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【投稿版】不朽のモウカ

第二十三話(不朽のモウカ)

『ふむ、詳しいことを教えてくれと言われてもな』

 俺が何故に『大戦の立役者』などという仰々しく決して似つかない二つ名が付いたのかを、二つ名の存在を教えてくれたフルカスに問いただしたのだが、本人はもっぱらそういう噂があったと言うだけで、発生源を俺が知ることは出来なかった。
 その代わりに理由は予想がつくらしく、その理由とはあの大戦において俺の自在法である『嵐の夜』がかなり目立ってしまったことが挙げられるらしい。
 なるほど、確かに目立つといえばあれは相当に目立つ自在法であるのは間違いない。嵐という名前をつけたことからも、十分に伺い知れることだろう。規模は俺自身を纏う程度の超小規模から、戦場をまるまる包み込む超大規模まで、存在の力の入れ具合で様々な変化を遂げさせることが出来る。
 大戦の時ほどの広域を嵐で覆うなんてことはこの先ありはしないだろうが、一度やって見せたので相当インパクトがあったのかもしれないとは思う。
 噂が噂を呼んで肥大化、だなんて話はありがちではあるが現にそうなってしまっていると考えられる。
 そうでもなければ、俺が『立役者』などという、いかにも活躍しましたという称号を手に入れることなど無いのだから。
 『大戦の立役者』については、この``紅世``の``隣``のこの世界でも噂がどこまで広まっているのかどうかまでは分からないが、少なくとも``紅世``には多少なりと顔が知れてしまったことになる。これは、今後に敵として現れる``紅世の徒``や味方として現れるフレイムヘイズにも影響が出かねないということを示すが、正直言ってこの影響を止める手立てはない。今の俺には思いつかない。
 なるようになれとはまさに自暴自棄な考え方かもしれないが、俺の考え方なんてそんなもんだ。
 俺への影響というのもきっと計り知れないのだろうが、それだけに予測できないのだから、その噂の肯定も否定もできない。
 本当に鬱陶しいな、この噂は。
 もっとマシな噂はなかったのだろうか。
 俺を敵に回すのは絶対にやめたほうがいいとか、そっとしておいてやれよとか。
 ついでとばかりにフルカスに尋ねたら、『ふむ、我はそれほど噂に頓着しないのだ』と答えた。遠まわしに噂話などあまり知らない、特に知る気もないし調べたこともないというものだった。
 それならしょうがないかと簡単に俺も諦めた。
 そんなやり取りが十年ほど前に行われて、十年の時を超えて今、真実を知ることができそうだった。

「そりゃあおまえ、大変だな!」

 がっはっはと今にも大声で笑い出しそうに大柄な男──人化の自在法を使っている``深隠の柎``ギュウキ。この世をありのままに跋扈し、欲望のままに生きる``紅世の徒``の一人。
 ``紅世の徒``といえば、フレイムヘイズの討滅の対象であるが、しかしこの``紅世の徒``は、この``紅世の徒``の所属している小さな集団``百鬼夜行``は変わっていた。
 それはまるで俺自身の鏡のような、そんな有り様に近い存在だった。
 ギュウキは嬉々として語ってくれた。

『俺たち``百鬼夜行``つうのには、一つのモットーがあるんだ。「安全運転、安全運行! 危機に対さば、即退散」てな』

 だから俺のような、俺の鏡のような存在だったという訳だ。
 これは彼らの本質ではない。
 彼らの本質はあくまでも運び屋であり、逃げることではない。
 俺の本質はあくまでも生きることであり、逃げることではない。
 ただし、俺も彼らも同じくとしてその本質を保つために、固持するための手段として『逃げる』を選択している。
 まさか同じ信条を持っているお仲間に出会えるとは思ってもいなかったが、そのお仲間が敵である``紅世の徒``というのはなんという皮肉なのだろうか。
 だがもちろん俺にとって``紅世の徒``とは、

『俺の命を奪わないなら特に問題はない』

 の一言に尽きる。
 だからこそ、リーズを先に帰らせ警戒心を下げさせて、こうやってお互いが顔を面と向かわせる会談へと漕ぎ着けることが出来た。
 仮にこの場にリーズがいたら、討滅するという選択肢がもしかしたら彼女の中には出来たのかもしれないが、俺に限って言えばそんな選択肢はないので``百鬼夜行``にとってもこの会談は悪くはないものだろう。
 だが、お互いに立場が立場なので、お互いがお互いの意見や言葉の信憑性を信じるか否かは実に怪しいところだった。
 向こうの信条が実は偽りかもしれないし、俺の信条が偽りだと思われているのかもしれない。
 真実を掴むというのには壁があまりにも分厚すぎるが、こういった機会は中々に得られないものなものであり、通常ではありえないことなので訝しんでばかりはいられない。
 この場はただの談笑ではなく情報のやり取りのための場。元よりそういうつもりで向こうも話しに乗ったのだろうから。
 俺が最初にギュウキに聞いたのはやはり数々の異名のことだった。数々とは言うものの一つはフルカスが呟いた『大戦の立役者』という言葉。もう一つは俺との出会い頭に自身の不遇の出会いに文句を垂れたときに言った『荒らし屋』という言葉。この2つの真偽についてだった。
 真偽とは言ったが、ギュウキがとっさに呟いたことからも、こっちの世界でも一定以上の知名度を持ってしまっていることは確かな事実であることが分かった。問題はその広まり具合だ。

「まさか、あの『不朽の逃げ手』がその名の通り、単に逃げることに長けた自在法が得意だとは。面白いものだ」

 俺の言葉をそのまま鵜呑みにしてはいないだろうが、一応は信じてくれたらしい。

「フレイムヘイズが平和に生きたいだなんて願うのは、到底信じられねえがな」

 やはり全てを信じるわけではなく、その言葉には疑いの色が混じっていた。
 俺の目を見つめ、その信憑性を図っているところも抜かりない。
 どうやらこういった情報のやり取りには、手馴れているようでもある。
 
「信じてもらえないでも結構。重要なのはその先の情報だ。どういった話が``紅世の徒``間で広がっていて、どの程度広がっているのか」
「それを知ってどうするんだって思うんだがよ。まあいい、それを教えたところで不利益があるわけでもねえし」

 彼はどちらかというと守銭奴のようだ。利益不利益を考えて行動する性質。
 ``百鬼夜行``という集団の中で頭目という役割をこなしている人物としては当然の考え方なんだろう。
 何が利益につながって、何が不利益になるのか。
 会社となんら変りないな。

「俺らの間での共通の認識はまず珍しい奴だな」
「それは自在法の観点? 戦い方?」
「性格に一票」
「俺の性格を知っている``紅世の徒``なんていないだろ。というか、余計な口をだすなよウェル」
「色んな意味でだ」

 場と時を弁えないウェルの冗談交じりの言葉は、場を微妙な温度にする。
 冷え切っているよりはいいと思うが、緊張感を完全に無くすのはちょっと困りものだ。
 リーズなんかが彼女を苦手とするのはこういったところかもしれないな。あいつは自分のペースが乱されるのを嫌がるから。
 ギュウキは俺の先を促す言葉を神妙に受け止めながら、これはあくまで乗客から聞いた話だがと前置きをしてから語ってくれる。

「『大戦の立役者』についてだが、あの戦いを生き残った``紅世の徒``たちの一部が発生源だ。これまた噂だがあの``仮装舞踏会(バル・マスケ)``もおまえに関して興味を持ったとかいう話もあったな。信憑性はハッキリ言って皆無だが」
「``仮装舞踏会``か……これまた大きなところが」

 事実上``紅世の徒``の最大組織である``仮装舞踏会``からも、目をつけられている可能性が低くくはあるがあると言う。
 一体俺が何をしたっていうんだと、公の場で公言して俺が無実であることを訴えたいところなのだが、思った以上のその異名の広がりあるようで、撤回が非常に厳しい状況にあると言える。
 そうなると撤回をするという選択肢がなくなり、この二つ名を逆に利用する方が良さそうだと思考を切り替える。
 諦めも肝心だというしね。
 ことこの二つ名に関してのメリット・デメリットはすでに熟考済み。
 メリットといえば、二つ名の効果で俺に対して畏怖を抱き近寄りがたくする効果。結果として戦いを少なく出来る。
 デメリットは、この世界に名を馳せたくて俺のクビを狙ってくる可能性があること。その為だけにわざわざこちらの世界に``紅世の徒``が来るとは思えないが、何かしらの組織で、何らかの意図を持ってということなら十二分にあり得る。
 戦いを避けられるようになる可能性と戦いに巻き込まれる可能性の二面性を持っている。
 もしかして最近、俺目当ての戦闘が無いのはこの異名のせいなのか?

「それに加えて、おまえは自在法を使わせたら場をかなり荒らすんだってな? それが『荒らし屋』なんて言われる原因なんだろうよ。俺たち``紅世の徒``は見たまんまにそういうのをつけるからな。分かりやすさ重視ってやつだ」

 嵐だからねーとウェルは声にならない声で俺に言った。嵐だもんねーと返答。
 街を巻き込んだら民家とか平気でかっ飛ばします。人なんて軽々と吹っ飛びます。手加減はできるので、人の居そうな場所では最低限度の嵐にして、居ない場所での戦闘では可能な限り全力で雨風を展開する。
 ``紅世の徒``が風で飛ぶことなどまずありえないが、多少の妨害にはなっているとは思う。鬱陶しいな程度には。
 そういう意味では俺の戦闘スタイルというのはかなり過激なのかもしれないと少し反省した。
 今更過ぎるような気もしなくはないけど。

「そんなおまえは俺らにとっては厄介なフレイムヘイズの一人。『そのフレイムヘイズに傷つけること叶わず』なんて言葉が一時期あったぐれえだしな。勝てない敵としては有名だ」
「けったいなことで」
「私のモウカがいつのまにかこんなに成長しちゃって。私は嬉しいよ!」
「ウェル。笑いを抑えきれずに「ぷぷっ」とかいう不快な笑い声を入れながら言うな。笑うか、からかうかどちらかにしろ」
「……おまえらは仲がいいな」
「長い付き合いだから。情報ありがとう。いやはや、まさか直に``紅世の徒``から聞けるとは思わなかった」

 俺の出会ってきた``紅世の徒``は、戦闘を好き好んで嗜むヤツらばかりで、何を勘違いしてか襲ってきた奴ばかりだ。俺なんて``紅世の徒``がどんな計画を企てていようが、俺に被害なければ無視してやるというのに突っかかってくる。
 わざわざ道の真中を歩いて、自分から事故に遭いに行くようなものなのに、事故に実際にあったら喧嘩腰になる不良かと言いたい。
 彼らにも言い分はあるだろう。
 俺のように自分から遠ざかるフレイムヘイズなんて、今まであったことも聞いたこともないのだろうから対処が分からないのだろう。
 でも、まずは会話を成立させて欲しい。
 名乗り合うことはあっても、``紅世の徒``が己の欲望を顕わにすることがあっても、俺の都合を聞いてはくれない。
 なんという一方通行だろうか。嘆かわしい。

「いや、いいさ。こちらとしても有益な情報が手に入ったしな。現在『不朽の逃げ手』は戦いを望んでいないってな」
「ああ、今は甘んじて平和に暮らしたいんでね」

 どんなに相手に共感を得ても、どんなに相手がいい奴でも、フレイムヘイズと``紅世の徒``という立場は変わらず、最終的には敵同士という立ち位置は変化しない。時には味方をする``紅世の徒``もいるらしいが、それでも結局は一時的にすぎない。
 だからこの会談上はお互いに友好的に接しながらも、終わってしまえば敵対関係へと逆戻りしてしまう。
 俺が彼らへ与えた情報は『今は平和が一番と考えている』という、かなり制限したものになるのも、敵となる相手に弱点を作らないため、余計な情報を与えないためのもの。
 大層な二つ名も否定もせず肯定もせず現状保持したのも同じ理由。

(モウカの慎重さは臆病からだもんね。ここで、『俺は戦闘を否定するーッ!』何て言えば、今後は戦闘になることがないかもしれないのに)
(かもしれないじゃ危ないだろ。それにその発言は下手したらフレイムヘイズも敵に成りかねないんだし)

 戦闘をあくまで望んでいるのは復讐者たるフレイムヘイズ側だ。
 その原因は確かに``紅世の徒``であるのだが、喧嘩をふっかけるのは大体はフレイムヘイズと相場が決まっており、それゆえに戦闘狂などと呼ばれる輩もいる。
 ここ数百年になって頭角を現し始めているという『弔詞の詠み手』なんてものが代表格だ。
 きっとえんらい鬼の形相なんだろうな。くわばらくわばら。

「相互不干渉。この言葉に偽りは?」
「ない」

 漕ぎ着けた先は、百鬼夜行とのこの地域での相互不干渉の取り決め。
 お互いに口だけのものだが、この会談にてお互いに信用度を測り終えた上での決まりだ。
 どちらかが先に破らない限り、しばらくの安全が``百鬼夜行``という集団に関しては確保された瞬間だ。
 情報を得るだけでなく、安全までも手に入った実に有意義な会談。

「ではでは、お互いの安全を祈って」
「ああ、今日ばかりは食を共にしよう」

 立場など忘れて、晩餐会へと会談は変わった。
 食事の話題は``紅世の徒``とフレイムヘイズに友情と愛はあるか。
 実に楽しい夜となった。
 後にこの事を知ってリーズがウェルから聞き、『何故誘ってくれなかったのよ』と膨れっ面で怒り、槍投げ千の計に俺が処されたのは後日談である。
 ますますコントロールが良くなってきて、変化球も夢じゃないだろう。
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