fc2ブログ

小説挑戦


ボツ作品広場

第十一話 (空気のやつ)

 ユーノ・スクライアという少年は几帳面で責任感が強いという評価を同じスクライア一族にてされている。また、それでいて優秀であり、スクライア家の一番の出世頭になるだろうと一族長には思われていた。
 その実、魔導師としては天才的とは言えないものの、一部の分野、主にサポート面に関しては他よりも優れた能力を持っていた。しかし、一線で戦うにはあまりにも弱い力であり、どう考えても主役をこなせるようなものではなかった。

 敵との一騎打ち。
 ユーノは確実に守りに徹し捕縛のタイミングを伺う。勝つか負けるかで言えば、負けない戦い方をするしか選択肢はない。
 管理局における魔導師の価値は基本的には一騎当千と言っても過言ではない。
 一人で千もの雑魚を倒し、一人で万に匹敵する強敵と立ち向かう。それが理想だった。
 弱肉強食といっても間違いではない。

 では、ユーノは管理局から見ればそれほど優秀な人材ではないのか?
 答えは否であり、彼には他にも評価できる点が数多くある。

 一つは知識。
 若干九歳という幼い年齢にもかからわず、遺跡の発掘現場の責任者となれるほどの膨大な知識を持ち得ていること。
 何も戦うことは汗水たらし、血を浴びて流すことではなく、じっと頭を捻り策を練り、敵を陥れるのも立派な戦いの一つだ。
 ユーノの持っている知識は戦いとは程遠いが、考古学という点では非常に優秀である。からして、彼は責任者となり得た。
 また同様に、成り得るだけの責任感もあった。

 一つは魔導師としての力。
 補助魔導師というのはあまりにも地味な役職にして冴えないと思われがちなものである。
 言うならば──華がない。
 剣を振り回し絶対の一対一の強さを持っているわけじゃない。剣を振り回す者の鮮やかさと鮮烈は補助にはない。
 杖を持ち詠唱を唱え遠距離からの一網打尽とする多絶対的数に対する強さもない。砲撃が放たれ逃げれない絶望感を与えることは補助には出来ない。

 しかし、ユーノは優秀だった。
 ユーノの持っている探索魔法はありとあらゆるものを逃すことなく、必ず見つけ出し。
 ユーノの持っている捕縛魔法は見付け出したものを容赦なく捕える。
 だから彼は味方に入れば必ず心強い味方であり、一人はチームにほしい人間であり、敵にしたら真っ先に潰さないといけない優秀な魔導師だった。

 そんな彼だからこそ今回のジュエルシードに関して言えば何がなんでも自分でなんとかするつもりで地球へとやってきた。
 地球人から見ればユーノは異世界からの訪問者。
 宇宙人、異世界人という言葉当てはまるの。
 これはつまりユーノがこの地球にやってきてジュエルシードどうこうの前に、この地球で生活するに置いてあまりにも不便になることが予想される。
 こういった事故、ないし事件が起きた場合こういった理由から個人が動いてなんとかなるものではないため、管理局が動き出す。

 管理局側とて、何も手を出さずに事件が解決するのならそれに越したことはない。
 管理局は一種の軍隊的な意味合いが強いが、イメージ的には日本でいう警察を思い浮かべれば想像するのは楽になるだろう。
 警察は事件を解決したいが、その事件が起きることをよしとはしないのだ。起きないための次善策を立て、いざ起きたときにすぐに解決する。もしくは、自分たちが関与するべきか否かを判断した上で動き出す。
 管理局もそれと変わらない。
 管理外世界ならなおさら手は出したくないだろう。

 ユーノはそんな管理局の思惑を知ってか知らずか、結局は一人で解決に乗り出した。
 彼にとっては未知の世界であるはずの地球へと、ただ一人。

 ユーノは優秀な魔導師だ。
 本人も自分の出来ることと出来ないことを把握した上で、この案件は自分の身に余る可能性があると知っていたにも関わらず強硬手段をとった。
 どうしても、自分の手で解決したかったのだ。
 それは責任感から来たものか、それとも意地なのか。
 今となってはユーノは自分でも分からない。
 しかし、やはり上手くはいかなかったのだ。

 たった一度のミスでこの世界の少女を巻き込んでしまう結果となり、ユーノは今となって後悔する。
 そして、その後悔はさらに深まることとなったのだ。


「へぇ~、ユーノってしゃべれたんだ」
「しゃべる動物って珍しいね? あ、魔法の世界から来たんだから魔獣とかなのかな?」
「この声どこかで聞いたような……き、気のせいだよね!?」


 金髪の少女、アリサとなのはに紹介された少女が面白そうにユーノをツンツンする。実に楽しそうに笑っている。
 おしとやかな雰囲気を漂わせているすずかと紹介された少女がユーノの実態について考え始めていた。ユーノは寒気を覚えた。
 オロオロしている儚く薄い空気をしている大気と呼ばれた少年がユーノから必死に目線をそらしながらチラ見している。ユーノは魔力反応を感じていた。
 そんな三者三様の反応を示す彼女たちにユーノは心の中だけでため息をする。

 出来れば……ううん、絶対に巻き込みたくはなかったのに。

 なのはの事に関して言い訳を許してもらえるならば、決して巻き込むつもりはなかった。
 助けてもらう予定もなければ、あれっきりの予定だったのに。

 思わぬ魔導師としての素質を持っていたなのは。
 その素質はあまりにも稀すぎるほど有能な才能で、ジュエルシードの回収の協力者としては申し分なかった。
 そして、それがいけなかった。
 頼る理由ができてしまったのだ。
 力がなければ、君には才能がないからと遠ざけることが出来たかもしれない。
 才能がなくてそれでもと懇願されても一度痛い目にあったら、こんなに幼い女の子なのだから、諦めるだろうと思ってた。

 しかし、有り余る才能を持っていた。
 一度助けられてしまったら、予想以上にジュエルシードは簡単に回収できる。
 
 折れない心を持っていた。
 街の被害を自分のせいだと思い悩み、しかしそれでも屈せず立ち向かうその姿。
 きっとこの子ならこの先の苦境でもくぐり抜けていけるだろうと思わせる強い意志。

 だからユーノはなのはを巻き込むことを承知で逆に協力を申し出た。
 なのははそれを小気味良くうんと頷き、頑張ると言った。

 巻き込んでしまったものはしょうがない。
 それなら今度は、一刻も早くジュエルシードを回収してなのはを日常に返してあげなくちゃ!

 苦渋の選択で、険しい道程ではあるが、ユーノはなのはとならなんとかなるのではないかと思い始めていた。
 そんな矢先である。


──にゃ、にゃはは……どうしよう、ユーノ君。バレちゃった……


 あっさりと。あまりのもあっさりと魔法のことが露見してしまったのだ。なのはの友人たちに。
 ユーノはなのはの強い面ばかり見ていて忘れていたのである。

 彼女は強くても所詮は年端も行かない九歳の少女であることを。
 ポロッと口に滑ってしまうような結構なうっかり屋さんであることを。

 結果、アリサによる尋問とも言えるべき質問が次から次へと浴びせられ、色々な情報を掲示することになってしまったのだった。
 最後の方になると、魔法が信じられないから魔法を見せろとまで言われるようになってしまった。


「さあ! しっかりと魔法を見せてもらうわよ!」
「あ、アリサちゃん落ち着いて」
「え、えーっと、何を見せればいいのかな? ユーノ君がしゃべったのじゃだめなの?」
「腹話術の可能性があるわ!」
「腹話術!? わたし出来ないよ!?」
「別になのはに聞いてないわよ。ようするに証明できるものを見せてほしいの」
「証明!? うーん……うーん…………うーん、どうしよう?」


 アリサが今にもテーブルに乗りかねない勢いで前へ乗り出すと、慌ててすずかがそれを止める。
 ユーノはその光景を見て、なるほど、確かに良い友人関係だと羨ましく思う。

 なのはが一人でうーんうーんと唸りながら必死に考えて、考えた結果ユーノに助けを求めた。
 あまりいい方法を思いつかなかったようである。

 ユーノも正直口だけの説明で魔法を信じてもらえるとは思っていない。
 魔法のないこの世界ではこういった科学ではない現象が眉唾ものであることは、事前の調査で知っていた。それだけに証明は簡単でも、納得させるのは難しいだろうと思っている。

 でも、なにかしないことにはしょうがないか。
 いっそ信じられないなら信じられないままでもいいような気がするけど、たぶん、それじゃすまないんだろうなぁ。

 目の前で今にも鬼の仮面を被りそうなアリサを見て、一筋縄じゃいかないなと再びため息。
 だが、すぐに証明する方法を模索する。
 いくつか方法が思い浮かぶ、バインドやバリア、探索魔法、結界魔法などなど。しかし、思い浮かぶ物全てが地味なものばかりだった。
 まるでユーノ自身を表しているかのような地味さだった。

 ユーノの見た目は地味じゃなく美少年、下手すれば美少女に間違われるほど派手なのに内面と空気が地味なユーノだった。
 それでも、見た目だけでもいいのは救いである。
 少なくともどっかの少年に比べれば。


「インパクトがあるのがいいわね! できればこう……ドーン、というのが」
「あ! それなら砲撃魔法が」
「なのはは友達の家を更地にする気!?」
「え? ユーノ君それどういう意味!?」
「なのはちゃん、さすがに更地にされたら困るよー」
「なんで自分の家が更地になるほどの砲撃できるって言われてるのに平気な顔してるのよ!? ていうか、なのははいつからそんなに危険なやつになっちゃったのよ!?」
「べ、別に危険じゃないよ! 非殺傷設定だから!」
「その設定はよくわからないけど、それがなかったらどうなるわけ?」
「うーん、どうなるんだろう? ユーノ君?」
「なのははもっと自分の力が怖いものだと知るべきだよ……」
「ふぇ……ええぇぇ!? そ、そんなに危ないの!?」
「うん、そこらへんはまた今度お話しようか」
「……うん、分かった」


 なのはの自分の持っている力の認識の低さにユーノは驚いたものの、これは今話すべき内容からはズレているため、あとでちゃんと話あることにする。
 アリサのインパクトがあるのという参考に叶うようなものをユーノは再び模索するが、どうも先程からなのはの砲撃が頭から離れないでいた。
 確かに、インパクトは強烈だ。
 特にあのディバインバスター(神々しく破壊する者)が焼き付いている。

 仮に頭から離れなくてもユーノには特出した派手なものがないので、インパクトということを重視した場合、その基準に叶うものはないのだが……


「そ、そうね、インパクトは諦めて、それじゃベターに変身とかどうなのよ?」
「アリサちゃん! なんでわたしの顔見てちょっと怯えてるの!?」
「な、なのははもうちょっとおとなしい子だと思ってたのに……」
「なんでそんなに悲しい顔するの!? なんで!?」
「なのはちゃん落ち着いて。別に私はなのはちゃんが魔王でも冥王でも平気だから」
「ん~~ッ! わたし、魔王じゃないもんっ! 魔法少女だもんっ!」

 ユーノはなのはのその反応に驚いた。
 別に魔王じゃないと言ったことに驚いたのではなく、なのはが驚くほど歳相応なところに。
 ユーノが知る限りではいつも歳相応とは思えない言動や意志の強さばかりで、こんなふうにじゃれあってる姿を見たことはなかったのである。

 だが、こういった彼女の面を見ていると、これでよかったような気がしてくる。
 新たななのはの面を見れたこともそうだが、この間までの思いつめた表情が影を潜めていたからだ。


「変身? あ、それなら」
「え? なになになに!」


 ユーノが言った瞬間、変身をした。

 ユーノはこの地球に来てからはほとんどフェレット形態で過ごしていた。
 それは魔力の枯渇を防ぐためと、回復のためである。
 もちろん人型形態で余計な事件に巻き込まれる可能性があるからというのもあるにはあるが、上記の二つが主だった。

 もう、魔力はほぼ回復したし、問題ないしね。

 そう思いユーノは本当の姿を表した。
 
 短く綺麗な金色の髪。
 中性的といえる端正な顔。
 そこに現れたのは間違いなく美少年だった。


「あら、変身できるじゃない」
「え、ええぇぇ!? ユーノ君って男の子だったの!?」
「衣装が独特だねー」


 これまた様々な反応をしている最中、しかし平穏は崩される。


「「「え?」」」


 巨大な猫の乱入により。
関連記事
  ↑記事冒頭へ  
←第十話 (空気のやつ)    →第十二話 (空気のやつ)
*Edit TB(0) | CO(0)

~ Comment ~















管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←第十話 (空気のやつ)    →第十二話 (空気のやつ)