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小説挑戦


ボツ作品広場

ユーなのを書こうとして失敗したもの

・魔法少女リリカルなのはの二次創作
・一発ネタ
・ユーなの
・ボツ作品


 その出会いはあまりにも突然であり、しかしそれでも未だに運命だと信じている。

 あの時出会ったのは、偶然では無い。そう決して偶然ではないのだ。赤い宝石が結ぶ、恋のお話。赤い糸では無い、そう宝石なのだ。

 ユーノ・スクライア。現時空管理局の司書長にして、現時空管理局でエースオブエースと呼ばれる少女に恋慕を抱いた。それも、かなり昔の話であり、今から十年も時は遡る。


──ユーノ・スクライア……不屈の心と恋の心をこの胸に




◆  ◆  ◆





「おはよう、ユーノ君」

「おはよう、なのは」


 彼と彼女の一日はそんな当たり前の挨拶から始まる。

 この挨拶、実は彼女の家の部屋での挨拶であり、客観的に見たら、また事情を知らぬものが見たら同棲と思われても可笑しくないシチュエーションなのだが、これが中々に妙な関係であった。

 彼、ユーノは動物形態、もといフェレットモードの状態で、かごの中で寝ている。

 小さなかごである。小動物一匹が入る程度の、本の小さなゆりかごだ。しかし、それでも同棲ということにはなんら変わらない、とユーのは思う。


──なのはは僕の事を男だと分かってるのかな?


 その疑問を思うのは当然だ。実はなのはは僕の事を人間だと認識せず、ただのフェレット──魔法を使える先生的なポジション。あるいは魔法少女の相方動物程度にしか想ってないのでは無いかと。

 かつて、アースラで自分が人間の姿を久しぶりに出したとき(本来のユーノの姿をなのはは覚えていないようだったが)あれほど驚いてくれた。驚かれたとも言うのだが、それで多少は意識してくれるのでは無いか、とも思ったものである。

 それがどうだ。

 今はこうやって夜は同じ部屋で「おやすみ」を言い合い、起きるときは先ほどと同じように「おはよう」を言い合う。実に微笑ましい光景で、普通の男子であれば脈ありを通り越して、期待に胸を膨らませる。

 同じ部屋。女の子の部屋。恋慕を抱く少女の部屋なのだから。


「うん? どうしたのユーノ君? 何か考え事?」

「ううん、なのは。大丈夫だよ。ほら、それより朝の練習行こう」

「うん! 今、着替えるから待っててね」


 ユーノが部屋に居るのに気にせず着替え始めるなのは。

 ユーノにとっては、ありがたい光景……ではなく、これもまた悲しい現実を突きつけられる光景だった。


──ぼ、僕が居るのになのは!


 心の中でユーノは叫ぶが、もちろんなのはにその叫びは聞こえず、なのはは平然と堂々と当たり前のように着替え始める。

 さすがにユーノはその場に居るのがいたたまれなくなり、もしくは良心がここに居たらまずいと訴え、部屋を出る決心をする。ここまでの葛藤、わずか一秒もかからない所手馴れ始めている。

 まあこれも悲しい日常、切ない日常の結果ともいえるのだが。

 朝の騒動(ユーノ的に)が終わると、いよいよ持ってなのはの魔法の練習のターンとなる。ここから先はユーノ先生のずっと俺……僕のターンである。


「なのは、じゃあまずはいつものやつから」

「うん! 魔法の精密射撃だね!」


 ユーノが手取り足取り、なのはに魔法を教えていく。なのはの才能はそれこそ十年に一度と思われるほどのもので、教えれば教えるほど魔法を飲み込んでいく。自分のものにしていく。

 その姿を見るのはユーノにとってとても嬉しく思うことであり、誇りに思うことであった。魔法の先輩として、魔法の先生としてなのはに魔法を教えるのは、とても……とても楽しい事だった。

 成長するなのはの姿が凛々しい。成功して喜ぶなのはの姿がこの上なく可愛い。喜んで、僕に報告しお礼を言ってくれる姿が、恋心を加速させる。

 ユーノはこの一時を、この練習の時間を誰よりも楽しみ、誰よりも充実とさせていた。

 しかし、そのユーノの気持ちとは裏腹に、知ってか知らずか……いや、全く知らないであろう彼女は今もユーノの前で無邪気に笑い、真剣に集中し、ユーノの気持ちをより強いものと変化させていった。

 もし、目の前の彼女がユーノの気持ちを知ったら。その気持ちを知って受け止めてくれたら。


──でも、それも全て儚い夢。この世界の人は上手い事言うよね。人が夢見て儚いと読むなんて。ははは、笑えないよ……


 ユーノ・スクライア。九歳にして、恋という壁にぶち当たる。

 しかし、ユーノは決して諦めなかい。目の前の彼女は、不屈の心を持って困難な事件に立ち向かい、見事に撃ち抜いた。


──なら……それなら僕だって!


 彼女の先生なら。彼女の魔法の先生なら、ユーノだって不屈の心をもってして、決して諦めず。この気持ちを、氷をも溶かすほどの熱い想いをいつか彼女に届けてみせる。

 堅く。堅く決心する。

 だが、しかし……


──で、でもまだ告白は早いよねっ!


 告白する勇気は無かったのであった。

 かくして、ユーノが余裕という名の足踏みをしていると、思わぬ所から刺客が現れるのである。それこそ予期しない、いや予期しろ予想しろというほうが無理があるだろう。なぜならそれは禁断の愛で、世間一般的に言うならば、それはもう危険なもので。許されないもので。

 だから、なんとなくユーノも怪しいなと思いつつも、それはないかと取り下げてたその存在を忘れていたのである。

 その刺客の名──フェイト・テスタロッサ。

 なのはに救われた一人の少女であった。

 彼女、フェイトはユーノの今後の恋愛人生において、絶望的な壁。むしろ壁なんてもろいものでもなく、要塞と思えるほどの絶対的な相手となる。百合、なんて生易しいものではない。もっとそれ以上の、見た事もないような未知のものだった。

 未知の敵とはなんとも恐ろしい限りだ。





◆  ◆  ◆





 十年を遡った結論を言うならば、やはり甘かったの一言なのだろう。ユーノはもっとなのはに対して積極的にアプローチをするべきであったし、油断するべきではなかったのだ。

 高町なのは。自身では平凡な少女、今でも普通の女性だと自称するが、その実どこが平凡であろうか。魔法という点に関してだって、どう考えても平凡であるはずが無い。一体どの角度から、どの面から見れば平凡、普通などと言えるのだろうか。

 魔法だけでは無い。

 彼女は雑誌に取り上げられるほどの美女でもあった。もちろん、彼女のその美しさがトップかといわれれば、そうではないし。幼馴染であると言えるフェイトと比べたって、多少の見劣りはするだろう。この場合、フェイトはトップクラスなので比べる相手が間違っているかもしれないが。

 それだってはやてと比べれば、十分に綺麗だと言えるだろう。はやてが綺麗じゃないわけは無い、なのはが綺麗なのである。

 ようするに、それでも美女であるという事は紛れも無い事実である。揺らぎない現実である。

 普通であれば、そんな彼女に言い寄る男子ども、狼どもはこれでもかと居るはずであり、なのはに一人や二人、三人だって彼氏が居てもおかしくないのである。死のトライアングルよろしく、視覚のないカルテットである。

 だが、彼女には彼氏と呼べるものは居ない。そもそも、仲のいい男が居るかどうかも怪しいのだ。

 男達は彼女が美しいあまりに高嶺の花だと思い、その恋を諦めてしまっているのか?

 断じて否とは言えない。少なくともそういう者がいても当たり前のことではあるが、実際のところは当たらずも遠からずであった。

 彼女、高町なのはに抱く男の気持ちの中に、彼女に対する評価の中に「綺麗」や「美しい」といったものの他に「えげつない」や「恐ろしい」というものがあるのである。

 なのはの教練を受けた者は多く、その受けた者の共通の感情と言ってもいいだろう。確かに、なのはの教練は非常に厳しく、時には悪魔や魔王と言われても可笑しくないほどであり。かつて、なのはが「悪魔でいいよ」と言った言葉から、その台詞のあまりの有名さに、彼らは『彼女は実は冥府から使徒の悪魔ではないか』と疑うのだ。

 その結果。なのはは遠ざけられる事が多い。恋、という観点から遠ざかってしまったのである。

 彼らに悪気は無い。あくまで、これは一つの評価であり、これ以外にも尊敬や崇拝(悪魔的な意味で)といった気持ちだってあるのだ。否、むしろこちらの方が強いといえるだろう。

 どちらにせよ、恋には遠いのに変わりはないが。

 それが幸か不幸か……なのはにとっては間違いなく不幸なことではあるが、ユーノには有利に働く。彼氏のいないこの状況。例え、フェイトが彼女であったとしても、兎に角彼氏はいない。このアドバンテージはとてつもなく可能性を秘めている。

 現状は彼氏はいない。未来に出来そうもない。こう言ってはなのはに失礼なのかもしれないが、しかし事実は事実。残念ながらこれ、現実なのよね。

 だから、ユーノは十年越しに、十年経ってようやく動き出す決心をする。

 かつて誓った決意は未だにこの胸にあり続け、不屈の心目指したあの日を境に彼は想い続けたこの気持ちを伝える事を決心する。


──待っててね、なのは!


 ユーノはなのはに気持ちを伝える為にも、今日はいつもよりも三倍速で仕事を片付けていくのであった。





 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、という言葉に違わぬユーノの行動はまず外堀を埋めることだった。今までも、なのは自身にそれとなく接して察しろよと迫ってきたが、これからは方針を変える。

 協力者を得る、というのが次なるユーノの行動だった。

 馬をフェイトとするなら、さすがにユーノとフェイトの一騎打ちでは荷が重い。ユーノはフェイトに勝てる気がしなかった。そこで、強力さ者を得るという結論に至る。

 ユーノの考える協力者の選択肢としては、見事人生のゴールを果たし(ある種墓場だが)勝ち組人生を送っているクロノ・ハラオウン。または、なのはとフェイトと同じく幼馴染である八神はやてだった。他にも、あげるとすればアルフといった選択もありそうだが、それはすぐに却下する。


──アルフは主を絶対に優先する。たとえ、主が人知を超えたものでもそれは変わらないはずだ


 とすれば、残された選択肢の二人となるわけだが。


──クロノは……何か頼むのは癪だな。というか、負けた気がしてむかつく


 ここにきて個人の感情。私怨を多分に含む拒否案が出るあたり、ユーノはまだ余裕に見えるが、こう見えてかなり焦っている。それも早くしないとフェイトに負ける(すでに負けている)という敗戦であったり、新しい子供ができてしまうのではないか、という見当違いの焦りだったりする。

 焦りすぎて周りが見えてないのかもしれない。


──もう、待ってられないね。膳は急げって言うし、すぐにはやての下に!


 彼は許可されていない、転移魔法を使いアポも取らずにはやての下へと向かった。形振り構っていられない。やはりユーノは焦っていた。


「うわっ! びっくりした……って、ユーノ君やないの。急にどうしたん? すごい焦ってるように見えるんやけど」

「は、はやて君に頼みがあるんだ!」

「ん? なんや? 他でもないユーノ君の頼みや、答えられる頼みなら聞くで」


 自分の出来る範囲であるなら、とちゃっかり言う辺り、さすがはやてだった。自分は決して無理はせず、それでも最大限に友人を気遣う。


「ええとね、時間も無いし単刀直入に言うよ。僕はなのはに告白したいんだ!」

「……は? ごめん、よう聞こえんかったわ。もう一回」

「僕はなのはに告白したいんだ!」

「……ぷ。ぅう、っく、はははは。ゆ、ユーノ君それどんな冗談や。もう、急にそないなこと。サプライズなんか? 私の誕生日はもうすぎたで」


 これ以上ないほどにはやてわらう。笑う。嗤う。それはもう、性格が悪いといわれてもしょうがないほど、否定できないほどの笑い声だった。

 ユーノはそのはやての笑いに多少イラッと来るものの、自身の将来を賭けた事なのでぐっと我慢し、はやての眼を黙れと言わんばかりに見つめる。


「はやて! 僕は真剣なんだ!」

「そ、そないにしたって、あははは。も、もう無理や。ふ、腹筋が限界や」

「は・や・て!」

「分かった。分かったで、ユーノ君。その気持ちが嘘偽りないのは。ただなぁ」


 一旦笑うのをやめて、真剣な表情をユーノに返す。

 はやては少し考える素振をしながら、ユーノの反応を待つ。


「何?」

「それを私に言ってどないするんや?」

「どうするって、それは──」

「言わなくてええよ。分かってる。分かってるんや。協力してほしんやろ?」

「そ、それなら!」

「駄目。駄目やで。そんなんじゃ駄目駄目や。まだまだだねと言っても過言じゃない」

「意味が分からないんだけど」


 はやてはこれでもかと言うほど意味を含めた言葉を念押しに言った。ユーノはその意味がわからず、少し声を荒げながら机に乗り出しながら問い詰めようとする。

 はやてはそのユーノのあまりの姿にやれやれと思いながら、ユーノに乙女のアドバイスをする。


──恋は盲目っていうけど、まさかあのユーノ君がね。あー、あのユーノ君だからこそなんか


「ユーノ君。女の子はいつだってカッコいい男の子に憧れるんや」

「はやてはもう女の子って言える年齢じゃ──」

「女の子はいつまでも永遠の17歳や。それは兎も角、つまり誰かに協力してもらうという事が、もう駄目何や。まるで駄目な男なんや」

「つまり男らしく、一人で孤高に女の子に告白しろと?」

「さすがユーノ君や。物分り良くてほんま優秀な生徒を持った私は幸せや」


 うんうんとはやては満足気に頷く。ユーノはこのはやての会話で納得させられながらも、あれ? これってはやてに乗せられてるだけじゃなんて考える。

 だが、それでもやはり正しいと思う気持ちの方が大きく、上手く乗せられてしまう。


──そうだ! フェイトが何だ! 協力者が何だ! 僕は……僕の気持ちを伝えるだけ何だ!


「分かったよ、はやて。ありがとうね、アドバイスまで」

「ええよ、別に。ユーノ君なら安心してなのはちゃんを任せられるからな。ふふ、楽しみにしてるで、結婚式」


 最後ははやてと笑いながら別れを告げ、再びユーノは転移魔法を使う。目指すは十年来、想いを抱く彼女の元へ。

 道のりは厳しく(転移魔法なのに)壁は大きく(転移魔法なのに)しかし、ユーノは歩を休ませず一直線に彼女の下へと一気に近づく。彼女がユーノの存在に気付き歩み寄る。

 彼が口を大きく開き、声を大にして叫ぶ。

 そして……











 彼の姿を次に見たのはおでんの屋台だった。

 彼の肩を軽く叩きながら「今日はおごりや」という、男女の姿は屋台のおじちゃんにとって印象に深かかった。
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