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小説挑戦


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ありのままに─第4話─

この町に引っ越してきて、すでに一ヶ月が過ぎていた。

相変わらず、朝の鍛錬、学校、鍛錬と言った感じだが、とても充実していると言える。

最初こそ鍛錬は士郎さんが付きっ切りで見てくれていたが、
今は恭也さんと美由希さんの二人で見てくれている。

元より、士郎さんは喫茶店翠屋の準備に朝が忙しいからだ。
そんななか最初だけでもわざわざ面倒見てくれた、士郎さんはとても面倒見がいいと言えるんじゃないか。

その翠屋で母さんも一緒に働いているわけだが、面倒をかけていなければいいな。
たぶん無理だと思うけど。

ただ、母さんは料理腕も非常に良かったりするわけだから、その面では大丈夫と言えるだろう。
問題は接客だが……

まぁまだクビになってないなところを見れば大丈夫なんだろう。

話が逸れた。
朝の鍛錬だが、美由紀さんはどちらかと言うと身内に甘いタイプだと思ってたんだが、
剣術でも多少はそういう面が見られるものの、厳しい人ではあった。

それ以上に、恭也さんは厳しく、妥協と言うものがない。

そのせいで、恭也さんに見てもらった最初の一週間は筋肉痛に……
ましてや授業に集中するのも厳しかった。

そうそう、授業といえば学校だ。
一ヶ月経った今ではすっかり馴染めている。

それもこれもあの三人娘のおかげだけど、口に出して礼を言うのは恥ずかしいので心のうちに黙っとくとする。
実際に言ったら、感謝しろとか言いそうだしね、アリサが。

そんなわけで、一ヶ月間つつがなく終了しました。


「竜也君は夏休みの予定あるの?」

「特にはないね~というより考えたこともなかった」


そして、気付いたら夏休みの直前だったんです。
今日の授業の最後に成績表が返されて、とりあえず成績はそこそこ良かったので今ホッとしてました。
ついでに言うなら、この短い一ヶ月を振り返ってた、と。


「それなら、なのはの家に泊まりに来ない?」

「泊まりに来ない? ってしょっちゅう行ってるじゃん。というより毎日」


ここに来てからというものの、なのはの家にいるのがほとんどだった。
自分の家にいるときは寝るときぐらいのもの。


「へぇ~あんた毎日なのはの家に行ってるんだ」

「アリサは知ってるだろ? ここに来るまでの経緯話したわけだし」


ここにいる三人娘には俺の過去というほど大業なものではないが、経緯を話した。
というより、聞かれたから答えただけだけどね。


「ほら、竜也君の家は特殊だから、しかたないよ。アリサちゃん」

「それでも、限度があると思うけど」

「アリサの意見には同意せざるを得ない」


俺もそう思うぞ。
あの母の図々しさといったら天下一品だ。


「じゃあ、みんなでお泊まり会しようよ」

「うん、それならいいわ。私の家とすずかの家でもやって、計三回ってとこかしら」

「アリサちゃん、勝手に私の家のまで決めないでよ。でも、いいよ」

「待て待て、女の子3人に男の子1人って問題じゃないか? だから俺は断─」

「私達に手を出すわけじゃないんだからいいじゃない。
それにもし手を出したら、各方面から焼けどじゃ済まされない怪我を負うわよ」


もちろんそんな下心があるわけじゃないが、確かに手を出したら怖いな。


「まぁその件は置いておいてだ。俺は予定も何も分かっちゃいないから、分かってからということで」

「そうね。後日改めて決めましょう」


俺の夏休みの予定は何も決まってないからね。
仮に決まっていたとしても、知らないからね。

そんなことを考えてる最中、俺のケータイが鳴る。


「どうしたの? メール?」


音に気付いたすずかが率直な疑問を口にする。


「ん、母さんからだ。ええっと『今日はちょっと大切(笑)な話があるからまっすぐ家に帰ってきて』だってさ。
そういうわけだから、先に帰るよ」


(笑)の使い道が微妙に間違っていて、本当に大切な話なのか分かりづらいが、
まぁ直接家に帰るのが珍しい俺にとっては十分に大切な話であると理解できた。


「そう、じゃあ、予定が分かったら連絡頂戴ねって竜也君ならなのはの家で会うね」


にゃはは、と笑うなのは。


「でも、私達には連絡しなさいよ」

「分かってるよ」

「うん、じゃあ連絡待ってるね、竜也君」

「ああ、じゃあね。みんな」


「またね~」というみんなを背にして、
おそらく学校から直接、家に帰るのは初めてであろう帰路をどんな話なのか考えながら帰った。





「お帰り~竜也。成績どうだった」

「一応はノルマ達成だよ」


どれどれと、成績表を覗く母さん。
そして「おみごと」の一言をいただきました。

その次の言葉は、


「さすが母さんと父さんの子ね。うん、私たちの誇りよ」


と続く。もはやお決まりのセリフとなっていた。


「それで、大切な話って何?」

「あれ、もう本題に入っちゃうの? もう少し世間話したかったんだけどな~」


世間話ならいつも聞いてるよ。


「まぁまぁそう言わずにさ。でも、そうね。竜也は今気になっていることってある?」


気になっていること?
それこそ今話そうとしてる大切な話かな。


「それもそうよね。うん、分かった。話の内容なんだけど二つあるの」

「二つ?」

「そう、一つは‘魔法’のお話。もう一つは母さんと父さんの話」


魔法? 何の前触れもなくでてきたその言葉の意味がよく分からなかった。
そして、母さんと父さんの話……なぜ急に、と思う。


「それはね、父さんと母さんが竜也が小学校に入ったら話そうと決めてたからかな。
だから、本当は入った瞬間に話そうと思ったんだけど父さん死んじゃったでしょ?
それからバタバタとして落ち着かなかったから、今に至るの」


理由はなんとなく理解は出来たが、
大切な話の意味はよく分からなかった。

そもそも、なぜ魔法と母さんと父さんの話が並列に出てくるのかも。


「それは、今から話すことで分かるわよ」

「それもそうだね」

「はい。じゃあ、問題です。魔法はこの世界に存在るでしょうか?」


魔法の話をするというのに、その質問はないじゃないのかな?
この話をするにあたって魔法があるのは大前提だ。


「ある。じゃなくちゃ話が進まない」

「仮にあったとして、竜也は魔法を認められる?そんなものありえないといって否定する?」

「愚問だよ。あるから話をするんでしょ?」

「そう、そうだね。では正解を発表します。
『魔法はこの世界には存在しなくて、それでも魔法はある』
この意味が分かるかな?」


一言言おう、分からない。
そもそも矛盾してるよ。あるのにないって。


「竜也、こんな言葉聞いたことない?
『この世には無数の世界が存在していて、この世界はその一つに過ぎない。』
という言葉。答えはこの中だよ」


この世には無数の世界がある?
それはつまり平行世界といったようなパラレルワールド言うことなのかな?
小説や夢物語、漫画にはありがちの設定だけど。


「そうね、ありがちよね。でも、平行世界は惜しいけど違う。
答えは、魔法の存在する世界があるということ。そして、母さんはそこを知っているということ」

「なんで?」


当然の疑問だと思う。なんで母さんはそんなことを知っていいるのか。
なぜ、この世界に住んでいるのに……


「それはね、私がその世界出身だからね。その世界では魔法を使う人のことを魔導師っていうんだけどね。
母さんもその一人だった。そして、研究者の一人であったのよ」


それは、母さんが魔法を使えるということだった。
魔法を使えるというのは、なんだが憧れるものがあった。
それはこの世界にないもので、ファンタジーに過ぎないと思ってたからだろうか。


「まぁ魔法については大まかに言えばそんな感じね。詳しい話しはまたあとで。
次は父さんと母さんについて話すわね」


俺はなんとなくだが、こっちのほうが本題のような気がした。
魔法の話はあくまでこれを語るために必要だった話という感じかな。


「さっき言ったとおり、母さんはこの世界の人じゃないわ。
でも、向こうの世界でちょっとやらかしちゃってね。追い出されちゃったの。
それで命かながら辿り着いたのがこの世界。魔法のない世界だった」


そこで、運命の人に出会ったの、と続ける。

確かに命かながら逃げたところに助けがあればその人は運命の人に見えるだろうなぁ。


「それが父さんよ。熱心に怪我の介護をしてくれてね。一目ぼれだったわ。
そこからは母さんがもうアタックであっという間に結婚。そのときかしらね、桃子に会ったのも」

ちょっと懐かしげに遠くを見ながら話す。

なるほど、いつごろの話か分からないが桃子さんは父さんの親類縁者だったということかな。
というよりは桃子さんと結婚した士郎さんがか。
父さんと士郎さんはおなじ流派みたいだからね。


「もちろん、父さんには私が魔法を使えるのも知ってたし、事情を全部話したわ。
でも、他の人に話はしてない。まぁ話をしても信じてくれるかどうかは怪しいけどね」


この言葉の意見するのは、魔法のこと、母さんのことは他のどんな人でも話しちゃ駄目ってことかな。

この世界には魔法がない。
だから本来は話す必要もないことなのだろう。もちろん知る必要もない。

でも、俺には話をした。
それが一体どういうことなのか……


「じゃあ、大切な友達にも話さないのに竜也に話す理由を言うわね」

「うん」

「竜也はしっかり私達の血を受け継いだ。
どういうことかというとね、父さんからは天性の剣の才能を、母さんからは魔導師としての才能をしっかり受け継いでるわ」

「剣の才能と、魔導師としての才能?」


よく分からなかった。
どうしてそんなことが分かるのだろうか?
それとも持っていたらまずいのか?

そのことが自分にとってどう影響すると言うのか……


「そう。剣の才能はこの間、士郎さんが言ってた通りよ。それは私から見るよりも確か。
それで、魔導師のほうなんだけど……」


はぁとため息交じりの深呼吸をしさらに続ける。


「たぶん、かなりの魔力を持ってるわ。これも実際に測ってみないと確信は出来ないけどね」

「だから?」

「うん、これだけじゃわからないわよね。
ようするに、私達は竜也にはありのままに生きて欲しいの。自分の思ったままに選んで、先を進んで欲しいの。
この二つの才能はあなたの力になるもの。力は選択肢を広げるわ。今までになかった未来も、可能性もでてくる。
だから私達は竜也に、この二つの力を使いこなせるようになって欲しい」


言いたいことはなんとなくだけど分かった。
ありのままに生きて欲しいことと。
せっかく持って生まれた才能を使って可能性を広げ、未来を生きて欲しい。
たぶん、そういうことなんだと思う。


「でも、私達はその選択肢。力を使うと言うことも竜也自身に決めて欲しい。
ここまではあくまで、死んじゃった父さんの意思でもある。
でも、この先は達也の意志で決めて欲しい。どうする?竜也は持って生まれた才能を背負って生きていく気はある?」
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