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小説挑戦


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ありのままに─第11話─

俺もすずかが言ったように、つい1ヶ月前からの付き合いとは思えない親しさだなと思う。

例えばなのは、
なのははあの三人の中では、最も接する機会が多かった。
そういう意味でも非常になつかれているような気がする。

すずかは最初は興味本意で俺に接してきたと思う。
なのはの知り合いというのが興味をそそったんだろうな。

でも、ただそれだけだったはずだ。
俺としてもそんなに気にすることもなくといった感じだったし。

普通ならなのはの知り合いの俺となのはの友達のすずか、という関係だけで終わってたと思う。

あのきっかけがなければ……



引っ越して間もないころの、3回目の体育の時間。


「今日の体育は、ドッチボールをやります。
しかも、男子対女子です」


先生のこの一言が嵐を呼んだ。

男子勢の『ええええええええ!?』という不満の声の。

俺もそう言った男子勢の一人だけど。

俺からすれば、女子相手にボールをぶつけるなんてことは出来ない。
本気を出そうが出さなくても。

それを人は男のプライドという……と思う。

しかし、男子勢の考えはそんな男のプライドとかそういうものから出たものではなかった。
それが判明したのが次の男子の言葉。


「先生、それじゃあ、僕たち勝てませんよ」

「そうだそうだ!不平等だぞー」

「男女平等にするべきだ」


まるで、男子が女子に勝てないかの言いようだった。


「勝てないんじゃなくて、勝ったことがないんだよ」


俺の疑問に一人気付いたのか答えてくれた。


「むこうには、すずかがいるんだぞ? 勝てるわけが」


その発言を聞いた男子勢が全員、うんうんとうなずく。
つまりは、女子側にすずかがいるから勝てないということだった。

確かにすずかは運動神経はすごい。
それは俺もよく分かるけど、球技でもすごいのだろうか?

ある男子いわく、「あれは鬼神」

とある男子いわく、「あれはドッチボールの申し子」

とのことだった。

う~ん、でも実際に見てみないことには、そんなことを思っていると4人の男子が立ち上がった。


「ふふふ、今日は俺たちに任せてもらいたい」

「我らが内外4兄弟!」

「俺達のチームワークですずかを倒して見せよう」

「この日のために、鍛錬を重ねてきた!」

「「「見せてやろう!俺達の力を!!」」」

『なんか分からないけど、すごい感じがするぞ!』

『勝てる、これで俺勝てるぞ!そんな感じがする』


急に現れた…訳でもないけど、ものすごく気合の入った、4人がそこにはいた。
そして、その4人の気合に引きづられる形で男子勢の士気が上がっていった。


「あんた達バカじゃないの?」


と呟く、呆れたアリサがいたのを知ってる男子は俺しかいないと思う。
俺もそう思うし。


「先生!その勝負、引き受けましょう!」


4人組のリーダと思われる男の子が先生に宣戦布告をした。



ドッチボールがはじめって、10分程度の時間が経っただろうか。

あの4人組は序盤、非常に効率のいいテンポで相手をアウトにさせていった。
一人、また一人、残り3人といった感じで。

こちら側も一人アウトにするたびに、すずかにボールを拾われ、
地味に削られているが、それでもこちらの方が優勢だった、序盤は。

4人組は、一人を内野にして外野を3人で囲み華麗なボール捌きでアウトにしているのだが、
それに対して向こうはすずか一人。
いや、リーダのアリサを含めればこっちの半分の戦力で撃墜している。

途中から4人組の内野担当が狙われ始め、アウトになったが、
外野と交代や、チームワークを使ってアウトにして内野に戻ったりと上手くやっていた。

相手の陣地内に残ったのは、アリサ、すずか、なのはの仲良し3人組だけとなり、
肝心のすずかはおとせずじまい。

その結果、内野担当も再びアウトにされ、残ったのは俺のみとなってしまった。


「あんた、これまで一回も投げてないじゃない!」


そう、俺は目立つのは4人組に任せひたすら逃げ回っていた。
時には味方を盾にしたりして。


「逃げるが勝ちだろ?」

「それじゃあ、終わんないのよ!」

「いいよ、アリサちゃん。私が当てればいいんだから」


次は絶対に当てる!といった表情を見せるすずか。

普段とは違う雰囲気だ。
いつもはおっとりとしているのに今は燃えている。

それはもう、背景に「ゴゴゴゴゴ」なんて見えるほどに。

しかし、そのすずかの後ろにはなのはがいる。


「それで、なのは何故すずかの後ろに隠れてるの?」

「え? いつもここが安全だから」


運動音痴ななのはからすれば、確かに鉄壁の要塞だよなすずかの後ろ。
でも、すずかが避けたときはどうするつもりなんだろう?

「にゃ!」なんて言ってるなのはが目に浮かぶよ。


「それじゃあ、いくよ!」


そう言うが早いか、すずかがボールを投げてきた。
小学1年生が投げるとは思えない弾だ。

うん、誤字じゃないよ?

銃弾だもん、あれ。
初見なら確実にアウトだろう。

しかし、俺もただ見てただけではない。

飛んできたボールを胸の位置でがっちりとキャッチして見せた。


「え? 嘘……」

「すずかの弾を捕っちゃったわよ……」

「さ、さすが竜也君なの」


三人の驚きもすごかったが、他の男子勢の驚きもすさまじかった。


『うぉおおおおおおお、これで勝てるぞ!』

『ついに、俺たちが勝つときに!』

「「「「我ら4兄弟も無駄死にではなかった……」」」」

「月村さんのボールを……捕った?」


などなど、すごかった。
ちなみに先生までもが驚いている。

まぁ俺としても、女の子に負けるわけにはいかないので、
ここはしっかり意地を見せた形になった。


「よし、すずかを狙うと見せかけて、アリサ!」

「ふぇ!?」


不意を突かれた、アリサは間抜けな声と共にアウトになった。


「い、今の流れ的にすずかを狙うべきでしょ!」

「そんな流れなどないわ!」


ただでさえ不利な状況だ。
卑劣な手を使わざるを得ない。

男のプライドはどこいったって?
何それ? おいしいの?


「やるね、竜也君。今度は本気で投げるよ、覚悟してね」


今までのは本気ではなかったと申すのか!?
覚悟してねって体育の授業だよ? これ。

俺が人のこと言えた義理ではないと思うけど。

それにしても本気か。
今までの通りで捕るのは厳しいということになるだろう。

ということは、対策が必要なんだがどうやらそんな時間を与えてはくれないらしい。


「いくよ!」


そういって放たれた、ボールは見るからに速くて重たい一撃。
ただ壁になって受け止めるだけでは、はじかれてしまうだろう。

となれば……

向かってくる弾のスピードに合わせて身体をクッションのように引き込みながら、包み込む。
ボールの勢いを殺すのではなく、流れのままに受け止める。


「嘘……私の本気が……」


すずかはありえないといった感じだった。
そしてその目の中には畏怖がって酷いなぁ、俺はただの普通の男の子だよ?


「じゃあ、次は俺のターンだね」


俺はすずかに決して劣らないボールを投げ返した。
しかし、すずかはすでに自分の本気の弾が受け止められたことに絶望している。

よって、俺の投げたボールに反応できずに本気の一撃が直撃した。

ボコッ!という鈍い音が聞こえた瞬間、バタンとすずかが倒れてしまった。


「す、すずかちゃん!」


近くにいた、というより後ろにいたなのはが慌ててすずかに駆け寄る。
そして、アリサも直ぐに駆けつけた。


「ああ、気絶しちゃったわね」

「これって俺が悪いのか?」

『他にいる?』


満場一致だった。
さっきまでノリノリだったくせに!


「分かったよ、俺が負ぶって保健室に行けばいいんでしょ?」

「え、そこま─」

「いいよ、少なくとも多少の責任はあるし連れて行くよ」


俺としては、言ったように責任云々もあるが、この気まずい雰囲気を何とかしたかった。
というより逃げたかった。

なので、すぐにすずかを背負って保健室に向かった。




「あれ、ここどこ?」


ここに運んでから、約30分。
もう直ぐ体育の時間が終わる時間だった。

すずかは本当にぐっすりと眠っていた。
気絶してるはずなのに、時々嬉しそうな顔をしたり、
悔しそうな顔になったりしてたのをずっと見てたのはここだけの秘密だ。


「保健室だよ」

「あ、そうか……竜也君に負けたんだっけ?」

「負けたというか……すまん、ボール当てちゃって」

「え? う…ううん、お互い様だよ。私も本気だったんだから。それにもう大丈夫だから」


そう言うすずかのかをはまだ少し、青ざめているような気がする。
無理をして言ってるのだろう、俺に気を遣わせまいと。


「無茶はしちゃ駄目だよ。まだフラフラじゃないか」

「え、うん。でも、次の授業もあるし……」

「大丈夫だって、先生の方にも言っといたし、俺も付き添うように言われてるから」


あのあと、担任の先生がここに顔を出してきた。
そのときにすずかの容態がよくなるまでは教室に戻ってくるなと言われた。

なんて無茶苦茶なと思ったが、教室の雰囲気が悪いような気がしたから素直に指示に従った。


「ごめんね、わざわざ付き合わせちゃって」

「全くだよ」

「え?」

「ちょっと本気を言っただけだよ、気にしないで」

「ほ、本音なの!?」


事実本音である。
こんなかわいい子と、じゃなくてあんまりしゃべったことない人と一緒にいるのが気まずくてしょうがない。


「でも、変に気を遣われるよりはいいかな。意外に優しいんだね」

「え?」

「ううん、何でもないよ。なのはちゃんが言ってた通りだなと思っただけ」


一体なのははすずかに何を言ったのだろうか……


「それにね、本気で相手して負けたのは初めてなんだ」

「へぇ、そうなんだ」

「そこ軽く流しちゃうんだね、ちょっとシリアスな部分だと思うんだけど」


大して興味ないことだから。

俺からすれば相手が本気であろうと無かろうが、
俺自身がやりたいようにできればいいだけだからね。

自分で思いながらなんと自己中なと思うけど。


「じゃあ、俺は先に戻るわ」

「え? 看病してくれないの?」

「だって平気そうじゃん」

「え……ああ、駄目かもしれない。フラフラするよ、竜也君」


だからって自分でベッドの上で頭をクラクラさせるなよ。自分で酔ってるだけじゃん。
それにわざとらしいぞ。


「だから、まだここにいてね」


そう言うと、素晴らしい本当にすごい綺麗な笑顔を見せてくれた。
もしこれで断ったら、男のプライドもあったもんじゃないだろう。


「しょうがない、ここにいるよ」

「ありがとう、竜也君」


素晴らしきかな、男のプライド。



今回のおちは、
この後戻った教室で男子勢に英雄と呼ばれるようになったことだ。


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