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小説挑戦


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不朽のモウカ─第四話─

誤字多し。この話に限った話じゃありませんが、すみません。


 いよいよもって、きな臭かった雰囲気を神聖ローマ帝国で感じていたのだが、やはりと納得するべきか、馬鹿なと驚くべきか、どちらにせよ静かに傍観あるいは逃避なんて出来る状態ではなかった。

 グロッケン山。意外にも俺たちの活動地点近くにそびえる``ともらいの鐘(トーテン・グロッケ)``の総本山がそこにはあった。

 オストローデという町がある。こちらは先の山よりもさらに俺たちの活動拠点に近い町。なにより、時々訪れる事すらもある町だった。何故か、その町での徒との遭遇率は高く幾度となく戦う羽目にはなった。

 こちらとしては戦う意思は無く、徒と出会うもしくは気配を察したときには撤退を繰り返していたが、これまた何故か追い掛け回された。敵は無駄にこちらへの敵対心が高かった。それ以上にしつこいのが嫌だった。ただ、徒の力も大した無かった為に、逃げるのは容易でありその度に嵐を起こしては逃亡した。

 それでもこの町には幾度と無く足を運ぶ。別段用事がある訳では無いが、徒(特に手頃な力の徒)との戦いはこちらとしては貴重な経験であったが為である。

 逃げこそが自身の性分と言えども、自身の力も分からずに逃げること、逃げ切ることをしようとうするなど馬鹿のする行為。そんなことをすれば自分より弱い相手と当たり続けている場合はいいが、強い相手と当ったときの対処法がなくなっていまう。

 力を把握するという意味では、巨大な敵と出会った経験の無いこの町は非常に使い勝手のいい鍛錬所だった。その度に嵐がやってきて被害をもたらしてしまうのは申し訳ないが、こちらも生きるためだ。許して欲しい。思うだけで、その事を口に出す事は無いだろうけど。

 山篭りよろしく、海篭り川篭りをしている俺のここ数十年の陸に上がる理由の一つであった。

 しかし、いやあえてそのおかげとでも言うべきか。通いなれたオストローデに違和感を感じることが出来た。

 何かがおかしい。何かがずれている。何かが……何かがこの町に起こっている。

 最初、自分が引き起こす嵐が原因で町を去っていく者が出てしまったのかと思った。実際にそういう人もいた様だ(これは実際に町の人に聞いた)。が、どう考えてもそれだけではない。

 人の存在がまるで過疎っているような感覚はある。存在の力が希薄とでも言うべきなのだろうか。そんな違和感を感じているのだが明確な答えは出てこない。

 さて、どうしたものか……。

 どうしようもないのではないだろうか。出来る事など限られている以前に思いつきもしない。考えられる可能性すらも分からない。疑問はあるのに明確ではなく、あるはずの答えは全くの検討不能。手も足もでないとはこの事。


「何かが起きる兆しでは間違いないのだろうけど……」

「それを起こそうとしているのは間違いなく``紅世の王``なのも確かだよ。規模がこの都市とも言える町全体に及ぼすんだから。それ相応の力の無知主」

「となるとやっぱり怪しいのは……」


 ``ともらいの鐘(トーテン・グロッケ)``という結論に至るだろう。どんな事件が起きるかは分からないが容疑者となりえる可能性を秘めている力を持つ王が巣くう軍団。

 この町で戦った事のある数ある徒はこの軍団所属でもあった。これはただの偶然とは言えないだろう。まして近くにはその軍団の総本山がある。

 たまたま通りかかっただけ、という可能性も否めないが、どうもそれだと腑に落ちない。この町で出会った徒の``全て``が軍団所属だったなんてことは偶然とは言えない。そして、それ以上に王との接触が無かったことも。

 こうは考えられないだろうか。何かしらをここで成そうとする巨大な王がいる。そしてそれを助力する徒がいて、その徒が駆けつけている時に俺と遭ってしまった。秘密を知られる可能性があった。またあの軍団はフレイムヘイズを消す事を主としているのでしつこく追いかけ処分しようとしたが逃げられた。

 本来ならもっと上の力を持つ王が出てくる場面だが、それをやってしまうとそれこそ怪しまれる。フレイムヘイズに計画をばらさない為にもここに巨大な王は自らでは出てこなかった。よって出会うのは徒のみ、それも軍団の。


「面白いけど、もしそれが本当なら洒落にならない事を企んでるって事になるよ?」

「しかも、少なくとも近場で引き起こされるから俺は巻き込まれると。冗談じゃない話だ」

「仮に``ともらいの鐘(トーテン・グロッケ)``が敵だとしたら……うわぁ、``棺の織手``とか本当に洒落にならないよ」

「``ともらいの鐘(トーテン・グロッケ)``については聞いたけど、その``棺の織手``てのはそんなにやばいのか? というか名前的にこっち側っぽい感じだけど……」

「王と人の恋の代表例かな。愛は人をも狂わすって話を聞いたけど、古の王も例外じゃなかったってことよ」


 ウェルの言ってる事はあまり要領得ないが、相当やばいというのはウェルの焦る口ぶりから分かった。何より愛に狂った王ってのは確かに厄介かもしれない。

 愛は人を強くする、とはある種の常識みたいなものだ。熱血漫画ありがちだが。

 一に愛を、二に友情を。心の力はそのまま自身の力へと変わり、``紅世の徒``はそれを顕著に表す。心の力は愛であれ欲望であれ、強く想う力。多くはその心の力とは反したように自身の力が弱いものが多いが、中には元の力が強くて目覚めるものもいる。今回がその例のような王らしい。

 やはり厄介な。


「やっぱり逃げちゃう?」

「……それが最善っぽ──」

『よもや我が『壮挙』を邪魔しようとする輩が現れようとは』






◆  ◆  ◆





 噂をすれば影がさす、何て事を身をもって経験したところだが、その言葉自体いつも間が悪いときに使われるような言葉だ。この場合も例外ではなく、間が悪いなんてレベルではなく最悪といえる状況。

 しかし、向こうからすれば飛んで火にいつ夏の虫なのだろう。まんまと、と言う所か。

 遠話の自在法だろう。いきなり現れた姿の見えない、巨大な存在の力の主であろう人物から声が聞こえてきた。

 重い。

 言葉をこんなに重く感じたのは初めてかもしれない。まさに圧倒的な存在とでも言い表すべきなのか。ただ幸いなのが目の前ではなく、どうやらある一定上の距離があること。そうでなければ遠話の自在法は使わない。


(これって……)

(うわぁ……なんて言ってられないかな)

(噂をすれば何とやらか)

(なにそれ? そんなことよりどうするの? 力の差は──)

(分かってる!)


 これが``棺の織手``今まで遭った王の中では最も強いと思われる王。それほどまでに、これほどまでに距離が開いているのに感じさせる。

 一対一では勝てるわけが無い。

 元より戦いにおいて牽制以外の``攻撃``をしたことが無い俺にとってはかつ手段など無い。どんな``紅世の徒``であっても。だが、そのおかげでこそ今の今まで逃げ切ることが出来た。逃げるための自在法は磨かれてきた。

 ただその一点のみ。それのみに時間を費やしたから。

 だが……


(これは……逃げ切れるのか?)

(相手の首領がわざわざ一人で来る、何て馬鹿なことはないよ。出て来たのはここが何より何らかの計画『壮挙』とやらに重要だからかな。でも、だからこそ)

(今は感じないだけで他にも敵がいる)


 逃げ切れるのか。いや、違う。俺の臨んだ物を手に入れるまでは死ねないんだ。逃げ切るきらないじゃない。別に逃げ切れなくても生きていればいい。となれば、降伏宣言を……

 駄目か。元よりこの軍団は『フレイムヘイズを倒すべく作られた』と言っても過言じゃないんだった。

 ならやはり、逃げるしかない。逃げきる他に無い。

 その為に編んだ自在式がある。その為に経験した戦いがある。その為の自在法を完成してきた。

 俺だからこそ逃げ切れる可能性がある。普通のフレイムヘイズなら……もっと早く危険を察知して逃げたかもしれないな。

 はは、こりゃ一点も一点、鍛錬するところを絞りすぎたかもしれない。出会ったら逃げればいいや、ほどよりスリル感も楽しめるしなんて言ってる場合じゃなかったわけだ。この危機を脱したらもっと他の事も鍛錬しなくちゃいけないかもしれないな。

 戦うという選択肢がない以上逃げるしかない。

 相手の様子を見る。ここからではそこに巨大な力を持つ王がいるという事しか確認が出来ない。ただ、そこからこちらに近づかないのは余裕なのか、なんらかの意味がるのか。もしかしたら、この間にも着々と包囲されているのかもしれない。


「猶予は無い、か」

「逃げるなら早めだね。空もなんだか暗くなってきたし」


 暗い? いや、これはどちらかと言うと黒いじゃないか。


「蝿の大群?」

「ううん、違うよ。よく感じてこれは……」


 その蝿の大群に存在の力のような物を感じる。いや、虫自体も存在の力が存在しているのだから感じるのは当たり前だが、本来フレイムヘイズはそこを感じることはできない(仮に出来てしまったらこの世に存在する有象無象をすべて認知する事になる)。

 よってこの感覚は……なんらかの自在法。

 だが所詮は蝿の群れ。どんな自在法かは知らないが、直接的な攻撃の類でないのは確かだろう。これがもし、蝿ではない黒くてガサガサ動くあの黒い魔物なら恐ろしい精神攻撃だったが、蝿だけなら羽音が鬱陶しいだけだ。耳栓をすればいいだけだ。今は無いから相当鬱陶しいが。

 だが、この程度なら逃げ切れるだろう。

 さらに研ぎ澄まし存在の力の流れを読み取る。うん、確かに極小で無数の虫の存在の力だけ──じゃない……


(気付いた?)

(何とか)

(これは多分``燐子``だと思う)

(こ、こんな数の``燐子``て、ありえるのか?)

(何らかの自在法の一つと考えるべきだね)


 逃げ切れる可能性がまた低下したようだ。しかし、逃げ切らなければならない。

 逃走路はどうるべきか。とりあえず、正面の方にいるであろう巨大な王に出くわさない為にも正面からの逃走は不可能。普通に考えるなら背後への逃走だがあまりにも安直で単純すぎる。

 単純すぎるが故に敵が裏をかこうとしていたのならば逃げられるだろうが、可能性は低い。敵がこちらに話しかけてきた時点で、退路を塞ぐために迂回し先回りされてても不思議では無い。

 ならば……一番意表をつけ、隙を狙える場所がいいだろう。


(上か……)

(あえて難しいところを突破するということかな。悪くないよ。むしろそれがいいかも)


 敵の上空に構える自在法の効果範囲はどれ程のものかは分からない。そのためどれほど遠く逃げればいいかは分からない。それなら、


「全てを巻き込んで逃げるほか無い」

『ふむ……作戦会議は終わったのか?』


 全くもって余裕ぶっている。だが当然だろう。力も上、数も上で、経験も上で負ける要素は無い。だが、俺には巻ける自信がある。

 尻尾を巻いて逃げる自信がある。可能性がある。ああ、しがみつくさ。フレイムヘイズらしくない生にしがみつくさ。


「ウェル!」

「うん、大丈夫!」


 さあ見せてやろう。俺がフレイムヘイズになって以来、ずっと磨きに磨いてきた自在法を。

 俺のこの力は。この自在法は全て……



「理不尽な死から逃げるためなんだからな!」

「自在法『嵐の夜』発動。命一杯の力を振り絞ってこの町の全てを巻き込んで逃げるよ!」


 その時、町に海色の光が満ち、やがて嘗て無いほどの大嵐が訪れた。





◆  ◆  ◆





 その日。歴史上でも前例が無いほどの嵐がオストローデに襲い掛かったのを、フレイムヘイズたちは感知した。同時に、この嵐が自在法であると理解し警戒をした。

 自在法を使った者の色は海の色。今まで見たことのない色から、新たな巨大な王がこちらに来た事を悟った。それは、敵か味方か。しかし、ただ見過ごすにはあまりにも大きすぎるその嵐(力)にフレイムヘイズたちは危機感を感じやがてオストローデに一人、また一人と集まっていく。

 されど、彼らがそこで見たものは嵐の後の残骸だけではなかった。

 異様な数のトーチの存在だった。いよいよもって不信感と警戒は高まる。まして、そこはフレイムヘイズに異様な敵対心を持つ``ともらいの鐘(トーテン・グロッケ)``の総本山のお膝元と言ってもいい場所であった。

 不審は確信へと変わり、危機は焦燥へと変わる。

 やがて数多くのフレイムヘイズが終結し、``ともらいの鐘(トーテン・グロッケ)``はその本章を明らかにする。

 頭領たる``棺の織手``アシズはやがて己が壮挙を語り。




 『大戦』が幕を開ける。

 


  暴挙を止める第一戦、一つの都(都市)を防衛する大きな戦いのが始まった。
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