を集める為に徒と戦うのは理に適っているように見えるが、その実どうでもない。

 これは俺と同じように宝具狙う物もいるという事を示しており、俺が仮に徒から宝具を手に入れたとしても、逆に狙われる可能性もある。

 新たな戦いの火種となりかねいないもの。


「それこそ逆のことも考えるべきじゃないかな。その戦いの火種を手に入れる(奪う)ことによって、新たな火種を消すことだってできるかもしれない」


 火種は新たな火種を生むだけでなく、より大きな火種を生む前に消せる可能性も秘めている。そうウェルは語ったのだ。

 正論ではある。

 現状では、今のような情勢なら俺はいつまでも逃げ続けることが出来る可能性は高い。その自信も少しずつ出てきている。だが、これから先に大戦が起きてしまったのなら、そうはいかなくなるのは明白。

 もし大戦にフレイムヘイズが負ける事になれば、生きづらくなるだろう。それだけならいい。しかし、予期せぬ自体、この世界そのもの消滅とかに繋がる可能性だってあるのだ。

 徒の暴挙によってそれが起こり得る可能性があるからこそ、フレイムヘイズは同胞を殺している。

 仮にも世界の消滅されたら、生きるどころじゃなくなる。そうなると、自然と大戦にはフレイムヘイズとしては参加せざるを得なくなり、よって死の影が付き纏うようになる。

 俺としてはそれも望んでいない事。

 となれば……


「別に今考える必要も無いよね?」

「そうね。時間はたくさんあるのだし、ゆっくりと考えたらいいかも」


 保留、という結論を出す。如何にも日本人らしい答えを導き出す。





 だがしかし……時代がそうはさせてくれなかったのである。

不朽のモウカ─第四話─ 

未分類

誤字多し。この話に限った話じゃありませんが、すみません。


 いよいよもって、きな臭かった雰囲気を神聖ローマ帝国で感じていたのだが、やはりと納得するべきか、馬鹿なと驚くべきか、どちらにせよ静かに傍観あるいは逃避なんて出来る状態ではなかった。

 グロッケン山。意外にも俺たちの活動地点近くにそびえる``ともらいの鐘(トーテン・グロッケ)``の総本山がそこにはあった。

 オストローデという町がある。こちらは先の山よりもさらに俺たちの活動拠点に近い町。なにより、時々訪れる事すらもある町だった。何故か、その町での徒との遭遇率は高く幾度となく戦う羽目にはなった。

 こちらとしては戦う意思は無く、徒と出会うもしくは気配を察したときには撤退を繰り返していたが、これまた何故か追い掛け回された。敵は無駄にこちらへの敵対心が高かった。それ以上にしつこいのが嫌だった。ただ、徒の力も大した無かった為に、逃げるのは容易でありその度に嵐を起こしては逃亡した。

 それでもこの町には幾度と無く足を運ぶ。別段用事がある訳では無いが、徒(特に手頃な力の徒)との戦いはこちらとしては貴重な経験であったが為である。

 逃げこそが自身の性分と言えども、自身の力も分からずに逃げること、逃げ切ることをしようとうするなど馬鹿のする行為。そんなことをすれば自分より弱い相手と当たり続けている場合はいいが、強い相手と当ったときの対処法がなくなっていまう。

 力を把握するという意味では、巨大な敵と出会った経験の無いこの町は非常に使い勝手のいい鍛錬所だった。その度に嵐がやってきて被害をもたらしてしまうのは申し訳ないが、こちらも生きるためだ。許して欲しい。思うだけで、その事を口に出す事は無いだろうけど。

 山篭りよろしく、海篭り川篭りをしている俺のここ数十年の陸に上がる理由の一つであった。

 しかし、いやあえてそのおかげとでも言うべきか。通いなれたオストローデに違和感を感じることが出来た。

 何かがおかしい。何かがずれている。何かが……何かがこの町に起こっている。

 最初、自分が引き起こす嵐が原因で町を去っていく者が出てしまったのかと思った。実際にそういう人もいた様だ(これは実際に町の人に聞いた)。が、どう考えてもそれだけではない。

 人の存在がまるで過疎っているような感覚はある。存在の力が希薄とでも言うべきなのだろうか。そんな違和感を感じているのだが明確な答えは出てこない。

 さて、どうしたものか……。

 どうしようもないのではないだろうか。出来る事など限られている以前に思いつきもしない。考えられる可能性すらも分からない。疑問はあるのに明確ではなく、あるはずの答えは全くの検討不能。手も足もでないとはこの事。


「何かが起きる兆しでは間違いないのだろうけど……」

「それを起こそうとしているのは間違いなく``紅世の王``なのも確かだよ。規模がこの都市とも言える町全体に及ぼすんだから。それ相応の力の無知主」

「となるとやっぱり怪しいのは……」


 ``ともらいの鐘(トーテン・グロッケ)``という結論に至るだろう。どんな事件が起きるかは分からないが容疑者となりえる可能性を秘めている力を持つ王が巣くう軍団。

 この町で戦った事のある数ある徒はこの軍団所属でもあった。これはただの偶然とは言えないだろう。まして近くにはその軍団の総本山がある。

 たまたま通りかかっただけ、という可能性も否めないが、どうもそれだと腑に落ちない。この町で出会った徒の``全て``が軍団所属だったなんてことは偶然とは言えない。そして、それ以上に王との接触が無かったことも。

 こうは考えられないだろうか。何かしらをここで成そうとする巨大な王がいる。そしてそれを助力する徒がいて、その徒が駆けつけている時に俺と遭ってしまった。秘密を知られる可能性があった。またあの軍団はフレイムヘイズを消す事を主としているのでしつこく追いかけ処分しようとしたが逃げられた。

 本来ならもっと上の力を持つ王が出てくる場面だが、それをやってしまうとそれこそ怪しまれる。フレイムヘイズに計画をばらさない為にもここに巨大な王は自らでは出てこなかった。よって出会うのは徒のみ、それも軍団の。


「面白いけど、もしそれが本当なら洒落にならない事を企んでるって事になるよ?」

「しかも、少なくとも近場で引き起こされるから俺は巻き込まれると。冗談じゃない話だ」

「仮に``ともらいの鐘(トーテン・グロッケ)``が敵だとしたら……うわぁ、``棺の織手``とか本当に洒落にならないよ」

「``ともらいの鐘(トーテン・グロッケ)``については聞いたけど、その``棺の織手``てのはそんなにやばいのか? というか名前的にこっち側っぽい感じだけど……」

「王と人の恋の代表例かな。愛は人をも狂わすって話を聞いたけど、古の王も例外じゃなかったってことよ」


 ウェルの言ってる事はあまり要領得ないが、相当やばいというのはウェルの焦る口ぶりから分かった。何より愛に狂った王ってのは確かに厄介かもしれない。

 愛は人を強くする、とはある種の常識みたいなものだ。熱血漫画ありがちだが。

 一に愛を、二に友情を。心の力はそのまま自身の力へと変わり、``紅世の徒``はそれを顕著に表す。心の力は愛であれ欲望であれ、強く想う力。多くはその心の力とは反したように自身の力が弱いものが多いが、中には元の力が強くて目覚めるものもいる。今回がその例のような王らしい。

 やはり厄介な。


「やっぱり逃げちゃう?」

「……それが最善っぽ──」

『よもや我が『壮挙』を邪魔しようとする輩が現れようとは』






◆  ◆  ◆





 噂をすれば影がさす、何て事を身をもって経験したところだが、その言葉自体いつも間が悪いときに使われるような言葉だ。この場合も例外ではなく、間が悪いなんてレベルではなく最悪といえる状況。

 しかし、向こうからすれば飛んで火にいつ夏の虫なのだろう。まんまと、と言う所か。

 遠話の自在法だろう。いきなり現れた姿の見えない、巨大な存在の力の主であろう人物から声が聞こえてきた。

 重い。

 言葉をこんなに重く感じたのは初めてかもしれない。まさに圧倒的な存在とでも言い表すべきなのか。ただ幸いなのが目の前ではなく、どうやらある一定上の距離があること。そうでなければ遠話の自在法は使わない。


(これって……)

(うわぁ……なんて言ってられないかな)

(噂をすれば何とやらか)

(なにそれ? そんなことよりどうするの? 力の差は──)

(分かってる!)


 これが``棺の織手``今まで遭った王の中では最も強いと思われる王。それほどまでに、これほどまでに距離が開いているのに感じさせる。

 一対一では勝てるわけが無い。

 元より戦いにおいて牽制以外の``攻撃``をしたことが無い俺にとってはかつ手段など無い。どんな``紅世の徒``であっても。だが、そのおかげでこそ今の今まで逃げ切ることが出来た。逃げるための自在法は磨かれてきた。

 ただその一点のみ。それのみに時間を費やしたから。

 だが……


(これは……逃げ切れるのか?)

(相手の首領がわざわざ一人で来る、何て馬鹿なことはないよ。出て来たのはここが何より何らかの計画『壮挙』とやらに重要だからかな。でも、だからこそ)

(今は感じないだけで他にも敵がいる)


 逃げ切れるのか。いや、違う。俺の臨んだ物を手に入れるまでは死ねないんだ。逃げ切るきらないじゃない。別に逃げ切れなくても生きていればいい。となれば、降伏宣言を……

 駄目か。元よりこの軍団は『フレイムヘイズを倒すべく作られた』と言っても過言じゃないんだった。

 ならやはり、逃げるしかない。逃げきる他に無い。

 その為に編んだ自在式がある。その為に経験した戦いがある。その為の自在法を完成してきた。

 俺だからこそ逃げ切れる可能性がある。普通のフレイムヘイズなら……もっと早く危険を察知して逃げたかもしれないな。

 はは、こりゃ一点も一点、鍛錬するところを絞りすぎたかもしれない。出会ったら逃げればいいや、ほどよりスリル感も楽しめるしなんて言ってる場合じゃなかったわけだ。この危機を脱したらもっと他の事も鍛錬しなくちゃいけないかもしれないな。

 戦うという選択肢がない以上逃げるしかない。

 相手の様子を見る。ここからではそこに巨大な力を持つ王がいるという事しか確認が出来ない。ただ、そこからこちらに近づかないのは余裕なのか、なんらかの意味がるのか。もしかしたら、この間にも着々と包囲されているのかもしれない。


「猶予は無い、か」

「逃げるなら早めだね。空もなんだか暗くなってきたし」


 暗い? いや、これはどちらかと言うと黒いじゃないか。


「蝿の大群?」

「ううん、違うよ。よく感じてこれは……」


 その蝿の大群に存在の力のような物を感じる。いや、虫自体も存在の力が存在しているのだから感じるのは当たり前だが、本来フレイムヘイズはそこを感じることはできない(仮に出来てしまったらこの世に存在する有象無象をすべて認知する事になる)。

 よってこの感覚は……なんらかの自在法。

 だが所詮は蝿の群れ。どんな自在法かは知らないが、直接的な攻撃の類でないのは確かだろう。これがもし、蝿ではない黒くてガサガサ動くあの黒い魔物なら恐ろしい精神攻撃だったが、蝿だけなら羽音が鬱陶しいだけだ。耳栓をすればいいだけだ。今は無いから相当鬱陶しいが。

 だが、この程度なら逃げ切れるだろう。

 さらに研ぎ澄まし存在の力の流れを読み取る。うん、確かに極小で無数の虫の存在の力だけ──じゃない……


(気付いた?)

(何とか)

(これは多分``燐子``だと思う)

(こ、こんな数の``燐子``て、ありえるのか?)

(何らかの自在法の一つと考えるべきだね)


 逃げ切れる可能性がまた低下したようだ。しかし、逃げ切らなければならない。

 逃走路はどうるべきか。とりあえず、正面の方にいるであろう巨大な王に出くわさない為にも正面からの逃走は不可能。普通に考えるなら背後への逃走だがあまりにも安直で単純すぎる。

 単純すぎるが故に敵が裏をかこうとしていたのならば逃げられるだろうが、可能性は低い。敵がこちらに話しかけてきた時点で、退路を塞ぐために迂回し先回りされてても不思議では無い。

 ならば……一番意表をつけ、隙を狙える場所がいいだろう。


(上か……)

(あえて難しいところを突破するということかな。悪くないよ。むしろそれがいいかも)


 敵の上空に構える自在法の効果範囲はどれ程のものかは分からない。そのためどれほど遠く逃げればいいかは分からない。それなら、


「全てを巻き込んで逃げるほか無い」

『ふむ……作戦会議は終わったのか?』


 全くもって余裕ぶっている。だが当然だろう。力も上、数も上で、経験も上で負ける要素は無い。だが、俺には巻ける自信がある。

 尻尾を巻いて逃げる自信がある。可能性がある。ああ、しがみつくさ。フレイムヘイズらしくない生にしがみつくさ。


「ウェル!」

「うん、大丈夫!」


 さあ見せてやろう。俺がフレイムヘイズになって以来、ずっと磨きに磨いてきた自在法を。

 俺のこの力は。この自在法は全て……



「理不尽な死から逃げるためなんだからな!」

「自在法『嵐の夜』発動。命一杯の力を振り絞ってこの町の全てを巻き込んで逃げるよ!」


 その時、町に海色の光が満ち、やがて嘗て無いほどの大嵐が訪れた。





◆  ◆  ◆





 その日。歴史上でも前例が無いほどの嵐がオストローデに襲い掛かったのを、フレイムヘイズたちは感知した。同時に、この嵐が自在法であると理解し警戒をした。

 自在法を使った者の色は海の色。今まで見たことのない色から、新たな巨大な王がこちらに来た事を悟った。それは、敵か味方か。しかし、ただ見過ごすにはあまりにも大きすぎるその嵐(力)にフレイムヘイズたちは危機感を感じやがてオストローデに一人、また一人と集まっていく。

 されど、彼らがそこで見たものは嵐の後の残骸だけではなかった。

 異様な数のトーチの存在だった。いよいよもって不信感と警戒は高まる。まして、そこはフレイムヘイズに異様な敵対心を持つ``ともらいの鐘(トーテン・グロッケ)``の総本山のお膝元と言ってもいい場所であった。

 不審は確信へと変わり、危機は焦燥へと変わる。

 やがて数多くのフレイムヘイズが終結し、``ともらいの鐘(トーテン・グロッケ)``はその本章を明らかにする。

 頭領たる``棺の織手``アシズはやがて己が壮挙を語り。




 『大戦』が幕を開ける。

 


  暴挙を止める第一戦、一つの都(都市)を防衛する大きな戦いのが始まった。

不朽のモウカ─第五話─ 

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いい訳じゃないですけど、シャナに出てくるキャラとか組織とか変換が面倒(ボソ

「この子が発生源、ということかしら?」


 燃えるような赤い髪と眼を持つ女が、ボロだらけの衣服を着た地面に横たわる黒髪黒目の少年を見ながら言う。

 彼女がここに来たときにはすでに少年はこの状態であり、``紅世の徒``に囲まれた上で瀕死の状態だった。仮にこの場に誰も現れなかったら。現れたとしても彼女ほどのフレイムヘイズじゃなければ、この少年は命を落としていただろう。


「助けてくれた事は感謝するよ。でも、発生源なんて随分な言い方かな」

「ふふ、ごめんなさい。別に悪気があって言ったわけじゃないの。ただ、彼が、まだ若い彼がこれほどの力を示した事にちょっと驚いただけ」

「ふむ、まだ若いのに大したものだ。よく、あの大群から生きられたものよ」


 彼女は若い芽が出て来た事を内心で少し喜び、ペンダントから発せられた声の主はは素直に賛美した。それは彼女にしては珍しい驚きであり、声の主にしても珍しい事だった。

 そんな内心を知ってかしらずかウェパルはまさかあの堅物に褒められるとはと内心驚きながら、私の契約者もやるじゃない、と見ようによれば自画自賛とも言える評価を下した。


「それだけが……それだけが彼の特権だからね」

「逃げるフレイムヘイズ、てのもなんだか変な感じよね」

「私も同意するけど。だからこそ、私の契約者たるものと言えるのよ」

「確かに、まさかあの``晴嵐の根``が契約する時が来ようとはな。時代も変わったものだ」


 ひどい言われようだとウェパルは思うものの、そう言われても当然かと思い直す。変と言えば自らの契約者も自身も同じ類に入るだろうことは当の昔に分かっていたし、そうじゃなければ契約する事もなかっただろう。

 しかし、それを言うならお前もそうだろうアラストールと心の中だけで悪態をつく。これは言葉にしたってあの堅物には解りっこない。あるいはその契約者ならとは思うけど、わざわざ言うほどの事でもないかと改めなおす。

 おそらくは、この契約者だって分かっているだろうから。この真正の魔人が如何に変わっているかという事を。


「そんなことより、私はモウカを早く助けてあげたいのだけど?」


 ここで強引に話を戻す。このままアラストールをからかうという事も選択肢としてはないわけではないが、そんなことより優先すべき事があった。自らの契約者の安否である。

 敵の第一陣はモウカの嵐により一時的な撤退を与儀なくされ、第二波の攻撃陣は``炎髪灼眼の打ち手``によってほとんど壊滅された。もっともこの追撃の一波の中には、敵の主要な王らがいるわけではなかったので、容易く追い払う事が出来ただけだが。

 何れはさらなる追っ手が来るだろうから、早くこの場から逃げたかった。戦場から逃げることは出来なくとも、一時的な休養の場がモウカには必要だった。


「契約者想いというかなんというか……。今まで見てきた人間と契約した``紅世の徒``の中でこんなにゆるい系はいたかしら」

「褒め言葉だよね? 喜んで受け取るよ」

「……はぁ」

「こういう奴なのだ。だから我もこやつがまさか契約するなどとは──」

「早くして欲しいかな?」

「分かってるわよ。何より、将来有望なこの子の為にね」


 彼女はそう言うと紅蓮の翼を羽ばたかせ、少年を背負い、嵐の前の静けさを表すような雲一つない青空へと飛んでいった。


「大きな戦が起こるわ」


 ``炎髪灼眼の打ち手``はどこか燃える様な使命感と闘争心を心に抱きながらこれからの戦いを予期し、

「うむ。それも近年では稀に見るほどの大きな戦いがな。被害も少なくないだろう」


 その契約したる``天壌業火``アラストールはこの戦いで消えていくであろう同胞や中間たちを想いながらそれを肯定し、


「モウカもこんな時期じゃなければ、戦いから逃げ果せたのかもしれなかったのに」


 ``青嵐の根``は己が契約者の果たせぬ思い(戦いから逃げる)と身体の傷を心配しながら気だるそうに答えた。

 その合間にも徐々にフレイムヘイズは終結し、やがて``とむらいの鐘(トーテン・グロッケ)``の野望を阻止するべく兵団を結成し、大戦の火蓋は開かれた。





◆  ◆  ◆





 自分の体質を幸か不幸かで判断する時。自身の今までの人生を振り返るのは言わずもがなのことだが、なら俺の人生はどちらかといえば……なるほど、判断つかない。

 そもそも何をして幸せとなし、何をして不幸と見るのかが定まっていなければ判断のしようがないものではある。しかし、俺の判断つかないとはそういう意味ではない。単に幸せもあれば不幸もあり、特上な不幸せも味わった事があれば、これ以上ないほどの愛情を注がれ幸せに満ちたことがある。

 事故に遭ったのを不幸とするならば、事故後の父母の愛情は確かに幸せを感じ。屋上から落とされた事を不幸と言うならば、その後に再び人生を歩めた事を幸せなことと判断できる。三度命が失われたのに、それでも生き残れたのであればやはりそれは幸運だったのかもしれない。

 因果応報とでも言うべきなのか、それともある種のギブ&テイクとでも言うべきなのかは分からないが、人生山あり谷ありなのは言うまでもなく分かった。

 理解するのではなく分かった。経験する事で分からされた。分かってしまったといっても過言では無い。果たしてそれに気づけたのは不幸なのか幸なのか。 

 そんな事を沸々と考えながら、はあやっぱりと溜め息をつかざるを得ない。山を登りきったと思ったらさらに高い山が待っていたのだ。いや、もしかしたら山の頂上を読み間違えたという可能性もあるが。


「それで``不朽の逃げ手``モウカ。まだまだ若い貴方はこの状況をどう見ますか?」

「どう……と言われましても。分かりかねますよ、サバリッシュさん。こういった経験は初めてなんですから」

「自分の思った事を口にしてもらえればいいのですぞ」

「と、言われても」


 修道服を着た見た目はどこにでも居そうな、面倒見の良さそうな雰囲気を醸し出しているのは``震威の結い手``ゾフィー・サバリッシュ、``仏の雷剣``タケミカズチの契約者たるフレイムヘイズ。音に聞こえた歴戦のフレイムヘイズ。

 俺なんかでは足元にすら及ばないだろう存在感を解き放っている。そのあまりの存在感に萎縮すらもしてしまっている。だが、それもしょうがない事だと思う。書いてその通り年忌が違うのだ。格が違うともいえるかもしれない。

 

「先ほど目覚めたばかりだから、それも仕様がないことかもしれませんね。あまり時間は無いのですが、今はゆっくり養生してください」

「迫る戦はあまりにも大きいですからな」
 

 二人にして一人はそう言うとあまりにも簡易に建てられたテントから出て行った。このテントは簡易といえども、特設用のテントである。怪我人用という意味のテントでもあるが、今は俺のために使われている。

 
──曰く、この惨事を生み出したのも貴方なら、この惨事を見つけることが出来たのも貴方
──曰く、事前の対策を考えられたのが貴方だけなら、打開できる状況に発展させたのも貴方


 もっと直接に教えてくれ、抽象的過ぎてよく分からなかった。その心中を察してかウェルからの解説が入る。


「つまり、この町の大嵐の夜人間の被害がモウカのせいで、それはフレイムヘイズとしては少し外れた行為ではあるけれど、そのおかげで敵の野望を見つけられたのもモウカのおかげ。
この絶望的な状況に気付き、事前の対策を立てられたのはモウカだけだけど、現状の打破しうる状況になったのもモウカのおかげだ、と言う事よ」

「ようするに怒られたの? 褒められたの?」

「呆れられながらも褒められた、て感じかな」


 プラスマイナス、むしろプラス! という結論らしい。なら良かった、あんなにすごそうな人に目をつけられたらどうしようかと思った。少し胸をなでおろしホッとする。

 その上、どうやら俺は生き延びる事が出来た。

 九死に一生を得た。千載一遇のチャンスを掴んだとでも言うべきなのだろうか。そんな表現よりも何はともあれ生き残り死なずに済んだと簡単に、単純に喜ぶべきか。

 喜ぶべきかな? 喜ぶべきだよね? 喜んでいいんだよね?


「ふふ、ははは! はーっはーっはっは! 見よ! 俺は生きているぞ! 五体不満足、四肢の欠損すらも覚悟し死ぬかもしれない、今度こそ駄目かもしれないのに! 生き残ったぞーー! 俺は猛烈に今を生きている!」


 危機を脱した事を嬉々として、身体で表現できうる限りの最大限の喜びをここに露わにする。普段なら恥ずかしくて死にそうになるくらいの歓喜の声をあげて、その場に身体を留めて置くのは勿体無いとばかりに、ジャンプをしながらガッツポーズをし、スキップをしてテント内を動き回る。

 最高の気分だ。今まで嘗てない程の気分だ。史上最高と言い換えることも出来るかもしれないほどの喜びだ。この世界はなんとも生き辛く生きていくのも一苦労どころか大変なことばかりで。死に溢れているのに俺はようやく、やっと自身の命を自身の力で生を掴み取った瞬間とも言える。


「何度も成すがままに殺されたが、俺は初めて自分の力で生き残った!」

「正確には違うけど……言うのは無粋かな。それは兎も角、今更だけど生還おめでとう、モウカ」

「ありがとうウェル! 君のおかげでもあるよ!」

「私のおかげであるという事は自分のおかげという事もでもあるんだよ。私たちは二人で一つなんだから」

「そうか、ならお互いに生還おめでとう、と言うべきか」


 なんと生きているというのは良い事か、なんと逃げるとは正しい行為か。それが証明された。逃げ切れれば生き残れる、俺はあの大群ですらも逃げ切ることが出来た。これは確実に自信へと変わる。

 逃げ切れたからこそ味わえる生の感覚。普通に生きているだけで決して手に入らないこの感覚。なんとも甘美なこの感覚だろうか。貴重な体験は色々と経験してみたいと思っていたが、実はこの感覚を知る為にそう思っていたのかもしれない。

 むしろ、大袈裟に言うならばそのために生き返ってきたのかもしれない。

 まあいい。そんなことよりも早くこんな所から逃げ出したい。俺は一刻も早くこのどうしようもないほどの戦場から逃走したい。

 しかし、その思い簡単に打ち砕かれる。次の登場人物のせいで。


「お喜び中のところ、ごめんなさいね」


 そう言って、俺しかないない(正確にはウェルも居る)テントに入ってきたのは、これまた存在感溢れ返るような圧倒的存在を放つ、燃えるような赤い髪と眼を持つ女性だった。


 嗚呼、なんと美しく凛々しく綺麗な人なんだろう。きっと誰もが彼女の姿を見たら惚れてしまうのだろう、そう真剣に思った。そう思わせるほどの女性だった。

 だが、それ以上にあの喜んでいる姿を見られて恥ずかしくなり、羞恥心で一杯になってしまったのは言うまでもない事。





 運命の神様が存在するなら、そいつの首根っこを掴んで殴ってやりたい。殴れなくてもいいから平手でもいいから、もう運命の神様じゃなくてもいいから神様なら何でもいいから殴りたい。

 そんな心持ちだった。

 理由は簡単。死地から蘇り生還を果たして、ならば早く逃げるための心算をと思ってる矢先に現れたのは``天壌業火``アラストールの契約者``炎髪灼眼の打ち手``マティルダ・サントメールだった。

 何なんだろう。俺は今まで自分以外のフレイムヘイズとは会うことは無かったのだが、初めて出会ったフレイムヘイズのサバリッシュさんもすごかったけど、サンとメールさんもこれまたすごかった。あれなのか、フレイムヘイズってあれぐらいすごいのが普通なの?

 俺みたいのはむしろ弱小で、異常に弱いのは俺だけなのか。あの大群から必死に生き残って、俺って実は逃げる分野ならすごいんじゃと思ったのに、実は大したことがないということなのか。

 閑話休題。

 つまりあのサントメールさんが原因だ。

 彼女の訪問によって知らされた事実それは、


「ああ、良かった。せっかく助けた人が結局眼を覚まさなかったら助け損だもの」


 彼女から発せられた言葉それだけだった。そう、これだけ。

 なんとも呆気のない言葉であり、彼女にとってはなんの深い意味の篭っていない言葉だった。安否を核にしただけ、それだけ。たったそれだけの為にここに来たのか。否、俺にとってはそれだけで十分ではある。

 助けられたという事実だけで、俺には十分すぎる理由だ。

 さっきまでの驚きは何だったのだろうか、さきほどまでの喜びはどこへ行ったのだろうか。自らの力だけで助かったと思ったのに、それは思い過ごしで実は人に助けられていた。

 喜びとは真反対の感情が沸きあがる。悔しさ、後悔、惨めとでもいうべきなのかは自分でも分からない。


「助けられる状況まで持って行ったのは間違いなく、モウカの力だよ」

「それでも、それでもだよ。ウェル。俺は一人で逃げ切れるほどの力を欲してるのに」


 結局まだ俺はそれほどの力を有してはいない事が証明された。そして、さらには命を助けられた。

 ありがたいことではある。これ以上ない程の恩義でもある。

 そう恩義、借りだ。これは借り以外の何物でもない。自分の命を最も重く見ている俺にとっては何物にも変えがたいほどの恩義と借りとなる行為だった。

 借りは返す。男として、何よりこの先の面倒ごとを無くす為にも。助けてくれた本人はたとえ何も思っていなくとも、俺はそれでは気が気でいられない。俺は恩義を返せないほどの不義理者でもない。


「……はぁ、結局巻き込まれるのか」

「なら気にせず逃げればいいのに」


 尤もここから逃げ切れるのならばとウェルは言う。

 なら仕方ない。俺は俺の意思で。恩義と借りを返すため、何より死地から逃げるためにこの大戦を戦う事にしよう。しょうがないのだ。どちらにしろ、この戦いを見逃して結果、フレイムヘイズが負ければ俺だって生きづらくなるのだから。

 渋々、嫌々ながらも俺はこの戦いに参戦することを決意し、とあるテントを訪ねて告げる。


「サバリッシュさん、俺にも何か出来る事はありますか」


 彼女は待っていたかのように、分かっていたかのように、にやりと笑い言った。


「ええ、貴方``不朽の逃げ手``モウカにしかできない役割が。お願いできるかしら?」

不朽のモウカ─第六話─ 

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 最前線では紅の炎が巻き上げ、天に届かんばかりの雄たけびがこの遠く離れた本陣にまで聞こえてくる。敵味方が入り乱れ最前線は、嵐、まさに乱戦の様子だった。

 俺に分かるのはせいぜいその程度のことで、大戦、ましてやこのような大規模の戦いに巻き込まれるのが初めての経験のため全体の見通しがつかない。抗争程度なら、村で生きていた頃経験した事があるが、まるで規模が違った。

 現状はどちらに傾いてるのか。


「まずいわね。もともと数で圧倒されてるから、質で。って思ってたのに乱戦にされたら意味がないじゃない」

「敵だって分かった上での乱戦でしょうな」


 まずいらしい。

 実感が沸かないというよりは、理解の範疇に入っていないというのが俺の現状だ。

 この様子じゃ俺は指揮官には向かないな。

 もっともだからといって、最前線で身体を張る事が向いているかといえば、それも違う。俺に最も似合っている事といえば、敵に背を向けて逃げ出すことぐらい物だと自負している。ただ、その時の逃げ足の速さは誰にも負ける気がしない、という筋金入りの逃げ腰。


「向こうが主力を出さないのに、こちらが出すという訳にはいかないわね」

「消耗戦と長期戦になりかねないこの戦いでの先出しは、負けを意味しますからな」

「だからと言って出し惜しみしたままでも、負けちゃうしね。違うわね、出し惜しみする前に彼女なら突っ込みかねないわ」

「それすらも確りと統制化に入れるのが司令官の務めというものですぞ」

「あーやだやだ、なんでフレイムヘイズは皆一癖も二癖もあるのかしら。使いづらいったらありゃしないじゃない」


 非常に面倒だという事を、隠そうともしないサバリッシュさん。そのさばさばした性格と面倒見の良さそうな性格が『肝っ玉母さん(ムッタークラージェ)』と呼ばれるが所以なのか。こうやって、傍にいて心強いのもまた理由の一つかもしれない。

 にしても、そんなに現状は酷いのか。俺が見る限り、素人から見る分には十分に拮抗していて五部の戦いをしているように見えるが。

 いや、五分というのが駄目なのかもしれない。サバリッシュさんが言うにはこちらもあちらにも奥の手がまだ残されていると言った様子だが、そこが関係しているのかもしれない。


「ということなので、モウカさん」

「え? あ、はい」

「お願いしますね」

「……は?」


 何がどういう訳なのかさっぱり分からない。今までの流れの中に俺が必要とされるような会話があっただろうか。

 戦線──状況酷い。
 乱戦──もっとスマートに。
 奥の手──まだ出したくない。

 つまり、こちらとしては特に問題ない戦力でこの状況を打開したい、ということだろうか。そこで、俺にスポットが当たった? だけど、俺がサバリッシュさんに頼まれたのは撤退時の協力と牽制……。

 察するところ……


「撤退ですか?」

「近くも遠くも無い感じね。撤退ではなく、一時的な後退とでもいうのかしら」

「『嵐の夜』の使い道は意外にも広い。それはその自在法の効果範囲と応用性という事ですぞ」

「あー、分かりました。一時的な停戦状態でも作ればいいんですね」


 乱戦全体を覆うとしたら、これはかなり広い範囲になりそうだ。それでなくても、空では蝿が舞い、空中で移動中も小さい規模の『嵐の夜』を展開しなくてはいけないというのに。

 『嵐の夜』自体には攻撃性は含まれない。だが、イメージとしてはハリケーンが襲い掛かってくるようなものと考えれば分かりやすいのではないだろうか。ハリケーンだからこそ蝿の群れなど屁でもないが、だからと言ってこの程度の攻撃性では徒に対する攻撃へとはなり得ない。

 人にとっては災害。脅威ではあるが、人とは似て非なる徒には無意味に近いもの。だが、中にはそれでも消え入ってしまうほどの弱い存在なら倒せる可能性もあるかもしれないが。自身の感覚としてはやはり攻撃手段では無い。

 あくまでも撤退、逃げの為の自在法。セーフティに安全にがもっとうだ。

 この自在法。実は集団戦においては、微妙に使える。本来の使い道は自分が逃げるためのものであり、敵味方無関係に能力の対象になってしまうが、撤退するだけなら『遠話』の自在法を使えば済むだけの話である。

 『嵐の夜』の付属効果として、存在の力の位置をそこはかとなく把握できるのも、また微妙に集団戦に使える理由だった。ただ、そこはかとなくである。おぼろげに、大体、おおよそ程度。一騎打ちならそれで十分だが、複数になるとやはり微妙だ。

 辛うじて敵味方の判別が出来る程度。それでも、それを使えば相手を奇襲できるが、噛み付いた相手が思わぬ強敵だったなんて事にもなりかねないので、手を出さずに大人しく撤退が安全だろう。

 撤退の為に相手に一当てという戦法もあるが……今回は後退だから、関係ないと決め付ける。

 もちろん『嵐の夜』自体にも欠点がある。それを見破られれば、こちらは逃げる手段をなくしあっという間にヤられてしまうだろう。だが、この短い回数でそれがばれるとは思わない。その程度の自信はある。

 しかし、これが幾度となく繰り返し、または相手にそういうのを見抜くの力を持つものがいれば、下手したら今回も危ない。

 ……考えれば考えるほど逃げたくなってきた。いつでも死と隣合わせとはまさにこのことなんだろう。


「もうすぐ、最前線だよ。どう気持ちは? やっぱり逃げたい?」


 ウェルが試すような、挑発するように俺に尋ねる。

 なんだその質問、あまりにも無意味だ。まさに愚問。そんなの考えるまでも無い。俺の気持ちはいつもいつだって、この先変わるかもしれないが、本質的には決まっている。


「逃げれるもんならね。逃げたいさ。地の果てまで逃げて、適度な緊張感やスリル感を味わいつつ、リアルに飽きない様にね。でも、今回はそうはいかないでしょ?」


 無視すれば俺のこの座右の銘とも言える「逃避行」に、支障をきたすかもしれない。何れは壁となって、もしくは人生の決定だ──死という現実となって、現れるかもしれない。

 それなら、今駆除するべきだろう。俺一人では無理だ。だからこそ大戦を利用して、利用されて、この弊害を乗り越えなければならない。

 そして、それ以上に、


「命を助けてもらった人がこの大戦に参戦している以上、ただ観戦、傍観してるだけでは駄目でしょ。その為にも命を助けてもらったという大恩を少しでも返さなくてはね」


 はぁ……この大恩、この大戦だけでしっかり返しきれるだろうか。

 俺は今、そのことが何よりも気になりながら、大戦の最前線へと行き着く。

 さて、大きな恩も小さい恩返しから。塵も積もれば何とやらだし。

 渋々と、それでも面倒だなと思いながら『嵐の夜』を発動させ、味方に後退の旨を伝える。


『えー、皆さん。一時後退してください!』





◆  ◆  ◆





 この戦いにおける勝利条件は、最高の形で``とむらいの鐘(トーテン・グロッケ)``の殲滅。ひいては、``棺の織手``の消滅。最低でも『都喰らい』の阻止という形。否、最終的に``棺の織手``をと討滅する事が出来れば、『都喰らい』を打ち破る事ができるので、アシズの消滅こそを最善とする。

 アシズは所謂敵の総大将であり、それの首を取ることは戦いの勝利を意味する。それは、本来であれば双方の総大将に適応されるものであるが、フレイムヘイズにとってはそれは敗北へとなり得ない。一党一派がフレイムヘイズの短所であると同時に長所でもあると言えるのかもしれない。

 逆に敗北条件。これは極めて単純。勝利条件を満たせなかった時が、フレイムヘイズの負けになる。この負けはこの戦いに挑んだほとんどのフレイムヘイズの死、長く見るならそれ以上のフレイムヘイズの死を意味する可能性もある。

 例えアシズ本人が、フレイムヘイズを倒す事なんかの為ではなく、愛しき人の為にと戦い壮挙を達成し勝ったとしても、それが徒の総意であるはずも無く。結果的に徒の士気を上げる事となる。

 そして「なんだ。俺たちでもフレイムヘイズに勝てるんじゃないか?」と、徒に思わせることが問題だった。

 そんな事を思わせてしまったら、最後。今の対立のバランスと均衡があっという間に崩れ去り、今度こそフレイムヘイズと``紅世の徒``の総決戦となるやも知れない。それも、フレイムヘイズの圧倒的不利な立場でだ。

 そこに平穏は存在せず、平和などありもせず、安全な場所は確保できず、安住の地を求める事すらできない。

 人にとってもフレイムヘイズにとっても。そして、そんな世界では何が起きても不思議じゃなくなる。挙句の果てには世界の滅亡と言うバッドエンドを迎える事だってあるかもしれないのだ。


「いや、そもそもこの『都喰らい』自体も、世界の滅亡の危機の可能性があるんだった」

「ん? 今更だよ? こうやって普段は徒党を組まないフレイムヘイズが集まってるのは``棺の織手``の『都喰らい』の影響による世界の歪みに危機を感じてのこと何だからね」

「それはもちろん知ってるけど、ちょっと先読みしすぎた」


 そもそも難しい事を考える必要は無かった。この戦いは``棺の織手``を倒すための戦いなのだからその事だけを考えれば良い。単純にして明快。

 戦うといっても俺の役割はどちらかというと非戦闘要員だけども。


「ま、そんなの私にとってはどちらに転んでもいいんだけど」

「聞き捨てならない事を聞いた気がする」

「気のせい気のせい。世界平和って何だっけ? 偽善者による弱者の蹂躙だっけ?」

「あながち否定できないね」


 この戦いがどちらに転がるかは俺にとっては死活問題になりかねないが、世界平和という話については、そこまで重要では無い。自分の命が俺にとっての最優先事項である。

 尤もだからと言って、俺がこの戦いに積極的に参加できるかどうかは全くの別問題。自分で思うに、戦闘要員としては全くと言っていいほど使えない俺の存在は大したフレイムヘイズ側の利益にはならないだろう。そして、特別頭脳明晰の名軍師という訳でもあるはずが無いのは、自覚しているのでそちらの方面での活躍も無に等しい。

 それでもサバリッシュさんなら使い道がある、と言って俺を利用するだろうが。

 利用されるのは大歓迎だ。使い走りは断固拒否だが。上手く使いこなしてくれるなら楽な事この上ない。死地に向かわされるのは御免こうむりたいが。

 言うならば俺は一般兵その1というレベル。大将であるサバリッシュさんにあれやこれやれと言われれば、はいと一つ返事で答え命令に忠実に仕事を果たすのみ。それで、今後の自由が保障されるのであれば、ああ何て簡単な事だろう。

 色々と考えるのも時に必要な事はあるのは十重に承知。だがそれは時と場合による。ケースバイケースである。戦いなんて戦略、策戦、策謀、謀略などが行き交う複雑なものに関わられるのであれば、それについて考える頭の位置よりは、身体を動かす胴のほうが楽というものだ。

 言われた事しかやらない、言われないとやらない。ああ、なんというゆとりだろうか。ゆとり最高!

 そんな事をブツブツと考えていると、かなりの時間が経過してしまったのだろうか。一時後退してから戦況が変わりつつあった。

 『嵐の夜』によって後退し、一時的に停戦状態へと陥り睨みあいの場と化していたのだが、お互いの陣がどよめき始める。

 サバリッシュさんの命令どおりにした後、元の本陣の場所にまで戻ったのに前線のどよめきがはっきりと音となって聞こえるのだからかなり大きな騒ぎとなっていた。

 やがてどよめきの理由が分かる。

 味方陣営には、紅蓮の騎馬を跨ぎ輝く可憐な姿と白きに舞う姫とでも言うべき姿が見え、敵陣には見えなくとも然りと大きな存在の力を感じる。いや、一人はよく見えるほど大きいのだが……。

 なんとしてもあの大きな存在の方とは戦いたくないものだ。いや、俺は非戦闘要員だから、敵と直接戦うなんて事は無いはず。なら大丈夫。この心配は杞憂に終わるはずだ。


「あのじゃじゃ馬娘、勝手に出て行ったわね」

「そのような者も確りと手中に収めるのも総大将たる務めと申し上げましたぞ?」

「分かってるわよ。嬉しい事に向こうも主力を出してくれたから、これで五分。だったらもう一押しで勝てると思わないかしら?」

「戦いはそんなに甘いものでは無いですぞ。それに後もう一押しとは……はっ、まさか!」

「違うわよ。あら、こんなところで奇遇ね、モウカさん」


 なるほど、この大戦ただでは勝たせてくれないようだ。

 サバリッシュさんは俺に仕事をしろと言ってきている。しかも、命を張ったお仕事である。なんとも自分向けじゃないお仕事だ。荒事は回避して平和を得たいのに。


(はあ、なんかサバリッシュさんは俺を便利屋か何かと勘違いしてないかな? 自分の私兵みたいな……)

(私兵じゃない。この展開は私的に面白いからいいけどね)

(他人事じゃないんだからウェルも協力頼むよ)

(分かってるよ。お互い、まだまだ長い生きしたいもんね)


 自身の内にいる相棒と声なき会話をする。ウェルはどこか楽しそうだ。彼女自身は戦闘が好きというよりは変化を好むと言った気質がある。そういった意味では俺とも気が合うのだが、何分彼女の場合はどんな変化でも良いという大雑把なもので、俺は自身の身の安全があればという前提がある。そこの違いを感じさせられた会話だった。

 だが、まあこれも運命というものなのか、何よりもこれで俺は彼女と同じ戦場に立つということだ。命を助けてもらった大恩を返すチャンスであるかもしれない。

 そう考えれば悪くないかもしれない。俺は命を狩られないように逃げ回り、彼女がピンチとなったら助ければ命の恩義の仮を返す事ができるだろう。それこそ、ヒーローも夢では無いかもしれない。ピンチは最大のチャンスとはよく言ったものだ。

 ……あー、やっぱりヒーローは危険極まりないポジションになりかねないので、ヒーローは願い下げだな。

 ということで、そんな訳で、


「マティルダさんと、えーと……ヴェルヘルミナさんお願いしますね」

「ふふ、借りを返すような仕事ぶりを期待してるわ」

「お互い全力を尽くすのであります」


 全く、この二人の豪傑、英傑と戦う事は一体光栄に思えばいいのか、それともこんな状況になってしまった事を悲観すればいいのか。俺には分からないよ。

 それでもやはり俺は……俺が生き残る為に全力を尽くすとしよう。

不朽のモウカ─第七話─ 

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 結局のところ、大戦などと大事に巻き込まれてもモウカのやる事は変わらなかった。

 マティルダに借りを返さなければいけないのだが、彼はそんなことお構い無しに逃げた。そして、隠れた。隠れても存在の力のせいですぐに見つけ出され、攻撃されては必死に避け小規模の自在法を使用し逃げ延びる。

 一騎打ちなら彼はそうやって逃げ延び、複数相手のときは『嵐の夜』を発動させた。

 なるべく自信のあらゆるエネルギーは使わず、効率よく逃げようとした。時には味方をまるで盾にするかのように動いたが、復讐に燃えるフレイムヘイズは盾にされた事など気付かず、突っ込んでいく。

 モウカはその後、機を見計らい、盾にされたフレイムヘイズが危なくなったら助ける。恩を着せ、次は自分を助けさせるという行動を繰り返した。

 余裕がある限りそれを繰り返し、なるべく恩を作り、自分の身を護る盾を増やそうとしたのだ。

 もし、この戦いを客観的に全てを把握するものがいれば、外道と呼ばれ、罵られるようなやり方だった。


(こうでもしないと生きられないしなぁ。別に外道でも言いし)

(生きるのに意地汚くかな。私の仲のモウカのイメージが壊れそう)


 しかし、このやり方も所詮は余裕があればこそ出来るものだった。

 戦いが混戦になったり、大物と当たるようになると盾とか外道とかモウカは考える事など出来ず。慌てて、無理矢理に自在法を発生させ逃げに徹した。

 それでも幾度かはヤられそうになる。


(ああもう! なんでこんな目にあわなくちゃいけないんだよ! 普通に生きたいだけなのに! 少しハラハラした生活が後れればいいだけなのに!)

(今出来てるよ?)

(こんな危機感はいらないの!)


 攻撃を右によければ、右から新たな敵が出てくる。慌てて軌道修正し上に逃げれば、大群が。再び攻撃が飛んできて避けたと思いきや、謎の変化を遂げ追撃してくる。怪我を覚悟で、致命傷だけを避けるようにかわす。

 これが、これ以上のことが幾度と無く、止まることなくモウカに降りかかる。

 モウカにとって災厄であり最悪な状況だった。

 早くも後悔が彼の心の中で渦巻く。借りだとか恩義だとか、誠実な事などそもそも自分には合わなかった。これをいい教訓にして、今後はそういうのを控えよう。モウカにそこまで考えさせるほどに追い詰められていた。

 だが、全ては後の祭りであり、何にせよこの状況を打破しない限りは生き残らない限りはその教訓も活きる事は無い。

 モウカはそのことは十二分に理解している、生きているからこそ出来る事があり、やりたいことができる。何度も死んだ男の言葉は以外にも重く、真実味があった。

 ウェパルはその良き理解者──と言えるわけでは無いが、ただそんなモウカを面白く見、共に多少の時をモウカと生きようと考えている。ウェパルにとってはその共にの期間すらも短い時間かもしれないが、出来るだけ多いほうが面白いなと思える程度には、モウカの事を想っている。

 なんだかんだで良いパートナーであった。

 モウカはそんなウェパルの心情を知ってか知らずか、生き延びる為に逃げ惑う。必死に生にしがみつこうとして、死から逃げる。

 多少の傷を負いながらも命だけは失わないよう逃げる。

 片腕ぐらいなら失ってもいいから命だけはと逃げ狂う。

 何が何でもまだ生きるんだと悪足掻きをするかのように逃げ走る。

 逃げる、逃げる。どうやってでも、なんとしてでも、絶対に確実に逃げる。

──死という絶対の恐怖から。

 モウカの頭にはまともに戦うという考えは存在せず、ただ逃げることだけを考え続けていた。

 逃げに徹してるモウカでさえ戦乱の嵐に巻き込まれている現状、戦いは困難を極めていた。乱戦となってしまえば、有利なのは量で勝る``紅世の徒``である。フレイムヘイズ陣は苦戦を強いられていた。

 しかし、その状況でも華々しい活躍を魅せているのが、``炎髪灼眼の討ち手``マティルダと``万条の仕手``ヴェルヘルミナだった。

 先陣を切り己が騎士を率いて戦場を荒らすように戦っているマティルダ。そのすぐ横で後ろで前で縦横無尽に舞う様に戦うヴェルヘルミナの両者はまさに欧州最強のフレイムヘイズの名に勝る活躍ぶりだ。

 もちろん、それに負けず劣らずの周りの名のあるフレイムヘイズたちも共に戦場を駆ける。最前線だけを見れば、フレイムヘイズが圧倒しているといっても過言では無い。

 だが、その勢いも所詮は初手までだった。その後は少しずつ押し込まれていってしまう。その結果少数であるフレイムヘイズが大群に飲まれていってしまう。つまりは絶対的不利な乱戦へと持ち込まれてしまう。

 強いフレイムヘイズはそんなのお構い無しに力を振るい、敵に猛威を振るうが、弱いフレイムヘイズたちはたまったものじゃない。次々と無残にもヤられていく。

 これはモウカにとっても例外じゃなかった。単体の力では、敵に勝つ手段を持っていない上に、戦うという志を持たずもてるような力もなく、いつも逃げ腰のモウカには押し込まれた状況では成す術がなかった。

 だからこそいつも通りに、自分が生き残る為に、自身の最高の自在法である『嵐の夜』を用いて、撤退を試みる。乱戦のため自身のみの自在法の範囲にしても意味はあまり無いため、なるべく戦場を覆うようにして発動させる。

 いわばモウカにとっての最終手段である。


(こ、これで俺だけはなんとか逃げれるかな?)

(あくまで自分の為、という辺りモウカらしいね)


 モウカの思惑とは違い、この発動により弱きものは自在法に乗じて一時撤退。強きものは自在法範囲外へ一旦出て、奇襲をかけようとする。

 これによりフレイムヘイズ兵団は完全に崩れることなく、再び三度と戦う事ができた。

 しかし、それでも徐々にフレイムヘイズ兵団の兵の数は減っていく一方であり、アシズを討滅することはおろか、戦線をひっくり返す事すらも出来ないままでいた。

 このままでは『都喰らい』をさせてしまうのも時間の問題だった。





「状況は変わらず芳しくありませんね」

「元より厳しい戦。焦りは禁物でありますぞ」


 フレイムヘイズ兵団の本陣では、戦況をずっと見つめるゾフィーの姿があった。見るだけではなく、ドゥニやアレックスの戦況報告を聞きながら、目と耳で戦況を解析していた。


「前線で変わらず``炎髪灼眼の討ち手``が暴れています。そのおかげで戦線は崩壊せずに保たれています」

「ここから見てもあの``不朽の逃げ手``の自在法も確認できるし、案外大丈夫なんじゃないか?」

「彼の自在法をすでに何回見ました?」

「少なくとも三回は大規模で」

「ふむ、まずいですぞ」


 ゾフィーと契約する``紅世の王``タケミカヅチは懸念を抱く。


「ええ、そうでしょうね。そろそろ見破られても可笑しくない」


 ゾフィーが彼を前線へと送ったのにはいくつか理由がある。一つは、将来的に有望であると思われる彼に、多少死の可能性があっても経験を積ますこと。戦いが長期に渡るのを予想しているゾフィーは、この戦いを通してただ消耗するのではなく次世代の力もつけようとしていた。


(もし、潰れてしまっても。確かにもったいないかもしれないけども、所詮それまでだったってことよね。もちろん、この期待に答えてくれないことこまるんですけどね)


 そしてもう一つの理由が、今モウカがしている様に、『嵐の夜』による戦線回復の為の一時的撤退。ゾフィーはその働きに期待して、彼を前線に送ったがその方針がまさにものの見事に的中した結果となる。

 もちろん、ゾフィーはまだモウカが極度の逃げ性である事を知らない為、自分の思惑を知った上で理解した上でのこの行動だと思っている。それ故に、モウカへの評価は右肩上がりである。


「ちょっと仕事しすぎね。彼を一旦戻したほうがいいかしら?」

「ふむ。今後も必要になる力ですからな。今使い潰してはそれこそ勿体無いですぞ」

「都合よく新しい自在法でも作ってくれればいいのに」

「ははは、彼も大変ですね」

「``肝っ玉母さん(ムッタークラージェ)``に目をつけられた時点で、結末は決まってたな。かわいそーにな」


 ドゥニとアレックスが、今は最前線で顔を引きつりながら頑張っているであろう彼を思い出しながら同情する。二人は彼と直接しゃべったことは無いが、彼が気絶しているときに顔だけは見ている。まだ名も知れていないような──つまりは、まだ長く生きていない若くて新人で素人のフレイムヘイズの姿。フレイムヘイズの見た目は生きた年の参考にはならないが、彼は見た目も若かった。

 ほんの少しだけ、本陣が和やかになった。

 ずっと張り詰めた緊張感というのも戦場では大切、または戦場ならではというべきではあるが、ずっとそのままでは身体が心が疲れてしまう。何時如何なる時でも、時には気持ちを軽くする時間は大切だ。

 和やかになってもすぐに緊張感を取り戻す。

 この切り替えもまた戦場では必要とされるものだった。


「では、さっそくモウカさんにはこちらに戻って頂きましょう。多少前線は厳しくなりますが……その分カールに働いてもらいましょう。先程から戦いたくてうずうずしてるみたいですしね」

「はい、ではそのように遠話の使える自在師に」

「俺もその切り替えの間は前線に出るな」

「よろしく頼みますぞ」


 ドゥニとアレックスが本陣より出て行く。

 戦況は確実に動く。これがフレイムヘイズ側にとって有利になるか、不利になるかは今はまだ知らぬところ。ただ、このままの状態であればフレイムヘイズ兵団の敗走は確実に起こりえること。

 ゾフィーはこの有利となるタイミングを見測らなければならない。今のところはゾフィーの采配と、前線のフレイムヘイズ(主にマティルダやヴェルヘルミナ)の活躍により不利な戦況を一時的にとはいえほぼ五分までにもち直したりもした。

 この武功は非常に高いもの。彼女以外が大将をやっていたらすでにフレイムヘイズの負けは決まっていたかもしれないほどに。しかし、かといって未だに戦いは終わってはいない。


「本当の戦いはこれからね。はあ、早くいつも通りの生活に戻りたいわ。戦い戦いって別に私はそこまで望んでいないもの」

「ゾフィー・サバリッシュ君が望もうが望むまいがこれが現実、確り気を持つのですぞ」

「分かってますよ」


 ゾフィーにはどうもこの戦いに嫌な物を感じていた。もし、今のまま均衡を保てばあるいは敵は引いてくれるのでは無いか、と世迷いごとを考えたいほどの不安だった。

 その不安はこの戦いが最悪の結果と成りかねないのではないか、という気持ちである。指揮官なら誰でも思うことではあるが、ゾフィーはどうもこのイメージを払拭できないでいる。何か、心に引っかかるものがあるとでも言うのだろうか。

 これは彼女の長年の経験から来るものなのか、それとも誰もが感じる正常な気持ちなのか。

 ゾフィーは遠くを見つめながら一言呟く。


「長い戦いになります。でも、絶対に負けるわけにはいかない」











 長い均衡状態が両陣営に訪れた。その均衡は優に十もの時が経つ。

 フレイムヘイズ兵団はすでに疲労困憊状態であり、かなりの数の討ち手らが死んでいってしまっていた。同じく、``とむらいの鐘(トーテン・グロッケ)``も結構な数の兵を失ったが、大群と言えるほどの数は保ってあり、時間が経つにつれやはりフレイムヘイズたちは追い込まれていった。

 モウカは何とかこの十年を生き延びる事に成功した。それもやっとの思いでだ。

 失ったものは大きい。彼の盾となり死んだものが数多くいた。見た目の上ではモウカが盾にしたとは誰もわからないが、本人だけは分かっている。自分のせいで死んだという事を。

 最初の頃は葛藤はあった。いいのかと。これで本当にいいのかと。相手の命を犠牲にして自分だけが助かり、今も抜け抜けと生きていて。

 だが、繰り返すうちに割り切る事にした。

 それは味方の些細な彼への言葉が、彼をその事から割り切らせる結果へともたらした。


「お前のおかげで助かったよ」


 モウカにとっては予想外の言葉。自分を助ける為に使った自在法で自分以外のフレイムヘイズも助かり、彼に救われたというものがいた事実。いや、これ自体は予想の範囲内であり、この恩義を利用しようとさえしていたのだ。

 だが、それを改めて言葉によって伝えられた教えられたという事実がモウカの大きな支えとなった。利用したという罪悪感、犠牲にしてしまったという罪深さから多少なりとも彼を救ったことになった。

 そして、十年の時。初戦の出陣からゾフィーの指令によりあまり表立って活動してなかったとはいえ、その時は彼が戦場に慣れるのに十分な時であった。


「あー、本当に何度死んだかと思ったよ」

「最後の方はほとんど自分で何もしてなかったよね?」

「助けてもらっちゃったね。でも、それ以前に助けてたから貸し借りなし。序盤の自分に感謝」

「あの時はまだ余裕だったもんね」


 
 気が付けば、回りに助けられ支えられ救われて、モウカは激戦を生き残る事ができていた。その影──戦闘面においてはマティルダたちの活躍が大きい。彼は今更ながら、マティルダと知り合いになった事を自身の幸運であったと理解した。

 借りが増えたということもであるが、モウカはそこには全く触れなかった。


「だけど、まだ戦いは終わっていない」

「そうだね。もうかなり長く戦ってるけど、決着はついてないよ」


 終わりの見えない戦い。否、確実に終わりは近づいている。フレイムヘイズ兵団の負けというあまりにもリアルすぎる結末が近寄ってきている。この線はあまりにも濃厚で、誰もが考え始めている事だった。

 モウカにだって分かっている。今すぐに逃げ出したいと心の中で嘆いている。

 大将たるゾフィーだって理解している。このままでは全滅だってありえる可能性も。

 その従者の役割を担っているドゥニやアレックスだってゾフィーの傍で知っていた。非常に危機的状況であることを。

 ヴェルヘルミナも前線でそれを感じていた。負ける気はしないが、勝てる気配もしない事を。

 マティルダは理解した上で未だ余裕を保っている。。誰よりも絶対的な契約している王との信頼とその力の自信があるからだ。

 カールは自信に満ち溢れていた。自分の力でこの状況を打破できると張り切っている。

 それぞれが各々が感じ考え理解していた。

 そして、ゾフィーが決断を下す。


「次の接触を『オストローデ攻防』の最終決戦と見定め。総戦力をかけて戦います!」


 その言葉を誰もが頷き、背中や顔に身体中に冷たい汗を流した。高まる緊張感。

 そしてその決戦は……














 フレイムヘイズの抵抗むなしく双方に多大な被害を残して『都喰らい』を成功させてしまう。

 だが未だ戦いは終わらず、次なる舞台へと動き始めた。

不朽のモウカ─第八話─ 

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 五体満足で生き残る事ができたのはまさに奇跡の結果と言えよう。もう二度は無いラッキーな奇跡。長きに渡る戦い、十年もの時を必死に戦ったことになる。

 しかし、結局未だに戦いが終わらないどころか、


「最悪の展開になってない?」

「『都喰らい』成功させちゃったからね。でも、予想よりは奮闘したほうだと私は思うかな?」

「最初ってそこまで酷かったのか……」

「今モウカが生き残ったことが何よりも奇跡かな」

「それは同じそう思うけど」


 サバリッシュさんの下した最終決戦は、こちらの奮闘虚しくも敗戦した。向こうの主軸を何人かを打ち破る事には成功したが、本命の『都喰らい』は防ぐ事はできなかった。これにより、アシズの存在の力がありえないほどの増幅を果たし、今この世界に居るどの``紅世の王``よりもあるのでは無いかと思うほど。

 『都喰らい』が成功したためフレイムヘイズ兵団は一時撤退を余儀なくされた。今は、その撤退後であり今後の方針をほとんどのフレイムヘイズが集まって決めているところである。

 フレイムヘイズ側にとっては絶望的なこの状況。俺ももちろん他人事ではなく、この危機的状況からどうやって逃げるべきかを算段し始めている。このまま状況に流され続けても俺に生きる術はなさそうなのが一番大きい。


「『嵐の夜』も見破られかけてるし」

「さっきの撤退の時は冷汗かいてたよね」

「そりゃ、あんな対策とられたらビビるよ」


 撤退作戦時、俺はサバリッシュさんの言うとおりに『嵐の夜』を発動させて撤退の手助けをした。サバリッシュさん曰く、俺のこの自在方のおかげでかなり生存率が高まっているらしい。このこと自体は俺も素直に嬉しい。味方が死なない減らないということは、俺自身の生存率にも直接繋がる。

 だが、先程自在法を発動した時に相手が今までにない対応をとり始めた。

 『嵐の夜』発動時に起きる風を遮ろうと動いたのである。

 この自在法で起きる風には相手の進行を妨害できるほどの威力は無い。台風並みの風は出るが、それはフレイムヘイズや徒にとっては大したことにないものだ。

 しかし、それをあえて防ごうとした。

 つまり……『嵐の夜』の正体に気付きかけていることを表している。

 『嵐の夜』の範囲内では風と雨が発生する。雨には俺の存在の力が紛れ込んでおり、それが直接相手に当たることによって存在の力を感知させづらくさせている。その雨を四方八方から相手に当たる為の風がある。

 重要なのは風ではなく雨でもあり、雨だけでもなく風も。風と雨の双方を防ごうとされていたら、こちらは成す術がなかった。

 だってこの自在法だけが俺のまともに戦闘に使える唯一の自在法だから。


「お先真っ暗な気分だ」

「最初から負けが決まりかけてる戦だけどね」

「そうじゃなくて、自在法の方」

「新しいのはまだ身にならないし?」

「それもだけど」


 この大戦は経験はたくさん積めた。最初は最前線で後半はほとんど撤退要因と斥候扱いだったが、それでもちょくちょく戦闘には参加した。それでここまで生き残れたのは大きな成果と成長といえると思う。

 それはいい。貴重な体験だった。スリルに溢れてた。迫り来る死の恐怖はすでに幾度となく経験したが、ここまでのことは無かった。これからの人生に大きく影響するだろう。

 しかし、重要なのは……


「ここで生き残るには。今後またこんな事が起きて生き残る保障は」

「どこにもないよ。生き残りたいなら──」


 ──もっと強くならないとね、モウカ。

 弱肉強食? そんなのは糞喰らえ。俺が弱いのをこの戦いで痛感した。もとより知っていたが、考えてた思っれた以上に思い知った。俺はこの戦いの中で最弱かもしれない。

 逃げるという事のみのを考えてきた結末でもある。

 だがそのおかげで生き残ってもいる。

 人間生きている間に何が功を奏するか分からないものだ。その偶然が身を救ったというか、自分で自分を救ったというか。何にしても、生きていることの素晴らしさをここに感じる。


「平和に暮らしていくためには、力が必要なんて物騒な話だよ。今は力を持っていても殺される可能性もあるし。いや、生存率のほうが低いのか」

「このまま戦闘に参加しても勝てる見込みは少ないと考えるのかな?」

「この状況に持ってきただけでも多大な被害を被ってるんだよ。敵がさらに力をつけた今は、さらにその厳しさも増しているし」


 正直言ってもう逃げ出したい。こんな死と隣合わせな戦場など俺には向いてるはずがない。元日本人かぶれだし、なんやかんやでもうフレイムヘイズになってから数十年だがそれでもやはり慣れきれない物は多い。

 その一つが戦闘であり、敵と自分の命を賭ける駆け引きであったりする。

 ただ、ひたすらに生き残るだけなら今までもしてきたように、姑息で、卑怯で、悪質な戦い方が出来るが、それそれで俺の中で何かが駄目になって言ってるような気がしなくもない。

 でもまあ、それを含めて


「逃げるという選択をとる」

「行き着く先はいつも一緒だね、モウカは。でも、私はそこがモウカのいいところだと思うよ」


 ある意味一途で惚れ惚れするよ、とウェルは褒めてるんだか貶してるんだか分からない事を言う。

 どちらにしろ、俺には強くなる事を求められているようだ。逃げるだけではなく時には戦うことを選ばなければならない。敵を討ち倒す力が必要となり今後生きるに当たって重要になるということだ。

 だが、肝心なのは何故俺がフレイムヘイズになってすぐに『逃げる』を選択したか。


「もとより戦いは好きじゃないとか、争いは苦手とかじゃなくて感性の問題何だよなぁ」


 元日本人故の弊害でもある。それこそよほど追い詰められれば戦いに重んじる事はあるだろう。今がいい例だ。だけど、そうじゃない限りは戦いなんて真っ平ゴメン。

 俺は平和を愛し、安全に生きたいだけなんだ!

 というのが本心にある。実に日本人的だ。

 この日本人的という言葉は非常に使い勝手がいいから多用しているが、これは魔法だからと同じくらいの効力を持っている気がする。つまり、日本人的と魔法は繋がる。イコールで繋がられる可能性が……ないか。


「それでどうするの?」

「うんと、何が?」

「これからだよ。強くなりたいんでしょ? なら戦闘の特訓とかこれからするのかな?」

「戦闘ねぇ」


 向かない、と思う。

 これこそ俺が日本人だからというのもあるが、そもそも性にあわない。これも同じく『逃げる』という選択肢に至る理由の一つである。

 だが現実を見るとそうは言ってられないのも事実。この大戦中も何度も逃げることが出来ずまともに正面から戦う事だってあった。その際にはこちらは攻撃は蹴り殴りしか出来ず、もちろんその蹴り殴りだって素人のものだ。通用するはずがない。

 味方が救援に入るのを待つまでひたすら回避というか、逃げ回った。

 こうやって振り返ってみると、戦闘場面で正面からの戦いらしい戦いはやっていないような気がする。まあ端的に言えば、味方が戦い役で俺が補佐役みたいなものだからこの大戦中はそれでいいかもしれない。

 だけど、その先は? 一人になったら? 避けられない戦いを一人で乗り越えなければならなくなったら?


「その時は死ぬかも……」

「モウカってあまり格闘とか得意そうじゃないもんね。苦手とかじゃなくて嫌いそう」

「平和主義者だからね!」

「戦時中に平和主義者って言う人って死ぬよね、大抵」


 そうを言われても本心からの言葉には違いないので否定はしない。

 格闘が駄目なら、自在法を使っての戦闘の参加ということになる。この戦い中に見て印象に残ったものはやはり「――だぁらっしゃ――っ!!」と言いながら雷の様なというか雷キックが一番。次に雷を落としての攻撃など、サバリッシュさんの攻撃にはやたらと迫力のあるモノがあった。

 が、到底真似できるものでは無いのであまり参考には出来ない。天候を左右するという意味では俺の自在法とも多少通じるものがあるような気もするが、俺の自在法には攻撃性が皆無。

 そもそも自在法とは、基本的に術者の考えや気持ちを反映したり、契約した``紅世の徒``の性質に左右される。その為他のフレイムヘイズは基本的には参考にはならないが、イメージ的な問題なら十分考慮する余地はある。

 アイディアの元になる事程度は出来る……と思う。


「そういえば、昔に攻撃性がある自在法を作ろうとした事あったっけ?」

「大した攻撃性でずに失敗しちゃったやつかな?」

「そうだったっけ……」


 本能的に手加減を加えちゃうというか、敵といっても相手を躊躇せずに攻撃するというのに抵抗感があるからかもしれない。

 だから攻撃を思い描いてそれを自在法で表現しようとしても、大したものができないもかもしれない。相手は``紅世の徒``人では無い、人では無いのだが……中には人型のやつがいるから扱いに困る。

 全員が全員、異形の形ならまだやり易かったというものなのに。


「自在法が駄目、直接攻撃もセンスなし。優れているのは逃げ足のみ……これってもしかして積んでる?」

「つんでる?」

「ツンデレ?」

「あー、そういことね」

「え? ツンデレ分かるの?」

「あれでしょ? 寒い地方にある──」

「良かった安心した。さすがにこの時期にツンデレって文化があったら大変だ」


 ある意味歴史的大発見だ。しかし、ウェルの言ってるのはおそらくツンドラだ。


「結局俺の生き残る道は逃げるしかないのか。それならそれで本望だけど」


 現実からの逃避行は比較的得意なほうだ。

 争いの危機察知能力は人よりも優れている自信はある。同じように、争いごとの巻き込まれ率にも定評がある──あった。過去の自分はよく友達の喧嘩に巻き込まれ、仲裁に一所懸命にあったこともあれば、机の下で震えて隠れていた事もある。

 そんな時はよく現実逃避したものだ。しなくちゃやってられない。

 まあその時は必ず最初に「何で俺が」と呟くのを忘れない。

 いつだって被害者は平和主義者だ。


「一つ提案」

「どぞ」

「前にも言ったけど、``宝具``という手があるよ。あれの中には攻撃性のものはおろか、ありとあらゆる自在法でも紡ぐ事のできる優れものすらもあるんだよ」

「それはすごいね」

「もちろんそれだけじゃなくて、他にも想像できない様な物がたくさんあるし、``宝具``を使う事によって力をカバーするのも珍しい事じゃないしね」

「でも、そんな``宝具``を手に入れるなんて難しいんじゃないのか?」


 この難しいには二つの意味がある。

 優れた物があるということは、それを求めるものも無数に存在し、所有している可能性すらある。その場合は奪ったり盗むしかない。もちろんそんな行為が穏便に済むわけがないので、結局は奪い合いとなり支離滅裂。

 もう一つは、貴重だからこそ``宝具``なんて言われるのだから見つけるのが困難なのでは無いかという話。

 この二つ、どちらも俺で成し得ない厳しい条件だ。戦う事ができないから``宝具``を求めたのに戦わなければ手に入らず、使える自在法がないから``宝具``を求めたのに見つける術がない。

 それに、こんな便利な``宝具``なのだから本来ならそれの探索用の自在法があってもおかしくじゃないのではないか? しかし、そのような自在法の話は聞いたことがない。

 聞いたことがないだけである可能性もあるが……


「ふふ、モウカ。ねえ、モウカは何を望むの?」

「なんだよ急に……望むものね。そんなの決まってる」

「そうだよね。そうじゃなくちゃね! なら、話は簡単だよ。思いは力に出来る。強い思いは自在法に出来るんだからね」

「……出来るのか?」

「それはモウカ次第だよ」

「そっか」


 なら必死に願ってみるのもいいかもしれない。

 生き残る。

 なんとしても生きて人生を謳歌する。

 戦争を逃げ切り、生き延びて。

 理不尽な戦いから自らの力で脱却する。

 俺に力は無いのだから、力のあるモノを借りればいい。

 だから、俺は──海色の光が身体を包む。存在の力が自分の周りに感じられ、そして霧となって散っていくのが分かる。

 これはつまり……


「うん、さすがだね。こういう姑息さというか、生きるのに必死なのがいいね。ゾクゾクするよ」

「……うるさい」

「褒めてるのに」

「褒めてるのか? まあいいか、そんなことより」

「感じるね」

「ああ、近くに……」

『とんでもない``宝具``がある』

不朽のモウカ─第九話─ 

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これで全てです。
わざわざ理想郷の捜索板にスレを立ててくれた方、申し訳ございませんでした。
あちらでも書きましたが、いま別名にてオリジナルを手がけておりますので、
続きの見通しはたっておりません。
作者としては完結させたく、ちょくちょく書いてはいるのですが、なかなかに……ご容赦ください。
 とんでもない宝具があるのに気付けた、まではいいが肝心の手に入れる方法は無い。それほどの宝具という事はすでに持ち主がいるだろうし、その持ち主は大抵``紅世の徒``である。それも決まって巨大な王である事が相場というものだ。

 それなりの力を手に入れるならそれなりの努力と対価を。

 大きな力を手に入れるなら大きな危険と犠牲を。

 物事には大抵裏の事情や見えない筋書きがあり、どんなものでも無償なんて物は無い。タダが最も高いという意味は、高いというのに相応しい事情があるということだ。タダが怖いというのも頷ける話である。

 なら多額な物を支払って手に入る物は逆に表立って、その対価や犠牲というのが分かるのではないかとは自論。目に見えないものは怖いが、目に見えるものの方が人間は恐れを抱きにくいのかもしれないし、またその逆も然り。

 結局、どちらを恐れるかなんて人次第だが、俺の場合は目に見えないものの方が怖い。

 見えない物をありえないと切り捨てるほどの楽観性を持っていれば、こんな事はなかったのだが、生憎と俺は小心者で臆病者で逃げ癖のついている姑息な人間──フレイムヘイズだ。

 そもそも目に見える現象ならまだ対処のしようがあるというのに、目に見えないものなどどうやって対処しろというのだ?

 経験か?

 力技か?

 それとももっと別の、相手より上の不思議な力か?

 どちらにせよ、いづれにしろ俺には持ち得ない力の数々。それでも、もしそんな状況。どうしようもない何かの力が襲ってくるのならば、俺は仲間に助けを求めて、その間にいそいそと逃げる事を選択する。

 実際に、そうやって先の大戦を乗り越えたのだから他の方法は無いだろう。……その大戦はまだ終わっていない上に、窮地に立たされているともいうのだが。

 大量の仲間が死に、同時に敵にも大きなダメージを与えたが圧倒的不利は覆す事はできず『都喰らい』が発動し、敵はさらに巨大となった。

 ただでさえ、自分では敵いっこない大きな力に、倍率さらにどん、ならまだしも十倍、二十倍、へたすらそれすらも超える力を相手は手にれてしまったのだ。そこからどう逆転しろというのだ。少なくとも、自分ではそのアイディアは思いつかない。

 同じく、逃げる手段、これからこの力が存分に振るわれ、``紅世の徒``がこの世を堂々と闊歩するようになれば、我々フレイムヘイズが生きるには窮屈となる。力のない俺には窮屈なんて生やさしいものではなく、それは直接三度目の死を意味する。

 『死ぬのが嫌だ』

 そんな果てしなく情けない理由、いやある種はフレイムヘイズとはしてよくある理由でフレイムヘイズになったわけでだが、そのフレイムヘイズだから``紅世の徒``に狙われ死ぬようになったら支離滅裂、なった意味が皆無じゃないか。

 多少の死ぬのが長引いただけで、結局は大して人並みに生きることもできず死ぬことになる。

 『そんなのもの嫌だ』

 不条理じゃないかそんなの。絶対に俺は認めない。

 『生きる』

 絶対に生き残る。

 最初から最後まで俺の人生はこの言葉に表されて、俺のフレイムヘイズ足る理由もこれに表されるのだ。

 ならば、この生き残るために僅かな可能性を含め、これから可能性を導きだすためにも、努力をし力をつける。最終的には絶対的な安静と平穏と平和を手にするために。

 フレイムヘイズの使命?

 ``紅世の徒``を排除し、この世とこの世の隣を歩いていけない二つの世界を守る?

 勝手にやってくれ、むしろ大いに助かる。

 それは結果的に俺の安全というのに繋がるのだから。

 ならばこの戦い。この大戦はやはり……


「負けるわけにはいかないんだよな」

「今更過ぎないかな? 方法としてはどんな敵からも逃げれる技術とかが手に入れば、勝つ必要もないんじゃない? モウカ的な考え方だと」

「それが出来れば苦労はしないよ。その為の法具であり、その為の自在法でしょ?」

「だからこうして``感覚``を頼って、法具の在り処を探してるんだもんね」


 現在、争いは嵐の夜の前かのように静まっている。

 お互いが睨み合っている状況と言える。

 力の差では現在、圧倒的に``紅世の徒``が有利な状況であり、それにも関わらず向こうは未だに攻めて来ていない。これは恐らく、攻めあぐねているのではなくて真の目的を達成する条件を考慮してのことだろう。

 『都喰らい』は真の目的にあらず、本来の``棺の織手``の目的──死者の復活。

 なんとも魅力的な言葉じゃないか。

 人は誰しも大切な人を失った時、その喪失感から、また絶望感からその人がまた蘇ってくれることを意識的にであれ、無意識的にであれ、望むものだと思う。

 自身、なんども死んだ身からすれば、そりゃ生き返れるものなら生き返りたいし、そんなのが無理なことも分かっている。

 なによりも、その死者の復活とは自然の摂理、宇宙の真理、森羅万象からかけ離れている。出来たとしてもおそらく背徳感だとかを感じたり、これを世に知られたら何かの実験材料にされるんじゃないかと、ビクビクとして肩を震わせて、恐怖を感じながら生きていくしかなくなると妄想する。

 事実、そんなに外れた妄想ではないと思う。

 死者の復活は、ある意味では不死を意味し、人の中には必ず不死を望むものが多かれ少なかれいるからだだ。

 恐怖に怯えて生きるなんて生きた心地がしない、と誰しもがいうだろうし、確かにそれは俺の望む生き方とは違う。俺の考えを別としても、そんな生き方は損な生き方で、誰しもが望まないだろう。

 『生きていることに意味がある』と誰かがいうかもしれないが、『ただ生きていることになんて意味はない』と異論を唱えるものもいるだろう。

 俺は後者の考えであり、生きているからには、もちろん安全だとか安泰だとかは欲しいが、それと同じようにある一定の緊張感だとか、スリル感だとかの刺激がほしい。

 今の俺はたしかにそういった意味では刺激に溢れているが、


「ちょっと死の匂いが強すぎ」

「戦いは生きるか死ぬかの瀬戸際だからね」


 現状は異常なものだった。

 そんな誰しもが憧れる死者の復活を目指して、力を奮っている``棺の織手``は狂っていると言える。そして、それが不可能ではない、と今にも言われかねない認めかねない状況もやはり狂っていると言えた。

 どうやって死者の復活をするのかは知らないが、サバリッシュさんを含む、幹部級の人たちはなんとなくは情報は掴んでいるようだ。聞けば教えてくれるだろが、死者の復活のやり方なんて教えてもらってもね。これからの作戦に必要ならちゃんと教えてくれるだろうし。それをわざわざ知ろうとは思はない。

 それに今、サバリッシュさんたちは俺に構っている暇ではない。

 すでに敗戦状態といえる現状はフレイムヘイズの士気はガタ落ちしている。まだ完全な敗北ではなく、逆転の手はあるらしいがそれを安易に受け取ることはできず、自分を含むか弱いフレイムヘイズたちにはすでに絶望の色が見え始めていた。陣内もその色に染まりつつあった。

 その空気にいち早く気づいた猛者は、弱気になっているものを叱咤していたが、あれは明らかに逆効果だった。そんな叱咤で希望の光を見つけ出し、再び立ち上がることができるのであればそもそも絶望なんてしないだろう。せいぜい失望かな。それはそれでなんかダメダメだが。

 陣内の空気が悪いとして、一人抜け出したりするフレイムヘイズも出てきている。中には一人で立ち向かおうとするものさえ。

 悪い意味で、フレイムヘイズは独りよがりだった。人それを自己中心的というのだが、誰も否定出来ないあたりが悲しい性だ。そして、新たな犠牲が生まれ、さらにフレイムヘイズを失い力の差が生まれ、絶望の色が濃くなる。見事な負のスパイラル。デフレスパイラルも目ではなかった。

愚痴愚痴と、フレイムヘイズについて愚痴ってるくせにその本人もフレイムヘイズ。しかも、逃げることしか考えてない。それだけじゃなく、今は自信で勝手に動いているとなれば人のことは言えたことじゃないのは分かってる。分かっているが……


「生きるためには死力を尽くさないとね。矛盾しているようで矛盾してないけど」

「今までは尽くしてなかったのかと、私は問いたいかな?」

「人の死力を利用して頑張りました」


 嘘は言ってないよ、嘘は。ちょこちょこっと他の人に頑張ってもらっただけ。ただそれだけ。

 現状を確認しながら、感覚を頼りに``法具``を感じる方向へと警戒を緩めず飛んでいく。

 見渡すかぎりは``紅世の徒``はみえない。

 存在の力を巻いて探知モドキもできなくはないが、下手な行動は逆探知となりえるので使わない、使えない。これはお忍びの旅であると言えるだろう。

 ``紅世の徒``に見つかることは絶対にできないのだ。

 いくらこちらには逃げる専用の自在法がある(しかない)とはいえ、トリックに気づかれ始めているのだ。下手な乱用はできない。もちろん、使ったからと言って必ず逃げれる保証だってないのだ。

 惰弱で脆弱なフレイムヘイズ、それがこの``不朽のモウカ``だ。

 あまり誇れるものじゃないけど。戦いの度に目から汗が出るけど。

 ここは戦場となっていた都とは少し遠く、また互いの陣地も遠いために警戒はさほど厳しくなく、探知といった自在法も仕掛けられていない。

 見晴らしがいい平原だった。


「天気がよくて平和なら寝っ転がりたいね」

「叶わない夢だねー」


 叶わないと言われてしまった。

 儚い夢なのかな……否定できないあたり嫌気が差す。


「戦争なんてなければいいのに」

「切実だね」

「懇願だよ」


 フレイムヘイズになったら願いが一つ叶うとかあれば良かったのに、と思う。

 あーでもそうか、そうすると俺は『命がある』という時点で願いは叶っちゃったのか。

 自分の持つこの``存在の力``は、自分の平和という願いのため、生き残るという、生きるという欲望のための力。

 それはフレイムヘイズも``紅世の徒``も変わらない。

 今、大戦を引き起こしている``棺の織手``も結局は叶わぬ願いを叶えるための力を欲して、欲した結果これが起きている。

 戦いが起きている。

 なんだ``紅世の徒``もフレイムヘイズも人も変わらないじゃないか。


「それでも互いに理解できず、しようとせずに争いは続くと、ね」

「うん? どうした?」

「気にしなくていいよ。ただ欲ってすごいなって話」


 なんだか哲学者になった気持ちだ。

 一纏めに変わらないとは言ったけど、その欲も目的も千差万別だし、手段や方法だって違う。こうやって争わずに叶えられる願いだってある。

 そう、それはまさに俺の願いのように。

 詩的な気持ちになっていると、先程まで感じていた感覚が近くなる。

 ``宝具``が近くにあるという証明であると信じたい。この``宝具``がなんであるかは知らないが、己の力になるということを切に願いたい。``宝具``に持ち主が存在せずフリーであって欲しいと淡い期待を抱く。いたとしても譲ってもらえないかと無駄な希望を仰ぐ。

 だが、もちろん。

 当たり前のことだが。

 分かりきっていたことだが。

 やはりこの世は思い通りにはいかない。



──希望は絶望に



──期待は裏切られ



──願いは叶わない











 その宝具は元は``紅世の徒``であったという。

 自由奔放なその``紅世の徒``はある人間にとある感情をいだいていたとか。

 その感情はとても人間らしく、そしてそれは``紅世の徒``らしくもあった。

 それは決して叶わぬ願いではなく、可能であればその感情はお互いに一緒に持ち続けることが出来ただろう。

 なにせその``紅世の徒``にはそれだけの自由になる力があったのだから。

 だが、その力は決して有益に働くとは限らなかったのである。

 ``紅世の徒``は恋する少女だった。

 しかし、その恋実らずに。

 自由になる翼を持っていた少女はやがて翼をもがれ、地に鎖をつけられる。

 翼をもがれた少女──``紅世の徒````螺旋の風琴``リャナンシーは``宝具``『小夜啼鳥(ナハティガル)』と名付けられる。

 少女は『それ』へとなる。

 それを手に入れ、力を注いだものは``自在法``を自由に操り、叶わぬ願いなどないのだという。

 それを欲するものは多く、そこに再び争いが起きる。

 大きな、とても大きな、この世を左右する戦いが起きる。

 ここに『大戦』の第二幕が始まる。

 幸か不幸か、彼らは、彼女らは、それらは巻き込まれていく。

出来ないorz 

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オリジナルの基準って何さ……
理想郷でオリジナルを読みあさると、こんなにいい作品が評価されてなかったり。
なろうではネームバリューだけで内容関係なしに良作扱いされたり……
まあこんなもんなのかもしれないですけどねw

それを見てると、
オリジナルを評価されるようになるのって難しいなと思うわけですよ。

そんな訳で、難しいオリジナルはとりあえず隅に置き、

「やっぱこんなときはあれっしょ!」

という感覚でリリなの二次創作に手を出すわけですよ。はい。
あれ、しばらく書かないんじゃと思った人。
残念。
この作者は基本口からでまかせで、天の邪鬼なので、やりたい放題です、やほーい。

というか良い設定を思い浮かんで、
いけるんじゃねと思ったら、オリジナルよりリリなののほうが適してるかなと思ったという経緯ががが

ということで久々にリリなの二次創作長編を書こうかなと。
完結までどれくらいかかるんだろうなぁw
気長に書いていきますよ。

投稿はにじふぁんです。
なので、もし興味が有る方がいらしたら、にじふぁんで作者名「tapi@shu」で検索をしてもらえればいいかと

近況報告 

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どうも管理人のタピです。

いやはや、最近ブログの訪問者の数が増えて嬉しいですね。
たぶん、理想郷からモウカを見ようと来て下さっているんでしょうかね?
嬉しいことです。

右下の人気投票の方も順調に伸びている感じで……
これは続きを書かなあかんのかななんて思ったりしてます。

い、一応!
ちょくちょく書いてるんですけどね!

第一章の都喰らい編というか、アシズ編は完結までのストーリーは完成してるんですけどね!
まだ下書き程度ですが……
これからはここでの投稿になるので、一話の分量を多くしようかなと思ってます。
今までは5千程度でしたが、一万程度までは増やそうかななんて。
まあ、計画上なんでどうなるかはわかりませんがね。
もっと増やして、一章を一話で全文書くなんてこともするかもしれないですし。

と、それは置いといて、
作者としては完結までは書く気力はありますので、
気長に更新を待ってくれると嬉しかったり、
見てるよー、待ってるよーみたいなコメがあったりしたら嬉しかったりします。

ブログ拍手一回でも嬉しいですし、
人気投票でも嬉しいですけどね!

そんな訳で、報告をしました。
ああ、あと、超悪ふざけで書いているオリジナルとかも近いうち投稿します。

なんか憂さ晴できないかなと思ったので、

主要キャラは主人公以外女の子!
世紀末ヒャッハーな世界!(ただし、異世界ではない)
萌はないよ!

な作品を書いてます。
誰得か?
作者の憂さ晴らしです。

『不朽のモウカ』について 

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書いた。
第十話完成した。
やっとアシズのお話が終了した。

細かい過程とかはその後の物語でちょくちょく話題にしていくので、大筋がければよかった。
あと、主人公とウェルの関係とか。
というか、そこが一番重要だったかも。

というわけで、なろうに一話から投稿します。
こっちは、理想郷に投稿したときまんまでしたが、向こうは修正とか入れつつでね。

このサイトを覗いている多くの人が最近はモウカ狙いなんじゃないかとか思ってたから、
ここに一番にお知らせしました。

このサイトでも、随時更新はしますが、ここよりは読む環境の整っているなろうの方をおすすめします。
まあ、今のところはこっちのほうが進んでいますが、最後は変わらないので。

そんな訳で、約半年ぶり、でしょうか?
不朽のモウカを更新できそうですw

なろうのURL

http://ncode.syosetu.com/n9834t/

上手くアクセスできなければ、なろうで作者名tapi@shuか作品名不朽のモウカで検索をしてみてください。

猛暑続きで死にかけてます 

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最近は、なのはよりもシャナに重点を置いて小説を投稿しております。
ええ、なのはの方を期待してる人には悪いのですが、シャナ三期があるというので、
俄然やる気がすごいのですw

たぶん、なのはは劇なの2が上映されたら、やばくなると思いますね。

ということで、しばらくはシャナ中心に更新を致します。

暑い日が続いて嫌ですね。
そんな中でサッカーを全力でやったら熱中症に掛かり、今もかなりダウン気味です。
超やばいってやつです。

その前までは、北海道でななさんのツアーに行ってきたんですけどね。
気温差の違いが、おそらく自分に熱中症を引き起こらせてしまったのではないかと思ってます。

ただ暑いならいいんだ。
慣れてるから。

我が家にはエアコンはないし、暑さには慣れている。
ただし、蒸し暑い、てめーだけはゆるさねえ!

みなさんも体調には気をつけてください。


シャナは変わらずなろうの方でお世話になっております。
最近は読んでくれる方々も増え、感想も増え、増々調子づいています。

やはり、投稿した作品にリアクションがあるというのは喜ばしいことですね。
投稿のし甲斐があるというものです。

理想郷の方々も徐々に増えているようで、
前からお世話になっていた方も多いようです。

削除した際は、大変ご迷惑をおかけしました。

これからも懲りずに執筆をしていくので、そこはかとなく応援してくれると嬉しいです。

誕生日 

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二十歳になっちゃいました。
ええ、今日、7月19日は自分の誕生日なんです。
そして、ついに成人ですよ。

……なんも嬉しくねー。
お酒も飲まないしタバコも吸わないので、お得感がないです。
誰か、二十歳になるとつく特典を教えてください。

そんな今日ですが、
歯の痛みが収まり、というか慣れてしまい、
なんとか今日中にモウカは更新してみせます。
クライマックスっていつも難産なんですけどね。
頑張ります。

不眠症orz 

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更新全然してなかった。
いつもtwitterには在住しているんですけどね。

夏の眠れなさは異常……
おかげで、毎日寝不足状態が続いています。

自分の家にはエアコンがないので、
エアコンが存在しないので、
エアコンなんて聞いたこともないので、
もうつらいつらい

寝不足→昼寝→寝足りない→執筆できなーい\(^o^)/

の連続コンボは辛すぎるw
それだけでなく、閑話はいつだって困難を極める内容なのに……
何とか後二日後か三日後には書き上げたい!
と思ってる……かも……

いき詰まった時ははいつもウェブ拍手やら感想を読んで心の支えにしてもらっています。
単純なメセの面白いや楽しいもすごく嬉しい。
でも、たくさんの言葉で色々書いてくれたものを読むのは楽しい。

昔書いた作品の感想だっていつも読み返します。
ホームレスの時は絶対本編より面白かっただろ、感想欄と。

よし、なんとか今日中に仕上げるか(ぉ

意外と調子いいよねッ! 

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週一くらいで更新すれば、そこそこ人が見てくれるんじゃないかなと思ってたり。
前回更新はだいぶ前ですけどねぇ……

とまあ、それはさておき、にじファンにて連載させてもらっているモウカの調子がいいですよね。
いや、ね。
最近は全然お気に入りとか伸びないなとか思ってたんですが、累計見ると……30,690作品中200位以内に入ってたんですよ!?
びっくり仰天です。
お読みいただいている読者の方には感謝です。
ありがとうございます。

いつもトップばかり見て、一万まで遠いなぁなんて思ってたけど、これを見た瞬間若干満足w
少しでもにじファンでは、最強だとかハーレムだとかチートばかりじゃないんだよ! という示しができたらいいなと考えてたり。
とか言うくせに、自身で登録しているにじファンの作品って、3・4作品だけなんですけどね。
ん、まあ仕方ないじゃないね!


モウカの内容ですが、ようやく本編が見えてきました。
長かった……非常に長かった。
本編突入まで約50話を年内までに達成予定だったので、順調ではあるのですが、まだなげぇ。

あーちなみに、この作品は再構成物なので、作品内ではボツネタになったものを、ここで少し公開できたらなとか思ってます。
自分のサイトなんで、あれです。
ネタに際限がなく、本編のイメージをことごとく打ち砕く可能性があるので、イメージを大切にする人は見ないでくださいね。

考えてる一発ネタは、
大戦のカール視点、リーズの日常視点、原作とは違った結末になったために出来なくなったIF話など。

とは言うものの、作品の更新を優先し、リアルをさらに優先するので、それが書かれるのはいつになるやら……

雑記と近況報告 

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小説が書き進んでいない時、その時にはだいたい以下の原因がある。

1.モチベーションが上がらない
2.学校が忙しい
3.バイトが忙しい
4.新作のゲームが出た
5.ぶっちゃけ小説に飽きた

自分の作品を飽きる、なんてことは自分にはよくある事。
なんていうけど、シャナ二次は飽きてないんですけどね。
完結まではまだまだ時間がかかりそうだし、なんとか年内には本編の方に突入したいなとは思ってます。
一年で完結が現在の目標です。

今、週一前後の更新なのは、主に2と4が原因。
うん、2はしょうがないにしても4ってひどいよねって思うけど、所詮アマだし許して欲しいとは思ってる。

最近だとCoD:MW3が出たばかりで、毎夜毎夜知り合いとPT組んで戦場に出てるんだ。
おかげで楽しい毎日だよ!

12月1日にはガンダムEXVSが出るし、心理学の研究は続いてるし……まあリアルが多忙なわけです。
次いで、バイトは深夜にも入ることになったので、更新ペースが上がるのはもうしばらく厳しそうです。
すみません……




コメ返しなど

>tomato様
感想ありがとうございます。

>Arcadiaでは楽しませてもらってました。
>これも投稿されてた当時も読みましたが、やっぱり面白いですね。
あちらでも読んでいただいとは、いやはや懐かしい作品だったでしょう。
面白さというか、もう思いついたままに書いた作品だったのでそう言ってもらえると嬉しいです。

>結局イケメンでもオタクはいるんですよね、いやほんと羨ましいと言うか妬ましい。
ええ、妬ましいですな!
クリスマスなんて深夜のバイトだというのに!

>「勇者だなんて言われたら、立ち上がざるを得ないだろ。常識的に考えて」
>オタクはおだてられるのに弱いという真理を見た気がしましたw
……( ゚д゚)ハッ! 自分のことか

web拍手
>自分も小説を書いています。相互リンクして頑張りましょう。面白かった
相互リンクと行ってるので、たぶんブログの方の作品を読んでくれたんですね。
感想ありがとうございます。
サイトを教えてもらえれば、相互リンクは大歓迎ですよー。

ようやっと更新しました 

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ええ、ようやく更新しましたよ。
にじファンで体裁している『不朽のモウカ』の最新話。
前回更新より三週間ほど経っての更新。もうなにしてるんだよ、この作者と思われた方も多分にいることでしょう。
見限った人もたくさん出るのではないかと、内心おどおどしていたのですが、お気に入りの数が全然減らなかったので少々ビックリしてます。

何はともあれ、更新更新。
待たせた人にはすみませんでした。

これで肩の荷が降りた気分……ってまだ早いですね。
話全然進んでねーじゃんという話。
頑張ります。

投稿してまもなく、温かい感想があってすでにホロリ状態。
いやー、理想郷の時なんて、よくこんな紙メンタルで投稿できてたなと思いますよ。

小説のほう、興味ある人は是非とも読んでください。
といっても、ここを覗いてくれる人は、どこかしらかで自分の小説を読んでくれてる人達ですよね? たぶんw

そろそろ定期的にここを更新するようにして、定期的に小説を紹介できるようにしたいですね。
毎週水曜は小説紹介で、毎週日曜は雑記更新で、毎週月曜はにじファンで体裁している小説のうpみたいな感じで。

やることがしょっちゅう変わる自分なので、まあこの言葉の信憑性は怪しいですけどねー。

それでは皆様また今度。
次回更新は一週間以内にしたいです←願望


P.S.
EXVS楽し過ぎます。
AC版でも准ガチ勢だったのも大きいですけどね。

Index ~作品もくじ~