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小説挑戦


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ありのままに─第22話─

そこには金髪の少女が立っていた。

いやいや、もしそれが現実だったら驚きの新事実だよ?

ここは駅の真ん中。
正確には真ん中ではないとは思うが、改札口の近くだから真ん中と言っても差し支えはないだろう。

そんな中、一人絶望してる少年に声をかけるだろうか。
一人、駅で頭抱えて、ひざを抱えてブツブツ言ってたんだから。

その俺に普通声をかけるか?
少女が。

おかしいなと思い、もう一度自分の世界から現実に戻ってみる。

金髪の少女が、心配そうに俺を見ていた。

もう一度だ、もう一度だけ考えよう。
今度は現実的に。

まず、こんな駅に金髪の少女がいるだろうか?
答えは、否!

ここは日本である。

金髪は一人だけいるだけでも十分に驚くのに、偶然俺に駅で話しかけるはずがない。
再び現実に目を向けてみた。


やはりそこには金髪の少女がいた。

うん、もう諦めよう。
現実逃避はよくないよな。


「す、すみません」

「うん、どうしたのかな?」


金髪の少女はようやく返ってきた言葉に安堵したかのような表情だった。


「道を尋ねたいんですが?」


道を尋ねるのに、なぜわざわざ俺なんだ?
近寄りがたかったはずの俺に。

そんな疑問がすぐに思い浮かんだが、
よくよく考えれば、知らない町に一人で、大人に声をかけるのは相当度胸のいることだと思う。

それに比べれば、同年代ぐらいの変態であっても自分のほうが声をかけやすい、ということなのだろう。
なんか、自分で変態って言うのは抵抗があるような、ないような。


「分かる範囲でなら、いいよ」

「あ、ありがとうございます。ここに、行きたいの、ですが」


そういって見せてきたのは、スーパーの名前と簡易的な地図の書いたメモ。
その地図があまりにも簡易すぎていた為に分からなかったようだ。


「うん、ここなら分かるから、連れてってあげるよ」

「ありがとう、ございます」


丁寧に一礼してお礼を言う金髪少女。
ああ、そう言えばまだ名前知らなかったよ。


「俺の名前は、相沢竜也って言うんだ」

「え?」

「そっちの名前は?」

「フェイト・テスタロッサ、です」

「フェイトね、俺のことも竜也でいいから、敬語もいいよ」

「そう、で……分かった。竜也、道案内お願いね」

「了解」


道を教えるだけなら、名前を名乗る必要はないかもしれないけど、
何かと不便かもしれないしね。

それに、占いの言葉が気になるし。

にしても、フェイト・テスタロッサ、ね。
外国人なのかな? 見た目はそうにしか見えないけど。
でも、日本語が流暢だよなぁ。

まぁ外国語話されるよりはいいけどさ。


「「…………」」


お互いに無言で歩く。

沈黙が痛いです。
とても気まずい雰囲気である。
どうやら、フェイトは無口な子のようだ。

同じ金髪でもアリサとは大違いである。
あれは、うるさいくらいだけど、こっちは静か過ぎるよ……

このままだと、気まずすぎるので話をかけてみるとするか。


「フェイト」

「何? 竜也」

「フェイトは買い物でそこに行くの?」

「うん、お母さんに頼まれて」

「そっか、お母さんに、ね」

「お母さん、忙しいから」


忙しい、ね。
そういう意味だけで娘を一人買い物させるってどうなのかなとは思うものがあるけど、
家庭の事情だよね。

家もあまり人のこと言えた立場じゃないし。


「家の母さんも忙しいんだよなぁ。お互い母さんに苦労するね」

「え? うん、そうだね」


今、少し笑ったような気がした。
今まで仏頂面でどこか悲しげだったけど、共感するものがあったのか、やっと笑ってくれた。

笑った方がかわいいのにな。
なんで、無表情な顔をしちゃうんだろう。

やっぱり、家庭の事情が……やめとこう。
下手にそういうのは言うもんじゃないよな。
俺も昔は嫌だったし……


「竜也はここに住んでるの?」


ようやく話しかけてきてくれた。
さっきの話が大きかったのかな?
共感することによって、仲良くというより仲間認識ってやつなのかな?


「そうだよ、と言っても来たのは1年前だけどね」

「そう、なんだ。いい町?」

「ああ、とても、とても好きな町だよ」


俺にとっては始まるきっかけをくれた町。
温かい人の温もりにあふれる町。

たった1年、されど1年いただけだけど胸を張って言える。


「本当にいい町だよ」

「うん、竜也見てるとそう思えるよ」


そういって、こっちに顔を少し向けて、笑顔を見せてくれるフェイト。

優しい顔だねぇ。
なのはたちとはまた違うタイプだね、これは。

それに俺はそんな幸せそうだったかな?
まぁ確かにこの町に来て良かったけどさ。


「私も、いつか、ここに住みたいな」


遠いところを見ながら呟いた。
たぶん、誰に言うということでもなく独り言だと思う。

でも、その言葉の中には悲しみと言うか、切なさが感じられた。

やっぱり家庭なのかな……
今日何度目か分からない疑問を浮かべる。

俺が考えたところでどうしようもないんだろうけど、
何かしてあげたいなと言う気持ちにはなる。

というより、そうさせるものがこの子にあると思った。


「フェイトさ、あんま悲しそうにするなよ」

「悲しそう、だった?」


無自覚ですか。
それって自覚あるより重症な気がするな。


「うん……まぁね。まぁあんまり気にしないほうがいいぞ?」

「え?」

「なんでもない」


危うくプライベートに関与するところだった。
あまり、そういうのは好ましくないよな。


「お、ついたぞ」

「そう、みたいだね。ありがとう」

「ん?」

「ここまで、ありがとうね。楽しかった、よ?」


何で最後に疑問詞なんだ?
そもそも、楽しかったって、ちょっと違う気がするけど。


「ああ、どうしたしまして。俺も楽しかったよ」


俺がそう言うと、フェイトはパッと笑顔になって微笑んでくれた。
今までの無表情が嘘のように。

その顔は、金色に輝いているようだ。

というのは、なんかあれだな。
うん、きざな奴みたいじゃないか、俺が。

にしても、今日の占い的には、素敵な動物とのふれあいがあるはずなんだけどなぁ。
人間も動物って言えば、動物なんだけどさ……

まさか、フェイトがその動物なのか?

どうなんだろう……
物は試しってことなのかな。


「フェイト」

「どうしたの? 竜也」

「……お手」

「え?」



フェイトはとても戸惑っていた。
ああ、それはもう見るからに慌てている。

どうすればいいのか分からないようだ。
なので、もう一押ししてみる。


「お手」


もう一回言うと、また悩む。
そして、恐る恐るながら、


「わ……ん?」


そうか……素敵な動物とのふれあい。
フェイトは……犬なのか。

ははは、新しい動物を見つけた!

たぶんなのだが、このときの俺は他の人から見たら目が輝いていたんではないだろうか?
フェイトも若干引いてた気がするし。

うん、でも俺はもう満足だ。


「じゃあな、フェイト」

「え……あ、うん。じゃあね、竜也。……また、会える?」

「俺はこの街にいるから会いたかったらまたこの町に来てくれれば会えるさ」

「そう……うん。また会いに来るね」

「ああ、その日を楽しみにしてる」


俺はこの言葉を最後に、フェイトに別れを告げて、家に帰った。


「I'm home」 


確か、ただいまと言う意味だった気がする。
今日は母さんは帰りが遅いので、家に誰もいるはずがないが、
それでもついついただいまと言ってしまうのは日本人の癖だと思う。

よく、一人暮らしのただいまは寂しいと言うが、たぶん、俺は今それをじっ─


「お、おかえり。た、竜也君」


声が聞こえた。
俺の部屋の方から、何かをやって集中しながらなのか、声が途切れ途切れだったけど、
確かに声が聞こえた。

誰もいないはずなのに……

慌てて、自分の部屋に駆け込むとそこには……


「もしもし、警察ですか。ええ、ここに不法侵入し─」

「にゃ! にゃにゃ!! にゃのはだよ!」


前にも警察ネタはやった記憶があるが、すでに遠い記憶の中だ。

あまりにも焦っているのか猫語がでまくる上に、自分の名前を噛んだ。

そう、つまりは俺の部屋には、一生懸命RPGをやっているなのはがいた。
そして、俺は悟ったんだ。


「だめだ、こいつ早く何とかしないと……」

「にゃ! そういうことは失礼なの!」

「勝手に家に上がってるお前のセリフか!」

「ちゃんと、竜也君のお母さんに許可はもらったよ?」


ほら、合鍵もあるし、と言うなのは。

母よ、なのはに鍵を渡したら、毎日ゲームしに来るぞ。

ちなみにやっているRPGはとあるねずみ王国の王様が出てくるやつだ。
確か他にも、最後の幻想とかのキャラも出てたよな、あれ。

俺的にはⅡがお勧めだ。
黒い翼の生えた、最強の剣術を使う人もいるしね。


「なのははやっぱりⅠなの」


お前の意見は聞いてない。
たく、勝手に上がった上に、ゲームまでやるとは、お仕置きが必要だな。


「なのは、まて」

「にゃん」


そういうと、ゲームをやっているのを無視して俺の指示に従うなのは。
俺はその状態をほんの1分ぐらい続ける。


「よし」

「にゃ。って、あ!死んじゃったじゃん……竜也君の意地悪なの!」


ざまぁみやがれだ。
部屋の主に許可を得ずに勝手に遊んでるからいけないんだ。


「にゃ~、じゃあ、竜也君も一緒になんかやろうよ?」

「うん、まぁいいけどさ。じゃあ、一緒に出来るのは……」


そこそこの数あるゲームソフトの束から対戦できるものを探す。


「え……これはやったことないんだけど?」

「そんなもん知らんよ。ならできるようになれ」


それから、月の形のゲームをなのはが帰るまで続けた。
なのははプレイしながら「うにゃー!」「にゃにゃ!」とか言いながら必死にやってた。

その、必死さがまたなんというか、うん、見ててとても和んだよ。

それで、時間になると、なのはは「今度は絶対勝ってみせるの!」と三下のせりふを言って、帰っていった。

なのはが帰った後は、割とすぐに母さんが帰ってきた。


「ただいま、竜也いる?」

「いるよ~おかえり」


母さんは今日もいつも通りに帰ってすぐに、ご飯の準備を始めた。
最近は高町家でご飯を食べることよりも、こうやって帰ってきて食べることの方が多くなってる。

それは、ようやく安定したお金が手に入るようになったのと、
生命保険とかから入ってきたお金が大きかった。


「今日は、どうだった?」

「どうだったって?」

「今日一日よ」


母さんは必ず食事の時間もしくはその準備の時間に、
今日何があったか質問するのが日課になってた。


「今日は、素敵な出会いが会ったよ」

「出会い?」

「うん、犬との」

「い、犬?」


母さんは少し拍子抜けした声になった。
まぁ驚くのも無理はないかもしれないけどね。


「名前は、フェイト・テスタロッサっていうんだけどね」

「フェイト……テスタロッサ、ね。またずいぶん懐かしい名前……」


母さんが最後の方に言った言葉はよく聞こえなかったが。

その様子はどこか懐かしむような、そんな感じがした。


「どうしたの?」

「ううん、なんでもないわ」


すぐに平静に戻る母。
昔に何かあったのかもしれないが、たぶん、聞いても話してくれないんだろうな。

まぁこんなことを気にしても仕方ない。
俺からすれば、今日一日も充実した、楽しい日々を送れた。
それだけで十分だ。


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