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小説挑戦


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ありのままに─第17話─

今回の運動会に備えていたものがいくつかある。

それは、主にはなのはの運動音痴対策についてのだが、
猫モードの時には必要はなかった。

でも、参考までに買ってみた本はある。

猫をもっと知るために、なのは猫をもっと使いこなす為に、飼った本だ。

『できる!猫の餌付け!』である。

どこかで聞いたことあるようなシリーズな気がしてならないが、気のせいである。
これはフィクションであり、この作品に出てくる団体名・個人名、作品名は、現実のそれとは無関係です!

まぁそんなことはどうでもいいとして、
その本にはいくつか項目があり、その中に『猫に芸を仕込む』というものがあったので試しに呼んでみた。

具体的な内容としては、指示を出す際は簡単な言葉がベスト!
ちゃんと言うことを聞いたら、餌を上げたり、撫でるのがいいと書いてあった。

なんとも当たり障りのない回答……

しかし、それゆえにと言うこともあるだろう。
シンプルイズベスト。

大抵こういうのはある程度のパターンがあると言うのだから、間違ってはいないのだろう。

実際に試した見たところ。

うん、効果覿面だった。

ちゃんということを聞いたら、褒め殺して、撫でると喜んだ。
でも、それ以上にそのあとのお手の方が喜んだのはどういうことなんだろう?

これが本物の猫との違いということなのだろうか。

なんにしても、餌をあげるよりは安く済むので問題はなかった。
雑種なのかな?


まぁそんな話は置いといてだ、いよいよなのはの本番である。


『竜也君、お願いなの!』

『OK。なのは猫モードだ!』

『にゃん!!』


一言で猫モードになるなのは。
見た目でもその姿が分かる、手を軽く握って軽く腰を曲げている。

四速歩行にならないのは、完全になりきることが出来ないからなのだろうか。

前々から思ってたのだが、どういう切り替えと言うかシステムになってるんだろう?

なのはの頭の中がいつも不思議でしょうがない。

やっぱお花畑なのかな? 菜の花の。


『位置について!用意……スタート!』


俺のときとは違い声による、スタートの合図。
それはなんだが間の抜けたような感じがするが、その通りなのである。

先生いわく、障害物競走は保護者の方が楽しむようなものなのだとか。
毎年、毎年、かわいいアクシデントが続出するので見てる方は癒されるとか何とか。

要するに、そんなに本気でやるような競技では普通ないらしいのだが、
本人達は真面目なので、真剣に見て欲しいなと思う反面、
その真面目さが楽しいかなとも思う。

そんなことを考えていると、なのはが最初の障害物にたどり着いた。

6段の跳び箱である。

常識的に考えて、小学1年生では跳び箱を飛ぶのも難しいはずだ。
俺やすずかは例外として。
もちろん、なのはが飛べるはずもなく、普通なら、「よいしょ」なんていいながらかわいく上ると思う。

いや、誰もがそう考えているはずだ。
逆に言えばそれに期待しているといっても過言ではない!

実際に、高町家の方々がなのはがかわいく上るのを今か今かとカメラを覗きながら見ている。

だが、非常に残念だ。
その期待には答えられそうにない。


『なのは……JUMP』

「にゃ~~ん」


なのはが猫語声に出しながら、飛び越えた。
跳び箱を飛んだのではなく、飛び越えた。

旅箱に飛ぶ直前に、身体を縮ませて、バネのように飛んだ。


『……う、うぉおおおおおおおおおおおおおお』


観客が一間を置いて、歓声の声を上げた。
一間置いたのはあまりの出来事に呆然としてたからだろう。

なんてったってこういうことができるのを知ってるのは、俺とアリサ、すずかぐらいだからな。

見ろよ、あの高町家の面々の顔。
驚きのあまりカメラを落としてるぞ。

未だにフリーズしてるしね。

しかし、まだまだ競技は無情にも進むのだよ。

なのはが次に当たった障害物はネット。
このネットはサッカーのゴールネットを応用したものだ。

うまく工夫されてると思う。
しかし、甘いな。


『なのは、CUT』

「にゃにゃにゃにゃい!」


そういうと、なのはの前のネットが無残な姿に……
どういう原理かは俺にも分からん。

練習のときに試しにやってみろと言ったら、出来たんだもん。

そして、先生方は唖然としていた。
来年はゴールネットじゃなくなるだろうね。

鋼糸とかになるんじゃないかな?


ついには、最終障害物。
ちょっと高めの平均台である。なのは体の半分ぐらいの高さだから、約60cmぐらいかな。
平均台の下に台のようなものを置くことで、この高さを作ったようだ。

もちろん、落ちたとき用に横にはマッドが敷いてある。

まぁそれでも、大した障害じゃないだろう。


『なのは、GO!』


俺は行けの指示を出す。
しかし、なのはは平均台の上から動こうとしない。

一度上ったのにそこから動けないでいるのだ。
まるで怖がってるかのように……

どういうことだ?
仕方ないのでもう一度指示を出す。


『GO!』

「にゃ、にゃにゃん」


頭を左右に振る振るさせる。
拒否と言うことなのか。

なのはが俺のほうに向いた。
なのはの競技してる場所からは結構離れているはずだが、その目は俺に向いていた。

体がこわばり、目には涙を浮かべていた。

俺の場所からでも見えるぐらいに、ハッキリした表情だった。


『にゃにゃにゃん。にゃにゃにゃ』

『なになに、高いとこが怖くて動けない、だと?』

『にゃい』


たぶん涙声だと思う。

これは、もう無理かもしれない、自然にそう思させられた。
しょうがない、これはリタイアするしかないな。

俺は決断をしてなのは猫の場所に行く。


「にゃ、にゃ~ん」


そういって俺に飛びついて来る、なのは猫。
本当に怖かったのだろう。
目には必死にこらえてた涙が浮かんでいた。

ウルウル目かわいいって俺違う。
そんなことを考えてる場合じゃない!

それにしても、大衆の前で俺の身体にスリスリするな。
見られている俺が恥ずかしいだろ。

まぁ別に悪い気持ちではないけどさ。
むしろ、スリスリ気持ちいいけどさ!


この結果なのははリタイア。
実はこの障害物競走において、リタイアは珍しいことではないと後日談。



「す、すっごい怖かったの!」

「普段は全然平気なのにか?」

「うん、なんか駄目だったの……どうしちゃったんだろう、なのは」


心底不安そうにするなのは。
俺にはちょっとその原因に心当たりがある。


「子猫だったからじゃないかな?」

「え、そうなの!すずかちゃん!」

「え、う~ん。子猫って高いところに登りたがるけど、怖くて降りられないなんてことがよくあるからね」

「なのはは完全に子猫になっちゃって言うの!? そんな話あるわけないじゃない」


俺もアリサの言いたいことはわかるんだが、
実際にあんなことがあったんじゃ、あながちすずかの理論も的外れじゃない気がする。

猫モード……まだまだ謎がありそうだ。


「そういえば、アリサちゃんたち一位おめでとう」

「遅いわよ!」

「もう、アリサちゃん。ありがとう、なのはちゃん」


アリサとすずかの二人三脚だが、実はもう終わってしまった。

俺がなのは猫をあやすのに予想以上に時間がかかってしまって、
泣き止んだのが、ついさっき、つまりは1年生の最終種目の代表リレーを残すだけとなっていた。

お昼ごはんの際も、ずっとべったりな感じだったから、周りからは変な目線で見られるし、
母さんはずっとニコニコしてるし、困り果てたよ。

挙句の果てには、最後のなのはを俺が救出するシーンが桃子さんの手によって映像に残ってしまう始末。
嬉しいのやら、悲しいのやら、なんとも複雑な映像だった。


「相変わらずと言うか、素晴らしいコンビネーションだったな」

「あたりまえじゃないの。私とすずかが本気でやってるんだから」


結果はなのはが言ってたように1位だった。
他を引き寄せない、圧倒的1位。

ビーチのときにも思ったが、本当にこの二人はいいコンビだな。

二人でシンクロしたら、金でも取れるんじゃないのだろうか?


「でも、クラス優勝決まっちゃったね」

「俺たちのクラス圧勝だったからね。」


運動会午前の時点で、100点以上の差をつけ、午後はさらに拍車をかけ、首位独走状態。
最終種目を前に、優勝が決定してしまったのだ。

嬉しいは嬉しいんだけど……う~ん。
いまいち盛り上げが足りないような。

俺的には美味しいことは多くあったけど。

まぁ何はともわれ次が最終競技。
あの四兄弟がでるリレーである。

最終競技というのもあってか、最初の競技時以来の熱烈な注目度だ。
みんなが一心に最後の競技を見届けようとしている。

もちろん、俺もそんな観客の一人だ。


『位置について!』


最後の競技が始まろうとしている。
俺も心臓がドキドキだ。

─パン、とスタートの発砲音が響き渡る。

一斉にスタートした第一走者。
現在の1位は……我がクラスのようだ。

案外速いなあいつ。
今度名前で呼んであげてもいいかなと思う。

50mを走りきり第二走者。
順位が入れ替わる。

現在我がクラスは2位。
これじゃあ、名前で呼んであげるのは厳しそうだ。

それでも、なんとかトップに食らいつき、2位で第三走者へ。

差がほとんどなかったおかげか、
はたまたバトンの渡し方が上手かったのか、1位を奪還した。

こうやってみてるとハラハラドキドキの展開だ。
保護者を含めた観客もみな、この展開に手を汗握るものがあるようで、声援の声がよりいっそう強まる。

そして、ついには最終走者。
つまり、いつも兄じゃとか呼ばれてるやつだ。

1位でバトンを渡されたが、あまりは足は速くないらしい。
これが嫌がってる理由だったのか。

それでも、差はかなりあったので、ギリギリ1位でゴールテープを切れそうだ。

しかし、そう思った矢先である。


『え……ああああああ』


ため息交じりの歓声が響き渡った。

1位がこけた……

ようするに、兄じゃと呼ばれている人物がこけてしまったのだ。


「だ、だから俺は嫌だったんだあああああああああああああ」


無情な叫びが場を支配した。
しかし、それでどうにかなるもんだいではなく、諦めがついたのか立ち上がり、最後にゴールをした。

こけても完走しきった彼に、賞賛の声援がそこかしこから聞こえる。


「よく頑張った」

「君が1位だよ」

「来年があるさ」


はたして、その声は彼にはどのように伝わったのか。

俺がその後に見た彼の目からは涙流れていて、その背中には泥がついていて、とても哀愁に満ち溢れていた。
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