小説挑戦


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【投稿版】不朽のモウカ

第十四話(不朽のモウカ)

「武器の収納って青いローブの内側にでも剣を入れる収納スペース作って、そのまま武装解除したら収納できるんじゃない? ……て、ほら出来た」
「おおー、便利なもんだね」
「ウェルも知らなかったのかよ」

 前日の丸一日と今日の半日の計一日半を費やして、どうにか剣をしまえる鞘みたいなのはないかと探しても見つからず。どうしようかなと、困っていたところに頭に一筋の閃きが煌めいた。
 青いローブはたまに服に困ったときにも着るが、基本的には戦闘服である。俺専用とでも言うべき防具で、自在に顕現させたりすることが出来る。オンオフを意識的に使える非常に優れたものだ。
 これを利用して、ローブを一種の収納スペースに出来るのではないかと考えた結果、見事に成功を収めることができた。これなら今後もローブに入る程度のものなら収納していくことが出来る。食べ物も出来ればしたいが、腐ったりしたらローブに匂いがつくかもしれないし、怖いのでそれは避けておく。生臭い匂いのローブなんて嫌だもんね。
 いや待て。その臭いの効果で敵を寄せ付けない補助効果なんてものが……さすがに無理か。
 たくさんしまい込んでも動きづらくなったりもするので、意外と活用はしにくいかもしれない。剣一つくらいなら重さ的にも仮にもフレイムヘイズな上に今だって鍛錬を怠ったりしないので、逃げるときの邪魔にはならないので問題ない。
 剣は言わば脅しの道具だ。
 俺は剣術だけに限らず色々な武術の心得は未だに上手くいかず、それなのに避けることばかりが上達している。それはそれで問題ないというか、俺の本質には適っているのでいいのだが、剣は結局扱うことはできない。
 適当に力任せに振るのが限界だろう。
 剣を持って、危ないんだぞーと俺は強いんだぞーと見せびらかす。
 剣を持って、自分が戦えることをアピールして逃げ易くする。
 剣を持って、時にはそれで敵の攻撃を受け止める。たまに投げつける。
 主な利用法はこんなもんで、まともな使い方などしない。することができない。
 剣を華麗に扱って敵をぶった斬っている俺を思い浮かべるよりは、投げやりに剣を扱う俺の姿は想像に容易く、俺にとっては最も有効な剣の使い道だろう。自分で言ってて儚くなるが、死ななければいい、敵を倒す必要のない俺にとってはこれが精一杯な生き方だ。情けなくは思うが後悔はしていない。後悔するような生き方はしたくない。
 こんな使い方をしたら剣を作って俺に譲り渡してくれた彼女には悪いかもしれないが。

「まあまあ、いいじゃない。なんとかなったんだし」
「そんなお気楽でいいのかな。何というか、二百年もフレイムヘイズやって今さら新しい事を知るってどうなのかなと」
「モウカは、フレイムヘイズだけど、フレイムヘイズらしくはないからしょうがないよ」
「しょうがない……のか? それは」

 もしかしたら、他にも便利な力が自分の内にあるとしたらそれも知っておきたいところだ。そこから、なにか生存への糸口を手に入れることが出来るかもしれない。
 今も昔に比べれば大分生きるのが楽になったが、それでも余裕を持ってはいない。もっと気楽に、もっと簡単に安全に生きるための術が欲しい。

「ま、いっか。生きていられれば」
「そうそう、今ある命があればいいじゃない。モウカ的に」
「それもそうか。うん、命あれば食べることも必要と。何か食べたいな」

 ローブと剣の実験をするために人目のつかない森へと入って、そこそこに時間が経っている。生い茂る木のせいで日差しはあまり入ってこないが、森の中はそれでも十分にまだ明るいので時間はそれほど遅くなっていないはずだ。
 腕時計がまだ存在しないが、とある歌のような大きい時計などは存在する。現代ほどの正確さではないが、電気を使っていないのに大した精密さだと初めて見たときは感心したものだ。
 だが、持ち運べるようなものでなければ、買えるような代物でもない。今の時代では高価なものなのでお金をあまり持ち合わせていない俺みたいな小市民には到底買えないような代物だ。その時計がわりにやはり重用するのが腹時計だと俺は思っている。
 フレイムヘイズの腹時計は酷く鈍いものだ、というのは一つの私見だ。というのも、他のフレイムヘイズに『お腹ってよく空く?』などと軽々しく謎の質問を聞けるわけもなく、彼らは大抵そう言うのには興味を持たない。彼らの殆どは、『そんなことより、復讐しようぜ』な奴らだ。全くおっかないったらありゃしない。
 しかし、フレイムヘイズだって根本的には人間と変わらないのだからお腹は空くはずだ。ただ、それが人間と比べるとすごく曖昧な物になっている気がする。
 フレイムヘイズと人間はフレイムヘイズだって元人間なのだから当然ながら身体の作りは同じだが、中身は全然違う。能力面で言えば、身体能力、治癒能力などは人間と比べものにならないほど優れている。それは生きることだけに猪口才な俺が、無事に生きていられているのが何よりも証拠だ。
 より戦闘的な身体になったため、身体の耐久性が極端に上昇し、飢えというのにも強くなれたのではないかというのが俺の考えたことだった。
 実際のところは分からないし、この手のことはどっかの誰かがその内興味本位で研究したりしてくれるだろうから俺は放置するが、なんとも便利な身体だ。
 何よりも食費が浮くのがいい。素晴らしい。お金を節約できる。
 街や人里に寄れない時は、野にあるキノコや草、魚を取って自身の炎で焼くが、やはり調理されたものは味がいい。現代に比べたら味は劣るのかもしれないが、すでにこの時代に二百年もいるのだから違和感を感じるはずがない。
 食べることは娯楽の一つ。死ぬ前まではあまりそうは思っていなかったが、今はハッキリと言える。食べることって素晴らしいと。
 全世界の食べ物を食べ歩くというのも、今後の人生の目標でいいかもしれない。全然フレイムヘイズらしさの欠片も無いような気がするが、気のせいだろう。
 俺は基本的には一日一食は最低でもとるようにしている。我慢すれば一週間とかも耐えられそうだが、俺に取っては娯楽なので、やはり食べられるに越したことはない。美味しい物が食べられるときには美味しい物を食べる。生きがいは一つでも多くあったほうがいい。

「今日の飯はどうするかな」

 お昼のメニューを考えながら今日も城下町を目指す。
 なんだかんだ言って、ここら辺で一番食べ物が揃っているのはあの街だ。旅をするのもいいが、もう二・三日はあの街に留まっているのもいいだろう、食べ物のために。それ以上だと、目立ったり、俺の臭いを嗅ぎつけた``紅世の徒``がやってくる可能性があるのであまり長居はできない。
 最近こそ平和な日々だが、いつまた出会うか、襲われるか分かったもんじゃない。

「いくつか酒場あったよね?」
「あったけど、覗いた限りだと昨日の酒屋がいちばん綺麗だった」

 店の内装は大切だ。
 汚すぎれば食欲がなくなってしまうし、綺麗すぎれば緊張してしまう。後者については、この時代では心配することではないが、やはり前者は気になってしまう。臭い、雰囲気、清潔感。酒屋独特の酒の匂いや、うるさい雰囲気、少しうす汚れた感じならいいが、人の吐いたもののような臭がするような店もあるから油断はできない。
 そんな店があれば、入らなくても雰囲気で分かるものではあるが。

「こだわり過ぎというか贅沢なんじゃない」
「そんなことはないけど、せっかく食べるならしっかり美味しい物を食べたい」
「あと、お腹を壊す心配のない物?」

 笑いを抑えるようにウェルは言う。
 俺は多少腹を立てながら、それを隠そうとしていつもより若干低めの声で答える。

「……そうだよ」

 フレイムヘイズだって人間だもの、変な物を食べたらお腹だって壊すさ。『清めの炎』を使えば、病気諸共治すことが出来るが、ウェルが俺が腹を抑え苦しんでいる状況を笑っていたために、すぐに直してもらえず、ちょっとトラウマになっている。
 だから、少し八つ当たり気味に声を大にしてしまった。
 悪いのはウェルだ。
 『フレイムヘイズだから何食べても大丈夫』と自信満々に言ってたから、明らかに危険色のキノコを食べたのに、案の定お腹が抉られるような痛みに苛まれた。
 死ぬかと思った。未だにあの時の痛みは忘れられない。
 フレイムヘイズに成り立てだった頃の百年以上昔の話だが、忘れられない程の痛い思い出だ。

「もうっ、悪かったって謝ったじゃない」
「笑いながらだったけどな」
「そうだっけ、忘れちゃった」
「反省してないな」
「``紅世の徒``は反省しない生き物なんだよ」
「違う、と俺は信じたい」
「さあ、どうだろうね」
「くそー。思い出したら腹に立つな。今日も絶対に美味い物を食べてやる」

 やけ食いか、モウカらしいね。という相方のおちょくるような声を無視して、歩を大にして森を突き進む。目指すは、美味しい食べ物が食べられる娯楽場。
 やっぱり人生は食道楽だよね、とか思いつつ。





◆  ◆  ◆





 お菓子の家があったとさ。子どもだけじゃなく、大人にとってもまるで夢のような家なんだ。その家に行けば望む限りの食べ物が手に入るというのだ。現実離れしすぎて眉唾ものだが、そんな魅力的な話が噂になるのだから、本当にあるのだろうと駆けつけた者がいたらしい。
 そうやって何人も駆けつけたが誰一人も帰って来なかったそうだ。
 そのうち気味悪がられてその家があるとされる森からは人が離れていった。
 それが気付けば人を、邪魔者を消す場所になっていて、迷いの森だとかそんな風の名前が付いていた森がいつの間にか、人捨ての森や人喰いの森と呼ばれるようになっていたとさ。
 これはお話だ。
 噂話ですら無い。友達同士の雑談のネタであげるようなそんな他愛もないお話。話している本人たちからすれば、都市伝説を話しているような感覚なのだろう。笑いながら、冗談を言いいながら、そんな馬鹿話。
 しかし、それは違う。と、酒屋の気のいい店主のおっちゃんは言った。
 昨日もお世話になり、色々な情報をくれた店主だ。
 話の信憑性は全く分からない。おっちゃんからすれば、あまりにも暇だったので一つの雑談を持ちかけた程度の気安さだったのかもしれないし、何か積もる話があって俺に託したい話なのかもしれない。
 最初はお互いに笑いながら、そんな家があったらいいのにね、なんて冗談を言いながらの軽いお話だったのだが、しかしと逆接を置いたときのおっちゃんの顔は真剣そのものだった。
 彼は言うのだ。
 人が帰って来ないのも、消えてしまったのも本当の事だと。
 ありえない現象ではない。人が帰って来ないのも消えてしまったのも``紅世の徒``に食われてしまったと考えれば不思議じゃない。その森には``紅世の徒``が存在していて、人間を捕食しているのだとそう考えられる。
 けれども、話は違う。
 帰って来ないという実証がある。消えてしまったという記憶がある。これは``紅世の徒``に存在を食われて存在が欠落していないことを証明している。

「不思議だね」

 実に不思議な現象だ。
 ``紅世の徒``が絡んでいないという前提のもとだと、こんなのはファンタジーの世界の話だ。漫画や小説のフィクションの世界。ありえないことが現実に起きてしまうという、難攻不落の大事件とも言える。
 主人公が登場して、初めて解決するとも言えるだろう。
 主人公は大変だねぇ。そんな大事件と真剣に向き合って解決しなくちゃいけないんだから。同情するよ、本当に。俺は勘弁だね。
 俺なら無関係を貫き通すね。
 だって、厄介ごとっぽいんだもん。これは明らかに危険な匂いがするんだよ。俺じゃなくても分かるほどの悪臭だ。確実に裏がある話。
 不思議というのは``紅世の徒``が関与していない場合の最前提。
 存在の欠落がない、ということはこの世のバランサーであるフレイムヘイズが動くことはまずないだろう。使命とは関係ないと切り離すに決まっている。
 だが、``紅世の徒``が全く関与していないという証明も未だない。
 存在を食ってないだけで、食料を貯蔵しているのかもしれないし、人知れず自在法が発動し、何かが仕組まれている可能性だってある。あの『大戦』の時のようにトーチが大量に出来ているのかもしれない。
 他のフレイムヘイズの援軍は期待できず、この事件を解決するとしたら俺の単独の行動となる。
 戦えない俺が、だ。
 ウェルなんかはこの話を聞き始めた当初からしきりに俺に話しかけては、楽しそうだよ行ってみようよ、と子供のようにはしゃいでいる。俺はいつものごとく無視を決め込んでいる。

(お菓子の家だよ、美味しいもの食べ放題だよ)
(か、関係ないね!)
「どうした、兄ちゃん」
「何でもない。話を続けて」

 お菓子、美味しい物、食べ放題、という三種の神器にクラっとは来たものの、これは明らかにお誘いだ。悪魔が俺に囁いているとしか言いようがない。やめろ、これ以上俺を誘惑しないでくれと叫んで、耳を塞ぎたいが、そんなことをすればおっちゃんが俺を変人認定。しかも、耳を塞いでも聞こえなくなるわけじゃないからたちが悪い。
 俺の天使はどこだ、と探そうにも悪魔の声があまりにも大きすぎるのか天使の声は聞こえない。
 最終手段として、『エティア』を強く直接握ることによって声の元を断つ。
 ウェルが音源を塞がれてモゴモゴ言ってるが、俺の心は澄んだ青い空のように晴れやかだ。
 これいいな。二百年経って新たな発見だ。これからはウェルへの対抗手段とさせてもらうとする。
 そんな俺の葛藤とは別におっちゃんは話を続け、期待を込めた目を向けて俺に言い放った。

「これはチャンスだと思わねえか?」
「チャンス?」
「そうさ。この事件を見事にババーンと解決してこの国に名を広める。くぅ~っ! 男なら燃える展開だと思わねえか!?」

 演技染みた大きな身振り手振りだった。
 なるほど、おっちゃんの真意はっこれだったか。
 どうやら本当の悪魔の囁きはウェルではなくこっちだったようだ。
 しかし、残念だったなおっちゃん。
 俺の答えは考えるまでもなく決まっているんだ。

「思わないね」

 名を広めたってこの世界には危険しか無いんだよ。
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