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ありのままに─第2話─

午前5時。一応言われたとおりに高町家へやって来た。


「おはよう、竜也君」

「おはようございます、士郎さん、美由希さん、恭也さん」

「はい、おはよう」

「おはよう」


三者三様はとはこのことを言うのかな。

「ところで、竜也君」

「はい」

「君は本当に御神流を習いたいと思ってるのかい?昨日は成り行きでああなってしまったが、やはり本人に意思が無ければ、な」


確かにその通りだろう。
やる気が無ければ意味は無いだろうし。

昨日は確かに母さんにあんなこと言われて半強制的に習うことになった。
自分の意思はほとんど無視だとしても、俺も別に嫌と言うわけでもなかった。

元より、父さんが剣術を使えたことにも驚いたが、
それ以上に今は亡き父さんの残したものの一つだと思い、興味がある。


「やります。これは自分の意思で」

「そうか。なら、教えてあげよう」

「はい、お願いします」


結局は教えを請うことになるんだな。
たぶん母さんも分かってて言ってたと思うけど。

にしても、剣術か、夢というかまさか教えてもらうことになるなんて夢にも思わなかったな。
昔はあんなに平凡な生活だったもんな。


「よし、まずは町内一周だ!頑張って付いて来い」

「え、あ……ちょっと」


この町に来てまだ一日だ。
町のことは全然知らないから、見失ったら一巻の終わりじゃないか!

それが小学1年生に対する教え方ですか!?
血も涙も無いですよ。

そもそも町内一周という時点で、かなりハードなんだけどさ。

そんな事を思いながらも、一応は頑張ってみる俺はすごいと思う。
見失わないように必死に食らいつく。


「はぁ…はぁ…」

「す、すごいな。結構本気で走ったんだが、付いて来るとは……」

「すごいね、まだなのはと同じ年なのに」

「ああ、予想以上だ」


伊達に父さんの息子じゃないですよ。
父さんと遊ぶとなぜかすごい体力使いますから。

遊んでもらってるはずなのに、遊んであげている状態になることもしばしばだったし。
なので、体力はそこそこあると思う。


「意外と基礎体力はあるみたいだな。じゃあ、次は道場で素振りだ。
まだまだ朝は長いぞ、はっはっは」


だから、それは小学1年生に対するトレーニングじゃないでしょ……
それでも、素振りってなんだか、楽しそうだよね。

ああいうのってテレビとかで見てたら、すごいかっこいいし。


「竜也君は刀……木刀を持つのは初めてか?」

「はい、初めてです」


家には木刀もあった気がするけど、振り回そうとは考えたことも無かった。
俺はどちらかというとインドアのはずだからね。


「じゃあ、まずは型からだ。こうやって……」

「こう……ですか?」

「そうだ。あとは、二人のように素振りをする」


道場の奥の方では恭也さんと美由希さんが素振りをしていた。

それを手本にか……
見ながら試行錯誤を繰り返す。
間違っていたり、改善すべきとこがあれば士郎さんが修正してくれる。


「うん、中々いい剣筋だ」


そして、良かったら褒めてくれる。
こういうのが理想の師匠というのかな。

褒められるとやる気が出るし、頑張れる。


「ハッ……ハッ……ハッ」

「よし、このくらいにしよう」

「「「はい」」」

「しばらくは今日みたいに竜也君に付きっ切りで教えるから、よろしくな」

「お願いします」

「うん、いい返事だ。じゃあ、順番にシャワーを浴びて朝ごはんにしよう」


そんなわけで、初めてのトレーニングが終わった。
素振りは思ったより、面白かった。

たぶん、初めてのことっていうのが大きいんだろうなぁ。
やってて時間が経つのがあっという間だったからね。


「じゃあ、シャワー浴びる順番が来る前にリビングにって……は?」

「おはよう、竜也。朝の鍛錬お疲れ様」

「お疲れ様、じゃないよ!!なんでここに?」

「だって、朝昼晩全部面倒見てもらうのよ?」


さも当然のように高町家に居座る母。

そうか、そうだった。
油断してたよ、この母を。

お世話になるって本当に住以外のことだったのか?


「よく考えて見なさいよ、私たちの家を……」


ああ、そうだった。
昨日帰った家には、ベッドと最低限の家具のみ。
冷蔵庫すらなかった気がするぞ。


「まぁそういうことよ。本当に世話になるわね」

「いいのよ、そっちも大変だったんでしょ?それにお店のほうもよろしくね」


ああ、例のアルバイト先ってこのことかな?


「翠屋って言ってね、高町一家が営んでる美味しい喫茶店よ。そこでアルバイトさせてもらうの」


やっぱりね。そういうことだと思ったよ。


「何から何まですみません。本当にお世話になります」

「本当出来た子よね。いいのよ、子供は気にしなくて。それよりどうだった?」

「そうですね、楽しかったです。結構夢中になっちゃって時間も忘れるぐらいでした」

「そうだな、筋も良いし、美由希以上の才能かもしれないな」

「あ、士郎さん。あんま褒めないでくださいよ。才能とか言われても困ります」


初めてやったことにいきなり才能があるといわれても困る。
俺はあくまで興味があったから、やってるだけなのに。


「あるものをあると素直に評価したんだが、そうか、すまなかった」

「あたりまえでしょ、だってこの子は私の─」

「いい加減にしてよ、母さん、いい加減しつこいよ?」

「え、ああ。ごめん」


この母、気付いたら自慢ばっかしなんだから。
息子の自慢といいながら、自分のことだし。

いや、俺は嬉しいよ?
嬉しいけど、この母には常識と限度を覚えて欲しい。


「竜也君、シャワー浴びてきたらどうだい?」

「あ、はい。じゃあ浴びてきます」

すっかりシャワーのことを忘れていたよ。
これも全てあの母のせい……

でも、本当にいい笑顔を浮かべるようになったな。


お風呂場に向かうと、先約がいた。

「あ、竜也君今からシャワー?」

「はい、そうです」

お風呂上りと言った様子の美由希さん。
ということは、さっきまで入ってたのは美由希さんかな。


「あのさぁ、一つ聞いていい?」

「なんですか?」

「どうして、剣術やろうと思ったの?」


ん、意外に真面目な質問が来た。
と言ったら失礼なのかな?

この人はなんかいつも陽気って感じがするからなぁ。


「興味本意ですね。父さんがやってた、剣術と言うのに興味があって」


事実それだけの理由しかない。
別に強くなりたいとかそういうのじゃなくて、単純な興味。


「それなら、一つ忠告。まだ竜也くんには分からないと思うけど、
強くなったらその力の使い道をどうするか今のうちに決めたほうが良いよ?」


強くなったときの使い道?
まだ、強くなるとも分からないのに?

それにいきなりこういう話って……


「竜也君は才能あるよ? 見ててそれが分かるほどだからかなりね。
だからこそ、その力の使い道をちゃんと見つけなくちゃ駄目。
たぶん、私から言わなくても、そのうち恭ちゃんとかお父さんから言われると思うけどね」


使い道、ね。
どうだろうね、考えたことも無かったよ。

そもそも、今までは先のことを考える余裕もなかったし。
今を生きることが精一杯だった。


「ああ、そんなに考えなくていいよ。まだ先があるんだから。ほら先にシャワー浴びちゃいなよ」


それもそうかな。
強くなるかどうかも分からないしね。

いくら才能あると言われてもね……

まぁいいや、とりあえずシャワー浴びよう。
そういえば、メガネをかけてない美由希さんは綺麗だったなぁ。


「それじゃあ、学校行こうか、今日は職員室に挨拶も行かなくちゃいけないから、母さんも一緒に行くわ」

「うん、了解」

「明日からはなのはちゃんと一緒に行ってあげてね」

「え?どうして?」

「なのはちゃんが行きたがってたわよ」


一緒に行きたがってたね。
まぁこっちに来て友達もいないから別に良いかな。

それになのはって意外とかわいいんだよね。
というよりあの一家全体的に綺麗な人だから、将来的に考えたらなのはも有望か。
よくよく考えるとすごいよな、あの一家。

綺麗だしかっこいいし、剣術だし、めちゃくちゃお人よしだし……
まぁそのおかげで助かってるんだけどね。

それに新しい学校か……
前の学校は父さんが死んじゃったから全然いけなかったからね。

いろんな意味で楽しみだなぁ。
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