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小説挑戦


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ありのままに─第16話─

「ええ、本日は晴天なり、晴天なり」


本日は晴天なり。
この言葉は通常はマイクテストのときよく使われる2大言語だと思う。

もう一つは、『マイクのテスト中』だ。

両方とも行事ごとや、朝礼などでよく耳にする。

特に、本日は晴天なりなんて言葉は、外で使われるんじゃないのだろうか?

それにしても、本日は晴天なり、この言葉が合う日は今日を除いてはそうそうないのではないだろうか。

今日、つまりは運動会当日。
空は青く澄み渡っており、太陽サンサンという感じ。
雲もちょうどいいくらいに浮かんでいて、とても清々しい。

もし、近くに草原があるのなら、寝転がって昼寝すると気持ちがいいかもしれない。

気温もさほど高くもない。
だからと言って、寒いわけもなく、絶好のスポーツ日和だ。

スポーツの秋と言われる要因、はたまた起源を今実感していると言っても大げさじゃないと思う。

まぁ何にしても、今日は運動会である。


「ふふふ、ついにやってきたわね! 運動会!」

「そうだな、アリサ。この日のために血も涙も流して努力してきたもんな」

「血も涙も流したのは、なのはなの!」


この運動会のために、俺となのは。
そして、アリサすずかペア。
さらに言うならば、外科4兄弟も特訓を重ねてきた。

たぶん、俺たちほど、この日のために努力してきたクラスはないんじゃないだろうか?
それほどまでにして頑張った!

俺はタイムを縮めることとなのはの障害物競走の対策を。

俺のタイムを縮めることは俺自身の努力でどうにかなる問題だったが、
なのはの障害物競走は少し手間取った。

原因はなのはの運動音痴のせいである。

どんなに運動に慣れてもらおうとしても、素のなのはではまったくお話にならなかった。

しかし、なのはが猫モードになり、俺が指示を出すと、かのビーチのときのように驚くべき運動能力を発揮した。

ここから、俺はその状態を上手く利用できないか考えた。
しかし、さすがに、競技中になのはの横で指示を出すことは出来ない。

そこから、いくつかの方法を考えた。
ようするに俺が指示を出せればいい。

一つ目、念話。
これは最も便利な方法だと思った、が盲点があった。

魔法を教えちゃいけないんだった。

考えなくても分かることだったのに、馬鹿か俺は。

二つ目、無線。
遠くにいても確実に指示を出すことが出来る。
しかし、指示を出すにはなのはにも無線機を持ってもらわなければならない。

無線機と言えば、ケータイ電話を大きくしたようなやつ。
持ち歩けるはずがなかった。

同じ理由でケータイも駄目だ。

もはや、万事休すかと思われた。

最後の手段として、母さんに相談をしてみた。


「え? 魔法を使わずに誰にもばれない様に人に指示出す方法?」

「そ、そうなんだけどさ。なんかない?」

「あるわよ。無線が」

「無線じゃばればれじゃ……」

「ふふ、母の科学力をなめちゃいけないわよ? これでも元科学者よ?」


そう言うと、母さんは一日研究室と書かれた部屋に閉じこもり、翌日になると、
手に耳栓のようなものと小型マイクを持って出てきた。


「これって……まさか!?」

「そのまさかよ。この程度のことならおちゃのこさいさいよ!」


母さんの謎がまた一つ増えたような気がする。
てか、これってオーバーテクノロジーじゃないの?

あ、でも今の世の中これぐらいはできるのかな?


『なのは聞こえる?』

『うん、聞こえるよ。すごいね、この小型無線機』

『特注品だからね』


練習で実際使ってみたところ、見事に遠くからの指示ができた。
これで対策は完璧である。

あとは、本番で結果を残すのみとなったわけだ。


『今日最初の競技は1年生による、選抜50m走です。
代表の生徒は、集合場所まで集まってください』


学校全体にアナウンスが響き渡る。
運動会は基本的にこのアナウンスにしたがって動くように言われている。

もちろん、プログラムは生徒達に配られていて大体の予定は分かるが、
時間などの変更が例年珍しいことではないらしいので、アナウンスが重要になるとのことだった。


「頑張ってきなさいよ!」

「頑張ってね、竜也君」


アリサとすずかの声援だった。
こういうときの声援は非常に心強い。


「頑張ってなの!」


なんだかんだで、応援の声にも気合が入ってるなのは。
やっぱりこういう行事ものはみんなで楽しまないとな。


「もちろん、やるからには一等を狙うさ!」


みんなの応援の声を背にして、いざ参る!戦場へ!




選抜50m走は、その名の通り各クラスの猛者たちが集まって単純な脚力を競う競技である。
もちろん、それだけに注目度は高い。

1年生は新入生であり、これに出場する保護者の我が子の雄姿を焼き付けようとするのも注目度が高いひとつの理由でもあるが、
それ以上に、今日最初の競技という意味でも異様なほどの注目が集まってる。

俺はそんな注目を緊張の理由にはなるもの、
実力を見せ付けてやろうと思う心と、応援してるなのはたちのためにも頑張りたい。

運動会は学年ごとのクラス対抗戦である。
戦いと言うからには初戦は勢いをつけるためにもぜひとも勝ちたい。

いや、俺が勝てばいいだけのことだけど。


「竜也! 負けたら承知しないわよ!」

「怪我しないように頑張ってね」

「負けたら、私の子じゃないわよ!」


一際大きな声で声援をしてくれるのは、アリサとなのはと……母だった。

負けたら私の子じゃないって、周りの人が軽く引いてるぞ、母よ。


スタートラインに選手が一列に並び、スタートの合図を待つ。
もっとも緊張感が場を包み込み、見ている人たちもが静まり返る。

最も緊張する瞬間。
俺も心臓がバクバクしてる。

こんなに注目されるのは初めてだ。

ドン!と発砲音が静寂してた場に響き渡った。
それと同時にみんな走り出す。

また、一気に声援声が校庭に怒号のように飛び交う。

く、出遅れた。

無駄なことを考えてたせいで、スタートダッシュに失敗した。
しかし、それもつかの間、俺より前に走っていた人を追い抜く。

正確には横で走っているのだが、気分的には同じだ。

一人、二人、三人……

あと、一人!

ここまでですでに、残り半分。
十分に追いつける距離。

トップを走ってた男子のスピードが落ちた。

今だ!

俺は一気に加速して、トップに並び、そのまま追い越した!


「ゴール」


テープを切ると同時に、俺は呟いた。


『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』


歓声の声が耳に聞こえる。
これで、特訓の成果は結果にて現れた。

俺の最低限の仕事を果たした瞬間である。
気持ちいいです!


「よくやったわ、竜也!」

「お疲れ様」

「竜也君すごく速かったの!」


クラスの待機場所に戻ってきたら、三人が賞賛の声と同時に、出迎えてくれた。


「ああ、駄目かと思った」


なわけないけどね、絶対に勝つ自信はあったし。
あれだけ、特訓したら負けられないしね。


「嘘つくんじゃないわよ、顔がにやけてるし」


ばればれだった。


「はい、竜也君タオル」

「ありがとう、なのは」


相変わらずなのはは気の利くやつだ。
さすが俺のペットだ。


「それにしても、練習のときより速かったんじゃないの?」

「ん? そうかな?」

「速かったみたいだよ。さっき本部に行くついでに記録を見てみたら、もしかしたら日本記録更新かもだって」


そんな、話があるのだろうか?
俺はただの小学1年生だよ?

先生達も大げさだな、まったく。


『プログラム5番の1年生による障害物競走にでる、人は所定の場所に集まってください。』

「あ、私の番だ」

「そうみたいね、期待してるわよ」

「頑張ってね、なのはちゃん」

「ありがとう、アリサちゃん、すずかちゃん。頑張るね」


そう言って気合を入れなおす、なのは。
その目には燃える炎が見える。

さすが、腐っても高町家の一人か、勝負事には熱いからな。


『なのは、予定通りに』

『うん、分かってるよ。お願いね、竜也君』


なのはは集合場所へ向かって歩いていった。

まだまだ、運動会が始まったばかりだというのに、
俺にとっては最大の山場だな。

ある意味で、一番の楽しみでもあるんだけどね。


「ところで、アリサ」

「何よ?」

「例のあの約束をだなぁ」

「え……そ、それは二人のときでって約束じゃない!」

「いや、そんなことないぞ」

「アリサちゃん、約束って?」


俺はこの運動会を本気でやるにあたって、とある約束をした。
それは……


「俺がもし50m走で圧勝したら─」

「わ、分かったわよ!な、なのはの競技が始まるまでまだ時間があるから、
体育館の裏に行くわよ!」

「え、ちょっとアリサちゃん!?」

「ほら、さっさといく!」


アリサに強引に手を引っ張られ、体育館へ引きづられていく。

アリサって意外と力があったんだなぁ。
でも、そんなこと言ったら、殺されかねないので心のうちにしまっとくことにしよう。


「さぁ、ここならいいわよ」


観衆の目はみんな競技が行われる、校庭に向かっているので、体育館に人の姿は見えなかった。

確かに、恥ずかしがるアリサ的には好都合かもしれないが、
俺的には公衆の面前でやって欲しかったな。

まぁやってくれるならいいか。


「じ、じゃあ行くぞ……」

「い、いいわよ」


お互いにごくりとつばを飲み込む。


「お、お手!」

「にゃ……にゃん!」


元気よく、しかしそれでも恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら、
「にゃん!」と言い、手を出す、アリサ猫。

な……何なんだこのかわいさ!?

前にやったときとは比べ物ならない破壊力だった。

どう違うって?
それはあれだよ、前は素っ気無かったけど、今はどことなく嬉しそうな顔でこっちを向いてるんだよ!

なんか、力説してる俺がHENTAIに見えなくもないが、いいや。
この猫のためならそんな貞操捨ててしまおう。


「おかわり」

「うにゃ~ん」


うにゃ~ん……だと!?

なのはですら言わないぞ!
な、なんなんだよ、ちきしょう!


「にゃ~ん、にゃ~ん」


そう言いながら、身体をこすり付けるアリサ猫。

え? ほわぁい?
何が起きたのだろうか……
突然の行動で体が動かないんだが……そう思ってると、アリサが耳元で、


「さ、サービスよ」


小さく呟いた。

俺はもう、この世に未練はないかもしれない。

しかし、運動会は無情にもまだまだ続く。



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