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小説挑戦


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ありのままに─第23話─

外は未だに雨が降り続けている。
この時期と言うのは雨が多くとても、じめじめする。

中にはこのじめじめがたまらないなんていう人もいるかもしれないが、
大抵の人は忌み嫌う季節だと思う。

それに、もしじめじめが好きならカエルの星に行くことをお勧めする。
 
カエルといえば、今にもその鳴き声が聞こえそうな、そんな気分にとらわれる。
実際には、カエルの鳴き声は聞こえることはあまりないのだが、やはりそれを想像するのは、日本人独特なのかなと思う。

雨が降れば降るほど、あさがおは綺麗に見える。

そんな景色を俺は窓越しから、ぼんやりと遠くを見るように外を眺める。

どうして、こんな季節があるんだろう。
雨は嫌いではない。
正しくはこのじめじめが嫌いなのだけだが、同じようなもんなのかもしれない。


「相沢君」


ジーっと外を眺め続ける。

今日は家に帰ったら何をしよう。
ああ、今日は鍛錬だから、なのはの家か。

その上、雨だから道場で素振りと試合かな。

あんまり深く考えずに、ただ薄っすらと今日の予定を考える。
いや、確認すると言っても間違いじゃない。


「相沢君! 今は授業中です!」


先生のお叱りの声が聞こえて、ようやく現実に戻る。

授業が決してつまらないと言うわけじゃないんだけど、
こんな雨模様を見せられてはやる気もうせると言うものだ。


「ねぇねぇ、竜也君」


今年になって初めての席替えで、隣の席になったなのはが声をかけてくる。
こんな回想をしてれば分かると思うが、俺は窓際である。

窓際族とは関係ないぞ?
俺はその言葉の意味は判らないけど、でも、違うことぐらいは分かる。


「なに? なのは」

「あ、あのね。ここが分からないんだけど」


そういって自分のノートを見せてくるなのは。

そのノートにはかわいらしい絵が書いてあった。
落書きである。
それも、アリサやとすずかさらには俺のも。

なのはって勉強苦手だったっけ? と若干寝ぼけ気味の頭で考える。
理数系以外は苦手だったっけ?

少しずつ現実味の戻ってきた結果、ようやく今の時間が社会であることが分かった。
よくよく考えれば、ノートを見た時点で漢字や年号が書いてあったはずだから、分かるはずだけど、
かわいらしい落書きを見てしまって、肝心なところを見てなかった。


「今、授業中だろ? ちゃんと集中しなさい」


授業中にしゃべりかけてきたのに対して叱ってやる。
俺は猫思いだからね。


「にゃ!? 竜也君に言われたくはないの!」

「高町さん、静かにしなさい!」


なのはの声が大きかったのか、先生に注意されてしまったなのは。
それに対して、竜也君のせいなの、とブツブツ言っているが俺は気にしない。

そういえば、後3週間もすれば、夏休みになる。
小学校二回目の夏休み。

と言っても、その前には期末テストがあって、そのために勉強をしなくちゃいけないのだが、
俺はさしてそれは問題だと思ってない。

今も、魔法の勉強と一緒に学校の勉強も進めているので、今の授業の内容よりも結構先までやってるからだ。

毎日の予習復習以上のことをやってることになる。

たぶん、今、なのはが声をかけてきたのも、それが理由であるのだろう。
なのはは普段はそんなに勉強をする方ではない……と思う。
実際は知らないけどね。

そのなのはが苦手な教科を俺に教えを請うと言うことは、少なからずテストを意識してるんだろう。
まぁ頼られると言うのは悪い気はしない。


「家で教えてあげるよ」


そう言った文面を書いた手紙をなのはに渡す。

お節介かなとは思うものの、たまにはそれぐらいやってやるかと思う。

それを受け取ったなのはは、ぱあっと笑顔になり、手紙を返す。


「ありがとうね、よろしくお願いします」


まぁそんなわけで今日一日の予定は決定だね。

剣術の鍛錬の後の勉強だと、眠くなりそうだけど……
いつものことだから頑張るか。


「これで今日の授業を終わります、つづけて帰りの……」


今日最後の授業が先生の言葉で終わりを告げた。
そして、そのまま明日の連絡の時間になり、先生はみんなにさようならといい、みんなもそれに答え、
放課後になった。


「じゃあ、私とすずかは塾だから、じゃあねまた明日」

「またね、竜也君、なのはちゃん」

「うん、また明日」

「ああ、また明日」


二人に別れを告げると、俺となのははまずなのはの家に向かうべく歩き出す。


「そういえば、竜也君と二人だけ帰るのって久しぶり、かな?」

「そうだったか?」


俺は直接なのはの家に行かずに、自分の家にまず帰ってから行く事が多くなった。
そのため、ここ最近は3人でつるむか、全員ばらばらのときが多かった。


「うん、まぁ別に俺となのはが二人きりって珍しいことではなくない?」

「そうだけど、二人だけで帰るのはなんだか新鮮だよね」


言われてみればそうかもしれないけど……
あえて主張することでもないかな。

こんな、いつもどおりの会話が続けていると、バス停に着き、
気付けばなのはの家である。


「ただいま~」

「お邪魔します」


なのはの気の抜けた、声が家に響き渡るが、誰もいないので返事がない。

たぶん、恭也さんも美由希さんもまだ学校なんだろう。
士郎さんと、桃子さんは喫茶店だろうしね。


「誰もいないね」

「そう……だね、だけど、いつものことだから平気なの」


ちょっと無理した感じに答えた。

前まではよくなのはと一緒に帰ってたからしっているが、
なのはが帰る時間は大抵誰もいない。

そのため、俺がいないといつも一人ぼっちだった。

こういうところから孤独感とかでちゃってるんだろうな。


「でも、今日は竜也君がいるからいいの!」


俺に振り返って笑顔を見せるなのは。

寂しいなら家族に言えばいいのに……
恭也さんも美由希さんもこの状況を知れば、絶対に放っておくような人じゃないと思うし。

それなのに、なのは大丈夫でいようとする。
全くこの家族はお人よし過ぎると思うよ。


「じゃあ、俺は先に鍛錬始めるけど、道場に一緒にくる?」

「うん、見学させてもらうね」


観客がいる分には問題ない。
むしろ、そのほうが燃えると言うものだ。

それに……なのはを一人にさせるわけもいかないしな。


すぐに、動きやすい服に着替えて、道場に入る。
なのはも俺の後ろについて来て、道場に入る。

まずは精神集中のために座禅をとる。
なのはも真似して座禅をとる。


「「…………」」


お互いに1分ほど無言で集中する。

俺はこの静かな時間が好きだ。
まるで時間が止まっているかのような、そんな静けさが孤高感を感じさせる。


「よし!」

「はい!」


俺が鍛錬を始める前に切り替えをするために一喝したら、
なのはが元気よく答えてくれた。

その声はとても清々しい。


「じゃあ、なのははそこで見学しててくれな」

「うん、頑張ってね」


なのはの応援の声にやる気がうなぎのぼりに上がる俺。
自分で意外と単純なやつだなと思うほどだ。

人に応援されるのって嬉しいとか通り越して、その気持ちに答えなきゃって思わせられる。


「ハッ!……ハッ!……ハッ!……ハッ!」


道場に俺の気合声と、素振りをするときにでる、ビュンビュンという、空気を切る音が響く。
なのはは静かに座禅を組んだまま、じっと俺の鍛錬を見つめる。

時々目を瞑って、精神集中をしたりもしているが、決して姿勢は乱れない。

さすがは、高町家の末っ子。
武術をやってなくても、たとえ運動音痴でも心得はしっている。

それが素振りに集中している俺にも伝わる。
人に練習を見られているはずなのに、全く緊張せずにいつもどおりに出来るのは、
たぶん、なのはがそういう雰囲気を出しているからだと思う。


何分……何時間が経っただろうか、気付けば外は暗くなり始めていた。
結局この日に、恭也さんも美由希さんも道場に顔を出してこなかった。


「なのは、そろそろ疲れたし、戻るか」

「うん、竜也君お疲れ様」


そう言ったなのはの手にはいつとりに行ったのだろうか、タオルを持っており、
俺に、「はい、どうぞ」と言う掛け声とともに、渡してくれた。

軽くお礼を言って、なのはの家のリビングに戻った。


「あ、お疲れ様。竜也君」

「お疲れ、精が出るな」


リビングには夕食の準備をしている、桃子さんと母さんのほかに、
恭也さんと美由希さんもいた。

おまけで士郎さん。


「あれ、なんで二人は顔を出さなかったんですか?」

「え……二人がいい雰囲気だったから、ね? 恭ちゃん」

「そうだな、とても入れる空気じゃなかったな」


二人は俺となのは? に気を遣って入れなかったらしい。

まぁ確かにいつもの数倍は集中してやってた気はするけど。
いい雰囲気ってどういうことだ?

俺は練習してただけなんだけどな……

まぁ気にしてもしょうがないか、いい練習が出来たわけだからね。


「はい、雑談はここまでね。ご飯が出来たわよ、いただきましょ」


いつのまにやら、テーブルの上にはご飯が並んでいた。


「それじゃあ、いただきます」

『いただきます』


みんなで一斉にいただきますを言い、食事を始める。
その風景はまさに一家団欒だった。

とても、なのはが孤独には見えないような……

雑談あり、笑いありの食事が終わって、なのはの勉強を見るために、
なのはの部屋に向かった。


「ええっとね、こことここが分からないんだけど」

「そこは、1192(良い国)作れなくて、北条氏に乗っ取られた鎌倉幕府って覚えるんだ」

「わ、分かりにくいよ!しかも長いの!」

「ちなみに北条氏は執権だからな」

「執権って?」


なのははやっぱり社会などの文系がわからいようだ。
理系が得意なのは、ゲーマーだからなのかな?


「そういえばなんだけど」


なのはが勉強の手を止めて、椅子をくるりと回転させ、俺に向き合った。


「竜也君ってさ、鍛錬とかしてるときかっこいいよね」

「は?」


いきなりのかっこいい宣言で間が抜けた。
勉強中だって言うのに全く。

まか嬉しいんだけどさ。
それを口に出すとバカにされそうなので言わない。

頑張ってうれしさを隠す。


「え……い、いや。そんなこと無いと思うけど」

「あ、竜也君が珍しく慌ててるの。しかも、顔まで赤くして」

「う、うるさい!それで、それがどうしたんだよ!?」

「にゃ!? うん、普段と違うなって、いつもはやる気なさそうにしてるのに、
鍛錬のときはお兄ちゃんみたいに集中しててかっこよかったなぁって思ったの」


お兄ちゃんみたいに、ね。
なのはも別に家族が嫌いってわけじゃないんだよな。

家族といえば、あのフェイトって子がなぁ……
そういえば、あれ以来会ってないな。


「今日だって授業中は上の空だったの、それでなのはよりテストの結果が良いって許せないの!」

ああ、そうか。
かっこいいとかは前ぶりに過ぎず、最終的にはそこか。
嫉妬ですか? なのはさん。
見苦しいですね。

そんな君には


「なのは、以後猫語以外使用禁止」

「にゃにゃ!? にゃにゃにゃい、にゃんにゃー」

「『そんなの反則だって?』だって? はん! ぬか喜びさせたやつが悪いんだ!」


ちゃんと言われたとおり猫語で反抗するあたり、なのはは染まってるなぁ。
もう、何でも俺の言うとおりになるんじゃないだろうか?


「ほら、早く勉強しな。また外出禁止になるぞ?」

「にゃ!? ……にゃん」


俺の脅しが効いたのか、シュンとなりつつも手を動かし始める。
今日はなのは猫と遊びに来たわけではないからね。
ちゃんと勉強しなくちゃ意味がないというものだ。

前回、前々回は俺がなのはで遊びすぎたせいで外出禁止になったようなものだからな。
ちょっとは責任を感じてるんだぞ?

そんな事を思いつつ、なのはに勉強を教える、夜は続いた。


おまけ

翌日学校にて。

「にゃーにゃにゃ。にゃにゃんにゃん!?」

「『いつまで猫語でいればいいの!?』だって? 俺が飽きるまで」

学校でも猫語縛りが続き、なのはは羞恥プレイを味わうことになった。
と、思ったのだが、案外みんなそのなのはがかわいかったらしく、頭を撫でられそうになったりした。

でも、なのははそれを嫌がってなのか、俺の下に戻ってくる。
なので、代わりに撫でてやると

「にゃ~ん」

と言いながら、気持ちよさそうに見えた。
本当になのは猫は俺にしか懐かないな。

「にゃにゃい」

「え? 『もっと撫でてほしい』、う~んだが断る!」

「にゃ~ん」

悲しそうな声を出すなのは猫。

「というより、あんたなんで猫語が分かるのよ……」

「アリサちゃん、たぶんそこに突っ込んだら負けだと思うよ?」

この日一日中、教室に猫の鳴き声が響き渡っていたらしい。


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