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小説挑戦


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ありのままに─第24話─

長きに渡る雨模様の空。
といいつつもほんの1ヶ月にも満たない雨の季節ではあるが、それが終わりを告げた。

そのことの意味するとこは、夏の始まりである。
海鳴市の二回目の夏だ。

夏、と言ってもまだ本格的には暑くはならずに、未だにじめじめした独特の雰囲気が漂っている。

外では、夏の象徴のミーンミーンと鳴く油蝉ではなく、
ジリリリリと鳴く夏の始まりと終わりを告げる蜩がないている。

この、蝉の鳴き声に、俺は少しじんわりと来るものがある。
それはひとえに、あの5兄弟がもってきたパソコン用のゲームのせいなのだが、
明らかに小学2年生がやるような内容ではないと思った。

クリアは攻略サイトを見てやっとだった。

でも、それほどまでに苦労したことと、ゲームのないように思わず涙を流してしまった。
そして、この蜩の鳴き声は、それを思い出さした。

正確には、名前だけでも思い出せるのだが、やはり鳴き声の方が良い。

鳥肌がたつ。


まだ、夏はやってきてないな。
主観的にはそう思わせる。

季節的には夏と言っても過言ではないが。

しかし、目前ではあった。

テストは1週間ほど前に終わり、答案はすでに返却されている。
今回のテストは前回に比べて1点低かった。

たった1点だけだ。

なのに……この1点が勝負の明暗を分けた。


「ふふ、やっと……やっと勝ったわよ! 竜也約束どおり一回だけ私の言うことを聞いてもらうわよ!」


恒例の如くアリサと勝負していたが、前回は引き分けにより延長されていたため、
賭けの内容はそのままだった。

賭けの内容……俺が勝った場合は1日アリサ猫状態。
俺が負けた場合は、アリサの言うことをなんでも一回聞く。

実にシンプルで分かりやすい内容だった。

ちなみに、テストの結果だが、俺は算数以外満点、アリサは全教科満点、すずかは全体的に中の上、なのはは理数系は満点、
そして、普段なら残念な点数の文系は上の中クラスだった。
俺の指導のたわものと言っても良いだろう。

なのははそんな自分のテストの結果を見て自分で驚いていた。

なのははやれば出来ることタイプなんだな。
ただ、苦手と言う意識だけが先掛けしてしまうタイプだんだろう。

まぁ今回のテストは俺のおかげと言うこともあったので、


「俺のおかげでいい点数取れたんだから、なのはは俺のペットで完全に決定な」

「にゃ? ……感謝はしてるよ、竜也君。
それに、なのはも別に嫌じゃないけど、ただそれを認めたら駄目って本能が言ってるの!」


本能で俺の発言は危ないと気付いたと申したか、この猫め。
どっちにしろ、今の状態はほぼ俺のペットだから本人公認になるかどうか程度の違いに過ぎないけどね。

まぁそんな半分冗談、もちろん半分は本気のトークをしてアリサとの約束を誤魔化そうとしたのだが、


「ふふ、何を頼もうかしら」


不気味な笑いと共に、自分の世界に閉じこもっているアリサがすぐ傍にはいた。

俺は一体どんなこと命令されるのだろうか……
考えるだけで背中に凍るものを感じる。


「アリサちゃん、大丈夫?」

「ええ、大丈夫。私は大丈夫よ、すずか」


ふふっと未だに笑いを止めない、アリサ。
すずかも心底心配そうにしている。

俺もそんなアリサを見て心配になる。

何が心配かって、自分の身に決まってるじゃないか!

きっと残虐非道な、そう、どこかの悪役な超人たちも驚きの恐ろしい罰ゲームが待ってるに違いない。
俺はそれをただ、ここでじっと待ってるしかないんじゃないのか。

父さん、きっと俺もすぐそちらの世界に逝くことになります。
体は無残な姿かもしれませんがそんな息子を許してください。

そんなことを天に願ってみると、父さんの声が聞こえてきた気がする。

きっと、まだ生きろとか、励ましや、希望の言葉を言ってくれるのだろうと期待する。


「竜也よ……散々に殺られて来い」


死の宣告だった。

今度のお盆には墓に塩をまいてやろう。
ああ、そうしよう。
ついでにお焼香も叩き付けてやろう。

俺はそんな事を密かに決心する。

そんな時だった、アリサが決心したのか、今までの不気味な笑みを止めた。


「竜也!」

「お、なんだよ急に?」

「今日あいてるかしら?」

「ん? 今日?」


今日は週に一度の鍛錬のない日だった。
寝る前には魔法の勉強と練習と学校の勉強があるがそれ以外はない。
つまり、放課後から家に帰るまでの間は暇である。

こういうときはケータイの占いをチェックしてみる。

そこには

「今日はあなたの友人と時を過ごすが吉」

と書いてあった。
これは、なのはたちと遊べと言うことなのだろうか。

あの「動物と……」以来はあまり当ってないが、まぁたまには信じるのもいいかもしれない。
何より暇だしね。


「今日は暇だよ」

「そう、じゃあ、今日は私に付き合って頂戴!」

「え、じゃあ。なのはも一緒にい─」

「駄目よ! すずかもね。今日は遠慮して頂戴」


アリサが二人の申し出を断るとは珍しい。
なのはも、渋々ながら、諦めたようだ。

それに対し、すずかには少し思い当たる節があるみたいだ。

俺じゃなくちゃいけない理由でもあるのだろうか?
まぁ賭けだからと言ってしまえばそれまでだと思う。

結果的には暇な時間を潰せるわけだし、俺的には問題ないからいいんだけどね。


「それで、俺がアリサの家に呼ばれた理由はこいつか?」


アリサの家は、すずかの家と負けず劣らず……
むしろ、勝つぐらいの豪邸である。

ただ、タイプが違うから比較の仕様もないのだが……
お金の規模的に考えれば、バニングス家のほうが月村家よりも上だろう。

ただ、地位的なものになるとどうだろう?

お互いに得意とする分野も違えば、力を持っている国も違う。

まぁ俺たち、庶民からすれば、どちらも「お金持ち」という範囲に収まるものなので、
大して気にする必要はない。

ああ、気にする必要ないのさ。

家なんかオンボロ、でもないが所詮はマンションさ。
ローンつきの安いマンションだよ。

それに比べて全く。

いや、全然腹に立たないよ?
諦めたもん、この二人の家だけは格が違うもん。

俺が気にしてるのは高町家だよ。
一戸建てならまだ許そう。

なんで一般家庭に道場があるんだよ!
そこからして、もう普通に範疇超えてるだろ!


「ちっ、なのはの癖に」

「なんか言ったかしら?」

「いや、気にするな」

「そう、それより本題なんだけど、この犬のことね」


俺の前にはかなり大きい犬がいる。
俺には品種とかは分からないけど、たぶん大型犬だろう。
そして、全身は黒く毛はさほどない。

その体格からして、猛者という雰囲気を漂わせている。

アリサの家は、猫屋敷のすずかの家とは打って変わって、犬屋敷である。
この家にもかなりの犬がいる。

俺は猫も好きだが犬も好きだ。
なので、アリサの家に来たときは必ず犬と戯れる。

猫よりも忠実な生き物。
なぜか知らんが俺の場合は猫も言うことを聞いてくれるが。

そんな例外は置いといて、普通は、犬は飼い主には忠実である。


「この犬ね、森で彷徨ってたのを保護したのよ。
それで、首輪もしてないから野犬かなって思ったけど、どう見ても血統書付きでしょ?
飼い主も探してみたんだけど見つからなくてね、結局私が飼う事になったのよ」

「ほう、それで? そのままじゃ俺を呼ぶ必要はないよね?」

「話は最後まで聞きなさい。餌をあげようと思ったんだけど、食べてくれないのよ。
かれこれ2・3日ぐらいかしらね。そのままじゃ死んじゃうから、あんたに助けを求めたのよ」

「動物病院に助けを求めろよ……」


なんで、俺なんだよ。
動物病院で見てもらった方がいいじゃないかよ、常識的にさ。


「動物病院より、あんたの方が頼りになるわ」

「え?」

「な、なんでもないわよ! 早く何とかしなさい!」


そう言われてもね……

ようするに、この犬にご飯を食べさせなくちゃいけないってことなんだよな。
なんか、かなり面倒なことを押し付けられたような気がするけど、しょうがない。

賭けに負けた方が悪いんだし。
それに、アリサが頼むってのも珍しいし、この犬も放っておけないよな。

そんな事を思いながら、犬に近づく。


「あ、危ないわよ! 私も近づいたら噛まれかけたし……」

「大丈夫だろ、俺は動物に噛まれたことないんだよ」


俺はさらに近づく、犬との距離は1mにも満たない。

犬はじっと俺を見てくる。
俺も犬の目を見返す。

その状態が数秒続き次の瞬間、犬が俺に飛び掛った。


「え?」

「……きゃー!」


アリサが叫ぶ。
襲われたと思ったからだろう。

しかし、犬はそのアリサの考えとは裏腹に、
俺にのしかかり、ペロっと舌で顔をなめてくる。
尻尾を左右に振っていた。


「くぅ~ん」


その、でかい図体からでたとは思えない、かわいらしい鳴き声が聞こえる。


「え?」


アリサは拍子抜けした声と、驚きの顔した。


「アリサ、犬の餌ない?」

「え……分かったわ、ちょっと待ってて」


そういうと近くにあったビーフジャーキー?みたいなものを俺に渡す。

俺はそのビーフジャーキーを、犬にあげると。

パクっと一口で食べた。

そうして、もう一個と言わんばかりに、尻尾を振る犬。
それは、とても可愛かった。


「まて」

「わん!」


そういうとお座りして、待つ。
うん、とても賢いようだ。

もう一回アリサから食べ物を受け取り、犬の前に置く。
まだまては、解かない。


「よし!」

「わおん!」


その声と同時に、食べ物にがっつく。

実に嬉しそうに食べるなこいつ。
みてて、和むよ。

もう……大丈夫だろ。


「アリサ、こっちにおいで」

「う、うん。分かったわ」


そう言いながら、恐る恐る近づくアリサ。
その瞬間飛びつく、犬。

でも、その姿は。


「助けてありがとうだとよ、そして遊んで欲しいってさ」

「もう、分かったから、舐めるの止めなさいよ!」


そういわれると、アリサの前に座って、尻尾を振り続ける犬。
本当に利口な子だな。

そして、付き離すも、少し嬉しそうにいうアリサ。
やっぱり純粋に心を開いてくれたのが嬉しいんだろうな。


「それにしても、あんた。犬の言葉がわかるの?
いや、そうじゃないわね。動物の言葉が分かるのかしら?」

「いや、なんとなくだよ」

「そう……まぁそういうことにしとくわ」


そういうことも何も、そのまんままだよ。
俺は全部なんとなく、なんだって、なのは猫は分かるけどさ。


俺たちは沈むごろまで、その犬を含めた複数の犬と遊んだ。


「アリサは優しいんだな」

「な、何よ急に!」

「いやな、彷徨ってた犬を拾うだけじゃなくて、飼い主まで探してさ、
見つからなかったら自分が飼い主になるって、本当にすごいなって」

「……ふんっ! 当然のことをしただけよ! それにあんただって見つけたら同じことするでしょ?」


どうかな……
そこら辺はなんともいない。確かに動物は好きだが、実際に飼った事はない。
飼うとなると色々と大変だろうし、何よりマンションだ飼う事もできないしね。


「じゃあ、俺はもう帰るわ。そろそろ暗くなるしね」

「……そう」

「じゃあ、その犬よろしくな、また明日」

「くぅ~ん」

「うん? 寂しいのかな? まぁまた会えるさ」

「わん!」

「はは、俺も楽しみにしてるよ」


犬と会話をする。
ん? これって普通に考えたらおかしいか?


「竜也!」

「どうした? そんな大声で」

「き、今日は助かったわ」

「ああ、そんなことか。何を今更、そういう約束だろ」

「そうだけど……」

「じゃあ、また明日な」

「……あ、ありがとう」


アリサが顔を真っ赤にしながら、何かを呟いたが何を言ったのかは分からなかった。


「今日のあんたは、……かっこよかったわよ、本当にありがとう!」


今度はハッキリと聞こえた。
アリサには珍しくと言ったら、失礼なのかもしれないが、恥ずかしがらずにハッキリと言った。

そして、そのアリサの顔は……姿は。

夕日とその金色の髪の靡きからなのか、輝いて見えて、そして
……とても綺麗に見えた。


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