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小説挑戦


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ありのままに─第18話─

季節は未だに秋である。

秋の一大イベントと言えば、この間の運動会が真っ先に上がると思う。

実際ここ最近の記憶の中では最も印象的だった。

それは、ただ単に運動会のお祭り騒ぎで楽しかったからと言う意味合いもあるのだが、
その後の、翠屋での打ち上げとかもあり、楽しき一日だったということでもある。

他にも、まぁいろいろと盛りだくさんだった。

でも、多くは語らないさ。
俺の心のうちにとどめておくべきことだってある。

運動会が終わり、次に待っていたのはテストテストテストの毎日だった、ような気がする。
記憶にないというか、あんまり深く考えず受けたから印象的ではなかったということだ。

まぁそれでも、テストではいつも通りの点数を取り、上々ではあった。

アリサが「勝負よ!」と言って、なんだか知らない間に勝負になっていた気がするけど、
双方共に全教科満点で引き分けに終わった。

なのはからは軽く呆れらた上に、軽く涙目だった気がするが、なぜだろう?
なのはに泣く要点でもあったのだろうか……

それとも、点数がよっぽど酷かったとか?
うん、それならありえる。

なのはは子猫だからな。

理由になってない気もしなくはない。


運動会も終わり、テストも終わり、残すところは冬を待つだけとなった。

季節は未だに秋である。
秋……と言っても、すでに肌寒い季節ではあり、半そでで出歩くにはすでにきつい時期だ。

運動会のときはまだ温もりがあったけど、ここのところは冷たさが増した。

この町の場合は海がある分、風がよく吹くのでそれが一番寒く感じるかな。

別に寒いのが嫌いとかそういうのはない。
冬の寒さはツンと来るものがあって、それが清々しいと感じることもある。

だからと言って好き好んで寒いのが良いというわけでもないけどね。

まぁ冬は近いが、まだ秋だ。
あまり先のことを考えてもしょうがないと思うし、とりあえずは今やることを考えよう。


「なのはちゃんもアリサちゃんも今日は、遊べなくて残念だったね」

「そう、だね」


場所は月村家の豪邸である。
外にある、なんとも金持ちだなと思わせられるような庭ですずかと遊んでいる、
というか一緒にいる。


「ノエルもファリンもお姉ちゃんまで、今日はこの家にいないからなんか寂しいね」

「そうだな」


今日は本来ならアリサやなのはも一緒に遊ぶ予定だったが、
アリサは家の事情、なのはは家の手伝いというわけで、ドタキャンした。

まぁなのはの場合は、この間のテストの結果が芳しくなかったせいで遊びの許可がもらえなかったというだけの話なんだけど……

ふむ、今後このようなことがないようになのはに勉強でも教えてやるか。

また、すずかの使用人のノエルさんやファリンさんまでもがすずかのお姉さん、
忍さんの付き添いで今は家にいないらしい。
恭也さんもその付き添いとのことだった。

みなさんこんな休日にご苦労なことというか、殊勝というか、
そんな日に暇な俺とすずかがまるで暇人というか、怠け者みたいじゃないか!

いや、俺は怠け者だけどさ。
すずかは違うよね? ね?


「今日は……肌寒いね」

「そうだね」


会話が続かないなぁと思っているのは俺だけじゃないはずだ。
さっきから、こんなんばっかしだよ。

よくよく考えると、俺とすずかの二人きりっていうのも初めてな気がする。
いつもすずかにはアリサがついてたし、俺にはなのはがついてたからね。

そう考えると、ふむ。
中々に気まずいものがあると言うか、話題がないというか、間がもたないというか……

いや、ここは意を決して話しかけないと駄目だよな!


「「あ」」

「「え?」」


あ、声が被ってしまった。
なんなんだこのシチュエーション。

恋人同士じゃないんだから!

もう一回。


「「その」」

「「お先にどうぞ」」

「あ……どうぞ」

「いやいや、すずかから」

「ううん、竜也君から」

「「……」」


お互いに先を譲り合った上に、目が合っちゃって、顔が熱くなる。
すずかは顔が真っ赤に……

な、なんか妙に恥ずかしいな。

どうしてこうなったんだ。
声がさっきから被ってしまうじゃないか。

この広い庭の中で俺とすずかの二人き─
二人きり!?

ああ、駄目だ。
なんか妙なニュアンスが混じってる。

俺は最近毒されてるな……アニメとか小説のせいかな?

さて、どうやってこの均衡を破るか……


『にゃ~』


にゃ~?
不意に猫の鳴き声が聞こえ、周りを見渡してみるとそこには子猫が!

あ、なのはじゃないよ?

そうか、ここ猫屋敷だった。


「猫、集まってきちゃったね」


気付けば、周りには猫!猫!猫!そして、にゃ~、にゃ~、にゃ~の大合唱と化していた。
一体どれくらいいるんだろう……

少なく見積もっても30はいると思う。
種類もさまざまだ。
といっても俺は猫の種類が分かるわけじゃないんだけど、毛並みが違うからたぶん色々な種類だろう。


「猫って和むね、すずか」

「そうだね、こうやって眺めてるだけで結構癒されるよ」


猫が自由気ままに、ありのままに過ごしているのをみてると本当に癒される。
そして、のんきな「にゃ~」という泣き声が絶妙なんだ。

猫の中には猫同士でじゃれあったりしてるのもいれば、トンボを必死に追いかけていたりもするし、
中には俺のひざの上や頭のうえ、方に乗ってくるのもいる……って、
なんか俺の回りにいように集まってるような気がしてならないんだけど!


「竜也君の周りに不思議と猫も集まってるね」

「みたいだな。気付いたら俺の足元にも寝転んでるし、両肩に乗ってるし」

「竜也君ってそういう不思議な魅力があるのかな?」

「魅力?」

「うん、猫に懐かれるみたいな。なのはちゃんとかアリサちゃんの時もそうだったよね?」


すずかが言ってるのは猫化の話だろう。

それにしても、猫に懐かれるか。
なるほど、それがもし本当ならなのはに懐かれる理由はよく分かるな。

逆に言えば、なのはが猫であるということを証明していると言える。


「それを言ったら、すずかだってそうじゃないのか?」

「ふぇ!?」

「ふぇ、じゃなくてさ。一度だけ見せてくれたじゃん」


過去に一度だけ。
なのははしょっちゅう子猫だし、アリサはなんだかんだで猫になってくれる。
いつも条件付だとか、勝負に勝ったらとかだけど。

それに比べ、すずかはまだ一度しか、見せてくれていない。
そう、一度しか、だ!

これでは、自称猫マスターの通り名に傷がつく。


「で、でも、あの時はその場の雰囲気とかあったし」

「今も十分雰囲気あると思うよ?」


周りは猫だらけ。
むしろ、俺とすずかを残して、猫しかいない。

この月村低を含めたとしてもだ。

雰囲気、もしくは条件としては十分すぎると思う。


「そうかもしれないけど」

「すずか」

「な、何かな?」

「俺は猫がとてもとても好きなんだ」


俺はそういってニカっと笑顔をすずかに見せる。


「竜也君、どんなにいい笑顔でも私はやらないよ?」


意味がなかった。
精一杯の笑顔だったのに。

これは中々に堅い城壁だ。
どうやって切り崩すか……


「猫ってかわいいよな?」

「そうだね、癒されるし、知ってる木の上に上って降りれなくなった子猫ってすっごくかわいいんだよ?
だから、その場面見るとついつい見入っちゃうんだ」


たしかに、この間のなのはを想像すればかわいいなんて容易にわかる。
それ以上に、すずかよ。
その状況は助けてあげようよ。

気持ちは分かるけどさ。


「運動会のときのなのはちゃんもかわいかったよね。本当に子猫みたいだったよ」

「俺もあのシーンは何度も見返してるよ」


高町家『なのはの成長映像その5運動会編』はそれはそれはとても素敵な映像でした。
ついつい焼き回ししてもらっちゃったよ。
途中からしか移ってないけど……

にしても、その5って多いのか、少ないのか分からないよ。


「だからさ、すずかも、もう一回猫化してみようよ?」

「理由になってないと思うよ」

「いや、なのはがあれだけかわいいんだ。すずかがかわいくないはずがないよ!」

「そ、そんなに熱く語られても」


若干引き気味のすずか。
ちょっと強引に行き過ぎたか。

これは、すずかの猫化計画は諦めるしかなさそうだよ。


「でも、うん」


改めて決意したかのような口調。


「どうしてもって言うなら、一回だけ」

「え?」


今、なんて言った?
どうしてもっていうなら一回だけ?

え、どういう心境の変化?


「あ、あのね。別にやってみたいとかじゃなくてね。
なんか、みんなやってるのに私だけやらないみたいてちうのは、ね?」


なんとなく、疎外感と続けるすずか。

俺はそれがどうして疎外感なのかは分からない。


「疎外感?」

「うん、竜也君が来る前の話になっちゃうんだけどね」


昔は誰にも声をかけられず、一人だったと。
でも、そのあとにけんかをした果てに、なのはとアリサという親友が出来たと。

そう、少し前の話をしてくれた。
実はこの話は断片だけなら聞いていたが、実際には知らなかった。


「もちろん、竜也君もね」

「そうか」

「うん、だから、疎外感。みんながやってるならっていう」

「前にやったじゃん」

「そう、なんだけどね。この間のなのはちゃん見たら少しありかなって」


興味が湧いたと言うことかな。
この間もやった時は空気からとのことだから、今回は積極的に自分からということかな。


「そういうことだから。じゃあ……いくよ」

「ああ」


なぜか、緊張した雰囲気が漂う。
猫たちもそれを察してか、黙っている。


「にゃ……にゃ~ん」

『にゃ~~ん』


すずかが恥ずかしそうに猫の声をした後に、周りの猫たちも鳴いた。
それはまさにコーラスという言葉がピッタシだった。


「え、じゃあ。お手」

「うにゃい」


俺の手に優しくちょこんと手を置くすずか。
周りの猫たちがそれに合わせて、空中に手を置き、お手のポーズをとる。

なんというチームワーク。
すずかの仕草を真似してうごく30を超える猫たち……

とてもシュールな絵だった。

だが……それが、こう……なんていうか、胸に来るものがあった。

興味本意で、すずかの頭を撫でてみる。


「にゃにゃ~ん」


嬉し恥ずかしそうに、身体を猫みたいに縮める。

この状況……まさに、『猫パラダイス』だった。

結局この状況が俺が帰るまで続いた。
最終的には猫の数が50を超えていたと思う。

数えたわけじゃないけど、どうだろう。
飼ってる猫だけじゃなくて、野生のも来てた気がする。

なのはがいつのまにか混じっていてもおかしくないなと中から思い出したのはここだけの秘密である。


「竜也君、今日のことは内緒にね」

「え? ああ、うん。むしろ誰かに教えたら価値が下がりそうだ」

「そう?」

「ああ、今度は写真が撮りたいな」

「それはだめ……だけど」

「だけど?」

「二人きりのときなら、またやってもいいかな?」

「!?」

「ううん、とね。意外と楽しかったと言うか、なのはちゃんの気持ちが分かった感じかな?」


なのはの気持ちが分かった……だと?
全くもって謎発言である。

なのはの気持ちと言うと、子猫の気持ちと言うことなのだろうか?

なら、『猫の気持ち』でも買えばいいと思う。
あれ、そんな雑誌あったよね?


「えっとね、何が言いたいかというと、また遊びに来てねってこと」

「言い方が遠まわしなんだよ……」


俺は察しが悪いから分からなかったじゃないか。


「ごめんね。じゃあ、また明日。学校でね」

「ああ、また明日」


そういって、俺は月村邸を離れた。

今日はなのはやアリサには会えなかったけど、
これはこれで大きな収穫だったかな?

にしても……


「猫かわいい猫!!」


思わず海に向かって叫んだのはこの日の夕日が沈むころの話である。

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