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小説挑戦


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【投稿版】不朽のモウカ

第十二話(不朽のモウカ)

 厄介ごとは遠ざける。
 危険なこととは縁を切る。
 これは当然のことながら長く生きるためのコツのようなものだ。人間の頃の長寿なら、栄養に気をつけて、運動をして、健康体に保つ、なんていう回答になるのだろうが。フレイムヘイズだって、調子の良い悪いこそあれど、そこまで気にすることではない。
 身体を清潔に保つのなら、『清めの炎』があればいいし。食べ物に関しても寄生虫や毒があっても、こちらも同じく体内に入った異物なら『清めの炎』で何とか出来てしまう。
 自在法の便利さはここに極まると言った感じだが、個人によって扱えるものは千差万別なのは言うまでもなく。『清めの炎』や『達意の言』、『炎弾』などの広く知られていて、誰にでも簡単に扱える初歩の自在法を除いたら後は個々の特殊なものになる。
 本人以外には扱えない自在法だ。長く生き残るための生命線とも言える。勿論、それは俺にも言えることで、俺も基本的には『嵐の夜』を主軸とした、逃げの自在法が俺の身も心も支えてくれている。
 さて、ここで問題があるのだが、厄介ごとというのは自在法で逃げられるものなのか。
 厄介ごとが目に見えて襲ってきたのであれば、それに対して俺も対処の仕様というのがあるのかもしれないが、そんなモノが見えるはずがない。頼れるのは第六感のみ。
 あ、危ないかも。と思った時が厄介ごとであり、危機である。
 しかし、思ったときには既に遅く、

「驚いたでしょ。いつもあんなんなんです、わたしの父は」

 厄介ごとに巻き込まれた後である。
 うわ、俺の第六感って使えない。でも、こういうのは経験で補えるようなものだと俺は信じているので、数百年後も生き残っていたら、きっと『これは!?』という緊急回避が出来るようになれると信じたい。

(ねえ、ねえ、モウカ)
(なんだよ。俺は今激しく後悔してるんだ。ちょっとくらい格好つけてみようかなと武器など買おうと思わず、大人しく露店のみをのんびりと眺めて幸せに浸っていればよかったんだって)
(すっごく面白そうな気がするよ!)
(無視かよ)

 ウェルは好奇心旺盛な子どもみたいなものだ。
 楽しいからという理由で、いつか俺を裏切る日も遠くないと感じることも度々あるのだが、案外誠実さもあるので、見切りがつけられない。まあ、裏切られる可能性があるからって俺から裏切るなんてことが出来るはずもなく、俺とウェルは運命共同体な上、本当の危機にはウェルもアドバイスをくれるので、今、こうやって彼女が楽しんでいるのはある意味まだ大丈夫だという証明かもしれない。
 単に、面白くて前後不覚になっている可能性もあるのかもしれないが。
 未来のことを心配しすぎても仕方ない。
 どうせ、俺がどんなに警戒したって巻き込まれるときは巻き込まれるのだし、ここは諦めて少女の話を聴くのがいいのかもしれない。時代の流れに身を任せる、という風に。
 俺は今、この現代の公園の成り損ないのようなただスペースが広がっているだけの大広場に腰を下ろして武器屋の少女のお話を聞かされている。
 どうしてこうなってかというと、刀をあげると言われ、さすがにただというのは悪い気がしたので、お金を払うといったら、こんな鈍らにはお金を払う価値なんてとか言い出したので、せめてじゃあご飯だけでもと俺の親切心でこうなった。
 食べ物を買ってはいさよならの予定だったんだけどね。
 いくつか気になることがあったから、話をすることになった。
 それは俺が何気なく振った、そういえばお母さんは? という質問に対して少女が答えた『あ、嵐が』の一言だ。
 こんな時だけ働く第六感が俺に告げた。
 もしや、それは俺のせいではないかと。
 だから、この話は免罪符のつもりでもある。罪悪感はすでに薄い。人害に関して言えば、俺の自在法は確かにたくさん出るだろう。人がいるところで使えば死者だって出てもおかしく無い。だが、それに構っている余裕が俺にもない。
 自分勝手だ。
 俺が生きたいから他を犠牲にするなど、自分勝手以外の何ものでもないと言える。
 だから、せめてもの自己満足として、この少女の話を聴くことにした。

「刀を打つことにしか頭がいかないんですよ」
「職人だね、と褒めるところ?」
「ふふ、そう言ってもらえるとわたしとしても気が楽です。わたしもそんな父を尊敬してますから」

 てっきり構ってくれない父親に対する愚痴のお話かと思ったら、本人も父親を尊敬しているらしい。俺も見た限りじゃ、刀を恋人にしているという点を除けば、尊敬できるところは多々ありそうだとは思う。ああいう職人肌の男はモテるとも思うしね。羨ましいことだ。
 しかし、あのような人物はどうやって結婚したのだろうか。今でこそはあんなんだが、昔はもっとアグレッシブだったとかなのかな。

「父は、母が死ぬ前まではあそこまでではなかったんですよ」
「そう、だったのか。なんだかごめん」
「いえ、もうわたしも母の死も父のあの状態も全て受け入れてますから、気にせず」

 強いな、と思う。

「そういう意味じゃないんだけどな」
「え?」
「いや、気にしないでくれ」
(まさか、モウカのせいの可能性があるだなんて言えないもんね)

 言えないことはないとは思う。
 謝罪をするのであれば、全てを明かせばいいだけの話なのだ。
 ただ、その場合にはこの世の本当のことを教える必要があるのだ。それは真に残酷な話でもあり、常人では決して信じられないような夢物語に過ぎない。もしかしたら、この子は強いからありのままに受け止めることが出来るかもしれない。
 だが、こちらの世界に入るのはやはりオススメは出来ない。
 本人が望むならその一端を見せるだけくらいなら、俺は罪滅しのためにも出来るが、こんな生きるか死ぬかの殺伐とした世界に入ることなど、俺だったら絶対に嫌だ。現実は、そんな世界に片足を浸かるところがどっぷりと嵌っているわけだけど。

「騎士だったら、わたしが騎士だったらよかったのに……」

 沈んだ声だった。
 顔にも悲しみを全面に出し、先程まで気弱ながらも笑顔を保っていた顔が崩れた。
 これが彼女の本音なのだろう。彼女は騎士になりたいという感情を、夢を抱いていながらもなれないという現実も冷静に見ているようだ。だからこそ、悲しい顔をした。自分が騎士になることなど決して出来ないから。
 この時代は、男尊女卑のように思われやすいが、意外とそうではないのだ。女性が政権に顔を出せるようになるのは、民主主義が主流になる頃、近代だが、この時代でもないことにはない。
 それは女王の権力であり、女性騎士の存在である。
 女性は強い生き物である、というのはよく知っている。
 戦技無双の姫などと呼ばれる『大戦』の助けてもらった一人のヴィルヘルミナさんもいるし。死んでしまったがヴィルヘルミナさんの共の``炎髪灼眼の討ち手``のマティルダさんはフレイムヘイズとは言え女性騎士の鏡のような存在だった。総大将を務めていたサバリッシュさんだっている。
 フレイムヘイズに限らず、女性騎士団だって実在している。女性が騎士になれないなんてことは可能性が低いが、絶対にありえないわけではないのだ。
 しかし、目の前の少女を見るに、それはほとんど不可能である。
 どこに刀を打てるほどの筋肉があるのか疑いたくなるような、もやしとまでは言わないが女性らしい細い腕は、あまりにも頼りないのだ。騎士になるのなら女でも男に勝てるほどの力は必要だ。力で勝てなくても技量が必要だろう。
 身長だって高くない。
 俺も決して高くない方だが、百七十センチメートル程度しかない俺よりも低く、高く見ても百六十がいいところだ。体格差、リーチという部分においても劣ってしまっている。
 それに、やはりこの時代では平民が騎士になるようなことはまず無い。女性騎士は存在するが、彼女らは由緒正しき家の出だ。この時代の差別といえば、貴族と平民の差で、男女の差別なんかより酷い。まあ、俺たちフレイムヘイズにはそこまで関係はない話ではあるが。

「父が求めているのは強者だけで。自分の剣を振るうに相応しい人物だけにしか今は目がいかないんです。だから、わたしが騎士だったら。強かったらって、そう思ってしまうのです」
「子の心親知らず、って奴か」
「いいえ、理解出来ていないのはわたしの方かもしれないですし」

 健気だねという感想もあるが、この問題。俺が関わる必要ないよね、という思いが沸々と滲み出てくる。
 聞けば聞くほど俺にどうにかできる問題でもなく、一個人の問題のようだ。少女も、そんな父親を考え観るに不遇の待遇を受けているようだが、なんだかんだでやって行けているような感じではある。
 どうやって生活してるんだと聞いたところ、家計は火の車であるという。父親がまともに仕事をせず、ただ刀を作り続けているだけ。お金も尽きており、近年の飢饉で多少の蓄えがあったのだが、それももうそこを尽き始めているのだという。そこでの、この施しはとてもありがたいですと、涙ながらに語ってくれた。
 浮くのは僅かな罪悪感。
 もし、彼女の母親が生きていたらとは考えてしまうと、彼女がこうなってしまったのは自分のせいではないかと思ってしまう。決して要因はそれだけではないはずだろうと思うのにだ。だからつい彼女にお金を少し渡し頑張りなと言ってしまった。
 これも僅かな免罪符だ。
 少女の失ったものからすれば、到底打ち消せるようなものでもないが。それを気にしていたら、フレイムヘイズとしてやっていけなくなる。
 この時の行為の、『どうせ奪ったお金だし』という言葉は聞かなかったことにする。今は、俺のお金だよ。
 フレイムヘイズとして、何かできることといえば、誰かがいつか自在法か何かで、戦いが起きたときに人間に被害が及ばないような物を開発してくれと願うばかりだ。
 願うことしか出来ないけどね。
 俺は俺のことだけで精一杯だ。
 これ以上は何も出来ない。

「なんだ。俺の関われるようなことじゃないね」
「あはは、すみません。本当に個人的はお話で」
「いや、いいよ。どうせ、暇だったし」
(本当にやることないもんね。私もいい加減飽きてきたよ。あーあ、``紅世の徒``に追われてたときは毎日が楽しかったのに)
(俺は楽しくなかったよ)

 充実は、していたかもしれないけど。
 何か一つのことに必死になるということは、人生を謳歌しているとも取れる。なれば、俺が追われていた時期もそれはそれで悪くはない……なんてことはやっぱりないよ。全くない。
 人生一生分を謳歌するのは、俺の人生の目標みたいなものだが、それとこれとは違う。謳歌というのは、あくまで気ままに楽しくであり、泣きながら、逆に笑ってしまうような程、精神的に追い込まれるような生活のことは決して指さないだろう。

「それに、これからすることもないしな」
「そうなのですか?」
「うん、そうなんだよ」

 この時代に来て余裕が生まれたのは初めてだ。
 生きるのに必死だった頃に比べ、周りが見えるようになり、これからのことを考える時間が出来た。俺はフレイムヘイズだ。時間は半永久的にあるので、やりたいことがあれば、全部することだって出来るかもしれない。
 自在法を使えれば、不可能だって可能にできるかもしれない。
 何もやることがないなら、フレイムヘイズとやらの使命に時を費やすのもいいかもしれない、はないな。危険だし。死ぬかもしれないし。
 なにはともあれ、今はするべきことが見つかっていない状態。
 この城下町に来たのだって完全に気の赴くままにというやつだ。これからもそうやって適当に生きながらえながら、人生を歩んでいくことになりそうだ。
 特にやるべきことも決めず、見つけたことからなんとなく。
 ……いい。
 実にいいなそんな人生。
 平凡って感じがいいね。

「でも、なんだ。力になれなくてすまないね」

 フレイムヘイズになれば女性騎士なんてのも夢じゃないんだろうけど、それだと父親に忘れ去られてしまうから本末転倒だし。何より、フレイムヘイズにはならなくていいのなら、ならないほうがいいというのは当然のことだ。

「気にしないでください。もう、大丈夫なんで」
「そう?」
「はい、だって、もうすぐ……」

 今までとは違うどこか希望に満ちた眼だった。

「では、わたしはこれで」
「うん、じゃあね」
「あの……ご馳走さまでした。美味しかったです、あのパン」
「どういたしまして」
「また、いつか」
「……うん」

 多分、もう会うことはないだろうけど。
 フレイムヘイズにだって、会わなければそれに越したことはないんだから。
 少女が立ち上がり、鍛冶屋のあった方へと駆けていく。一度こちらに振り向き、大きく手を振ってきたので振り返して本当のお別れとした。
 そして、俺の手元には一振りの刀身合わせても七十センチメートル程の無骨な刀が残った。
 少し黒ずんでいてとても綺麗とは思えない刃。切れ味は見た目からでは分からないが、鋭さを感じられず、あまりいい感想を持てない。鞘すら無い、抜き身の剣だ。
 この剣を戦闘で使うことはないだろう。俺には刀を扱う心得も持ち得ていないし、何より扱える気がしない。俺が戦闘に出て、まともに戦うということも考えられないので、この剣はただのお飾りとなるだろう。謂わば見せかけの剣。ただの脅し道具。
 彼女には申し訳ないかもしれないが、貰ったのものだし、どう扱うかは俺次第だろう。

「どうやって、持ち運ぼう」
「なんかそれらしいものでも顕現させてみる?」

 首元から陽気な声が聞こえる。
 人がいないので周りを気にせず、普通に声を出している。

「あれって自分の思っている姿で写し取る物だから、俺には無理かな」
「剣を扱っているモウカなんて、モウカじゃないもんね」
「うるさい。仕方ないじゃないか。出来ないものは出来ないのさ」
「褒め言葉だよ。じゃあ、これでお買い物が決まったね」
「そうだね

 この剣を仕舞える何かを買いに行くとしようじゃないか。

「ほら、なにか聞こえてこない? オーケストラがどうのって聞こえるよ」

 耳を澄まして聞いてみると、遠くの方から告知が聞こえてくる。
 クーベリックというオーケストラの講演会が今日から講堂であるようだ。

「ん、オーケストラの講演があるのか。暇つぶしにはいいかもしれないね」
「ねえ、行ってみようよ!」
「うーん……」

 でも、こういうのって多分、貴族向けだからお金がかかるんだよな。
 結局は、どの時代もお金であるのかもしれないと疑問を抱いた今日の一時。





◆  ◆  ◆





「あんなに簡単にご飯にありつけるなんて思いもしなかったよ。しかも、お金まで。幸先いいな、私」

 焦げた金色のような髪を持つ少女、リーズ・コロナーロはお道化たような声で既に遠くに見える公園を見つめながら呟いた。眼つきもどこか鋭くなり、笑も嫌みたらしい邪悪なものとなっている。その表情のどこにも温和な影はなく、彼女を知らない者が見たら思わず距離を取りたくなる程のものだった。なのにも関わらず様になっている表情でもあった。

「このご時勢にお金なんてあるわけ無いのに。常識を全く知らないんだね、あの人は」

 無知な自分と同年代くらいに見えた青年を嘲笑うような言葉だった。

「でも、これであの日まで生き長らえるってもん。変なリスクを背負う必要はもうないんだし」


 もうすぐ夢の騎士になれる。
 リーズは今度は自然な笑顔を浮かべていた。
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