小説挑戦


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【投稿版】不朽のモウカ

第四十六話(不朽のモウカ)

 最近というよりは、だいぶ昔。それこそ現代に生きていた頃より思うのだが、俺はもしかしたら不幸属性なのだろうか。いや、思い込みが激しいだけもしれないし、俺のように次々と面倒事やら厄介事やらが矢継ぎ早に訪れるのは意外と普通なのかもしれない。
 俺が不幸属性かどうかなんて他の人と比べてみなければ分からないことであるし、例え分かったとしてもどうしようもないことなのかもしれない。
 奴らは突然やってくるものではない。
 いきなり、忽然と現れたかのように思えるかもしれないが、それはとんだ大間違いだ。俺の知っている限りでは、意外と前振りや伏線があったりする。けども、その伏線に気付ける人はそうそういない。厄介事に慣れている俺でも、怪しいなと経験則から感づくことはあっても明確に感じ取ることはできない。
 出来ているなら俺の人生はどれほど平和なものだっただろうか。これはなんでも出来るなんちゃって魔法の自在法で、厄介事を感知出来るようなものを開発した方がいいのか。
 ……無理だね。
 あまりにも抽象的すぎるものを表現することは出来ない。『自在』だなんてけったいな名前が付いている癖に出来ないことが多いのだから、名前負けもいいところだ。『せかいをへいわにするじざいほー』とか作れたら良かったのに。
 何度目かも分からないありえない自在法のことを考えながら現実逃避を続ける。
 いつだったか、命が関わらない仕事ならいいのにとか言った自分が憎い。
 誰だよそんな事言った奴、出て来いよ。過去の自分を粛清してやりたいよ。と、思っても現実が変わることもなく、そんな伏線みたいなことを言ってなくてもきっと同じ事が起きていたであろうことは薄々ながらも分かる。
 あれだよね。
 俺は逃げる逃げるとか言っておきながらも結局は肝心な所では、逃げ切れていないのかもしれない。逃げ手の名は伊達じゃないとは思うけど、全ての事象からは逃げることは出来ないみたいだ。
 実力不足ではない。これはきっと……世界の法則なんだね。
 草原の地方線の先を遠くに見つめ世界の法則に嘆いていると、『大丈夫?』とリーズが背中をさすってくれる。その優しさに思わずほろりとしそうな程に俺の精神は参っていた。たぶん、俺の精神が参る原因の一端を担っているのは、心配そうな顔をしているリーズとは対照的に、ゲラゲラと笑うウェルにもあると思うんだ。
 ウェルの耳障りな笑い声は置いておいて、ようやっと内乱が終わり、軽い監禁状態であった俺も自由となった矢先のことだった。
 最近、世間が色々と騒々しいなとか思ってたら、光のごとく一人の女の子が来訪した。
 空を素早く飛んで現れた。
 凄いな。俺も嗜みとして空をとぶことは出来るが、あれほどのスピードは怖くて出せない。現代の高速道路で速度が百を超えただけでヒィヒィ言っていた俺には絶対に出来ない所業。足のつかない空ならなお怖い。
 ちなみに飛行機は大丈夫だった。離陸から着陸まで寝てればいいだけだからね。
 空から落ちてくる少女、ではなく空から降りてくる少女だ。空を飛んでいる時点で、異常者──まあフレイムヘイズか人化の自在法を使った``紅世の徒``であることは確定しているのだが、彼女はフレイムヘイズだな。``紅世の徒``独特の禍々しさというか、悪意を感じない。
 はてさて、フレイムヘイズの主な移動手段は人間と変わらない。何故かといえば、空を無闇に飛び人間の目につくことを恐れるためだ。それでもどうしようもない時はやむを得ず使う訳だが。この時点ですでに厄介事であることが決まったことになる。
 『空を高速で飛ぶ少女が俺の元に舞い降りた』。ほら、全てが面倒事のような塊じゃないか。俺の元に舞い降りるのはいつも面倒事って決まっているし。面倒事じゃない可能性になんて今更賭けないよ。もう、ズピピーンと分かるよ。不本ながらも、ね。
 嫌なことばかり予想が当たるのだから、自分の勘が憎いね。
 俺が現実から目を背けていたせいか、来訪した少女は首をかしげて困った顔をしている。
 肩の前で少し古風な鏃型の髪飾りで二つに纏めたブラウンの髪。威圧感を感じさせない少女の雰囲気は、いかにも普通の女の子だが、同じ異常者である俺には彼女の内に篭る強い力を感じる。
 俺とは比べものにならない様な力強さを秘めた力。
 それだけで分かる。彼女は猛者となり得るフレイムヘイズだ。これこそ経験に基づいた、それ以外に根拠のない理由だが、確信に近いものがある。
 ちなみにリーズにはそういったものは感じない。成り行きや本来とは違った理由で契約してしまったのだからしょうがないのかもしれない。
 少女は、俺がようやく自身に目線を送っていることに気付き、慌てて頭を下げて挨拶しながら自己紹介してくれた。

「初めまして、私はキアラ・トスカナって言います。称号は『極光の射手』です。二代目、だそうです」

 ああ、『極光の射手』か。なるほど、それなら納得だ。そりゃあ猛者になることが確約されているようなものじゃないか。
 その称号は前の、初代『極光の射手』が広めた名。俺が日本に行くことになった理由でもある。
 二代目が現れたということは、やはりカールさんは死んでしまっていたのだ。
 
「私たちの紹介はいらないわよね?」

 片方の髪飾りから聞こえたのは艶っぽい女性の声。
 俺の記憶が正しければ、『極光の射手』の``紅世の王``は一つの体に2つの意思がある珍しい一風変わった``紅世の徒``だったはず。姉妹の``紅世の王``で、比較的落ち着いてるっぽいのがウートレンニャヤで、

「お久しぶり。また会う日が来るとは思わなかったよー。あの時の『不朽の逃げ手』はどうも弱々しいイメージしか無かったからね!」

 軽くはしゃいでいるような少女の声。
 ウェルのように楽しいことが全てと思わせるような子どもっぽいのがヴェチェールニャヤだったよね。
 我ながらよく覚えていたと思う。それほどまでに『大戦』の時の記憶は鮮烈だったのだろう。あの頃のことは今でも明瞭に思い出せる。その全てがトラウマ級だから、本当は思い出したくもないのにね。
 俺が「そっかぁ、『極光の射手』かぁ、何しにきたんだろう」とまたトリップしそうになっていると、リーズが俺の服を引っ張り現実に引き戻させた。リーズは目線だけで言っている。いい加減に現実を見ろと。
 しょうがないな。話を進めよう。気が進まないけど。
 溜息を隠すこともせずに溜息をして、彼女らに自分とリーズの紹介もした。
 
「さて……では、本題に入って。なんで君たちはここに来たのかな?」

 『極光の射手』などという無駄に有名なフレイムヘイズを俺の元へと寄越した意味。何かの戦いにでも参戦させるつもりなのだろうか。
 それならば、『極光の射手』をわざわざ送ってきた理由も分かる。
 俺の知っている限り、『極光の射手』は最速のフレイムヘイズだ。先にここにやってきた時もそうだが、俺が存在を感知したのに、逃げることが出来なかった。
 俺の感覚も鈍っていたのだろう。だが、それだけではない。光の如くと表現しては少し大袈裟かもしれないが、俺の持っている全力疾走でも、決死の逃亡でも逃げ切れないかもしれないと思わせるほどの速度があった。確実に逃げるには自在法が必須だっただろうが、俺は隙をつかれてしまい自在法を発動することすら出来なかった!
 いや、うん。単純に不抜けてたら気付いたらそこに少女が降りてきたというのが真実だけど。
 でもね。今時、フレイムヘイズが空からやって来るのは珍しいことなんだよ、と自己弁護をさせてもらう。
 何はともあれ、こうやって面と向かって自己紹介までしたのだ。何をしに来たのかは知らないが、話を聞くだけ聞いてから逃げようじゃないか。逃げるのはそれからでも遅くないはず。
 ちなみにだが、先程からウェルが何も口出さないのは笑いを堪えるのに必死だから。時々、笑いが漏れてくるのが、どうもうざったらしい。
 キアラ・トスカナは、申し訳なさそうな顔をしながら答える。

「ごめんなさい……私のせいなんです。私がちゃんと力が扱えないから」
「私達のキアラはね、契約の時のショックからから『極光の射手』としての力を十分に扱えないのよ」
「今までキアラを担当してた人には『極光の射手』の暴走を止められなくて、そこで貴方に出番が回ってきたってわけ」
「俺が君を預かれと? 俺が『極光の射手』の暴走を止めて、暴走しないよに教育しろと?」

 正直言うなら、俺もとてもじゃないが『極光の射手』の暴走なんて止める自信がないぞ。欧州きっての猛者だった過去の功績からも図れるし、実際に見た彼らの強さは正しく強者だ。勘違いや何やらで固められた俺の偽の強さではない。
 実力伴う『極光の射手』の本物の強さが暴走して、俺が止められるかどうかなんて甚だ怪しい。まして、担当が投げ出すってどういうことだよ。
 頑張れよ。それが仕事だろ。俺に投げるなよ!
 人に教えられるほどの技量がないのだから当然、教育だってしたことない。

「いえ、暫くの間だけ世話になれって言われました」
「もう一人教育したようなもんだから出来るって思われたんだと思うよ」
「もう一人……リーズのことか」

 他人からそういう目で見られていたのか。
 俺はリーズにフレイムヘイズとして何かを教えたことはほとんどない。常識程度なら何度か言ったことはあるが、基本的にはフルカスとウェルが、戦闘面に関しては全く関わっていない。それこそ、師匠はもしかしたらリャナンシーになるのかもしれないな。彼女に自在法を教えてもらっていたわけだし。贅沢なことだ。
 こうしてみると、リーズが優秀だってことが分かる。
 俺は何もしていないのに、気付いたらフレイムヘイズとして一人前だ。
 俺なんて自分がフレイムヘイズとして名乗っていいかも微妙なのに。立派なものだな、リーズは。

「教育はしてもらったかどうかは微妙だけど、色々教わりはしたわね。生き方とか、生き様とか」
「うんむ、中々に一途な生き方で、面白い輩だ」

 そうか、リーズは俺から色々教わってたのか。
 でも、生き方とか生き様を教わったって、それって主に逃げ方じゃないのか?
 いいのか、それは教わったに入るのか? あれかな、反面教師ってやつなのか?
 俺が複雑な疑念に包まれていると、それを察したのか、俺をその疑念から解き放つために誰にも聞かれないように耳元で囁いた。

「良い生き方だと思うわよ。私は尊敬してる」

 え、すごく、ものすごく嬉しいんだけど。
 今まで俺の生き方を褒めてくれたのはウェルだけだった。しかし、それはウェルがウェル自身にとって楽しいと感じるからであって、なんだか利用されているような言われようだった。
 真っ直ぐな賞賛はこれが初めて。
 身近な人に認めてもらうってこんなにも嬉しいことだったのか。
 あーやばい、リーズに抱きついてしまいそうだ。
 その感情を無理やり押し込むためにも、隠すためにも、リーズにはありがとう、とお礼を言ってから改めてキアラ・トスカナに向き直る。

「兎に角、知人の『極光の射手』云々は置いといても、俺が誰かに何かを教えることは出来ないけどいいんだね」
「本命は別の人だから。それまでの中継ぎだってー」
「暫く預かる『だけ』でいいってことね」

 預かるだけね。
 簡単に言うが、俺はこれといった拠点を持っているわけではない。いつも気紛れに、されど危険なことには巻き込まれないように慎重に行動しながら旅をしているだけ。
 その旅にに見ず知らずの少女を巻き込むのもちょっと、と思うがそんな行方知らずな俺に預けて、いざ本命を見つけた時に連絡のしようはあるのだろうか。
 ん、そういえば彼女は真っ直ぐ俺の方へ飛んできていたな。
 どういうことなんだ。何故、来れた? どうしてここに辿りつけたんだ?
 これは本当に……対俺用の自在法があることを疑ったほうがいいかもしれない。俺と鬼ごっこをして追い詰めた奴が過去にも居ることだし、不可能ではないだろう。
 俺の炎の色を知っている者も多いし、たった一人のフレイムヘイズを探知するためだけの自在法なら無理なく作れそうでもある。
 ただの被害妄想かな。それならいいんだけど。
 一応確認のためにこの仕事の依頼主を聞くとしよう。
 この無茶ぶりからしてある一名、鬼ごっこをしたやんちゃなおじいちゃんしか思い当たらないけど。

「ええと、ちなみにさ。俺のことは誰に紹介してもらったの?」
「ドレルさんに」
「アハハハッ!」

 だよね。そうだよね。
 ここで、ウェルがはちきれんばかりの大笑いが炸裂した。耳が痛い。というか、ただの基地外にしか見えないぞ、ウェル。

「いや、ごめんごめん。あのおじいちゃんは本当に愉快だね! モウカ、楽しくてしょうがないよ! あの時がきっと運命の出会いだったんだよ!」

 ウェルの言葉についていけない『極光の射手』はぽかーんとしている。何が何だか分からない顔だ。
 当たり前の反応だろう。
 ウェルの言っている意味は全く分からないだろうからね。俺とドレルの出会いを知っているのはそれこそたった四人だけ。
 それでも、俺は断言できるね。
 俺は運命なんて言葉が大嫌いだよ!
 にしても、ここまではっちゃけたウェルは久々だったかもしれないな。ずっと大人しくしてればいいのに。
 ついでに気になることをもう一つ聞いてみる。

「ちなみに、もう一回ちなみにさ。空から飛んできたのって」
「ええと……ドレルさんが」
「『不朽の逃げ手』に逃げられないようにするためだ、って言ってたよー」
「貴方も苦労しているのね」

 ウェルの笑い声がより一層、大きくなった瞬間だった。
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