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ありのままに─第1話─

「今日からこの町が、私達の町よ」

「海鳴市ね。海が近くにあっていいね、母さん」

「そうね、冬は冷えるかもしれないわね」

ふふふ、と笑う母さん。
父さんが死んでしまってあまり笑うことがなかった、母さんがこの町についてすぐに笑った。
まぁ冗談交じりだったけど。

それでも、俺としては嬉しかった。
前の町にいたころは、笑いかけては何かを思い出して笑うのを止めてしまうことが多かった。

きっと、この町では再スタートできると思う。

母さんはここで新たな一歩を踏み出そうとこの町にやってきた。
その気持ちは俺も同じで、何が言いたいかというと、なんだかんだで期待するところがある。


「でも、何でこの町に来たの? 」


そういえば、この町を選んだ理由を聞いてなかった気がした。
俺としてはどんな理由でもいいんだけど、それでも一応は聞いてみるべきかな、と。


「なんでかしらね、風の赴くままって感じかしら」


それでは就職先がないじゃないか母よ。
はなはだ迷惑な話だった。


「冗談よ、母さんの古い友達がいてね、そこでアルバイトしながら探すのよ」


どっちにしろ就職先はないじゃないか。
仕事のない人が風の赴くままとか言うなよ。

しかも、就職じゃなくてアルバイトですか。


「この時代でしょ、アルバイトだって見つけにくいのよ?
それを考えたら、知り合いのところで優遇されてのんびりとバイトしながら、就職先を探せるのは天国だと思うわ」

天国は行きすぎなような気がするけど、まぁ母さんがそれで幸せを感じて笑えるのならそれでもいいかな。
それで生きていけるという前提があるけど。


「それなら大丈夫よ。住む所は確保できてるわ」


なんか引っかかる言い方だけど……
住むところはって、衣食住のうち住しかないじゃないか……
しかも、衣食住の中で一番難易度? が高い


「その通りよ、よく分かったわね。食事などはその古い友達がなんとかしてくれるって」


母さんの友達はとんだ迷惑じゃないのかな? それは。
見ず知らずではないにしろ、お人よし過ぎないかと思う。


「そうなの、お人よしなのよ。あそこは一家揃ってね。まぁおかげで私達は助かるんだけど」


一家揃って……まぁいいか。
俺が考えてもどうにもならないよね。なるようになるさ。

今はこんなにも笑顔を見せてくれるようになった、母さんに従うだけだね。

その一家には多大なる迷惑をかけるけどさ。


「じゃあ、まずはその古い友達、高町さんの家の人に挨拶に行こうね。家に行くのはそれからか」

「分かったよ。どんな家なのか気になるけど、お世話になる人たちに挨拶のほうが大切だよね」

「ホント、小学校1年生のわりにしっかりしてるわね、私の子って」

「母さんが頼りないからだよ」

「私の教育が正しかったということね」

「ああ、もう分かったから行こうよ」

「そうね、こんなところで親馬鹿してても仕方ないわね」



あれ、親馬鹿だったのか……
どこに親馬鹿の要素があったのかわからないけど。

ん? ということは俺が褒められた……のか?
そう考えると嬉しいような。


「あら、顔を真っ赤にしちゃって、そんなに嬉しかったの?かわいいわね~
まぁ行くって言っても、もう目の前なんだけどね」

「はやっ!てか、いつのまに!」


この母親はよく不思議なことをしでかすんだよね、全く。
俺が話に夢中になってただけだと思うけどさ。


「じゃあ、行くわよ~~」


そして、なぜそんなに張り切っているんだ、母よ。


「ぽちっとな♪」


そしてノリノリだね!


「はい、どなた様ですか?」


インターフォンから、軽快な声がする。
声を聞く限りでは女性のようだ。


「私よ、早くあけて」


すっかり上機嫌の母さん。
父さんが死んで暗かったころの母よ、帰ってきてくれ、元気な方がいいけどさ。

それほどまでにここの人に会うのは楽しみなのかな?


「あいちゃん?待ってたわよ」


声だけで誰か分かるってすごいね。
ん?あいちゃん?


「相沢愛子であいちゃんね。ありきたりよね~なんか悔しい」


どこに悔しがってるのか、いまいち分からないね。
普通の名前だからなのか? 普通のあだ名だからなのか?


「久しぶりね、お葬式のとき以来かしら? 元気だったって、元気なわけないか。
旦那さんは残念だったわね」


葬式……ああ、全然記憶ないからわかんないや。
でも、そうか、葬式に来てくれたってことは諸事情知ってるわけね。
だから、助けてくれるのかな。


「葬式のときはありがとうね。でも大丈夫よ。この町で何もかもリセットしようと思って来たんだから」


うん、あながち間違ってないけど、今までの思い出とかもリセットするつもりなのかな?
それは父さんとの日々も忘れると言うことじゃ……

やめよう。
母さんの言葉をいちいち気にしてたら駄目だ。


「その言葉聞いて安心したわ、大丈夫そうね」


安心しちゃまずいと思います。
突っ込みどころ満載でしたよ?


「立ち話もなんだから、中に入って頂戴」

「うん、そうさせてもらうね」

「すみません、お邪魔します」

「いらっしゃい、しっかりした子ね」

「当たり前でしょ?私の子よ」


あ、そこやっぱり威張るんだ。
俺としては嬉しいんだけど、なんていうのかな……考慮して欲しい?

発言はもうちょい慎重にね。


「そうだったわね、それにあの人とあいちゃんの子だもんね。ええっと名前は─」

「相沢竜也です。簡単なりゅうに、なりと書いてたつやです」

「そうだったわね。初めまして竜也君、これからよろしくね」

「いえ、こちらこそ。母さんと自分が世話になります」


これからお世話になる人だからね、しっかり挨拶しないとね。
それに初対面だからイメージもよくしないとな。

まぁそんなことを考える時点で無粋な気がするけど。


「母さん達だけで話してないで、私達にも紹介してよ」


そう言うのは、メガネをかけたお姉さん。
自分たちがいい加減に蚊帳の外だったので加わりたかったようだ。


「そうね、じゃあ、今度はうちの家族から紹介するわね。
あいちゃんは知ってるだろうけど、竜也君は知らないだろうから、私から挨拶するわね。
私は高町桃子よ、よろしくね。それで、私の横に座ってるのが士郎さん。私の夫よ」


母さんと古い友達なんだっけ、母さんもたいがい若作りだと思うけど、この人もまたすごいな。
そして、その旦那さんもまた……常人じゃないオーラを漂わせているし。


「じゃあ、今度は私ね。私は美由紀、高町美由紀ね。お姉ちゃんでも何でも好きなように呼んでいいよ」


さっきのメガネをかけたお姉さんだ。
陽気で明るい感じだね。なんかしゃべりやすそうな人だなぁ。


「じゃあ、次は俺だな。高町恭也だ、一応長男だな。よろしく」


ちょっと無愛想な兄ちゃんって感じだ。
それでもどこか温厚そうなかな?


「な、なのはは高町なのはって言います。よ、よろしくお願いします」


ちょっとおどおどしてる子だな~


「なのはは竜也君と同い年よ。仲良くしてあげてね」


しかも、同い年ときたか。
見た感じだと一番絡みにくいんだけどね。


「ついでにいうなら、同じ学校になるわよ」

「「え?」」

「だから、竜也も明日からなのはちゃんと同じ、私立聖祥に通うのよ」

「え、だってお金ないのに私立って、普通無理じゃない!?」

「あそこの理事長と知り合いでね、竜也の成績見せたら余裕でOKしてくれたわ。
しかも、成績が良い限りは学費はただよ!頑張ってね」


頑張ってねじゃないよ!
色々と突っ込みどころ満載だよ!
どれだけ人脈あるんですか!?母よ!

どんな知り合いだよ、全く。

前からそうだったけど、本当に謎の多い母だ。


「にゃはは、よろしくね、竜也君。私のことはなのはでいいよ」


さっきとはまるで違う雰囲気のなのは。
ちょっと陽気と言うか、元気な女の子って感じだ。
これなら親しくできるかもって、そうじゃなくて!


「あら、もう仲良しになったの?竜也君なのはのことよろしくね」


ああ、桃子さんまでか。


「じゃあ、挨拶もほどほどにして今日は帰ろうか、私達の家に!!」


なんで、この人の目はこんなにもキラキラしてるんだろう。
本当にこの間まで人生の絶望と言う雰囲気を発していた人だろうか……

でも、この町にはそれだけのものがあるということなのかな。

でも……うん。
やっぱり、母さんはこうやって無鉄砲で生き生きしているほうが、俺は嬉しいな。



「ああ、そういえば」

「どうしたの?母さん」

「うん、士郎さん」

「どうかしましたか?」

「息子の件、お願いしますね」


うん?俺のこと?


「ああ、はい、分かりました。でも、いいんですね?」

「とことん苛めてください!なに大丈夫です、この子は私と父さんの子ですから」

「そう言われると説得力がありますね。きっと立派な剣士にしますよ」


え?立派な剣士?


「あら、知らなかったかしら?貴方のお父さんは御神流の使い手の一人だったのよ?」

「は?使い手?」

「そう、歴代でも1.2位を争うほどだったのよ」


い、意味が分からない。


「だからね、貴方も剣士になるのよ!竜也!かっこよかったお父さんのように」

「は!?」

「にゃはは、頑張ってね。竜也君」

「ということだそうだ。頑張ろうな竜也君」


ということはどういうことなのだ!?

「明日は朝5時にここに集合な」


そうか、本当に今までの生活とはおさらばなんだね。

父さん、俺だけは貴方の存在を忘れないよ。
そして夜空を見上げる俺。

まだ、夕方で夕日だし、そもそも見上げたら天井だけどね……
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