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小説挑戦

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不朽のモウカ─第九話─ 

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これで全てです。
わざわざ理想郷の捜索板にスレを立ててくれた方、申し訳ございませんでした。
あちらでも書きましたが、いま別名にてオリジナルを手がけておりますので、
続きの見通しはたっておりません。
作者としては完結させたく、ちょくちょく書いてはいるのですが、なかなかに……ご容赦ください。
 とんでもない宝具があるのに気付けた、まではいいが肝心の手に入れる方法は無い。それほどの宝具という事はすでに持ち主がいるだろうし、その持ち主は大抵``紅世の徒``である。それも決まって巨大な王である事が相場というものだ。

 それなりの力を手に入れるならそれなりの努力と対価を。

 大きな力を手に入れるなら大きな危険と犠牲を。

 物事には大抵裏の事情や見えない筋書きがあり、どんなものでも無償なんて物は無い。タダが最も高いという意味は、高いというのに相応しい事情があるということだ。タダが怖いというのも頷ける話である。

 なら多額な物を支払って手に入る物は逆に表立って、その対価や犠牲というのが分かるのではないかとは自論。目に見えないものは怖いが、目に見えるものの方が人間は恐れを抱きにくいのかもしれないし、またその逆も然り。

 結局、どちらを恐れるかなんて人次第だが、俺の場合は目に見えないものの方が怖い。

 見えない物をありえないと切り捨てるほどの楽観性を持っていれば、こんな事はなかったのだが、生憎と俺は小心者で臆病者で逃げ癖のついている姑息な人間──フレイムヘイズだ。

 そもそも目に見える現象ならまだ対処のしようがあるというのに、目に見えないものなどどうやって対処しろというのだ?

 経験か?

 力技か?

 それとももっと別の、相手より上の不思議な力か?

 どちらにせよ、いづれにしろ俺には持ち得ない力の数々。それでも、もしそんな状況。どうしようもない何かの力が襲ってくるのならば、俺は仲間に助けを求めて、その間にいそいそと逃げる事を選択する。

 実際に、そうやって先の大戦を乗り越えたのだから他の方法は無いだろう。……その大戦はまだ終わっていない上に、窮地に立たされているともいうのだが。

 大量の仲間が死に、同時に敵にも大きなダメージを与えたが圧倒的不利は覆す事はできず『都喰らい』が発動し、敵はさらに巨大となった。

 ただでさえ、自分では敵いっこない大きな力に、倍率さらにどん、ならまだしも十倍、二十倍、へたすらそれすらも超える力を相手は手にれてしまったのだ。そこからどう逆転しろというのだ。少なくとも、自分ではそのアイディアは思いつかない。

 同じく、逃げる手段、これからこの力が存分に振るわれ、``紅世の徒``がこの世を堂々と闊歩するようになれば、我々フレイムヘイズが生きるには窮屈となる。力のない俺には窮屈なんて生やさしいものではなく、それは直接三度目の死を意味する。

 『死ぬのが嫌だ』

 そんな果てしなく情けない理由、いやある種はフレイムヘイズとはしてよくある理由でフレイムヘイズになったわけでだが、そのフレイムヘイズだから``紅世の徒``に狙われ死ぬようになったら支離滅裂、なった意味が皆無じゃないか。

 多少の死ぬのが長引いただけで、結局は大して人並みに生きることもできず死ぬことになる。

 『そんなのもの嫌だ』

 不条理じゃないかそんなの。絶対に俺は認めない。

 『生きる』

 絶対に生き残る。

 最初から最後まで俺の人生はこの言葉に表されて、俺のフレイムヘイズ足る理由もこれに表されるのだ。

 ならば、この生き残るために僅かな可能性を含め、これから可能性を導きだすためにも、努力をし力をつける。最終的には絶対的な安静と平穏と平和を手にするために。

 フレイムヘイズの使命?

 ``紅世の徒``を排除し、この世とこの世の隣を歩いていけない二つの世界を守る?

 勝手にやってくれ、むしろ大いに助かる。

 それは結果的に俺の安全というのに繋がるのだから。

 ならばこの戦い。この大戦はやはり……


「負けるわけにはいかないんだよな」

「今更過ぎないかな? 方法としてはどんな敵からも逃げれる技術とかが手に入れば、勝つ必要もないんじゃない? モウカ的な考え方だと」

「それが出来れば苦労はしないよ。その為の法具であり、その為の自在法でしょ?」

「だからこうして``感覚``を頼って、法具の在り処を探してるんだもんね」


 現在、争いは嵐の夜の前かのように静まっている。

 お互いが睨み合っている状況と言える。

 力の差では現在、圧倒的に``紅世の徒``が有利な状況であり、それにも関わらず向こうは未だに攻めて来ていない。これは恐らく、攻めあぐねているのではなくて真の目的を達成する条件を考慮してのことだろう。

 『都喰らい』は真の目的にあらず、本来の``棺の織手``の目的──死者の復活。

 なんとも魅力的な言葉じゃないか。

 人は誰しも大切な人を失った時、その喪失感から、また絶望感からその人がまた蘇ってくれることを意識的にであれ、無意識的にであれ、望むものだと思う。

 自身、なんども死んだ身からすれば、そりゃ生き返れるものなら生き返りたいし、そんなのが無理なことも分かっている。

 なによりも、その死者の復活とは自然の摂理、宇宙の真理、森羅万象からかけ離れている。出来たとしてもおそらく背徳感だとかを感じたり、これを世に知られたら何かの実験材料にされるんじゃないかと、ビクビクとして肩を震わせて、恐怖を感じながら生きていくしかなくなると妄想する。

 事実、そんなに外れた妄想ではないと思う。

 死者の復活は、ある意味では不死を意味し、人の中には必ず不死を望むものが多かれ少なかれいるからだだ。

 恐怖に怯えて生きるなんて生きた心地がしない、と誰しもがいうだろうし、確かにそれは俺の望む生き方とは違う。俺の考えを別としても、そんな生き方は損な生き方で、誰しもが望まないだろう。

 『生きていることに意味がある』と誰かがいうかもしれないが、『ただ生きていることになんて意味はない』と異論を唱えるものもいるだろう。

 俺は後者の考えであり、生きているからには、もちろん安全だとか安泰だとかは欲しいが、それと同じようにある一定の緊張感だとか、スリル感だとかの刺激がほしい。

 今の俺はたしかにそういった意味では刺激に溢れているが、


「ちょっと死の匂いが強すぎ」

「戦いは生きるか死ぬかの瀬戸際だからね」


 現状は異常なものだった。

 そんな誰しもが憧れる死者の復活を目指して、力を奮っている``棺の織手``は狂っていると言える。そして、それが不可能ではない、と今にも言われかねない認めかねない状況もやはり狂っていると言えた。

 どうやって死者の復活をするのかは知らないが、サバリッシュさんを含む、幹部級の人たちはなんとなくは情報は掴んでいるようだ。聞けば教えてくれるだろが、死者の復活のやり方なんて教えてもらってもね。これからの作戦に必要ならちゃんと教えてくれるだろうし。それをわざわざ知ろうとは思はない。

 それに今、サバリッシュさんたちは俺に構っている暇ではない。

 すでに敗戦状態といえる現状はフレイムヘイズの士気はガタ落ちしている。まだ完全な敗北ではなく、逆転の手はあるらしいがそれを安易に受け取ることはできず、自分を含むか弱いフレイムヘイズたちにはすでに絶望の色が見え始めていた。陣内もその色に染まりつつあった。

 その空気にいち早く気づいた猛者は、弱気になっているものを叱咤していたが、あれは明らかに逆効果だった。そんな叱咤で希望の光を見つけ出し、再び立ち上がることができるのであればそもそも絶望なんてしないだろう。せいぜい失望かな。それはそれでなんかダメダメだが。

 陣内の空気が悪いとして、一人抜け出したりするフレイムヘイズも出てきている。中には一人で立ち向かおうとするものさえ。

 悪い意味で、フレイムヘイズは独りよがりだった。人それを自己中心的というのだが、誰も否定出来ないあたりが悲しい性だ。そして、新たな犠牲が生まれ、さらにフレイムヘイズを失い力の差が生まれ、絶望の色が濃くなる。見事な負のスパイラル。デフレスパイラルも目ではなかった。

愚痴愚痴と、フレイムヘイズについて愚痴ってるくせにその本人もフレイムヘイズ。しかも、逃げることしか考えてない。それだけじゃなく、今は自信で勝手に動いているとなれば人のことは言えたことじゃないのは分かってる。分かっているが……


「生きるためには死力を尽くさないとね。矛盾しているようで矛盾してないけど」

「今までは尽くしてなかったのかと、私は問いたいかな?」

「人の死力を利用して頑張りました」


 嘘は言ってないよ、嘘は。ちょこちょこっと他の人に頑張ってもらっただけ。ただそれだけ。

 現状を確認しながら、感覚を頼りに``法具``を感じる方向へと警戒を緩めず飛んでいく。

 見渡すかぎりは``紅世の徒``はみえない。

 存在の力を巻いて探知モドキもできなくはないが、下手な行動は逆探知となりえるので使わない、使えない。これはお忍びの旅であると言えるだろう。

 ``紅世の徒``に見つかることは絶対にできないのだ。

 いくらこちらには逃げる専用の自在法がある(しかない)とはいえ、トリックに気づかれ始めているのだ。下手な乱用はできない。もちろん、使ったからと言って必ず逃げれる保証だってないのだ。

 惰弱で脆弱なフレイムヘイズ、それがこの``不朽のモウカ``だ。

 あまり誇れるものじゃないけど。戦いの度に目から汗が出るけど。

 ここは戦場となっていた都とは少し遠く、また互いの陣地も遠いために警戒はさほど厳しくなく、探知といった自在法も仕掛けられていない。

 見晴らしがいい平原だった。


「天気がよくて平和なら寝っ転がりたいね」

「叶わない夢だねー」


 叶わないと言われてしまった。

 儚い夢なのかな……否定できないあたり嫌気が差す。


「戦争なんてなければいいのに」

「切実だね」

「懇願だよ」


 フレイムヘイズになったら願いが一つ叶うとかあれば良かったのに、と思う。

 あーでもそうか、そうすると俺は『命がある』という時点で願いは叶っちゃったのか。

 自分の持つこの``存在の力``は、自分の平和という願いのため、生き残るという、生きるという欲望のための力。

 それはフレイムヘイズも``紅世の徒``も変わらない。

 今、大戦を引き起こしている``棺の織手``も結局は叶わぬ願いを叶えるための力を欲して、欲した結果これが起きている。

 戦いが起きている。

 なんだ``紅世の徒``もフレイムヘイズも人も変わらないじゃないか。


「それでも互いに理解できず、しようとせずに争いは続くと、ね」

「うん? どうした?」

「気にしなくていいよ。ただ欲ってすごいなって話」


 なんだか哲学者になった気持ちだ。

 一纏めに変わらないとは言ったけど、その欲も目的も千差万別だし、手段や方法だって違う。こうやって争わずに叶えられる願いだってある。

 そう、それはまさに俺の願いのように。

 詩的な気持ちになっていると、先程まで感じていた感覚が近くなる。

 ``宝具``が近くにあるという証明であると信じたい。この``宝具``がなんであるかは知らないが、己の力になるということを切に願いたい。``宝具``に持ち主が存在せずフリーであって欲しいと淡い期待を抱く。いたとしても譲ってもらえないかと無駄な希望を仰ぐ。

 だが、もちろん。

 当たり前のことだが。

 分かりきっていたことだが。

 やはりこの世は思い通りにはいかない。



──希望は絶望に



──期待は裏切られ



──願いは叶わない











 その宝具は元は``紅世の徒``であったという。

 自由奔放なその``紅世の徒``はある人間にとある感情をいだいていたとか。

 その感情はとても人間らしく、そしてそれは``紅世の徒``らしくもあった。

 それは決して叶わぬ願いではなく、可能であればその感情はお互いに一緒に持ち続けることが出来ただろう。

 なにせその``紅世の徒``にはそれだけの自由になる力があったのだから。

 だが、その力は決して有益に働くとは限らなかったのである。

 ``紅世の徒``は恋する少女だった。

 しかし、その恋実らずに。

 自由になる翼を持っていた少女はやがて翼をもがれ、地に鎖をつけられる。

 翼をもがれた少女──``紅世の徒````螺旋の風琴``リャナンシーは``宝具``『小夜啼鳥(ナハティガル)』と名付けられる。

 少女は『それ』へとなる。

 それを手に入れ、力を注いだものは``自在法``を自由に操り、叶わぬ願いなどないのだという。

 それを欲するものは多く、そこに再び争いが起きる。

 大きな、とても大きな、この世を左右する戦いが起きる。

 ここに『大戦』の第二幕が始まる。

 幸か不幸か、彼らは、彼女らは、それらは巻き込まれていく。
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