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小説挑戦


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ありのままに─第25話─

空は青空。
晴天と言っても足りないぐらいの、青一面の空だった。

ここ一番に太陽が輝き、そのおかげか、いや、そのせいか気温はとことん高い。
数字にして、36度。

真夏であった。

とてつもなく暑い。
気温にして36度だが、体感温度は40度はあるんじゃないだろうか?
それほどまでに、暑く感じる。

俺にとって暑さと言うのは、嫌だった。
冬の寒さには清々しさがあるが、夏の暑さにはそういった気持ちよさはない。

まぁこの町は他の街に比べ、風があるからまだましなのだろうが、
その風も海のせいか、塩っ気があり、若干肌触りも悪い。
そのうえで、浴びすぎるぞベタッとするものだから、性質も悪い。

風があるのがいいのか悪いのか分からないのはそのせいだ。

夏は序盤。
今年の夏はテレビのニュースによると猛暑らしい。
まぁそんなのは、こうやって外を歩いていれば十分に分かりきっているときことだ。

今年の夏も去年と同じ、
否、去年のほどの騒がしさはないにしろ、俺の日常は大差ないものだった。

あえているのが、家にいると、とても暑いので、今年は図書館にでも行って身体を冷やそうと思ったことぐらいだ。
それもこれも、暑いせいである。

ついでと言ってはなんだが、図書館には何度か行った事はある。
理由としては、読書の秋だから図書館だろ?

という、ちょっとしたお茶目な心構えから、流行? にのろうと思い行ったからだ。
それからも、たまにいったりはするけどそんなのしょっちゅう行こうとは思ったことも無い。

図書館と言えば、分厚い本や、ちょっとした単行本が置いてある場所だが、
家には勉強に必要なものも揃っているし、欲しい本は手に入る。

母さんはそういうことは惜しみなくお金を使ってくれるのでありがたい限りだ。

そんな、図書館に行く途中のちょっと長めで急な坂道。
そこに、車椅子に乗った少女がいた。

車椅子は珍しいものではないとは思う。
それと同様に少女も珍しいものじゃない。

しかし、その二つを掛け合わせれば、あら不思議!
とっても珍しいってそういうことじゃなくて!


「……あ」


車椅子を握る手が離れた。

そうすると車椅子は重力に逆らえずに坂の下へ滑り落ちる。
このままでは、彼女が怪我をしていまう。

俺はとっさの判断で、車椅子に手をかけて、滑り落ちるのを止めた。
まるでヒーローみたいに!

と、自分で言ったしまったら台無しだけどね!


「あ……ありがとうございます。助かりました」

「お礼はいいんだけど、なんで車椅子にはきついこの坂道を通ったのさ?」


この坂道は普通の人が歩くのでも少しきついぐらいの坂道。
まして、車椅子、そして俺と同じぐらいの少女には厳しすぎるものだ。


「ふ、普段は平気なんよ。でも、今日はいつも通りに図書館に行こうと思ったんやけど、この暑さのせいかいつも以上に疲れてしもうてな」

「いいわけは結構だよ。まぁ俺がいたからよかったものの」

「ほんまありがとうなぁ」


少女の顔は本当に申し訳ない、といった表情だった。
今の失敗は自分でもよく分かってるのだろう。

あんまり責め過ぎるのはよくないかな。


「それに、命の恩人や」

「大げさだよ」

「そんなことないで? 兄ちゃんのような普通の人には問題ないかもしれへんけど、私らにとってはこれで致命傷になるんや。
だから、兄ちゃんは命の恩人やで?」


どうなんだろう……
そういうものだろうか?

それでも、命の恩人はちょっと言いすぎだと思うけどな。


「まぁそういうことでもいいけどさ。図書行くんだっけ?」

「うん? そやけど」

「奇遇だね、俺もそうなんだ。ついでだから一緒に行くか」

「ほんまか? ならお言葉に甘えて」


これが、俺とこの少女の出会いだった。


「さっきから少女少女って嫌なんやけど?」

「え、ああ。そうだよな、名前なんて言うのか?」

「人に名前を聞くときは自分の名前からって言うやろ?」


少女は、ちょっと楽しそうに、そして冗談交じりに、いやらしく言った。
俺は悟った。

そうか……ニューキャラか。


「それが命の恩人に対する態度かよ?」

「そうか? そうやな、じゃあ」


そういうと少し悩むように目を瞑り、
後ろで車椅子を押している俺のほうを向いて言った。


「命の恩人様、ぜひともその名をお聞かせくださいな」


まるで、悲劇のヒロインのような立ち回り。
そして、俺はなんだ、駆けつけた王子様かこのやろう!

この少女はまさにいたずらっ子、そう言うのがしっくりくる。


「ああ、分かったよ。俺の名前は相沢竜也だ。小学2年生だよ」

「かっこいいお名前ですね! 憧れるわ」


妙にわざとらしく、芝居じみた口調で言うな。
言われる俺がはずか……しくもないがボケ!


「はいはい、分かったから。お前の名前は?」

「なんや、乗りわるいなぁ」

「うるさい! 暑さで面倒なのは嫌なんだよ」

「私の演技を面倒事って、ちょっと落ち込むわ。まぁええわ、私は八神はやてや。ひらがなではやてや」

「別に漢字聞いてないぞ?」

「そういうふうに言うのがお決まりなんや!」


何のお決まりなんだよ……
まぁいいか、細かいことは気にしないようにしよう。面倒くさいし。


「じゃあ、とっとと図書館に行くぞ。暑いのは懲り懲りだ」

「賛成や、安全運転で頼むで」


そのあとはやては「GO! GO!」と言いながら、目の前の道を指差したので、
言葉通りに、思いっきり全速力で走り抜けてやった。



「はぁ……はぁ……、や、やっとついた、はぁ…」

「ほ、ほんまに怖かったわ……でも」

「でも?」

「楽しかった、面白かったで。ありがとうな」

「はは、そりゃあどうも」


時々車輪が浮いたりしてたのだが、それでも面白かったって……
さては、はやてはMなのか!?


「なんや、今とてつもない勘違いされたような気がするで」

「き、気のせいじゃないのかな?」

「なら、何でそんなに慌ててるんや」


どうやら、はやてには読心術と言う特技があるようだ。

まぁ危険でありながらも、目的地の図書館に着いたし、はやても送り届けたから、
早速涼むとするか。


「じゃあ、はやて。またこん─」

「竜也くん!」

「何?」

「あ、あのなぁ。せっかくやから一緒に本読もうや」

「え、いや。俺はここに涼みに来ただけなんだけど……」

「そんなけち臭いこと言うなや、な?一緒に読もうな」


はやてはそういいながら、車椅子で俺を押す。
ん? 車椅子で……おい!

それはある意味に轢いてないか?

車、だぞ、一応。
名前に車がつくんだから、え?そうだよね?
車の一種だよね?


「なんや、バカみたいなこと考えてるんや? あれか、竜也君はアホの子なんか?」

「ち、違うわ! ボケ! 俺はどちらかと言うと……なんだ?」

「自分でも分かってないんか? ああ、痛い子のほうやったか」

「ち、違う。たぶん……」


アホの子ではないと思う。
漢字かけるし、読めるからね。小説だってたくさん読む。

それに、痛い子でもないと思う。
そりゃあ、ゲームだってやるし、ちょっとかっこいいことをしてやろうとか思うけど……
え? あれ? これって痛い子の条件に入ってるような……

いやいや、違うだろ。

痛い子はどちらかと言うと……なのは、じゃね?

なんか猫みたいなことしてるし、俺の言うこと聞くの嬉しがってたし……
うん、なのはは痛い子だな。

間違いない。
今度から危険だからちょっと避けるようにしようかな。


「まぁええか。それより何か本もってきてなぁ」

「は?」

「だから、本を持ってきて欲しいんや。ここは図書館だから読書するのは当たり前やろ?」

「あ、ああ。どんな本もってくればいいのか?」

「う~ん、竜也君に任せるよ」

「はいよ、了解」


まぁ図書館にきたんだから本を読むのは普通だよな。
俺は涼みにきたんだけど……まぁいいか。

はて、俺の自由でいいといわれてもな。


とりあえず、分厚い本が並んでいるコーナーに向かう。


「俺らしい本、俺らしい本」


俺がはやてにすすめられるような本を探す。
どれもこれも広辞苑並みの厚さがある。

題名を見た限りとても難しそうなばっかりだが……


「お、いいの発見」


そこには子供でも分かりそうなタイトルの本を見つけた。


「よし、これを読むか」


早速のその本を持って、はやての待つ場所へ戻る。


「ず、ずいぶん、分厚いのもってきなぁ。どれどれ中はっと。
ほう、かわいい動物がたくさんやな、ほんまかわいいな……って、読書できないやんか!
これは本は本でも図鑑やんか! なんや『犬猫動物大百科』って何でこんなに無駄に分厚いんや!」

「お、おお!」

「『おお』やないで! もっとまともなのはないんか!?」


はやてののり突込みが爆発した。
さすが、関西人、素晴らしいのりだった。

はやて的には犬猫は嫌いらしい。
ちょっと残念だ。

なので、もう一冊の本を机に置く。


「ま、また分厚んやな。どれどれ……はぁ、グリフォンとかかっこええな。
あ、それ以上にドラゴンもカッコええな。ほんまにファンタジーな世界があったらええなぁ。
魔法とかもあるんかな……ってこれも図鑑やないか!
しかも、今度はなんや!『世界の不思議な動物大紹介』ってこんな動物が本当に居たら大ニュースや!
もっと普通の本はないんか!?」


またもや、大炸裂した。
おかしいな、俺らしい本を探してきたはずなんだけどな……

悔しいので、ちょっと小説、というかエッセイっぽい本を今度ははやてに渡す。


「お、今度はまともそうやな……」


今度は逆に沈黙するはやて。
どうやら、気に入ってもらえたようだ。

そんな事を思ってると、はやてが大きく、はぁ、とため息をついた。


「あのなぁ、竜也君。何でこの本なんや? 『子狸と世界と笑いについて』ってどいうつもりや?
なんや、これは私に対する嫌がらせかいな」


どうやら、はやては俺の行為を嫌がらせと、とってしまったようだ。
俺は、単純に子狸って新しいジャンルでかわいいだろうなと思って手に取っただけなのに。


「たしかになぁ、竜也君。私はこんな体格上、子狸に見えるかもしれへんよ?
でもなぁ、あえて言葉に出さずにこうやって間接的に嫌がらせされるのは結構傷つんくやで?」

「子狸かわいいじゃん」

「え!? そ……そうやな。子狸はかわいいなぁ」


少し顔を赤くしながら、答えるはやて。

はやてよ、その発言はまるで自分が子狸かのように聞こえるぞ?
それとも、子狸と言ってほしいのか?


「子狸」

「なんや」


今度は躊躇せずに返事をする、はやて。
なるほど、本人公認の子狸なのか。

猫・犬・子狸。
俺の周りには愛玩動物パラダイスだ!

うん? 子狸は愛玩動物か?

こんな感じで漫才を繰り返していると、図書館が閉館の時間になってしまった。


「そうか、そうか、はやては子狸なのか」

「い、いい加減にせえや、竜也君。ずっとそればっかしやないか」

「別にいいじゃん、子狸かわいいんだし」

「え……面と向かって言われると恥ずかしいで竜也君」


俺は別にはやてに向かって言ったつもりはないんだけどな。
本人は勘違いしてるようだけど……まぁいいか。

かわいいと言うたびに、顔を赤くして嬉しがるはやては見てて楽しいし。


「なぁ竜也君」

「ん? どうかした?」

「こ、今度な、家に来てくれへんか?」

「ああ、遊びに行くって事?」

「そうや」

「はやての家は涼しいのか?」

「え? そ、それはもうめっちゃ涼しいで! 北極並や!」


そうか、北極並に涼しいのか……涼しいと言うか寒そうだな。
でも、暑いのよりはいいかな。


「いいよ、じゃあまた今度な」

「ほ、ほんまか! 絶対やで! 約束やからな!」

「ああ、約束は破らないよ」

「そか、じゃあ、またなぁ竜也君。また会おうなぁ」

「おう、またね」


はやてと遊びに行く約束をして、俺も家に帰る。
帰ったらまた、魔法の練習だ。

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