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小説挑戦


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ありのままに─第12話─

すでに八月は初旬。

八月の初旬といえば、夏休みとしてはギリギリ序盤に入ると思う。

夏という単位においては、もっとも盛んな時期。
最も暑い時期といっても過言ではない。

実際に暑いのだから過言な訳がない。

外では元気よくミーンミーンと油蝉が鳴いている。
この鳴いている音に夏だなぁと思わせると同時に、暑さも倍増にさせれる気分だった。

そして、もうすぐお盆休みがやってくる。

お盆というのは親が休みを取れる時期という意味合いでもあると思う。

俺たちが夏中は休みでも、親はそうではない。
そのため、実際に父さん母さんと一緒に出かけたり、
遊んだり出来る時期であるという意味だ。

まぁうちの場合は父さんは死んでいないし、母さんはいつも翠屋にいて、
俺はなのはの家にいることが多いので、お盆があろうとなかろうが関係ないんだけどね。

結局俺は、初日を除いては毎朝毎夕にここに来て鍛錬をしている。

未だにランニングと素振りの基本練習がメインだけど、
たまに恭也さんや美由希さん相手に試合をすることがある。

やっても全く相手にならず、ぼろ負けだけどね。
それでも、普通より─普通のレベルがわからないが─は上達が早いらしい。

さっき言ったとおり毎日剣術の鍛錬もしているが、ほかにも毎日していることがある。

魔法の練習と鍛錬だ。

初めて魔法を使った日の次の日。
つまりは、アリサが家に怒鳴り込んできて、なのはが泣いて、すずかと電話した日だ。
その日にも魔法を練習した。

まずは魔法に慣れることといわれ、マルチタスクという複数のことを考えられるようになる魔法だっけ?
を毎日やっている。

正確には、念話というテレパシーみたいな魔法を使いながら母さんと魔法の勉強をしながら、夏休みの宿題をやりながら、魔法のイメージトレーニングをやっている。

これが最初は滅茶苦茶つらかった。

二つぐらいなら何とかできたのだ、でもそれが三つとなると頭の中がパンクして、
くらくらして来て、目が回ったり、異様に疲れたりした。

でも、毎日やっていくうちに慣れてきて今ならお手の物である。

『人間の最もすばらしい能力は適応力である』といった人がいるようないないような……
全くそのとおりだと思う。

それが出来るようになったのを見越してか、次の段階の練習になった。

とてもシンプルな練習だ。

母さんが魔法の攻撃をしまくるから、避けるか防御しろ!
もしくは、私の動きを抑えてみろ!攻撃以外でな!
と言うものである。

もちろんそんなのいきなり言われても出来るわけが無く、あっという間に怪我だらけ、ボロボロである。

そんな怪我した俺を見て、それじゃあ動けないから自分で魔法で治せや!
とのこと。

全く鬼である。
鬼以外の何も出も無かった。攻撃しててもすごく楽しそうな笑顔なんだなこれが。
余計萎えてくる。

もちろん、ただ攻撃してくるだけでなくアドバイスをしながら、また、うまく抑えたりかわせたり出来るようにしているのだから、文句が言えない。

なので、なお性質がわるいというのだろうか、
むやみやたらなら、文句のつけようがあるのになぁ。

そんな怪我の絶えない毎日だ。
もちろん、そんな非日常ともいえるような毎日ではあるがそれだけではない。

ある日は家で、ある日は翠屋で、ある日はアリサの豪邸、ある日は……

日時場所を変えて、毎日のようにアリサ・なのは・すずかに会っている。

特になのはは会っていない日は無い。
必ず朝か夕方の何れかはなのはの家にいるわけだから、逆に会わないわけが無い。

まぁおかげでなのはが俺に懐いちゃったなぁ。
子猫みたいに後ろについてくるからね。

そんな予断はここまでにして、今日もそんな日常の一つである。

今俺は朝の鍛錬を終えて、なのはの家にいる。ここまでは変わらない。

なのはの家なので、なのはもいる。
うん、いつもどおりだ。

そして、アリサやすずかもいる。
今日はなのはの家で遊ぶ日だったといえるだろう。


「みんなでお泊り会って楽しそうだよね」

「そうね、夜もずっと一緒って初めてだから私も楽しみだよ」

「今日はゆっくりしていってね。竜也のお母さんも張り切っちゃうから!」

「母さんはこの家の人じゃないだろ……」


つまりは今日がお泊り会の日である。


「ここじゃ、しゃべりにくいからなのはの部屋に行こうぜ」

「うん、そうだね」

「なんであんたが先導を切るのよ……」


実質この家、なのはの家は俺の家以上に俺の家なのでしょうがない。
なので、なのはの部屋にも気兼ねなく俺が先陣を切って入っていく。


「お邪魔するわよ」

「お邪魔します、なのはちゃん」

「どうぞ、ぞうぞ。汚い部屋ですが、ゆっくりしていってね」

「竜也君の部屋じゃないの!それに汚いって毎日掃除してるもん」


ぷんぷんといった様子だ。
俺の知らないところで意外と努力してるんだな、なのは。


「してるよ!竜也君が知らないだけで」

「そうか、そうか偉いな、なのは。はい、お手」

「にゃ!?にゃ~ん」

「よし、よく出来ました。」

「何で、飼いならされてるのよ。なのは……」


にゃはは、と笑う子猫のなのは。
この夏休み中、餌付けを怠らなかったからな。


「あんたは夏休み中に何をしてるのよ……」

「なのはとじゃれる事はよくやってたな」

「うん、よく遊んでるの!」


おかげでこの手のことはお手の物だぜ。
お手だけに。

ここまで一切出番のないすずかさんですが、そこらへんはどうなんだろう?


「なのはちゃん楽しそうだなぁ」

「え!?すずか!?」

「すずかもやってみる?」

「え、私はいいよ、別に……」

「お手」


沈黙が場を支配する。
なのははすずかに期待の目線を送り、
アリサは呆れたご様子で俺を見つめている。

俺は相変わらず右手を出したままだ。

そしてすずかは……


「…………」


お悩みのようだ。
相当悩んでいると見える。


そして、決心を固めたのか、決意の目をして。


ポンっと俺の手に手を載せた。
そして直ぐに引っ込めた。

みるみる顔が赤くなってるのが分かる。

なるほどなるほど、これはなのはとは違うかわいさが……

そして、今にもプシューという音が聞こえそうなほど真っ赤になって止まった。
思考が停止したみたいだ。

これでしばらく、すずかはダウンかな。


「すずか……」

「すずかちゃんも仲間入りだね!」


すずかに呆れ果てているアリサとは違い、なのはご満悦のようだ。
もちろん、俺もご満悦。

これはもしかしたらすずかも飼いならせるかも?

だから俺も一言。


「すずか、大切なのは慣れさ!」

「…………」


反応がないただの屍のようだ。

言葉の通り、ようは慣れだと俺は思う。
なのはも最初の頃は恥ずかしそうに……


「どうしたの? 竜也君ずっとこっちみて?」

「はぁ~」

「何でそんな深いため息するの!?」


してなかったな!
なのはは最初から恥ずかしさとか慣れと関係なくやっていたのを思い出したよ。


「どうするのよ、竜也。すずか止まっちゃったじゃない」

「さぁ、俺に言われてもね」

「あんたのせいでしょうが!」

「俺は振っただけだぞ? 後はすずかの意志じゃないか?」

「提案したのはあんたでしょ!?」

「まぁまぁアリサちゃん、竜也君も悪気があったんじゃ─」

「なのは、おかわり」

「にゃ」

「なのは…私には悪気があるようにしか見えないわ」

「アリサよ」

「何よ?」


今この状況を考えようぜ?
なのははすでに見たとおり餌付け完了してる。

そして、すずかはすでに俺の餌食に……
残ったのは誰だろうね?


「……アリサちゃん」

「お、すずかが戻ってきた」

「何?」

「私はやったよ?」

「え?」

「なのはもやったよ?」

「な、なんなのよ……」


みんな多くは語らなかった。

俺も何も言わず、静かに右手を差し出す。
すずか、なのはは今か今かとそのときが来るのをじっと見つめている。

主にアリサの手に。


「い、一体なんなのよ!!」

「アリサ……」

「「アリサちゃん」」


駄々をこねている子供をあやすかのような、そんな心境だ。
なのはとすずかはまるでその子を悟らすかのような。


「や、やればいいんでしょ!はい」


そう言うと、アリサは俺の手にただ単純にのせた。
そうのせただけ!


「……アリサ」

「な、何よ!?」

「違うんだよ……なのは見本!お手!」


俺はそういうと、『にゃん』と言いながらかわいさ百倍の笑顔と目をこちらに向けながら、
手をちょこんとのせた。

その様子、子猫以外の何者でもなかった。
者だけど者じゃない!


「アリサちゃんこれが『お手』だよ」

「威張って言うことじゃないと思うけど……」

「アリサちゃん……」

「どうしろっていうのよ!」

「手をのせる時に、にゃんと言ってみてよ」

「そ、そんなの……」

「「アリサちゃん」」

「わ、分かったわよ……」


再びなのは・すずかペアにあやされると、しぶしぶと言った表情をした。
そして……


「……にゃん」

「「「……!?」」」


ものすごく小さく、そして、照れくさそうに顔を赤くしながらそっぽを向いて、
ちょことん、と手をのせてきたアリサは……


「「「かわいすぎる」」」


その一言に尽きた。

もはや何も語るまい。
俺はこのときを一生胸に大事に抱えて、脳内に焼き付けて生きていこうとしよう……


「な、何をこのぐらいのことで人生悟ってるのよ!!」


何も言うまい、ああ、何も言わん。
今回のお泊り会はこれだけ。

いや、すずかを含めた、お手の姿を見れただけで俺は満足だ。
ん、なんかおっさんくさいぞ?
なんて思ったが気にしない、気にしない。


「っで、これで終わりじゃないわよね?」

「うん、そうだね」

「まだ一人残ってるよね、ね? 竜也君?」


あれ~いやな、おち、もといフラグが立った気がします。


「いやいや、これで全員だろ? そろそろご飯だろ? 」


気付けばすでに晩御飯時。
いや~実に楽しかったな。

うん、俺はもう家に帰ろう。そうしよう。


「そうね。そろそろ、ご飯ね」

「そうだね、普段ならその後は解散だけど……」

「今日はお泊り会なの!」


よし、察しのいい俺は分かったぞ。
今回のおち!


「じゃあ、後でゆっくりね。竜也」

「楽しみなの」

「楽しみだね、竜也君」



そして、今回のおちは予想通りにこのあと酷い目に会いました。
その上、この3人組と同じ部屋で寝かされたけど、早寝の俺には関係ないと思う、たぶん。

3人は夜中までしゃべってたみたいだけどね。

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