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小説挑戦


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ありのままに─第7話─

なのはが電話に出て、その後切ってからここに来るまでは早かった。

俺の家からなのはの家に行くには徒歩で最低でも30分かかる道のりだ。
それをあろうことか、運動の苦手なのはが20分で来た。

これはおそらく、走ってきたんだろう。
ここに来てからもしばらく、息切れが止まらなかった事からも予想して。


「ま、まぁ落ち着けよ、なのは。水でも飲んでさ」

「はぁ…ありがとうね。竜也君」


俺の言葉に甘えて、コップ一杯に入った水を一気飲み干す。
本当に相当焦ってたんだな。

服のあちこちに泥とか葉っぱも付いてるし。


「ほら、泥が付いてるから払ってあげるよ」

「え、あ…うん。ありがとう」


一瞬戸惑ったものの、すぐにお礼を言う。

服を払ってると、ところどころ汗でぬれているところが分かった。
そして、時々「にゃっ」なんて声を上げる。

何ゆえ猫?

それにしても無理したんだろうな。
こんなに汗をかくというとことは、運動が苦手なのに。


「ほれ、タオルだ。汗を拭かないと風邪を引くぞ」

「何か何までありがとうね、竜也君」

「別に気にしなくていいぞ。普段世話になってるからな、なのはにはね。
そのタオルも洗って返さなくてもいいぞ?」

「え、うん。洗って大切にするね!」


大切にするって、別に普通のタオルだぞ?
それにあげるって意味でもなかったんだけどなぁ。

なのはは洗って返さなくてもいいという言葉を、返さなくていいと誤解したみたいだけど。
でも、すごく嬉しそうな顔を見ると、返せと言う気にもなれないな。


「あんたってなのはには優しいわね。私の時とはちがくない?」

「そ、そんなことは無いと思うけど」


俺は二人に対する態度を変えたつもりはないんだけどなぁ。


「そ、そうなんだ。なのはには優しいんだ……ありがとうね。竜也君♪」


なのはよ、そこは感謝するとこなのか?

普段の俺がなのはに対する扱いを思い出してくれ……
いつもいつだって、俺はなのはをおもちゃのような扱いばっかしだったぞ?

アリサと一緒に弄ったり、アリサと一緒に煽ったりって、
アリサも共犯者じゃないか!


「まぁいいわ、許してあげる」


人に優しくすることに許可が必要なんですか?

俺はなのはが来ることでこの状況を打破できると思ったが、とんだ爆弾だったようだ。

なんか悪化してるような気がしてならない……
気のせいだよね?






─なのはSIDE


竜也君から電話が来たときは焦った。
何を焦ったかというと、昨日まで連絡が付かなかった竜也君の方から電話がきたから。

思わずワンコールででちゃったもん。
返信が来ないか確認してたときだからちょうどよかったの。

それで、話を聞いてみるとアリサちゃんと二人きりって言ってて、
余計に焦ったの。

だって、アリサちゃんだけずるいよ。
一人で竜也君と遊んで、なのはだって竜也君と遊びたいの!

だから、なのはは急いで竜也君の家に来たんだ。

自分でも驚くほど早く走れたけど、たくさん転んじゃった。
そしたら、それに気付いた竜也君が泥を払ってくれて……

くすぐったくて「にゃ」なんて声上げちゃったけど、竜也君の手は優しかったなぁ。

そのとき、ちょっと顔が熱くて真っ赤になっちゃった思うけど、
背中を向けてたから恥かしい所見られなくて済んだの。

しかも、竜也君からタオルのプレゼントなの。
初めて竜也君からプレゼントもらえて嬉しかった。

アリサちゃんが言うにはなのはだけに優しいって。
嬉しい。

でも、あれ……?

確か竜也君っていつもなのはで遊んでなかったっけ?
学校ではアリサちゃんと二人で遊ばれてたような気がするけど……

よく考えらば、なのはの家にいるときもどことなく、からかわれているような気がするの。

優しい? あれ?

う~ん、でも今日は優しいのは事実だから、いいかな。

そういえば、アリサちゃんって何時からここにいるのかな?


「アリサは何時からここにいるんだ?
俺が起きたときからすでにいたけどさ……」


あ、竜也君も同じこと考えてたの。


「7……時」

「え?」

「朝の7時からよ!何? 居ちゃ悪かったの? おかげで竜也の寝顔が見れたわよ!可愛かったじゃない!」


アリサちゃん竜也君の寝顔見たの!?
なのはも見たかったなぁ


「いやいや、おかげで見れたって、怒ってるのか、褒めてるのかハッキリしてくれよ。
それに、男に可愛かったといわれてもあまり嬉しくないぞ」

「う、うるさいわね。そこは気にしなくていいのよ」


いま、竜也君の本音が聞こえた気がする……
竜也君も朝から大変だったんだね。

でも、これがなのはのいつもの気持ちだよ?
いつも竜也君とアリサちゃんに遊ばれる。

あ、やっぱり竜也君はいつもなのはで遊んでる。

よし、今日は仕返しをしてやるの。


「竜也君はいつも可愛いと思うよ」


決まった。

竜也君はさっき、男は可愛いと褒められても嬉しくないはずだから、
この言葉は効いたと思うの!


「な、なのははいつも俺をそんな目で見ていたのか?」

「ちょ、ちょっと引くわね」

「にゃあ!?にゃにゃ!!」


あ、あれおかしいの!?
なんで、なのはが攻められてる!?

しかも、アリサちゃんにも引かれてるし。


「ち、違うよ。竜也君は寝顔じゃなくても十分に可愛いって」

「俺はなのはに対する認識を改めなくちゃいけないかも知れない」

「私もそう思うわ。竜也、今後なのはには気をつけなさい。私もいざとなったら協力するわ」

「ああ、その時は頼りにしてるよ」


そのときってなんなの!?
二人ともなんで協力関係になっちゃうの?


「アリサこれからも俺をよろしくな」

「もちろん。私たち親友じゃない」


新しい友情まで生まれちゃってるの。
な、なのはだけ置いてきぼりなの……


「そ、そんな仲間はずれみたいな顔するなよ、なのは」


な、なのははついには竜也君にまで置いていかれちゃったの。

せっかくなのはの家でも相手しくれる人が出来たのに……


「お、おい、泣くなよ。なのは」

「ああ、泣かせちゃったわね、竜也」

「いやいや、責任の一旦はアリサにもってそんな場合じゃないし」

「た、竜也君にまで置いていかれたら、な、なのはは……」

「ま、待てってほら。俺がいるから、なのは泣くなよ」

「う、うん。竜也君……」


も、もう限界なの。


「ああ、抱きつくなよ。アリサもそんな人が殺せるような目線を送らないでくれよ」

「竜也君……竜也君……」

「……そこで泣くなよ。」


竜也君の胸の中はとても温かかったの。



─SIDEOUT

急に俺の胸の中というか、寄り添って泣き出す、なのは。
一体何がどうなってこうなった?

意味が全然分からなかった。


「あんたは知らないの?」


アリサが驚いているような表情をしてた。


「なのはね、ちょっと家族内で揉めた、というほどでもないんだろうけど、問題があって、
それから孤独とか、独りということに敏感なのよ。だからいつも私たちが傍にいてあげるのよ」


俺はよくなのはの家にお邪魔することがあったが、
なるほど、確かに思い返してみれば、
家にいる時のなのは家族ではなく異様に俺に話しかけていた気もしなくはない。

俺には詳しいことは知らないが、いや、教える必要もないか。


「なのは」

「何?竜也君」


涙を流したせいで赤くなってる目を向けてくるなのは。
まだ寄り添ってるせいで非常に距離が近い。


「泣きたいときに泣けばいいじゃないか」

「うん、だから今泣いてるよ?」


さっきまでの、おどおどした雰囲気はなくなっていた。
そして逆にけろっとした表情だ。


「ここは、なのはの家でもないし俺がいるから気を遣う必要もないぞ?
アリサを見てみろ。この部屋の主よりも堂々としてるぞ?」

アリサは悪かったわね、と一言。

「うん、そうだね」

「それはさすがに聞き捨てならないわよ? なのは。」

「アリサは置いといてだ」

「放置かしら? 二人とも後で覚えておきなさいよ」

「だからな、なのは。何時でもここに来ていいぞ?何もないけどね」


実際この部屋には何もないからね。
あるのはベッドと勉強机とイスぐらい。
他にはクローゼットとか必要最低限のものしかない。


「いいの?」


今にも泣きそうな潤った目と、子猫のような小さい声で言わないでくれ。
かわいいじゃないか。


「ああ、俺がいいって言ったんだ。問題ないよ」

「うん、ありがとうね」


そう言うとまた身体を小さくして身を寄せて泣き出す、なのは。


「それ私のときにも言ったわよね?」

「気にしたら負けだ」


まったく今日はとんだ一日……ってまだ昼前かよ!
一体どれだけ長いんだ、俺の夏休み初日。
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