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不朽のモウカのweb拍手ネタその2

以前にじファンの方で体裁していた、不朽のモウカの短編です。

では、本編の雰囲気を大事にされている方はあまり読まないほうがいいかと思います。
それでもいいという方はどうぞ。
ちなみににじファンの方で40話以上読んでから、こちらを読むことを推奨します。


「ねえ、貴方にとっての幸せって平和な日常なのよね?」

 いつも通りの声でリーズが今更ながらそんなことを俺に聞いてきた。
 リーズには散々説いて聞かせたような気がするのだが、ふと何かを思ったように俺に聞いたということは、何かあったのだろうか。それもリーズの苦手なウェルのいないちょうどいいタイミングで。
 俺の隣の椅子に腰を下ろす。
 海のように青い瞳が俺をしっかりと見据え、初めて会った時から変わらない少女と大人の中間のような顔立ちが事細かに見えるほどに近い距離にリーズはいる。ひょっとしたら息づかいまで聞こえるのではないかと思えるほどの距離。少し顔を前に動かせればキスが出来てしまいそうなほどに。
 リーズは仲間よりも家族に近いほどの密接な関係だが、親しき仲にも礼儀あり。男の野獣とも言える本能に任せてキスをすることもなければ、一つ屋根の下に寝泊まりしてもなにか問題を起こしたこともない。それこそラッキースケベと言われるような、イベントもない。そもそもラッキースケベなどちゃんと女性と一緒にいることを意識していれば、起きるようなことじゃないよね。普通は。

「もっと単純に言うと生きていればいいかなとは思うな」

 最低限ラインは生きていること。これさえあれば、幸せを感じることは出来る。
 死は恐ろしい。
 過去には大きな怪我をしたり、下半身不随などにもなったことがあるが、あの頃の痛みは人間は時と共に忘れてしまう。
 しかし、死の瞬間は今でも忘れられない。もう二度と実感したくない瞬間。
 前向きに考えれば、死んでから生き返るの過程はとても貴重な体験だったが、もう二度とそんな経験はまっぴらだ。死から這い上がった生の感触は、生と死のギャップの相乗効果でかなり強く感じることが出来る。『生きている』と身に染みて感じさせ、『生きている』ことにそのものに感謝と幸せを抱かせる。
 これは一刻だけのものではなかった。
 俺は今も、生きているだけでも十分に幸せを感じることは出来ている。だけどもっと、もっと生きていることに価値を見出すために、平和を求めたり、人並みの束縛感やら緊張感がある生活を送りたいと思ってしまう。
 ほら、俺って贅沢だからさ。今に慣れてしまうとさらにを求めてしまうものなんだよ。

「でも、それは最低限なんでしょ?」
「正解だね。さすがに分かっちゃうか」
「当然よ。貴方の傍にどれくらいいたと思ってるの?」

 嫌でも分かるわよ。
 ちょっとだけ誇らしげに、優しい声色でリーズは言った。
 自分で言ってて少し恥ずかしくなったのか、頬をほんのりと赤らめて、俺に真っ直ぐ向けていた瞳を僅かに横にそらす。
 今日は何だかいつもとは違う雰囲気をリーズから感じる。

「なんかあったのか?」

 疑問に思っていたことをそのまま口にする。
 俺がそう言うと、目を少しだけ丸くし驚いた表情をしてから、小さな声で「分かっちゃう?」と嬉しそうに聞き返してきた。
 なので、俺もリーズと同じように答えてやる。

「リーズの傍にどれくらいいた思ってる?」
「そうよね。うん、ずっと一緒だったわね」
「何かに感動しているようだけど、それで何があったんだ? 聞くだけならタダで聞いてやるぞ?」

 問題解決に協力する気はないと暗に意味を込める。
 話を聞くのは構わない。今現在は、この執務室に軟禁されているような状態。内乱のせいで各方面で大変なのかもしれないが、それがどうしたと言わんばかりの暇さだ。
 たまにはのんびりとした時間を過ごすのもいいと最初の頃こそ思ったが、今では束縛され、一箇所に押し留められている生活には若干飽きが来ている。正直にいえば、ここから早く逃げ出したい。
 かなり大きな外界宿なので安全性には優れているのかもしれないが、その安全を他者に委ねているのはどうも居心地が悪い。
 本心を言ってしまえば、退屈な日々をどうにかして欲しい。
 リーズは俺に押し付けられた仕事があったりするので、時折この場からいなくなるが、基本的にはほとんどの時をこの部屋で共にしている。
 俺もリーズも、積極的に話をするような性格ではないので、お互いに無言のまま一日が過ぎていく日もある。何も話さないからといって気まずくなったりしないのは、今までの長い月日を一緒に生きてきたからだろう。
 話しかけられれば応えるのは吝かでもない。どうせ暇だし。なんだか偉そうに聞こえるが、身分的に考えれば意外と俺はいい身分だったりもするから、身分相応の反応だ。……ただに地だけどね。

「それならお言葉に甘えて。私、昔の夢を見たの」
「昔の夢か。なるほど悪夢だな」
「いきなり断言するのね。私の話を聞いてもいないのに」
「当たり前だろ。昔の事で思い出すことに、良い思い出がある方が珍しいんだから」

 昔の事を聞かれ尋ねられれば、何があるか。
 良い思い出?
 多少はあるだろう。例えば、それはウェルに命を助けてもらい、今も生きることが叶っていることでもあり、フレイムヘイズなのに俺の良き理解者がパートナーだったりすることでもある。
 しかし、数え上げれば自身の持つ指の本数しか良い思い出はない。四百年以上生きてきて、出来た良い思い出が十に満たない。百年に三つの良い思い出が出来れば上々ということになるのだ。
 この事実が俺の昔を全て物語っている。
 悪い思い出という名の悪夢は、数えればキリがないというのに……
 例えば、それは痛烈な記憶。謎のミステスにいきなり斬りかかられたトラウマの悪夢。
 例えば、それは度し難い戦場。都一つの存在の力を取り込み、『天罰神』の神の力を以てでしか倒し得なかったもう二度と関わりたくない大戦の悪夢。
 他にも教授やら、``紅世の徒``との追いかけっこやらとどれこれも悪夢だらけ。
 良い思い出と悪夢の比率で考えれば、悪夢の圧倒的な勝利に終わる。
 よって、昔の夢を見たといえば、殆どの確率で悪夢となるのだ。故に断言出来る。

「でも、ちょっと合ってるわ。少しだけ悪夢みたいなものだったから」

 最近は夢もあまり見なかったのに嫌ね、と少しうんざりしたように言う。
 気持ちは十分すぎるほどの分かるので、全くだと相槌をうってから、はてと疑問を持つ。
 リーズの昔、過去といえばそのほとんどは俺と過ごした日々になる。リーズはフレイムヘイズとなったその日から俺と同じ道を歩んできた。最初は彼女が半ば強引に。
 ならば彼女の見た悪夢は高確率で俺と過ごした日々の中にあることになる。
 そう思うと少しだけ悲しい気持ちになった。何故かはよく分からない。
 
「えっ……貴方って戦場以外でもそんな顔するんだ」
「どういう顔してた?」

 もしかして表情に出ていただろうか。
 普段の俺の表情、と言っても自分のことなので実際はどんな表情をしているかは分からないが、言われてみればそんなに悲しい表情はしないかもしれない。多いのは衝撃を受けて嘆いている表情か。
 うん、それはそれで悲しくなるけど。なんでよく嘆いた表情をするような出来事が起きるんだよ。

「悲しい感じ。戦場だといつも嘆いてたり、己が不運を悲しんでいるイメージしか無いわ。貴方には」
「まあ戦場で笑うよりはまともか」
「うん、随分まとも。すごく人間らしくて貴方らしい」
「悲しい表情が俺らしいと思われている俺が悲しいよ、今」

 リーズは俺の言葉にふわっとした笑みを見せる。ふふっとちょっと可愛いと思えるようなそんな笑み。
 俺ももう少し笑顔を心がけようかな。
 苦笑いはウェルとしゃべれば必ず出るが、心から笑ったことは全然なかったかもしれない。心から歓喜した瞬間は何度かあったけど。

「意外と貴方って表情は変わらないわよね。言葉に所々激情は感じるけど」
「その激情はきっと『生きる!』だとか、『逃げる!』だろうな。情けなくて笑えるなあ。小心者の俺にはぴったしだけど」
「ううん、笑わない。それが貴方の生き方だって知ってるから。他の誰かが笑っても、私は笑わない」
「……ああもう! この話は終わり! それでその夢がどうしたんだ? 俺に珍しくこうも話しかけた理由なんだろ?」

 リーズに生き様を肯定されて照れくさくなってしまった。
 だから話し転換。
 これ以上、あの話題を続けてたらリーズに続いて俺も顔を赤くしてしまいそうだ。

「ええ。それで思ったのよ、幸せって何なのかなって」
「そんなことを考えさせる夢の内容がすごく気になるね」

 哲学的な夢でも見てたんじゃないかと疑ってしまうよ。
 いや、夢事態が哲学の塊みたいなものなのか?
 分からんな。

「大した夢じゃない。昔、こんな日々もあったなってだけの夢。貴方に出会う前の日々の夢」
「そうか」

 それを聞いてちょびっとだけ安堵した自分がいた。
 何に安堵したかはやっぱり分からなかった。

「貴方は今は幸せ?」
「今か?」
「そう、今」

 生きているだけで幸せと定義付ける俺にとって、今も生きている事実があるだけで幸せには違いない。だけど、リーズの求める答えとはどこか違うような気がする。
 それでも、たぶん。

「幸せ、かな。退屈だけど、外では大変なことが起きているけど、それでもこんな日々もなんだかんだで幸せを感じている……気がする」

 断言はしないでおく。

「その日々の中に私は──」
「勿論、いる。リーズを含めたこの日常こそが幸せな日々を成り立たせてる……んじゃないかな」

 断言できるほど確信はないから。
 俺は小心者だから、どうしても疑問が外せない。
 リーズは俺の言葉を聞くと、幸せそうな笑顔で、俺とは違って断言する。

「うん。私も幸せ。今、こうして貴方と生きているだけで──私も幸せ」

 リーズと俺だけの会話。
 契約した``紅世の王``を抜いた、見た目だけ見れば普通の少年少女の会話。
 ウェルがこの場に居ると、からかわれると思って普段は言えない言葉も、今この時ばかりは何も躊躇いもなく何でも言えるような、そんな気がした。














いつかの出来事のお話でした。
ブログ拍手や感想をいただけると嬉しいです。
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