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小説挑戦

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不朽のモウカ─第八話─ 

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 五体満足で生き残る事ができたのはまさに奇跡の結果と言えよう。もう二度は無いラッキーな奇跡。長きに渡る戦い、十年もの時を必死に戦ったことになる。

 しかし、結局未だに戦いが終わらないどころか、


「最悪の展開になってない?」

「『都喰らい』成功させちゃったからね。でも、予想よりは奮闘したほうだと私は思うかな?」

「最初ってそこまで酷かったのか……」

「今モウカが生き残ったことが何よりも奇跡かな」

「それは同じそう思うけど」


 サバリッシュさんの下した最終決戦は、こちらの奮闘虚しくも敗戦した。向こうの主軸を何人かを打ち破る事には成功したが、本命の『都喰らい』は防ぐ事はできなかった。これにより、アシズの存在の力がありえないほどの増幅を果たし、今この世界に居るどの``紅世の王``よりもあるのでは無いかと思うほど。

 『都喰らい』が成功したためフレイムヘイズ兵団は一時撤退を余儀なくされた。今は、その撤退後であり今後の方針をほとんどのフレイムヘイズが集まって決めているところである。

 フレイムヘイズ側にとっては絶望的なこの状況。俺ももちろん他人事ではなく、この危機的状況からどうやって逃げるべきかを算段し始めている。このまま状況に流され続けても俺に生きる術はなさそうなのが一番大きい。


「『嵐の夜』も見破られかけてるし」

「さっきの撤退の時は冷汗かいてたよね」

「そりゃ、あんな対策とられたらビビるよ」


 撤退作戦時、俺はサバリッシュさんの言うとおりに『嵐の夜』を発動させて撤退の手助けをした。サバリッシュさん曰く、俺のこの自在方のおかげでかなり生存率が高まっているらしい。このこと自体は俺も素直に嬉しい。味方が死なない減らないということは、俺自身の生存率にも直接繋がる。

 だが、先程自在法を発動した時に相手が今までにない対応をとり始めた。

 『嵐の夜』発動時に起きる風を遮ろうと動いたのである。

 この自在法で起きる風には相手の進行を妨害できるほどの威力は無い。台風並みの風は出るが、それはフレイムヘイズや徒にとっては大したことにないものだ。

 しかし、それをあえて防ごうとした。

 つまり……『嵐の夜』の正体に気付きかけていることを表している。

 『嵐の夜』の範囲内では風と雨が発生する。雨には俺の存在の力が紛れ込んでおり、それが直接相手に当たることによって存在の力を感知させづらくさせている。その雨を四方八方から相手に当たる為の風がある。

 重要なのは風ではなく雨でもあり、雨だけでもなく風も。風と雨の双方を防ごうとされていたら、こちらは成す術がなかった。

 だってこの自在法だけが俺のまともに戦闘に使える唯一の自在法だから。


「お先真っ暗な気分だ」

「最初から負けが決まりかけてる戦だけどね」

「そうじゃなくて、自在法の方」

「新しいのはまだ身にならないし?」

「それもだけど」


 この大戦は経験はたくさん積めた。最初は最前線で後半はほとんど撤退要因と斥候扱いだったが、それでもちょくちょく戦闘には参加した。それでここまで生き残れたのは大きな成果と成長といえると思う。

 それはいい。貴重な体験だった。スリルに溢れてた。迫り来る死の恐怖はすでに幾度となく経験したが、ここまでのことは無かった。これからの人生に大きく影響するだろう。

 しかし、重要なのは……


「ここで生き残るには。今後またこんな事が起きて生き残る保障は」

「どこにもないよ。生き残りたいなら──」


 ──もっと強くならないとね、モウカ。

 弱肉強食? そんなのは糞喰らえ。俺が弱いのをこの戦いで痛感した。もとより知っていたが、考えてた思っれた以上に思い知った。俺はこの戦いの中で最弱かもしれない。

 逃げるという事のみのを考えてきた結末でもある。

 だがそのおかげで生き残ってもいる。

 人間生きている間に何が功を奏するか分からないものだ。その偶然が身を救ったというか、自分で自分を救ったというか。何にしても、生きていることの素晴らしさをここに感じる。


「平和に暮らしていくためには、力が必要なんて物騒な話だよ。今は力を持っていても殺される可能性もあるし。いや、生存率のほうが低いのか」

「このまま戦闘に参加しても勝てる見込みは少ないと考えるのかな?」

「この状況に持ってきただけでも多大な被害を被ってるんだよ。敵がさらに力をつけた今は、さらにその厳しさも増しているし」


 正直言ってもう逃げ出したい。こんな死と隣合わせな戦場など俺には向いてるはずがない。元日本人かぶれだし、なんやかんやでもうフレイムヘイズになってから数十年だがそれでもやはり慣れきれない物は多い。

 その一つが戦闘であり、敵と自分の命を賭ける駆け引きであったりする。

 ただ、ひたすらに生き残るだけなら今までもしてきたように、姑息で、卑怯で、悪質な戦い方が出来るが、それそれで俺の中で何かが駄目になって言ってるような気がしなくもない。

 でもまあ、それを含めて


「逃げるという選択をとる」

「行き着く先はいつも一緒だね、モウカは。でも、私はそこがモウカのいいところだと思うよ」


 ある意味一途で惚れ惚れするよ、とウェルは褒めてるんだか貶してるんだか分からない事を言う。

 どちらにしろ、俺には強くなる事を求められているようだ。逃げるだけではなく時には戦うことを選ばなければならない。敵を討ち倒す力が必要となり今後生きるに当たって重要になるということだ。

 だが、肝心なのは何故俺がフレイムヘイズになってすぐに『逃げる』を選択したか。


「もとより戦いは好きじゃないとか、争いは苦手とかじゃなくて感性の問題何だよなぁ」


 元日本人故の弊害でもある。それこそよほど追い詰められれば戦いに重んじる事はあるだろう。今がいい例だ。だけど、そうじゃない限りは戦いなんて真っ平ゴメン。

 俺は平和を愛し、安全に生きたいだけなんだ!

 というのが本心にある。実に日本人的だ。

 この日本人的という言葉は非常に使い勝手がいいから多用しているが、これは魔法だからと同じくらいの効力を持っている気がする。つまり、日本人的と魔法は繋がる。イコールで繋がられる可能性が……ないか。


「それでどうするの?」

「うんと、何が?」

「これからだよ。強くなりたいんでしょ? なら戦闘の特訓とかこれからするのかな?」

「戦闘ねぇ」


 向かない、と思う。

 これこそ俺が日本人だからというのもあるが、そもそも性にあわない。これも同じく『逃げる』という選択肢に至る理由の一つである。

 だが現実を見るとそうは言ってられないのも事実。この大戦中も何度も逃げることが出来ずまともに正面から戦う事だってあった。その際にはこちらは攻撃は蹴り殴りしか出来ず、もちろんその蹴り殴りだって素人のものだ。通用するはずがない。

 味方が救援に入るのを待つまでひたすら回避というか、逃げ回った。

 こうやって振り返ってみると、戦闘場面で正面からの戦いらしい戦いはやっていないような気がする。まあ端的に言えば、味方が戦い役で俺が補佐役みたいなものだからこの大戦中はそれでいいかもしれない。

 だけど、その先は? 一人になったら? 避けられない戦いを一人で乗り越えなければならなくなったら?


「その時は死ぬかも……」

「モウカってあまり格闘とか得意そうじゃないもんね。苦手とかじゃなくて嫌いそう」

「平和主義者だからね!」

「戦時中に平和主義者って言う人って死ぬよね、大抵」


 そうを言われても本心からの言葉には違いないので否定はしない。

 格闘が駄目なら、自在法を使っての戦闘の参加ということになる。この戦い中に見て印象に残ったものはやはり「――だぁらっしゃ――っ!!」と言いながら雷の様なというか雷キックが一番。次に雷を落としての攻撃など、サバリッシュさんの攻撃にはやたらと迫力のあるモノがあった。

 が、到底真似できるものでは無いのであまり参考には出来ない。天候を左右するという意味では俺の自在法とも多少通じるものがあるような気もするが、俺の自在法には攻撃性が皆無。

 そもそも自在法とは、基本的に術者の考えや気持ちを反映したり、契約した``紅世の徒``の性質に左右される。その為他のフレイムヘイズは基本的には参考にはならないが、イメージ的な問題なら十分考慮する余地はある。

 アイディアの元になる事程度は出来る……と思う。


「そういえば、昔に攻撃性がある自在法を作ろうとした事あったっけ?」

「大した攻撃性でずに失敗しちゃったやつかな?」

「そうだったっけ……」


 本能的に手加減を加えちゃうというか、敵といっても相手を躊躇せずに攻撃するというのに抵抗感があるからかもしれない。

 だから攻撃を思い描いてそれを自在法で表現しようとしても、大したものができないもかもしれない。相手は``紅世の徒``人では無い、人では無いのだが……中には人型のやつがいるから扱いに困る。

 全員が全員、異形の形ならまだやり易かったというものなのに。


「自在法が駄目、直接攻撃もセンスなし。優れているのは逃げ足のみ……これってもしかして積んでる?」

「つんでる?」

「ツンデレ?」

「あー、そういことね」

「え? ツンデレ分かるの?」

「あれでしょ? 寒い地方にある──」

「良かった安心した。さすがにこの時期にツンデレって文化があったら大変だ」


 ある意味歴史的大発見だ。しかし、ウェルの言ってるのはおそらくツンドラだ。


「結局俺の生き残る道は逃げるしかないのか。それならそれで本望だけど」


 現実からの逃避行は比較的得意なほうだ。

 争いの危機察知能力は人よりも優れている自信はある。同じように、争いごとの巻き込まれ率にも定評がある──あった。過去の自分はよく友達の喧嘩に巻き込まれ、仲裁に一所懸命にあったこともあれば、机の下で震えて隠れていた事もある。

 そんな時はよく現実逃避したものだ。しなくちゃやってられない。

 まあその時は必ず最初に「何で俺が」と呟くのを忘れない。

 いつだって被害者は平和主義者だ。


「一つ提案」

「どぞ」

「前にも言ったけど、``宝具``という手があるよ。あれの中には攻撃性のものはおろか、ありとあらゆる自在法でも紡ぐ事のできる優れものすらもあるんだよ」

「それはすごいね」

「もちろんそれだけじゃなくて、他にも想像できない様な物がたくさんあるし、``宝具``を使う事によって力をカバーするのも珍しい事じゃないしね」

「でも、そんな``宝具``を手に入れるなんて難しいんじゃないのか?」


 この難しいには二つの意味がある。

 優れた物があるということは、それを求めるものも無数に存在し、所有している可能性すらある。その場合は奪ったり盗むしかない。もちろんそんな行為が穏便に済むわけがないので、結局は奪い合いとなり支離滅裂。

 もう一つは、貴重だからこそ``宝具``なんて言われるのだから見つけるのが困難なのでは無いかという話。

 この二つ、どちらも俺で成し得ない厳しい条件だ。戦う事ができないから``宝具``を求めたのに戦わなければ手に入らず、使える自在法がないから``宝具``を求めたのに見つける術がない。

 それに、こんな便利な``宝具``なのだから本来ならそれの探索用の自在法があってもおかしくじゃないのではないか? しかし、そのような自在法の話は聞いたことがない。

 聞いたことがないだけである可能性もあるが……


「ふふ、モウカ。ねえ、モウカは何を望むの?」

「なんだよ急に……望むものね。そんなの決まってる」

「そうだよね。そうじゃなくちゃね! なら、話は簡単だよ。思いは力に出来る。強い思いは自在法に出来るんだからね」

「……出来るのか?」

「それはモウカ次第だよ」

「そっか」


 なら必死に願ってみるのもいいかもしれない。

 生き残る。

 なんとしても生きて人生を謳歌する。

 戦争を逃げ切り、生き延びて。

 理不尽な戦いから自らの力で脱却する。

 俺に力は無いのだから、力のあるモノを借りればいい。

 だから、俺は──海色の光が身体を包む。存在の力が自分の周りに感じられ、そして霧となって散っていくのが分かる。

 これはつまり……


「うん、さすがだね。こういう姑息さというか、生きるのに必死なのがいいね。ゾクゾクするよ」

「……うるさい」

「褒めてるのに」

「褒めてるのか? まあいいか、そんなことより」

「感じるね」

「ああ、近くに……」

『とんでもない``宝具``がある』
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